小松の家

右手に南道路、左手に西道路に挟まれた角地。南に面する屋根面積を確保するため、棟位置を北側にずらし、高くなった部分にOMXの機械室を配置しています。生活空間を2階にまとめ、リビングに面してバルコニーを設けています。

南側は人通りの多い細い道路。このような周密な住宅地では、建物と道路との距離を確保することが難しくなります。こちらでは、バルコニー形状を変化させて4mほどのヤマボウシを植え、木フェンス足元に地被類を植栽しました。

住まい手は高齢のお一人住まい。比較的周密な住宅地のため、寝室や水回りを含めたすべての生活の場を2階にまとめ、1階は玄関とカーポート、予備室としています。南面にバルコニーを設け、引込の障子から柔らかい光が室内を満たします。一日のほとんどを過ごすところ。ちょうどよいスケールの空間となりました。

天井は野地木材の小幅板風羽目板。切込みラインの入った赤みの杉板です。造作材や建具材、構造化粧材に使用している熊野の杉材との相性も良好です。勾配天井の低い部分と高い部分の寸法はいつも悩みますが、とても良い感じのスケール感になりました。

右手の和室とリビング・ダイニング・キッチンとは引き戸の開閉でつながり具合を調整します。バルコニーに面する障子は引込戸としてそれぞれ壁に引き込まれるようにしています。

1階廊下から階段、2階リビングへは仕切られることなくつながっています。冬季、屋根面で集熱された暖気は、1階床へ送られた後、この階段や要所に設けられたスリット開口を通して2階へゆっくりと上り、機械室へ還気されます。

西面道路の先は公園があり、公園で遊ぶ子供達の姿や緑が目に入ります。夏季の夕刻の強い日差しを避けるため、窓には引込みのガラリ雨戸を設けています。

踏み面240、蹴上161の階段はゆったりと上り下りができます。階段踊り場の窓は西側道路に面しており、階段を通して明りを1階に届けてくれます。

全館空調の住宅は、要所に暖気と冷気を送るためのダクト計画が重要となります。一般的には天井裏にダクトを横引きする結果、建物の高さが大きくなりがちです。「小松の家」では要所に縦ダクトを設けて、横引は2階の天井裏にまとめています。上右写真のように、1階天井は2階床を現しにすることで、階高(1階床から2階床までの高さ)を抑えることができました。

1階玄関。日中、窓先に植えたハクサンボクの影が障子に映り、時刻の移り変わりを教えてくれます。左手、天井までの建具は防寒のための引き戸です。全館空調の場合、家全体を温熱的に1室空間として扱います。玄関引戸を開閉する際、外部から室内に気流が流れ込みますが、この建具がそれを防いでくれるのをあらためて実感しました。

玄関天井は桧のスリット入り小幅板。造作材を熊野の木でそろえることで落ち着いた雰囲気をつくっています。

工事中のOMX全館空調のダクトのようすです。ロフト上の機械室に見えるのが室内ユニット。ダクトで各室要所に送られた暖気、冷気は全室の温熱環境を整えた後、この機械室に還気されます。

シミュレーションソフトを積極的に使っています。季節に応じた、日照の採り入れと遮蔽を検討、建物形状に反映させています。

シミュレーションソフトでは各室の室温と放射温度(床・壁・天井・開口部の表面温度)が判ります。特に放射温度が、心地よい暖かさを得るため重要な要素となります。

空調機の発停は温度センサーによりコントロールされますので、終日、設定温度を維持します。上記のシミュレーションは、建物の温熱性能を確認のため、一般的な間欠暖房とした際の夜間各室室温の低下をチェックしています。