第四回 仙台保型形式小集会
完全対面開催
完全対面開催
日時:令和7年2月8日(土)9:40~2月10日(月)18:00
2月8日(土)
9:40-9:45
開会の挨拶
Bae-Duan-Lee-Lee-Sarkis(2021)によりfermionic RCFTに関する指標関数の分類をMLDEを用いて行われている.本講演では同様のタイプのMLDEに特定の条件を課した場合において,log-解の分類が行えることを述べる.これは大阪大学・永友氏との共同研究である.
よい条件を持つ頂点作用素超代数の表現の指標は,Γ0(2)やその共役のベクトル値モジュラー形式(VVMF)となることが知られている.本講演では,VVMFのモジュラーロンスキアンをデデキントのエータ関数とウェーバーモジュラー関数を用いて表示することができたので,この内容について報告する.また,この結果の応用として様々な頂点作用素超代数の指標の満たすモジュラー微分方程式を求めることができたのでそちらについても紹介したい.
Inthis talk, we will give some examples of explicit archimedean Whittaker functions and their applications for automorphic forms.
A binary code is a linear subspace of the finite dimensional vector space over the field of two elements. When the code has a suitable property, we can get a modular form. Here the invariant theory of a finite group and the theta functions play important roles. We discuss this relationship mainly from our point of view, combinatorics.
2月9日(日)
ボーチャーズは、1995年の論文において、ルート系のある種の拡張としてベクトル系を定義し、ルート系の分母公式に対応するものとして、(スカラー指数の、カスプで正則性を欠く可能性がある)ヤコビ形式をベクトル系から無限積をもちいて構成する方法を与えた。ここで、指数をスカラーに限定することは本質的ではなく、ベクトル系の定義は容易により一般化でき、そこから行列指数の有理型ヤコビ形式を構成することができる。では、これらのヤコビ形式がカスプも込めて正則となるのは、元のベクトル系どのようなときであろうか。本講演では、それがある種のルート系に限ること、言い換えれば、分母公式の両辺がヤコビ形式になることがある種のルート系の特徴づけになることを、説明する。本講演の一部は、川ノ上帆氏(中部大学)との共同研究の結果である。
中心的な話題としては、SO(6)の代数的保型形式と2次のエルミート保型形式の対応予想を話したい(Brandon Williams との最近の共同研究)。関連して、SO(5)とparamodular 形式の対応予想(定理)の解説とか、球関数つきテータ関数によるエルミート保型形式の構成とかの話を加えるかもしれない。
偽テータ関数のモジュラー変換公式や量子モジュラー性を得ることは数論のみならずトポロジーや数理物理においても重要である。本講演では、そのような結果を広範なクラスの偽テータ関数に対して系統的に得る新手法を紹介する。この手法はEcalleのresurgence理論の一部を多変数に一般化しているという点でも興味深い。また応用として、量子トポロジーの最重要課題の一つである量子不変量の漸近展開の決定を未知の場合に証明できることも紹介する。
代数群の数論的部分群の体積は、整数論におけるゼータ関数の特殊値、保型表現論における保型形式の次元公式、代数幾何学における双有理分類など様々な場所に現れる。本講演では、これまで知られていたPrasadやGan-Yuによる体積公式を振り返り、それらを基にして半単純代数群に対する、新たな表示の体積公式を提示する。さらにその帰結として、特定のモジュラー多様体の分類問題への応用を述べる。本講演の内容は、小原和馬氏(MPIM)との共同研究に基づく。
保型表現に関するアーサー重複度公式は保型形式の存在を述べるうえで極めて有用な公式である。正則保型形式の存在を重複度公式より考察する際、無限素点の局所Aパラメータと対応するパケットにいつ最低ウェイト表現が含まれるかを考察する必要がある。Aパケットがスカラー型ユニタリ最低ウェイト表現を含むための必要十分条件が計算できたため、それについて報告する。また、余裕があれば、応用として具体的な正則保型形式の存在が示せることについても述べたい。
2月10日(月)
Holomorphic modular forms of multi-variables (e.g. Siegel modular forms) automatically satisfy the holomorphy around cusps. If we regard these modular forms as automorphic forms on Lie groups, we restate that holomorphic modular forms automatically satisfy the moderate growth condition. We call this “Koecher principle”. The aim of this talk is to give a survey on what is known about the Koecher principle including the cases of non-holomorphic real analytic modular forms and some recent progress by the speaker.
局所コンパクト群Gの既約ユニタリ表現πとGのコンパクト部分群K の既約表現δから,Godement の球関数Φπ,δ が定義されて,G上の保形型式の空間を定義するのに利用できます.Φ_π,δ の明示的な表示は,π が G 上の正則離散系列表現の場合を除いて,よくわかりません.例外はG=S_p(1,n) の場合に,高橋礼司氏により詳しく研究され,荒川恒男氏により付随する保形型式の次元公式に利用された事例で,そこではΦπ,δ は非常に簡単な形をしています.このような現象を理解したいというのが,研究の動機です.そのために最小の K-タイプ δ の G の正則離散系列表現 π を G の「実部分」H に制限したH のユニタリ表現はIndH H_∩K(δ|_H∩K) とユニタリ同値なので (Vargas, 2002),このユニタリ同値写像を明示的に書きたくなります.因みにG=SU(2_p,2_q) のときにH =S_p(p,q) です.Jordan 三重系の言葉を用いると,このような G とその実部分H を系統的に見ることができます.特に複素管状領域に対応するGと付随する正則凸錐体に対応するH の場合に,上記のユニタリ同値写像を明示的に書いてみます.
重さ1の固有形式と2次元奇Artin表現の対応は1970年代にDeligneSerre により確立された.本講演では,主に次の問題について明示的な計算の観点から概説する.
• 指定されたレベルの重さ1固有形式を列挙する問題.
• レベルに関する重さ1固有形式の空間の次元の挙動.
• 重さ1固有形式から対応する2次元奇Artin表現を具体的に計算するアルゴリズム.
• 重さ1の固有形式に対応するような有理数体上の有限次Galois拡大体が与えられたとき,対応する固有形式を求めるアルゴリズム.
ジーゲルモジュラー多様体の正則微分形式に対するジーゲル作用素について、ホッジ理論的アプローチをお話ししたいと思います。最高次の場合はコホモロジーの混合ホッジ構造の重みフィルトレーションと関係しますが、最高未満次の場合はコホモロジーの純パート内の(純ホッジ構造による)フィルトレーションが登場します。
Borcherds による IV型有界対称領域上の保型形式の理論の代数幾何への応用として、Allcock と Freitag による 3次曲面のモジュライ空間の研究が挙げられる。3次曲面のモジュライは4次元複素超球の算術商として記述できるが、彼らは保型形式を用いた9次元射影空間への埋め込みを構成し、これがCayleyによる3次曲面の cross-ratios を用いた埋め込みに一致することを示した。彼らのアイデアをもとに、Enriques 曲面、種数3の曲線、射影直線の8点(種数3の超楕円曲線)のモジュライ空間等で同様の研究を行ったが、本講演では一例を取り上げ概観をお話ししたいと思います。新しい結果は含んでおらず、古い仕事です。
光子と2準位原子の相互作用を記述する量子ラビ模型は、それを定義するハミルトニアンの見かけ上の単純さにもかかわらず、量子光学・固体物理、そして現在では量子情報分野の実験測定をも説明する理論モデルとして重要な位置付けにある。本講演では、理論・実験双方において活発な研究が進む量子ラビ模型及びその一般化モデルに対して、それらのスペクトルの研究から生ずる数論・幾何・表現論の、講演者が重要と考える未解決問題について紹介する。
研究助成 : 科研費 基盤研究 (S)24H00015(研究代表者:都築暢夫) p進的手法による数論幾何学の新展開
連絡先:山内卓也(東北大学・理)takuya.yamauchi.c3 (at) tohoku.ac.jp
update:2024.12.16