【設立6周年記念ウェビナーレポート】
OOHの未来について
OOHの未来について
メディア観点でのLIVE BOARDのアップデートと、OOH業界を牽引する2社様にご登壇いただき、事例や今後の展望をお聞きしました。
その内容をレポートします。
▼登壇者
株式会社ヒット 経営企画本部 経営企画部シニアマネージャー
渡部 雄満氏
株式会社ゲート・ワン 取締役COO
速水 大剛氏
株式会社LIVE BOARD メディア部ディレクター
星野 中
▼アジェンダ
<星野>
LIVE BOARDが設立した2019年11月の時点で接続できる面はわずか24面に限られていた。現在は、ビジネスシーン(駅・電車・タクシー・空港)、購買導線(CVS、GMS店内など)、プライベート(美容室、繁華街など)に販路を広げ、64,600面に上る数に拡大している。屋外だけに限らず、駅構内や電車内など外の様々なスクリーンで配信可能になった。また平日だけ、朝だけなど放映時間や期間を自由に調整することもできる。なおかつDSP事業社との接続や、メディア各社へのSSP提供を行ったことで、DSP・SSP連携に応じて様々な提案をすることができるようにもなった。
これらの配信先、配信方法の進化に加えて、ドコモデータを活用することで緻密なターゲティングや効果測定が可能になった。これら一連の進化によって、OOHは様々なモーメントを効率的に抑えることができるようになっている。
こうした進化の背景には、生活者の行動が多様化し、従来のメディアプランニングの見直しが必要になっている時代だという想いがある。時代が変化するうえで、今後のDOOH活用の勝ち筋はあるのかということを考えていく。
<渡部氏>
株式会社ヒットは「屋外広告のリーディングカンパニーとして世界を変えるメディアを創造する」という経営理念を掲げ、30年以上に渡ってOOHを取り扱っている。
ヒットでは渋谷駅前に大型屋外広告サイネージ「シンクロ7」を設置した。その活用方法のデモとして、巨大な秋田犬が時報として登場する肉眼3Dカラクリ時計動画を制作し、2022年7月に公開した。その結果、国内外のメディア・SNSで大きく取り上げられ、広く拡散された。これはクリエイティブ制作に注力していたから実現したと考えている。ヒットは広告枠だけでなく、効果的なクリエイティブも同時に提案できるところが強みである。
自社でクリエイティブ部門を持つことの強みは3つある。
DOOHならではの事情を踏まえて企画できること
広告素材の1秒目からの視聴が期待できるTV、ウェブと比較して、DOOHは視聴者がどこから見始めてどこで見終わるのかがわからない特徴がある。そのためどのカットを見ても、何の広告なのかがわかることが望ましい。また空間を上手に使うこともDOOHならではのテーマであり、そうしたポイントを踏まえて企画が提案できる。
提案と発想の幅が広がったこと
従来は媒体社という立場に限定された提案になりがちだったが、クリエイティブ起点のDOOHという捉え直し要素が加わった結果、顧客への提案とメンバーの発想の幅が広がった。
お金を掛けずに提案でき、動きが早いこと
自社のプランナーやプロデューサーを起用すれば、外注コストを考えることなく企画・制作の提案ができることは大きなメリットだ。営業面でも同じオフィスにいるメンバーと動けるため、早い進行が可能になった。
2024年末から渋谷センター街ヒットビジョンの放映が始まった。OOHの聖地といってもいい渋谷に、駅の方向を向いた良いビジョンができたことが強みであり、すでにインバウンドや観光客から注目を集め、SNSなどで拡散されている。新たな面をさらに活用していきたい。
またヒットが考えるOOHの未来は3つある。
看板面の”インパクト”は今後も必要とされる
我々のアイデンティティであり、最大の良さはOOHの大きさからもたらされるインパクトや、”Wow”感である。媒体社として今後も大きさにこだわって、インパクトを追求していきたい。
指標の多様化が進む
統合メディアプランニングに向けた指標はもちろん、SNSによる二次拡散など副次的な効果が重視されるケースもある。クライアントニーズに応じて、広告効果を適切に可視化していくことが、より求められてくる傾向がある。
”OOHならでは”と”扱いやすさ”の両立
屋外広告媒体の面白さの一つに、「その場所、その建物だからこそ、その形」といった”オンリーワン”感や”ならでは感”がある。異業媒体が増えてきており、媒体専用の素材を用意するのがベストだという考えが広まるはずだ。一方で、他メディアと共通の素材を使いたいというニーズはなくならない。プログラマティックOOHを含め、利便性や他メディアとの親和性を深めていく必要もある。
<速水氏>
株式会社ゲート・ワンは2021年9月に設立され、ファミリーマートのリテールメディア戦略の一角としてリテールサイネージ事業を展開している。
展開する「FamilyMartVision」は国内最大級のリテールサイネージネットワークである。首都圏を中心に全国1万店以上の店舗に設置され、注目率の高いレジ上に43~49インチのビジョンを3面設置している(一部例外店舗あり)。また店内スピーカーを使用し耳からの訴求も可能だ。またリーチ可能数は2週間で最大5,500万imp、配信の時間やエリアも選択でき、効果測定も可能。旬のエンタメ情報や地域情報等を発信し、来店顧客の店舗体験を楽しくする情報発信メディアである。2024年度は300社を超える広告主が利用し、業種問わず販促、認知の両面で活用が伸長している。
過去には住友生命の商品、住友生命「Vitality」のサービス認知拡大を目的にビジョンを活用し、加えて特典として店頭商品を連動させる店舗ならではのキャンペーンを行った。またメディアに対するエンゲージメントを高めるため、地方テレビ局とのコラボも積極的に行っている。情報番組とタイアップをし、テレビで製品を紹介してもらい、また店頭のビジョンで映像をリマインドすることで相互送客をする流れを実現した。
日本のリテールメディア市場は伸長を続けており、2024年4,692億円だった広告費は2028年には約2.3倍の10,845億円になると想定されている。
一方でリテールメディアには課題も多い。ニューヨークで行われたNRF(全米小売業協会)による世界最大級の小売りカンファレンス「NRF 2025:Retail's Big Show(リテールズ・ビッグ・ショー)」では、5つの課題が示された。
”使わなければいけない”から”使いたい”へ
リテールメディアは小売店との関係構築の関係から、使わなければいけないという意識があるが、前向きに使いたいと思わせることが必要である。
業界の成功事例ではなく自社の成功事例を
リテールメディアはまだ規模が小さく、業界の成功事例がそこまで多くない。業界の成功事例に倣うよりは、独自の成功事例を積み重ねていくことが重要だ。
需要の獲得から需要の創造へ
市場の獲得だけでは大きく拡大しない。獲得だけでなく、新規に需要を創造することも重要だ。
レポートのためのデータから意思決定のためのデータへ
効果測定が求められるのでもちろんデータは提出するが、データを出すだけでなく広告主の意思決定のデータとして使えるものにしていくことが必要である。
広告効果の差分を明確に
Incrementalityと呼ばれる広告を打った後の差分を明確に打ち出すことが求められている。
コンシューマージャーニーはすごろく型と言われていたが、現在はビンゴ型に移行している。コンシューマージャーニーが多様化し、いつ、どこで、コンバージョン(購入、サービス利用など)が起きるかわからない時代だ。
またリテールメディアの未来について、ポイントは3つある。
独自のメディア価値を創造する
日常生活導線、偶発接触、店頭という3つの特徴を、どう価値に転換できるかが重要である。またテレビ・デジタルとの共存し、クロスメディア効果の可視化も必要だ。加えてリテール環境において効果的なクリエイティブを作成することも求められる。
幅広い広告主を獲得する
エンデミック(配荷)、ノンエンデミック(非配荷)のどちらの獲得も必要である。販促メディアと認知メディア、どちらの視点でも使えるようにしていく。
広告主にとって使いやすくする
広告主の戦略を反映しやすい。柔軟な配信機能の整備を今後も行っていく。またプランニングしやすいメディアデータ整備やツールの提供にも力を入れる。またオーディエンス計測の標準化と透明化も必要だ。
<渡部氏>
期待することは3つある。
OOH未経験の方に使っていただけるという期待
デジタル広告は使用しているが、それ以外の広告媒体は使用したことがないという企業は多いはずだ。プログラマティック配信がOOH出稿のハードルを押し下げてもらえるならばありがたい。
トリプルメディアの打ち出し
LIVE BOARDが積極的に打ち出している「テレビ×デジタル×DOOH」のトリプルメディアが効果的であるという認識が広がっていけば、自然にDOOH業界を盛り上がっていくと感じる。
OOHのプレゼンスそのものが高まる期待
マスメディアやデジタルと比較して、OOHの立場が強いとは言えない環境だ。各社と協業しながら、一緒にOOHのプレゼンスを高めていきたい。
<速水氏>
期待することは3つである。
DOOH+リテールメディアの価値共創
家の外で接触する複数メディアが重なった時にどのような効果が得られるのかを突き詰めていき、メディアとしてのベネフィットを一緒に創っていきたい。
配信連携プログラマティック
広告主にとって使いやすいメディアを目指し、今後も協業を続けていきたい。
DOOHオーディエンス計測標準化の推進
DOOHとリテールメディアは環境に差があるため考慮すべきポイントもあるが、同じOOHの領域の中で計測を標準化できたら、リテールメディアにとって大きなベンチマークとなる。LIVE BOARDには引き続きリーダーシップを発揮してもらいたい。
▼アーカイブ動画はこちら