スカウトで繋ぐ 文化の架け橋 ― ベンチャー・ローバー年代の挑戦を追う報告会レポート
「みんなで語ろう!京都から世界へ! スカウトで繋ぐ 文化の架け橋」と題して開催された報告会。ここでは、ボーイスカウト京都連盟のベンチャー・ローバースカウトたちが、この1年間で参加してきた海外派遣や全国規模のキャンプの体験を共有しました。
京都第1団のローバースカウトも報告しましたので、レポートを掲載します!
「どうしてそんな体験をしてみようと思ったのか?」「怖い、心配だと思うことはなかったのか?」といった素朴な疑問も飛び交いながら、挑戦を通じて得た学びや成長を語り合う場となりました。
本記事では、4つの行事報告と会場でのパネルディスカッションの様子を、スカウト未経験の方や保護者の皆さんにも分かりやすいよう、かいつまんでご紹介します。
富士スカウト(※1)の京都第77団のローバースカウトによる「スカウト特別海外派遣」。日本連盟の制度を利用し、約1か月間イタリアを巡る個人プロジェクトを実施しました。ポイントは「派遣先や内容をすべて自分で企画し、経費は最大50万円まで補助される」というところです。
テーマ:「オルタナティブ茶碗蒸しの開発」
このローバースカウトは大学で知り合ったイタリア人の「茶碗蒸しは美味しくない」という酷評をきっかけに、あえてイタリアで“茶碗蒸し”を調理・改良し、現地の食材や味覚に合わせた新レシピを作るという挑戦に打って出ました。
現地で気づいた「ピザの耳が捨てられている?」
イタリア人はピザの耳を残しがちで、それがフードロスの一因になっていると知り、試作レシピに活用できないか模索。「余ったピザの耳に卵液をしみこませる」など、現地ならではの発想を組み込みました。
試作は120パターン! 最終的な“合格”レシピ
具材をイタリア風にアレンジし、**「ポルチーニ茸×クリームソース」「カルボナーラソース×茶碗蒸し」**といった2種類を完成。現地スカウトにも大好評だったそうです。
スカウト同士の出会い、宗教観の違い
滞在した地域のスカウト団や、以前の世界ジャンボリーで出会った仲間とも再会。「カトリック系のスカウトでは、入団に信仰が必須」など、日本のスカウトとは異なる文化背景を学ぶ機会にもなりました。
「自分で計画を作り込むので不安も大きかったですが、“誰もやっていない挑戦を思い切り楽しめた”ことが1番の財産です。」
京都第1団のローバースカウトによる「日本ローバームート2024」の報告。スカウトの最年長の年代である、ローバースカウトが全国から集まるキャンプ型イベントで、プログラムの多彩さが特徴です。
1日目:ビジル(自己対話)から始まる出会い
班結成後、夜には“ビジル”と呼ばれる静かな自己対話の時間があり、自分の参加目的をじっくり見つめられたそうです。
「あえて“何もしない時間”があるからこそ、みんなが自然と創造的に動き始めるんですよね。」
2日目:難民ワークショップで“自分ごと”として考える
午前中のワークショップでは、「難民が持ち出せる所持品の限界」をテーマに意見交換。支援する側だけでなく、**“自分がもし難民になったら?”**と想定する大切さを体感したといいます。
3日目:自然を活かしたプログラム&構造物づくり
午前:バケツリレーや空き缶のコンロづくりなど防災プログラム。
午後:キャンプ場のウッドクラフトで、看板やコースターを製作。
フリータイム:Nakamuraさんは班仲間と「班サイト用のテーブル」を丸太やロープで組み上げ、みんなの交流スペースを自作したそうです。
「自分たちで居場所を作ると、自然とそこが集まりの中心になるんです。」
靴底が剥がれるハプニングや深夜の語り合い
4日目の登山で、靴底が剥がれてしまうトラブルが発生。しかし、周囲がテーピングや靴紐をすぐに提供してくれて助かったとか。さらに夜は大盛り上がりの集会があり、テントに戻ってからも深夜まで語り合うメンバーが多かったそうです。
自由×社会問題が融合するローバームート
スカウト曰く、「こんなにのびのびと自分のやりたいことを形にできるキャンプは他にない」とのこと。防災や難民など、“真面目なテーマ”にも踏み込める柔軟さがローバームートの魅力だと語っていました。
なお、詳細レポートは以下のリンクからも!!
三つ目は向日第1団ローバースカウトが参加した「APRワークショップ(アジア太平洋地域の研修)」の報告。福岡で4泊5日、すべて英語で行われた指導者向けプログラムです。
参加国は13か国、議題はAI活用からリーダー育成まで
合計31名の参加者がグループに分かれ、各国のスカウト事情やICT技術の活用法を議論。例えば「AIにスカウトのポリシー文書を読み込ませて、プログラム案を生成する」という活用例が取り上げられました。
「便利な反面、個人情報や正確性の問題もあるので注意が必要と学びましたね。」
バングラデシュ、香港、スリランカ…多様なメンバーとのグループ作業
ローバースカウトが参加した班は5か国混成。班で最年少だったため、知識や英語力の面で不安があったそうですが、周囲が噛み砕いて説明してくれたり、逆に日本の課題を共有したりするうちに自信がついたと言います。
「日本では若いリーダーが少ない?」海外との温度差
特にスリランカのスカウトは、30代が理事を務める例もあるなど、若手が運営に深く参画しているのだとか。日本のローバースカウトにとっては大きな刺激になったようです。
「英語で議論するのは大変でしたが、 'もっと若者が活躍できる場所はある' と実感しました。」
京都第42団ベンチャースカウトが参加した「日韓スカウトフォーラム」。日本・韓国の高校生~大学生スカウトがSDGsをテーマに3日間集まり、討論や文化交流をする催しです。
SDGsの17目標から「ジェンダー平等」を深掘り
グループ内でホワイトボードを活用しながら、英語・韓国語・日本語を行き来しつつ意見交換。ステレオタイプ(固定観念)が根底にあるのでは?という結論に至り、「まずは日常の中で“男女で決めつけてない?”と気づくことが最初の一歩」との意見が出たそうです。
「翻訳アプリも使いましたが、最終的には表情や身振り手振りに助けられましたね。」
カルチャーナイトでソーラン節&“韓国風歩き方講習”
夕食後の文化交流会では、日本のスカウトがソーラン節を披露し、法被(はっぴ)をプレゼントすると大盛り上がりに。逆に韓国スカウトが「かっこいい歩き方」をデモンストレーションしてくれたり、バカウケ(お菓子)にハマる韓国の子が続出するなど、相互理解が深まったそうです。
“言葉を超えて協力し合う”成功体験
参加したベンチャースカウトは「やりたいことや考えていることが、互いに通じた瞬間が本当に嬉しかった」と振り返ります。一緒に汗をかいて話し合うからこそ、学びも大きくなると感じられたようです。
4つの報告のあとは、報告者が集まり「挑戦」をテーマにパネルディスカッションが行われました。
どうして海外派遣に挑戦したの?
英語力や費用、時間の問題はなかった?
不安はどう乗り越えた?
こんな質問が飛び交う中、それぞれが口をそろえていたのは「仲間の存在や、先輩リーダーの支えが大きな後押しになった」という点です。実際、大学受験やアルバイトとの両立を心配する声は多いものの、「フェードアウトせずに続けてこられたのは、団の指導者が自分の生活事情を理解してくれたり、尊敬できるスカウト仲間に刺激をもらったおかげ」という意見も出ていました。
また、若いローバースカウトがもっと意思決定や運営に関わる余地があれば、「やってみたいこと」を形にしやすくなるという意見も。自分で企画して計画する自由度こそが、海外派遣やローバームートなどの行事にさらに若者を巻き込む鍵かもしれません。
今回の報告会を通じて印象的だったのは、どのスカウトも最初は不安や壁にぶつかりながらも「やってみたい気持ち」を原動力に踏み出していること。そして、その挑戦の先には必ず新しい学びや仲間との繋がりが待っているということです。
海外派遣や全国規模のキャンプは、「国際理解」「多様性」「リーダーシップ」といった教育的な側面はもちろん、“自分の可能性を広げる”手段としてとても魅力的な場。報告者の言葉からは、それが決して特別な人だけのものではなく、少し勇気を出せば誰にでも手が届くものなのだと感じられました。
もし「参加してみたい」「詳しい話を聞いてみたい」と思ったら、ぜひお近くのボーイスカウト関係者や京都連盟にお問い合わせください。次に「挑戦」を語り合う報告会では、あなた自身が発表者としてその体験をシェアしているかもしれません。自分の一歩が未来を変える――そんな予感に満ちた、素敵な報告会でした。
(※1)富士スカウト
ボーイスカウトにおいて、ベンチャースカウト(主に高校生年代)で修得できる最高の章(バッジ)のこと。さまざまな項目をクリアし、キャンプや野外活動の知識・技能を高めた証として認定される。
ローバームートとは、ローバースカウト(高校生年代を終えて大学生や社会人年代になったスカウト)が一堂に会して行う大型行事のことです。いわば“ローバースカウト版ジャンボリー”ともいえるキャンプ大会で、毎回テーマが定められています。今回のテーマは「Momentum(推進力・勢い)」で、自己対話を通じた成長や新しい挑戦を大切にするプログラム内容でした。
会場は那須野営場。9月上旬、国内外のスカウト約250名(うち海外スカウト27名)が集まりました。直前まで天候が心配されていましたが、たくさんのスタッフが事前準備や設営を整えてくれたおかげで、スムーズにキャンプイン。自由度が高いローバースカウトだけに、全国各地から集まる仲間との出会いに胸が躍ります。
今回参加した京都1団のローバー隊・Nakamuraさん。実は、ボーイスカウトの大きな大会にはこれまでも何度か参加経験があったそうです。ボーイスカウト年代には**「17NSJ」(日本スカウトジャンボリー)、ベンチャースカウト年代に「日韓スカウトフォーラム」**などに参加し、海外スカウトと社会問題を議論する機会も。「同年代の仲間と深くつながったり、国際感覚が磨かれたりした経験は自分の糧になっている」と話します。
大学では地域社会や防災などを学ぶ中、「もう一度、同世代のスカウトと語り合いたい。海外のスカウトとも意見交換してみたい」という想いが募り、今回のローバームート参加を決意したそうです。
3-1. 【初日】出会いと自己対話
集合初日は、各班の仲間と出会い、自由に交流する時間が多く設けられました。ローバー年代になると、スカウトスキルが高い仲間はもちろん、個性もさまざま。「初対面だけど、みんなで新しいゲームを即興で作り上げる」というクリエイティブな姿勢にはNakamuraさんも驚いたとか。
夜には**「ビジル」**(夜間に静かな環境で自己を見つめ直す時間)があり、「なぜここに来たのか」「この大会で何を得たいのか」を内省。周囲に流されがちだった自分に気づき、「今回は自分からどんどん行動して、仲間との交流を深めよう」と目標を立てるきっかけになったそうです。
3-2. 【2日目】英語に挑戦&海外の視点から学ぶ
午前・午後の班プログラムでは、難民問題を扱うワークショップに参加。少ない持ち物で突然避難しなければならない人々の状況を疑似体験することで、「自分ごと」として考える大切さを学びました。さらに、海外スカウトが交じると自然と英語でのディスカッションが増え、Nakamuraさんも“英語に挑戦”する場面があったとか。
夜のウェルカムパーティーでは「Where are you from?」と声を掛け合い、お互いの文化や活動を紹介。こうしたオープンな交流が、“現地スカウトとの文化交流”を深める大きな一歩になったそうです。
3-3. 【3日目】自然を満喫! 創造力が生まれるキャンプサイト
午前は防災ワークショップでバケツリレーや空き缶コンロ作りを体験。いざというときに役立つ知識を“自分の手で試してみる”のは大切だと実感したそうです。午後はウッドクラフトで看板やコースターを製作。せっかくだからと班のみんなでテーブルを自作し、休憩やおしゃべりに集まりやすい環境を整えました。
「自由時間が多いローバームートでは、やるかやらないか自分次第。自分が“楽しい”と思うアイデアを仲間と共有し、それを形にするプロセスが最高に面白かったです」と語ります。
3-4. 【4日目】予想外のハプニング! 靴底がはがれた山登り
4日目は場外プログラムとして標高1915mの茶臼岳(ちゃうすだけ)に登山。火山らしい荒々しい岩場の道中、なんとNakamuraさんの靴底がはがれるというトラブルが発生! しかし、仲間がテーピングや靴ひもを差し出してくれ、すぐに応急処置。「大きなハプニングだったけど、仲間のおかげで乗り切れた。備えの大切さを身をもって知った瞬間でした」と振り返ります。
夜は全員が集まる大集会。肉体的にも疲れているはずなのに、そこは“ローバーならではの自由度”と元気の良さで大盛り上がり! 改めて仲間と騒ぐ時間が、絆を深めてくれたそうです。
3-5. 【5日目】個人の興味を追求するフォトコンテスト
5日目の午前は会場内の様子を撮影し、作品を応募するフォトコンテスト。それぞれが好きな被写体を探すうち、ほかの班の取り組みに飛び入り参加してみたり、新しい発見があったりと“個を大事にする”ローバー年代ならではの楽しさがあふれました。
午後はお菓子作りプログラム。材料が足りない、道具が合わないといった小さなトラブルが起きても、仲間同士で工夫してなんとか完成。「ここがローバーのすごいところ。柔軟に乗り越えて、結果は大成功でした」とのこと。夜には雨が降りましたが、雨上がりの深夜まで語り合った思い出は、とても濃密だったようです。
3-6. 【6日目】名残惜しい閉会式と感謝
最終日は朝から撤営し、閉会式でフィナーレを迎えました。今回のローバームートを無事に楽しめたのは、スタッフやサービスチームの頑張りのおかげ。「寝る間を惜しんで動いてくれた方がたくさんいて本当に感謝しています。自分もこんなふうに、人を支えるかっこいい大人になりたいと感じました」と心からの感謝を口にしていました。
6日間を通じ、Nakamuraさんが特に印象に残ったのは以下の3点だそうです。
仲間からの刺激と多様性
富士章(ボーイスカウト最高章)を持つスカウトも多数参加しており、スキル・知識・リーダーシップに圧倒される場面が多々。海外でインターンをしたり、バックパッカーをしたりと“ボーイスカウト以外でも活躍する人”との交流で視野が広がった。
自分の「楽しみ」を仲間と共有する意義
プログラム以外の時間にテーブルを作ったり、ゲームを考案したり。“受け身”ではなく“自分で場を作る”ことが、思いがけない出会いや学びに繋がった。
社会問題への意識が深まった
難民ワークショップ、防災ワークショップなどを通じて「自分ごと化」の重要性を体感。社会課題に対してできることを探る中で、外部の専門家やほかの団体との連携も必要だと再確認。
ローバームートの魅力は、大規模キャンプとしての楽しさだけでなく、ローバースカウト年代だからこそ得られる“自由と創造性”にあるとNakamuraさんは語ります。プログラムは用意されているけれど、どう活かすかは自分次第。英語に挑戦してみたり、予想外のハプニングを乗り越えたり、海外スカウトと文化交流したり――そのすべてが、一歩踏み出す勇気と仲間を大切にする気持ちから生まれたものです。
「自分が楽しいと思うアイデアを遠慮なく出して、周囲と一緒に形にしてみる。そんなローバーの自由度が、未来の社会を動かす原動力になるのではないでしょうか」。大きな刺激と学びを胸に、Nakamuraさんは次のステージでも活動を続けていくことでしょう。
ローバームートに興味を持った方は、ぜひ京都第1団のローバー隊の情報をチェックしてみてください。あなたの一歩が、新しい発見と仲間を連れてきてくれるかもしれませんよ。
※本文中でご紹介した「17NSJ」は日本スカウトジャンボリー、「富士章」は日本のボーイスカウト最高位の章、など専門用語の詳細は日本連盟の公式サイト等をご参照ください。
以上、ローバームートの体験レポートでした!