これまでの論文について、研究の経緯だったり着想だったり思い出などを書き連ねています。
最近のものを除いて、研究した順番(論文として第一稿が完成した順番)に並べてありますので出版年度はだいぶばらつきがあります。
85. Every non-trivial knot group is fully residually perfect (j/w Kimihiko Motegi, Masakazu Teragaito) , arXiv:2504.16345
いつもお世話になる何でも書いてある『3-manifold groups』の中に、『境界を持つhyperbolic 3-manifold groupはfully residually closed hyperbolic 3-manifold group』ということが書かれている。これ自体はGroup-theoretical hyperbolic Dehn surgeryの帰結だが、これを一般のknot groupについて拡張したもの。共著者の頑張りがメイン。46. の時とは逆で、今回は共著者が残した例外的なケースを示すのに貢献した(と思う)。私は共著者があまり知らない群論の技法を引っ張ってくる、というのが多い。
86. On the negative band number, (j/w Michele Capovilla-Searle, Keiko Kawamuro, Rebecca Sorsen) arXiv:2504.17637
川室さんから送られてきた論文にコメントしていたら共著者になることに。どことなくデジャブ。Garside theoryの部分にあれこれ口を出して、既に得られていた結果をちょこっと改良したのが貢献(?)。通常Braid群の計算関係では、最低でもSuper summit setから考えるので、Garsideが一番始めに導入したSummit Setを使う必要性が出てきたのは驚きだ。
87. Weak rectangular diagrams, mutli-crossing number, and arc index. J. Knot Theory Ramification. Vol. 34, No. 13, 2550064 (2025) [Journal Page] arXiv:2507.01404
Knotのarc presentation (rectangular diagram) では、「常に縦線は横線の上」という条件をつけているが、実はその条件を「各縦線は常に横線の上また常に横線の下」と緩めても、実は同じarc indexのarc presentationが作れる。そのことはずっと前から知っていた(多分ほかの人も知っている)トリックだが応用がないので放置していた。そんな中、triple crossing number関連の論文をとある経緯で見て、triple crossing numberなどをarc indexで評価するのにこの話が使えると気付いた。先行研究の多くを含む、あるいは一般化する不等式(関連する論文の7つの定理が論文の主定理から即座に出る!)が得られるので初等的な話だけれど意味が十分にあると思い論文にした。当初はLoose rectangular diagramと呼んでいたが、loose という言葉はよくない、と言われたのでweak rectangular diagramと呼ぶことにした。すごく早く審査が終わった。
1. Braid ordering and the geometry of closed braids, Geom. Topol, 15 (2011) 473--498. [Journal Page]
(arXiv:0805.1447 [math.GT])
処女作。学部4年でDehornoy順序を学習して、それが結び目に応用できないか?ということを考えていたのだが、学部4年~修士1年の時に勉強したNielsen-Thurston,Dehornoy順序,Braid foliationそのすべてが運よくつながり、Dehornoy順序と結び目の関係を見つけることができた。 修士1年でいろいろと「Closed Braid」で検索して見つけた論文を片っ端から読んでいくと、 Malyutinが代数的な(そして簡単な)考察からDehonornoy orderingがdestablizationなどの障害になる、 といったことを見つけた。 もっとその関係をBraid foliationのレベルで理解しよう、と思ったことが出発点。 初期(=修士時代)の論文(1~5)の中での一番のお気に入りだし、自分が数学の道に進むことを決めた一番大事な論文だと思う。
2. Braid ordering and knot genus, J. Knot Theory Ramifications, 20 (2011), 1311--1323 [Journal Page]
(arXiv:0805.2042)
上の論文では、結び目の補空間の本質的曲面を調べたが、同様の手法は結び目のSeifert曲面でもできるはずなので、上の話ができた後すぐにとりかかった。 証明の基本は↑の論文とほぼ同様だが、使う道具(braid foliation)の状況が少し異なって技術的な細部も結構ちがう。
3. On finite Thurston-type orderings of braid groups, Groups Complexity Cryptol. 2, (2010), 123-155 [Journal Page]
(arXiv:0810.4074 [math.GR])
Dehornoy順序はたくさんの解釈があるが、私は主にcurve diagramを使って解釈している。 Curve diagramによる順序の定義がDehornoy順序のもとの定義のものと一致する、という証明を一般化することで、 Thurston-type順序と呼ばれるDehornoy順序の拡張についても代数的な取り扱いを考えることができる、というアイディアでいろいろ書いたもの。
4. Finite Thurston type orderings on the the dual braid monoids, J. Knot Theory Ramifications, 20 (2011) 995--1019 [Journal Page]
(arXiv:0902.0833 [math.GR])
3.の論文では普通のArtin generatorを用いて記述したが、幾何的な考察をする分にはband generatorでも記述できるので そちらの方でThurston-type順序の記述を与えたもの。 同時期にJ. FromentinがDehornoy 順序のdual braid monoid 上への制限を考える、といったことをやっていたのを見つけて それを一般のThurston型順序に拡張しよう、と考えたのだ。
5. Finite orbits of Hurwitz actions on braid systems, / Osaka J. Math. (2011) 613--632 [Journal Page]
(arXiv:0912.0405)
2009年の二月に行われたワークショップで、当時広島大学の矢口氏の講演でHurwitz actionなるものを知った。背景はともかく、計算は純粋にBraid群の性質でいろいろ手が動くので、特別なHurwitz actionのorbitが有限になるような場合の分類を行った。
6. A note on geometric constructions of bi-invariant orderings, /Topology Appl. 158 (2011) pp. 690-696. [Journal Page]
D1になったとき位に、指導教官の河野俊丈先生の「反復積分の幾何学」が出版された。 それを読んでいろいろ勉強すると、pure braidの両側順序はpure braidの有限型不変量の列のLexicographical順序である、ということがわかる。 そこで、自由群のMagnus orderingの拡張として、 反復積分を用いたresidually torsion free nilpotent群のbi-invariant orderingの構成を述べた。
7. A functor-valued extension of knot quandles, / J. Math. Soc. Japan. 64 (2012) 1147--1168. [Journal Page]
(arXiv:1006.1949 [math.GT])
結び目の集会に行くと、(少なくとも私が学生の時からずっと)Quandleの話が毎回出るので、耳学問であるが基本事項は大体わかってきた。 何かの拍子にCrisp-Parisの`Representations of the braid groups by automorphisms of groups, invariant of links and Garside groups, という論文を見たとき、彼らの構成は群ではなくquandleにしても意味を持つことや、quandleで扱うことでquandle cocycle不変量なども拡張できそうだ、 ということで手を動かしてみたもの。 ほとんどの部分は普通のknot quandleの話を拡張するだけなので、 ちょうどQuandleの勉強と平行して研究が進んだ。 拡張したquandle不変量のよい応用が見つかれば嬉しいが…。
8. Space of group orderings, quasi-morphisms and bounded cohomology / Preprint. (arXiv:1006.5491 [math.GR])
順序群を一般に考えてみるときに、群のordering全体のなす空間がちょうどそのころ研究が始まった分野だった。 Dehornoy floorの考えを少しアブストラクトにすると、適当なco-finalな元との比較を考えることで 群の(left) orderingのなす空間からbounded cohomologyへの連続写像を構成できる、と見えるので、その基本的な性質について調べた。 構成されたbounded cohomology class はよく知られたBounded euler classの拡張として捉えられ いくつかの面白い性質(subgroupのconvexityを調べる道具になるなど)を持つ。 残念ながら、言葉遣いが多少順序群とかの言葉で抽象的になっているだけで、本質的には一次元の力学系の基本事項に過ぎない、と指摘されたので出版しないことにした。
9. Hurwitz equivalences of positive group generators / Hiroshima J. Math, 43 (2013) 335--350. [Journal Page]
(arXiv:1008.1383 [math.GR])
二つの対がHurwitz equivalentなるか判定するというのはかなり難しい問題である。 Dehornoyの仕事をいろいろ追っていくと、(半)群の表示を扱ういくつかの手法、とくに、word reversingの手法が (理想的な状況では)Hurwitz equivalenceを解くことができる、ということに気づいた。 もう少し考察をまとめて、より一般に(有限で終わるとは終わらない)Hurwitz equivalenceを解く`アルゴリズム'を与えた。 幾何的な問題にいろいろ応用できればうれしいが。
10. A Remark on the Alexander Polynomial Criterion for the Bi-orderability of Fibered 3-manifold Groups. Int. Math. Res. Not. IMRN (2013) 2013 (1), 156--169. [Journal Page]
(arXiv:1012.0635 [math.GT])
Clay-Rolfsenにより、Alexander polynomial を用いたbi-orderabilityの必要条件が与えられた。 ちょうど2010年の春にClay,Rolfsenのところに行ったときにその話を聞いて証明も教えてもらった。 その時に、一つ上の北山さんがTwsited Alexanderをやっていてその界隈の話をよく聞いていたので 「Twisted Alexanderにすると結果が改良できるのでは?」ということをコメントした。 その後、秋から冬にかけて本腰を入れて調べ始めたのだが、調べていくうちにこれまでのAlexander polynomialの応用とは異なり、 Clay-Rolfsen obstructionはtwisted を用いても期待される安直な拡張ができない、ということが分かった。 Twisted Alexander polynomialを勉強するいい機会になった。
11. Dehornoy-like left orderings and isolated left orderings / J. Algebra, 374 (2013) 42--58. [Journal Page] (arXiv:1102.4669 [math.GT])
Dehornoy順序を一般化する、という問題意識は修士の時から頭にあったし、だれもが思いつく安直な話だろう。 適切に設定すると、Dehornoy順序の持つ様々な性質が一般化できるので、面白いクラスになる、ということは結構楽に示せる。 だが、具体例がすぐに思い浮かばず、しばらく進展がなかった。 孤立順序の方面から、3-braidの一般化を考えることで、ようやく例が見つかったのだが、ちょうどそのあたりの時にNavasがすでに(2,q)-torus knot群に対応する場合にまさに自分がやろうとしていたことをやっているのを見つけ驚いた。一応、自分のものは一般の(p,q)-torus knot群までやっているので事なきを得たが、いくつかの証明はNavasのものをまねて簡単になった。
12. The classification of Wada-type representations of braid groups /J. Pure Appl. Algebra, 217 (2013) 1754--1763. [Journal Page] (arXiv:1105.2633 [math.QA])
7.のquandleの話で、和田先生のGroup-valued knot invariantや、Braid群の表現について知った。 そこでは、braid群のAut(F_{n})への表現で、Artin表現に近いもの(Wada-typeと呼ばれる表現)は本質的に7つしかない、という予想が 書いてあった。これはwordの長さを考えると、たくさんcancellationが起きなければならない、ということからやればできそう、と思っていた。3.11の地震の後、大学に行くのが難しかった時に、自宅でひたすら計算に没頭した。 この手の(組み合わせの細かな)話をきちんと書ききるのは難しい。
13. Non-left-orderable double branched covering / Algebr. Geom. Topol, 13 (2013) 1937--1965. [Journal Page] (arXiv:1106.1499 [math.GT])
順序群で、(自分は実はそこまで強く興味がないのだが)一番中心的な問題は L-space予想:(3次元多様体がL-spaceであることとその基本群がnon-left-orderableであることは同値か?)である。 Alternating linkのdouble branched coverがnon-left-orderableが示されているので、もう少し一般に quasi-alternating link のdouble branched coveringの基本群がnon-left-orderableかどうかを考えた。 この論文では、non-left-orderablityを示すのに本質的な情報を取り出した"coarse" presentationを作り、それを使って基本群がnon-left-orderableとなるようなdouble branched cover を持つlinkをいろいろと構成した。
14. Construction of isolated left orderings via partially central cyclic amalgamation / Tohoku Math. J. 68 (2016) 49--71. (arXiv:1107.0545 [math.GR])
Isolated Orderingの構成法。 論文11で得られた孤立順序を、融合積の構造の観点からみていくと、最初にいくつかの順序がきまると、残りの元の大小関係ドミノ倒しのように一意に決まっていく、という様子を見つけた。 その様子を代数的に定式化することで、融合積の孤立順序を構成することができた。 Dehornoy-like OrderingですべてのIsolated orderingが作れるのではないかと論文11を書いたときは考えていたが、やはり世の中そんな甘くなかった。融合積の構造から、最初は幾何的にTreeへの作用を考えて…とかやっていたが、全部代数的な議論に置き換えたほうが逆にすっきりと、 かつ一般的にできた。 Isolated orderingのたくさんの面白い例ができ、Isolated orderingはそれなりに存在していると分かった(当時は孤立順序の具体例などほとんどなかったのだ)。 今のところ、博士課程で一人でやった研究のなかで一番結果が気に入っている。…のにアクセプトをもらうまで非常に大変だったために出版まで時間がかかった。
15. Open book foliation (j/w Keiko Kawamuro) / Geom. Topol. 18 (2014) 1581--1634. [Journal Page] (arXiv:1112.5874 [math.GT])
学振DCの申請書類および採択課題には「接触幾何」の文字を入れていたが、D3の夏までは本腰を入れて研究をしていなかった。私は幾何は苦手なのだ。2011年の夏に東大に川室さんがいらしたときに、いろいろと議論をしていくと、最初微妙に話がかみ合わない。話していくと、私はOpen book foliationで、川室さんはcharacteristic foliationの方で話していた。というわけで、Braid foliationとCharacteristic foliationの対応をきちんとさせようという話になり、open book foliationの理論が生まれた。この論文では基本的な手法だけから得られる結果をまとめ、導入を書いた。一般の形でのself-linking number formulaを得たが、そこに予期せぬ形でJohnson-Morita準同型が出てきた。
16. Visualizing overtwisted discs in open books (j/w Keiko Kawamuro) / Publ. Res. Inst. Math. Sci, 50 (2014) 169--180. [Journal Page]
(arXiv:1310.6404)
Referee commentに従って↑の論文の一部(後半約1/3)を新たに考察・例を追加し、別の論文としてまとめたもの。 Open book foliationを使って、Overtwisted discを具体的に書くことで、 Honda-Kazez-Maticの結果の別証や、right-veeringだがovertwistedであるような(かつ、FDTCが大きい)Open bookを作った。
17. Lawrence-Krammer-Bigelow representations and dual Garside length of braids (j/w Bert Wiest) / Geom. Topol. 19 (2015) 1361--1381. [Journal Page] (arXiv:1201.0957 [math.GR])
2011年の10月から12月にかけて東大の 「組織的な海外派遣プログラム」を利用してFrance, RennesのWiest先生の下に滞在した。 行く前に、Wiest先生の論文を読みかえしていたら、Wiest先生のcurve diagramについての結果と Krammerの結果の類似に気づき、France到着後に(押しかけ)共同研究が始まった。今のところ自分が狙って共同研究したのはこのひとつだけだ。 最初、Wall-crossing labelingでdual Garsideがわかる、という主張にWiest先生は懐疑的だったが、理解すると私の汚い議論と説明をすっきりとまとめ、研究のキャリアの違いを感じたものだ。昔(M1-M2のころ)に勉強したLawrence-Krammer-Bigelow representationがようやく役立った。非常に楽しく、有意義な二ヶ月だった。本当にWiest先生に感謝。
18. Erratum to “How to read the length of a braid from its curve diagram”(j/w Bert Wiest) , Groups Geom. Dyn. 7 (2013) 495--496 [Journal Page]
↑の仕事をしている際に、発端となったWiest先生の論文内の一部の主張に誤りを見つけてしまった(主定理は問題なし)。 具体的な反例とかを一緒に考察したので、ありがたくもErratumの共著者にさせていただいた。実は初めて出版された共著論文。
19. Reading the dual Garside length from topological and quantum representations, /Comm. Math. Phys. 335 (2015) 345--367. [Journal Page] (arXiv:1205.5245 [math.GR])
Wiest先生との共同研究が完成した直後から、 (河野先生及びJackson-KerlerによるLawrence-Krammer-Bigelow representationのquantum groupからの解釈を知ると) braid群のquantum representationとGarside構造に関係があると思っていた。 この論文では「関係があること」をきちんと計算して証明した。 必要なのでJackson-Kerlerの予想もついでに解決しておいたが、これは本質的に河野先生の仕事。 Wiest先生との共同研究の手法を(その筋の人はたぶん知っている?)知識とあわせて、 現段階で拡張できるところまで拡張したもの。どうしてこのような関係が成り立つのかとても不思議である。何か物理的な解釈があるのだろうか? こういう観点からのquantum representationの研究はあってもいいはずなのになかったのも不思議。
20. Essential open book foliation and fractional Dehn twist coefficient (j/w Keiko Kawamuro) / Geom. Dedicata, 187 (2017) 17--67 [Journal Page](arXiv:1208.1559 [math.GT])
論文1.2.でやったBraid foliationとDehornoy順序の関連を一般化するもの。 Open book foliationの続編。Fractional Dehn twist coefficientとopen book foliationの関連を明らかにして、 いくつかの(特に今回はtopologyの方面に)応用を与えた。 論文1を書いた頃、こういうことが言えるのではと思っていたけどそれがきちんとより強い形で示せた。 Fractional Dehn twist coefficientは基本的なことは知られているはずなのに詳しく書いてある論文も少ないので、 基本についてもちゃんと書いたつもり。何がとは言わないがとにかく時間がかかった。 一応今まで書いた論文の中で最長。そして出版までにかかった時間も最長。
21. Cones of certain isolated left orderings and chain domains (j/w Nazer Halimi) / Forum Math. 27 (2015) 3027--3051. [Journal Page]
(8),(11)でIsolated orderingの構成を行ったが、その論文で作ったorderingについて、ある日メールでNazer氏からDubrovinの非可換付値環(chain domain)についての理論の類似が成り立つ(ちそうな)ことを指摘・質問されて、研究することになった。なお、Nazer氏とはメールでやり取りしたきり会ったことがない。まさかこういう代数分野の論文を自分が書くとは。
22. On surface links whose link groups are abelian (j/w Inasa Nakamura) / Math. Proc. Camb. Phil. Soc. 157 (2014), 63--77 [Journal Page]
(see also Errata: [Journal Page]/ Math. Proc. Camb. Phil. Soc. 159 (2015) )
(arXiv:1302.2290 [math.GT])
中村さんの論文を読んだら、曲面絡み目の補空間の基本群がアーベル群になる例があって、その例がいくつか一般化できることに気づいてメールを書いたのがきっかけ。個人的には曲面結び目の勉強になったのと、4次元に目を向けるいい機会になった。 なお、Theorem 2.1であまりにも愚かな間違えを犯していた(J.A.Hillman氏による指摘された)。
23. Framing function and strengthened version of Dehn's lemma / J. Knot Theory Ramifications, 25, 1650031 (2016) [Journal Page]
(arXiv:1307.5115 [math.GT])
何気なくWiest先生の昔の論文を読んでいたらその中のconjectureが証明できそうに感じたので証明した。 短いからといって査読が早くなるとは限らないことを学んだ。
24. Operations on open book foliations (j/w Keiko Kawamuro) / Algebr. Geom. Topol. 14 (2014) 2983--3020. [Journal Page]
(arXiv:1309.4486 [math.GT])
Open book foliationの理論の発展の道筋として、Braid foliationの結果の一般化や拡張が挙げられる。Braid Foliationの時よりも大変なので少し後回しになっていたが、後々必要になるのでOpen book foliationに対するさまざまな改変操作を導入した。 Open book foliation理論において``Bypass''とは何か?について考察したりと、これまでの論文の中で一番テクニカルな点を扱っている。 応用として、Birman-MenascoのSplit/Composite braid theoremの一般化を与えた。
25. Curve diagrams for Artin groups of type B / Hokkaido J. Math, 45 (2016) 383--398. (arXiv:1310.0546 [math.GR])
Braid群のcurve diagramの理論をB型のArtin群に拡張したもの。正しい拡張の仕方がわかれば後はBraid群の時とほとんど同じになる。 系として、B型 Artin群からBraid群への(UsualとDual両方の)Garside標準形を保つ(=isomtericな)良い埋め込みが得られる。そのこと自体は良く知られているが、curve diagramを用いるとGarside構造の話を使わず、幾何的な議論で示せる点が重要だと思う。
26. Garside-theoretic analysis of Burau representations (j/w Matthieu Calvez) /J. Knot theory Ramifications 1750040 (2017) 29 pages. [Journal Page]
(arXiv:1401.2677 [math.GR])
LKBの場合の議論から、Burau表現とGarside構造にも関連があることはわかるので、その関連について調べたもの。Garside標準系がどのような形をしていれば LKBと同様の議論が成り立つか、またどこがBurauがunfaithfulになる原因なのかを考察した。私がDualの方、Calvez氏がclassicalの方を別々に考えていたということがふとした拍子に分かってひとつの論文にまとめることにした。 自分としては面白いと思うのだけれど、レフェリーからの受けは良くなかった。
27. Overtwisted discs in planar open books (j/w Keiko Kawamuro) / Internat. J. Math. 26, 1550027 (2015) 29pages. [Journal Page]
(arXiv:1401.3039 [math.GT])
Open book foliationを用いたTight性の議論の論文。 具体的には、open book foliationを使うことで、overtwisted discをincompressible surfaceのように、 open bookを本質的に分解する位置におけることを証明した。アイディア自体はシリーズ最初の論文を書いた時からあったのだが、技術的細部を埋めるために 論文20,24をまず書き上げる必要があったために時間がだいぶかかってしまった。
28. On the self-linking number of transverse links (j/w Keiko Kawamuro) /Geometry & Topology Monographs 19 (2015) 157--171 (arXiv:1409.3814 [math.GT])
(私は参加していないが)ConferenceのProceeding。 といっても、論文15ではスペースの都合で割愛してしまったself-linking number formulaについての考察(とその後の研究で気づいた新しい考察) や川室さんと議論して出てきた興味深い現象を書いたものなので、内容は新しい。 書いてある結果もさらに続けて考える(発展する)余地がふんだんにあると思う。ちなみに、Conferenceのproceedingだが私は参加していない。
29. A kernel of braid group representation yields a knot with trivial knot polynomials / Math. Z. 280 (2015) 347--353. [Journal Page]
(arXiv:1402.2028 [math.GT])
[26]を書くときに知った、組みひも群の量子表現が非忠実ならば対応する量子不変量は自明な結び目を区別しないという、Bigelowの予想を強い形で解いた。 Dehornoy順序が活用できることに気づくと、Dehornoy順序の代数的な性質に帰着され簡単にわかる。 久々に修士の時にやったことに立ち返った。これも短くarXiv版では5ページ。Referee commentに従って定義やらOrderingの補足説明を追加したため、 出版されたものではページ数が増えているが。
30. 群の不変順序と位相幾何学 / 数学, 67 (2015), 133--153.
群の順序とトポロジーとの関連についてのサーベイ。自分の好みをだいぶ反映しているが、それでも(2014年くらいまでの話については)それなりの範囲をカバーしたつもり。 どの論文よりも書くのに苦労した。現在ではもっと研究は進んではいるものの、導入としてその話題の概観を得るのには今でも有効だと思う。
31. Isolated orderings on amalgamated free products, Groups. Geom. Dyn 11 (2017) 121--138 [Journal Page]
(arXiv:1405.1163 [math.GR])
14.では代数的(語を具体的に扱う)に扱うためにcentralといったいくつかの仮定を置いたが、Positive coneの有限生成性などの詳細な情報を犠牲にする代わりに、14.でやった場合よりも一般の状況のamalgamated free product上に isolated orderingを構成した。とくに、14.では不可能だった convex subgroupをたくさん持つisolated orderingが作れるようになったこと、 必ずしもisolatedでないorderingからisolated orderingが作れるようになったことは自分としては大きな進展だと思う。
32. Actions of the n-strand braid groups on the free group of rank n which are similar to the Artin representation /Quart. J. Math, 66 (2015), 563--581. [Journal Page]
(arXiv:1406.2411 [math.GR])
2011年秋くらいに論文12を終えてすぐにとりかかった話。Wada型表現よりももっと一般の表現を分類した。 本来は結び目への応用を念頭においていたのだが、 分類の帰結として、新しい不変量が出てこないことが分かったこと、 論文12の投稿・修正に手間取ったことなどがあって論文にもせずに二年間以上放置していたのだが、 思い直してきちんとまとめた。
33. Topological formula of the loop expansion of the colored Jones polynomial Trans. Amer. Math. Soc. 372 (2019), no. 1, 53--70. (arXiv:1411.5418 [math.GT])
RIMSに移って以来、環境的にquantum topologyをもっと本気でやりたいと思い、 quantum topologyの勉強をしたのだが、途中Melvin-Morton-Rozansky予想の証明がどうも引っかかったので、 自分でもっと納得できるような証明を考えた。 幾何的に、Lawrence表現として量子表現を見たとき、h→0とする、というのは考えているホモロジーが1次のホモロジーの外積に退化し、Burau表現やAlexander多項式が出る、という自分なりの見方を書いた。 応用として、colored Jonesによるbraidのentropyの評価を与えてある。評価式そのものはあまりよくないが、 『(Colored Jones)が複雑な結び目を表すようなbraidは(entropyが大きいという意味で)やはり複雑である』 という直感的な話を示している、という点でそれなりには面白さはあると思う.
34. On a relation between the self-linking number and the braid index of closed braids in open books, Kyoto J. Math. [Journal Page]
(arXiv:1501.07314 [math.GT])
『結び目を最小のbraid indexで閉braid表示したとき、braidのwritheが結び目の位相不変量になる』 というJones予想(及びその一般化のJones-Kawamuro予想)を一般のopen bookとclosed braidについて拡張した。 安易な一般化には反例がほとんど全てのopen bookで構成できることに気づいていたので、 最初は一般のopen bookへの拡張はそもそもできないと思っていた。 それでもbraid foliation部分の議論は仮定をたくさんつければopen book foliationの議論に一般化できることは分かるので、 ICERMのworkshopで証明の解説を聞いた機会にいろいろと考えてみたら、正しい(ある意味では最良の)一般化の形に行き当たって拡張ができた。 思い込みはいけないという良い反省を得ました。
35. On a structure of random open books and closed braids, Proc. Japan Acad. Ser. A Math. Sci. 91 (2015), 160--162. [Journal Page]
(arXiv:1504.04446 [math.GT])
34.のICERMのワークショップで、Dunfieldのrandom 3-manifoldとかの講演を聞いて、こういう方向もあるのか、と興味を持っていた。2015年5月ILDTにP.Dehornoy氏が来るということで、Dehornoy順序などの応用の一つとして、randomなopen book や closed braidについてすぐにわかることを書いた。既知の結果の組み合わせになってしまったが、それでも証明を見ずに結果だけみると面白いのではないかと思う。 こういう他の分野の結果を使うと一見離れている別の分野の面白い話がいろいろわかる、という話は私が大好きなのだ。
36. A homological representation formula of colored Alexander invariant, Adv. Math. 289 (2016) 142--160. [Journal Page]
(arXiv:1505.02841 [math.GT])
33.の話を早稲田で話した時に村上順氏から、Colored Alexanderでも同様のことができる可能性を指摘していただいた。 この場合はquantum parameterは1のべき根(non-generic)なので対応するホモロジー表現をいじくらないといけないし、思っている以上に面倒になる。 が、最終的な結果は簡単になり、結論として、Colored Alexander invariantについて、Alexander多項式のBurau表現の公式の一般化にあたる公式を得ることができた。 実は係数部分の量子整数の計算に一番時間がかかった。
37. Coverings of open books (j/w Keiko Kawamuro), Advances in the Mathematical Sciences, Research from the 2015 Association for Women in Mathematics Symposium 139--154. (arXiv:1509.00352 [math.GT])
(私は参加していないが)ConferenceのProceeding。 CoveringとOpen bookの関係・virtually overtwisted discの具体的な表示例、 non-loosenessへの簡単な応用などいろいろと考えたことを書き連ねたら思っていたより内容が多くなった。
38. On the 3-dimensional invariant for cyclic contact branched coverings, Topology Appl. 216 (2017) 1--7. [Journal Page]
(arXiv:1512.05443 [math.GT])
Branched covering のd_3不変量の計算。大体こんな感じになるだろうということは推測できるし、 既知と思って放っておいたのだが、どうも知られていなかったみたいなので書いた。レフェリーの反応を見る限り、やっぱり知られてなかったみたい。 初めてKirby diagramを論文で書いたり使用した。みんなよくあんな面倒なものを書いたり扱ったりできるなあ。
39. Quasi right-veering braids and non-loose links (j/w Keiko Kawamuro),. Algebr. Geom.Topol. 19 (2019) 2989–3032. (arXiv:1601.07084 [math.GT])
Tight/OvertwistedのTransverse knot版はloose/non-looseである。安直にRight-veeringの話をtransverse knotに直接は適用できない、というのはみな知っているので、transverse knotの場合に(non)-loose性を特徴づける性質は何か?というのは自然な問題だと思う。ここでは、Quasi-right-veeringというright-veeringの一般化を定義しHonda-Mazez-Maticのtight接触構造を与えるオープンブックの特徴づけのclosed braidへの一般化を与えた。 これまでの結果(27,37)のいくつかをclosed braidについても拡張したり、実は微妙に違う定義が混在していたright-veering closed braidの定義の関係 (違いと実際に使う状況ではちゃんと同値であることなど)など、一般のopen book中のclosed braidについての理論の整備になったと思う。
40. On a question of Etnyre and Van Horn-Morris (j/w Keiko Kawamuro), Algebr. Geom. Topol. 17 (2017) 561--566. [Journal Page]
(arXiv:1604.03836 [math.GT])
EtnyreとVan Horn-Morrisの書いたサーベイに出ていたquestionの一つに解答を与えた。surveyを読んだとき、自分としては「短い論文は審査やらなんやらが早い」という主張は偽だと思っていたけど、これは運よく審査やらなんやらが早かった。
41. A characterization of almost alternating knot,J. Knot theory Ramifications. 27 (2018) 1850009 [Journal Page]
(arXiv:1606.00558 [math.GT])
J.GreeneとJ.Howieの交代結び目の特徴づけの論文に強く感銘と衝撃を受けて、 読んだついでに彼らの方法や議論をちょこっと応用して概交代結び目の特徴づけを与えた。論文を理解する一番手っ取り早い方法は自分がその論文の結果や手法を使ってあたらしく結果を得ることだ。 …とはいうものの、きれいじゃなくて強引なのでもっと良いものがいつかできたらうれしい。
42. Alexander polynomial obstruction of bi-orderability for rationally homologically fibered knot groups, New York J. Math. 23 (2017) 497--503 [Journal Page]
(arXiv:1609.03673 [math.GT])
とりあえず昔手掛けて(論文10)放置していたbi-orderbilityの問題を(阪大に異動して金さんと話したりする機会があって)もう少しまじめに考えてみたら、 これまで本質的だと思い込んでいたfibered(commutator subgroupが有限生成)という条件は不要だった。 冷静に考えれば、別に全体が有限生成でなくても、適当な有限生成部分群を使えば問題なかったのだ。 最初の版では自分の勘違いですべてのknotについて議論が適用できると思っていたが、 Friedl氏からこの議論ではRationally homologically fiberedという条件が必要なことを指摘された。それでも、まあすべてのalternating knotに適用できるくらいには議論の一般化にはなっているのでそれなりには良い拡張だと思う。
43. Positive factorizations of symmetric mapping classes (j/w Keiko Kawamuro), J. Math. Soc. Japan 71 (2019), no. 1, 309--327 [Journal Page] (arXiv:1610.01122 [math.GT])
40.の研究の延長上として、EtnyreとVan Horn-Morrisの書いたサーベイに出ていたQuestion(論文40で扱ったものとは別) 「Symmetric mapping class group の元がpositive factorizationを持つならばQuasi-positive braid の像か?」 を一緒に考えてみた。とりあえずQuasi-positive braid の像になるような場合をいろいろ考察した。テクニカルな部分解答だけれども、 それなりに意味はあると思う。
44. The defect of Bennequin-Eliashberg inequality and Bennequin surfaces (j/w Keiko Kawamuro) ,
Indiana Univ. Math. J. 68 (2019), no. 3, 799--833. [Journal Page] (arXiv:1703.09322)
Bennequinの公式から、strongly quasi-positive braidならBennequin不等式が等式になるのはすぐわかるが、 じゃあ逆は?というのは気になる。実際に明示的に書かれた文献は見当たらないが、逆も正しいだろうという予想されている(と思う)。 より一般に、一般のopen bookで、Bennequin不等式の与えるself-linking numberの上界と実際のself-linking numberの差がN(>=0)となる transverse knotをbraidの言葉で特徴づけする問題・予想を立てた。 まず第一弾として、FDTCが大きい+アルファの仮定の下で予想のいくつかを証明した。当たり前だけど 一般のopen bookでのstrongly quasi-positiveとかの話はほかの人も考えていたみたい。
45. On LMO invariant constraints for cosmetic surgery and other surgery problems for knots in S^{3},
Comm. Anal. Geom. 28 (2020), no. 2, 321--349. [Journal Page] (arXiv:1704.01755)
2016年の8月拡大KOOKで市原さんがdegree 2 finite type invariantの(Kontsevich-Kuperberg-Thurston配置空間積分不変量の2次項) をCosmetic surgery予想に応用するという話を聞いて、 じゃあ一般次数の場合で(LMO不変量)でやればもう少しいろいろわかるかな?と思ってやってみた話。 最初はcosmetic surgeryへの応用だけを考えていたが、 Lens space surgeryだとかcharacterizing slopeだとかDehn surgeryが関連するその他の問題へも応用できるのでひとまとめにした。 LMOのrational surgery formulaはすでにBar-Natan,Lawrenceによって与えられているのであとはまじめに計算してみるだけ。 次数2ならまあいいけど、次数3でもう計算が大変になる(し計算ミスと書き写しミスの恐怖が付きまとう)ので自分には向いていないと思った。
2022追記:実際に書き間違えがありました。Cor 1.4 (i-d)で符号をわすれています(Baldwin-Sivek氏の指摘)。
46. Nontrivial elements in a knot group that are trivialized by Dehn fillings (j/w Kimihiko Motegi and Masakazu Teragaito),
Int. Math. Res. Not. IMRN(2021), no.11, 8297--8321 [Journal Page] (arXiv:1705.04470)
結び目群の元、特にslope元がいつ他のDehn surgeryで消えるか?というようなお話。 当初の目的のPeripheral Magnus propertyを示すことができたので満足。これはProperty Pの一般化であり、 Property PがGordon-Lueckeの「Knot are determine by their complements」のknot group版であることを踏まえるとPeripheral Magnus propertyは のcosmetic surgery予想のknot group版のようなものとみることができる。研究を進めるときに、 共著者三人のそれぞれの仕事がうまくかみ合ったと思う。私は割と細かい例外的なケースを扱うのは面倒くさがるので、 ある程度良い仮定や状況で大道具+トリックで一般に示すことが好き(だしそれで満足する)なのだが、二人は例外的なケースを丁寧に調べることを丹念に議論してくれるのだ。
自分にとって初めてとなる3人以上での共同研究。
47. Chirally cosmetic surgeries and Casson invariants (j/w Kazuhiro Ichihara and Toshio Saito),
Tokyo J. Math. 44 (2021), no. 1, 1--24. [Journal Page] (arXiv:1707.00152)
45の話を市原さんのところに行っていろいろと議論した際+年末の結び目の集会の会話の合間に、chirally cosmetic surgeryにも不変量を応用してみよう、という話になった。 Cassonでできることはたかが知れていると思って侮っていたが、市原さん、斎藤さんが使っていたSL(2,C)-Cassonと合わせるとちょうど相反する条件が出てきて 思っていたよりも有用であることがわかり、(almost) positive knotや2-bridge knotのchirally cosmetic surgeryの制約が得られ、 特にgenus 1の2-bridge knotのchirally cosmetic surgeryの分類ができた。 なぜか2016年度の後半から2017年初めにかけては(それまでほとんど手掛けていなかった)cosmetic surgeryに関連した研究をよくやっていたように思う。 例によって例のごとく変な間違えをいろいろやってしまってご迷惑おかけしました。
48. Braids, chain of Yang-Baxter like operations and (transverse) knot invariants,
J. Knot Theory Ramifications 27 (2018), no. 11, 1843009, 15 pp (The proceedings of ``Self-distributive system and quandle (co)homology theory in algebra and low-dimensional topology'') [Journal Page]
昔から、私はquandleの人に「Quandleの理論からtransverse knotの不変量を作れないか?」 といった問題を上げていたのだが、誰も手を付けないので自分で手を動かしてみたもの。 いちおう、transverse link版のcocycle不変量を作ることはできるものの、どれくらい意味があるものかよくわからない。 (と、いうよりも自明なものしかないと思う)。Quandle関係の集会に行く機会が(なぜか)あったので現時点での状況とアイディアを話した。 内容が不十分なので出版するかどうか悩んだのだが、Proceedingがでる、というので (このような機会に出さないと永久にお蔵入りになると思われるため)いつか誰かの参考になることを期待して投稿することにした。 こういう経緯なので、珍しくarXivには挙げていない論文である。 私は出不精なのでProceedingに出している論文はほぼすべて自分は参加していない(が共著者が参加していた)会議のものばかりなのだが、 これは初めての自分が参加した集会のProceeding論文。
49. Mutation invariance for the zeroth coefficients of the colored HOMFLY polynomial ,
Kodai Math. J. 43 (2020), no. 1, 1--15 [Journal Page] (arXiv:1710.09969)
Colored Jonesのループ展開(Melvin-Mortonの展開)はcolor nとq=e^hについてのベキ級数展開だったけど、 そういえば HOMFLY(quantum sl_N)で同じような展開を考えたらどうなるんだろう? とふと思って計算してみたらこれは本質的に係数多項式への展開だということで、 そこから以前滝岡君が取り組んでいたHOMFLYの0-th coefficientのcablingが(Colored HOMFLYの0-th係数部分)がmutantを区別できるか? という問題が解けてしまった。若い人が取り組んでいた問題を奪う形になってしまったけど、 故意ではない(し滝岡君はこういう方針の研究はしなかっただろう)からセーフだ(と思いたい)。 なお、投稿後レフェリーに証明の欠陥を指摘していただいた。幸いにも修正はできたのだが。
50. Flat plumbing basket and contact structure (j/w Keiji Tagami),
J. Knot Theory Ramifications 30 (2021), no. 2, Paper No. 2150010, 17 pp. [Journal Page] (arXiv:1710.11363)
arXivに田神君があげていた論文を見たらいろいろと改良や証明の簡略化ができることに気づいて 脊髄反射的にあーだこーだ口をはさんだ結果共著となった。若い人の結果に後から乗っかる形になってしまうのはあまりよくないことだが、 それなりには改善・改良になっているしセーフだと思いたい(すぐ上で同じことを書いているが…)。
51. On the fractional Dehn twist coefficients of branched coverings (j/w Keiko Kawamuro),
submitted, (arXiv:1807.04398)
Quasi-right-veeringの論文にさらっと触れたFDTCの話について、その定式化などをきちんとして発展させたもの。 特に、応用としてright-veering closed braidはuniversally non-looseという性質に対応することを示した。 何気なく昔の(2003年出版の)Etnyre-Ng編集の問題集を見ていたらこの結果を使って解けるものがあったのでそれも追加した。 冷静に見てみるとvirtaully loose性に関する話ってあんまりされてない。
52. Positivities of knots and links and the defect of Bennequin inequality (j/w Jesse Hamer and Keiko Kawamuro),
Exp. Math. 31 (2022), no. 1, 199-- 225.[Journal Page] (arXiv:1809.10836)
論文の表は共著者が頑張ったもので、私の貢献はちょこちょこ理論的な部分に口を挟んだり予想を書き加えたりしたこと。 計算機をとんと使えない自分がまさかこの雑誌に載せることになるとは。 ちなみに、Jesse Hamerさん(私は直接会ったことがない)は川室さんの学生さんです。
53. Generalized torsion and decomposition of 3-manifolds (j/w Kimihiko Motegi and Masakazu Teragito),Proc. Amer. Math. Soc. 147 (2019), no. 11, 4999–5008.[Journal Page] (arXiv:1811.07532)
ひょんな縁からお二人とgeneralized torsionについての共同研究をするようになって、 自由積とgeneralized torsionについての問題が未解決問題であることを教えられた。 確かに、考えてみると当たり前ではなかったが、 自由群のscl>=1/2であること、generalized torsionのsclは小さくなるということから、 sclを使うと解けそうだ、と思った。おりしも、Chenによって欲しい結果が証明されていたのですぐできた。 この簡単な観察はその後もgeneralized torsionの研究で有益になっているのだから、捨てたものではない。
54. A note on chirally cosmetic surgery on cable knots,
Canad. Math. Bull. to appear (arXiv:1809.10836) [Journal Page]
春の数学会の時に市原氏に会った時に『cable knotのpurely cosmeticがないことの論文がarxivにあったけど、 chirally でもできるよね』 なんていうことをその場のノリで口に出してしまったのでその直後のハワイでのAMSmeetingの昼休みにビーチをたむろしながらおおよその方策を立てて 帰国後に計算して考えが正しいことをチェックして書き上げた。 全部できるかと思っていたが計算してみると技術的な問題に直面してしまって一番微妙なそして重要な点が残ってしまったため、今一つ。 ワイキキビーチでやった、という一点が思い出(Smaleの伝説を聞いて、ビーチで数学の結果を出す、ということにあこがれていたのだ)。
55. A non-degenerate exchange move always produces infinitely many non-conjugate braids,
Nagoya Math. J. 243 (2021), 205--208 [Journal Page] (arXiv:1908.01485)
前々からおおよそわかっていたけど(entropyについてのFathiの結果を考えている設定でちゃんと使えるか確認するのが面倒で)放置していたもの。 2019年の7月、モントリオールのワークショップ中、周りがみんな数学を頑張っているなか自分は何もできずに散歩したりカナダだと安いブルーベリーとかマンゴーやらの日本で普段(高いので)食べない果物や、集会で毎日出てくるクッキーを食い漁る日々を過ごすうちに、このままでは何をしに来たかわからないとある時我に返って数学をしなくてはという強迫観念に迫られて書いた。・・・4ページだが。 新庄氏・Stoimenow氏が面倒な議論でやっていた問題をサクッと簡潔な方法で解決したので、それなりに意味はある仕事だとは思う。
56. Twist left-veering open books, overtwistedness, looseness and virtual looseness (j/w Keiko Kawamuro),
Osaka J. Math. to appear (arXiv:1909.05993)
Non-right-veeringならOvertwisted,というのをもっと詳細にして、right-veeringだがovertwistedとなるようなモノドロミ―をtwsit left-veeringとして定式化した。 これまでのquasi-right-veeringなども一般化し、これまでの議論を一番一般の形で述べたものだが、技術的すぎるのか反応は良くなかった。
57. HOMFLY polynomial of positive braid links,
Internat. J. Math. 33 (2022), no. 4, Paper No. 2250031, 18 pp [Journal Page] (arXiv:2005.13188)
L-space knotはstrongly quasipositive fiberedであり、今のところ知られているhyperoblic L-space knotはすべてbraid positiveであると聞いた (のと、科研費の申請の時の書類にこういうことを調べてみる、と書いていた)ので、positive braid knotを調べてみることにした。 Skeinでちょこっと計算すると、positive braid knotのHOMFLY多項式の最初の方の係数をすべて決定でき、 既知の結果の改良もできた。最後におまけ(Appendix)で、今回使用したCromwellの定理(Positive braidがnon-primeなら『明らかに』non-prime) について、証明を読むのが大変(で細部の検証をしたくない)ので自分で簡単な証明をつけた。 嬉しいことに、hyperoblic L-space knotはすべてbraid positiveか?という問題はそのちょっと後でBaker-Kegelが私の結果を利用して (彼らの与えたL-space knotが実際にbraid positiveでないことを)示してくれたので、やる価値はあったと思う。
58. On homogeneous quasipositive links,
J. Knot Theory Ramifications 31 (2022), no. 12, Paper No. 2250080, 6 pp [Journal Page] (arXiv:2007.03962)
コロナ騒ぎで元気とやる気が歴代最低を更新していた中、arXivの確認くらいはやっていたのだが、 ある日Orevkovが「Alternating quasipositive linkはpositive linkか?」という問題についての部分解答を挙げていたのを見つけた。 Orevkovはsignatureを使っていたが、Rasmussen不変量を使うと同じ話がhomogenousでもできることに即座に気づいてOrevkovへメールを書いた(2020年7月3日)。 「詳しく論文を書いたらリファーするから教えてくれ」と言われたので、慌ててもう少し考察を加えてまとめた (arXivにアップロードが7月8日、考察を追加した第二版(=内容は出版されたものと同じ)のアップロードが2020年7月10日) こういうことを言われなければ論文にしなかったかもしれない。考え始めて結果を得て論文を書き上げるまで一週間(!?)という自己最速記録を樹立した論文。 それにしても、一時期Generalzied Jones関連の話の一般化の研究をしていた (し、Hamer-I-Kawamuroの論文でこの問題に一度遭遇していた!)というのにGeneralized Jonesがこのように応用できる、ということに気づかなかったのは (いつもながら)私の大ポカだ。
59. Generalized torsion and Dehn filling (j/w Kimihiko Motegi, Masakazu Teragaito),
Topology Appl. 301 (2021), Paper No. 107515, 14 pp. [Journal Page] (arXiv:2009.00152)
時系列は前後するが、お二方と共同研究することになった一番最初のきっかけとなった話。 2017年の拡大KOOKの集会の時(その当時、二人がgeneralized torsionの論文を書いていたので、面白いと思ってもらえるかな、というのが半分、こんなことはもう知られているのかもしれないと思ったので確認のため、が半分で) 雑談ついでにsingular spanning disk(29. で出てきた概念)を使ったgeneralized torsionの構成を話したのだが、それがツボに入ったようで、 それから話が広がったり巡り巡ってありがたくもその後一緒に共同研究させていただくことになったのだ。 コロナでいろいろなものがオンラインになってしまうと、こういうちょっとした数学雑談もしづらくなってしまうのは問題だ。 ちょっとした観察を膨らませてくださり、こうやって一つの論文となったのはめでたい。 arXivに上げたのは遅くなっているのだが、論文自体は2020年の3月には完成していた。 (なお、これは国際会議のProceedingなのだが私はその会議には例によって参加していない。)
60. A note on knot ferility,
Kyushu J. Math. 75. (2021) no.2 273--276.[Journal Page] (arXiv:2010.04371)
2020年秋の数学会はコロナでオンライン開催、それも普通の講演はなくスライドや予稿集のみ、ということの中、 ふと見た最初のページの花木氏の取り上げていた問題がすぐに手が付くので、迫る講義準備の逃避にちょっと考察してみたもの。 ちょっとした現実逃避が次のもっと重要な仕事に結びつくことになったので、こういう脇道にそれるのも重要だ。
61. A quantitative Birman-Menasco finiteness theorem and its application to crossing number, Journal of Topology, 15 (2022), no.4, 1794--1806. [Journal Page] (arXiv:2010.12150)
knot fertilityの研究(というよりも気晴らし)の際に、closed 3-braidのcrossing numberを評価するということをやった。 その証明はclosed 3-braidの特殊性を使っていたものだが、 Birman-Menasco finiteness theorem(genus g, braid index nのlinkは有限個)を定量的にすることで、 評価は弱くなるが同様のことが一般にできること、そしてそれが結び目の交点数の問題に活用できることに気づいた。 Birman-Menascoの定理を定量的にすることはやればできる(だろう)ことはわかってはいたが、例によって例のごとくあまり意味がないと思い込んでいたのだ。 一般の結び目の交点数の問題を扱うのは絶望的だと思っていたので、Braid foliationで結果が出せて非常にうれしい。 特に、Lackenbyの評価を(braid indexが巨大でない、という仮定のもととはいえ)大幅に改良できたのは驚き。 系として、Braid index が(理論的に)計算可能であることがわかるのだが、レフェリーはそっちの結果の方を気に入ったようだ。 こういう、自分では「おまけ」と思ったところの方が関心を引くことは多い気がするので、書いておいてよかった。
62. Cosmetic crossing conjecture for genus one knots with non-trivial Alexander polynomial,
Proc. Amer. Math. Soc. 150 (2022), no. 2, 871--876.[Journal Page] (arXiv:2102.09116)
Cosmetic surgery関連の研究をしたとき、cosmetic crossing conjectureについてもいろいろ調べたりした。 そこでBalm-Friedl-Kalfagianni-Powellのgenus oneの場合のSeifert form, Alexander polynomial/idealを使う議論を見て、Alexander=1-loop partではなく、もう一段上の2-loop polynomialを使うことで議論の精密化ができると気付いた。 2-loop polynomialはRIMS時代に勉強したもののいい応用がないなぁ、と思っていたが、こういう応用ができて嬉しい。 一番大変な2-loop polynomialの計算はすでに大槻先生がされていたのでただ公式を使うだけの作業だが、 先行研究の壁を突破できて満足。着想・研究・論文執筆・投稿・出版全てのプロセスが自分のこれまでの論文上最もスムーズだったのも印象深い。 万事この調子ならいいのに・・・
63. Applications of the Casson-Walker invariant to the knot complement and the cosmetic crossing conjectures,
Geom. Dedicata 216 (2022), no. 6, Paper No. 63, 15 pp. [Journal Page] (arXiv:2103.15277)
市原さんの講演「ホモロジーの議論を精密にみることでL(4,q)についてもknot complement conjetureが成り立つ」 を聞いた際にホモロジーではなくてもう一段上、Casson(-Walker) invariantでやればもう少しいろいろわかるかな?と思ってやってみた話。 (なんか似たようなこと過去にあった気がするが。)誰かが確実にやっているはずなのに(見つから)なかった 2-component linkの有理手術についてのCasson-Walker invariantの公式を作るのがちょっと面倒だった。 LMO経由で作ったので、もしあったとしてもおそらくは別証明になっており書いておく意義はあると思う。 以前にLMOのsurgery公式の計算は自分には向いていない、といったのにまたやる羽目になるとは。
64. A remark on the finiteness of purely cosmetic surgeries,
Algebr. Geom. Topol. 23 (2023) 2213-2219.[Journal Page] (arXiv:2104.07922)
Cosmetic surgery conjectureについては(Ni-Wuのものですらすでに強力だったのだが) Hanselmanのさらに強い結果が出て、大きく進展している。Hanselmanの制約はものすごく強いので、その制約を満たさないような結び目はほぼないはず。 …ということをその前に自分で証明したquantitative Birman-Menascoを使って定式化して、 braid indexを固定したとき、cosmetic surgery予想は高々有限個を除き正しいということを示した。
65. An obstruction of Gordian distance one and cosmetic crossings for genus one knots ,
New York J. Math. 28 (2022), 175--181. (arXiv:2108.04493)
Genus one comsetic crossing conjectureを調べた前の論文で、genus one pretzel knotの場合を全部証明できないのが気にかかっていた。 その時は結構真剣に考えたけど、現状では無理か…ときっぱりあきらめて論文にして投稿した。 だが、投稿したあと少しして当時学振PDで私のところにいた滝岡君の使っているHOMFLYの0番係数多項式でGordian distance oneの障害が出ること、 そこからcosmetic crossingにも応用できることに気づいた。幸運にも、新しく得られた障害でgenus one pretzel knotの場合に全部証明することができた。 分かっていれば前の論文に合わせたのだが…。
66. Successively almost positive links Preprint, (arXiv:2111.14361)
Not to be submitted
Generalized torsionの構成の論文で、almost positive knotの一般化したようなある種の結び目でもpositive knotと同様の手法が適用できる、ということを書いていた。 しばらくして、茂手木先生・寺垣内先生とのやり取りで、これはBOか?ということを聞かれた。 BOでないことは(Conway多項式がpositiveであることがわかるので)すぐにわかるのだがその時になってこの種の結び目はpositive knotとかなり近い性質を持つことに気づいた。 そこで、実際にどのくらいまでpositive knotで成り立つ話が拡張されるのか、というのを少し調べてまとめた。 証明はほぼ既知の証明を適切に拡張するだけ。
その後、Stoimenow氏とより一般にもっと強いことを証明したのでこれはこのまま投稿しないことにします。
67. Generalized torsion for hyperbolic 3-manifold groups with arbitrary large rank (j/w Kimihiko Motegi and Masakazu Teragaito)
Bull. Lond. Math. Soc. 55 (2023), no. 3, 1203--1209.[Journal Page] (arXiv:2112.00418)
これまでのgeneralized torsionの構成や例だと、1-relator groupなどの比較的表示が簡単な群ばかり用いていたので、 Generalized torsionをもつhyperbolic 3-manifold groupでrankが大きいものはちゃんと(組織的に)作れるのか?というのを 茂手木先生・寺垣内先生と議論した。こうすれば作れる「だろう」というものはすぐ思いつくのだが、 hyperbolicになっている、とかrankが大きい、ということをちゃんと示すのは思ったより面倒(ほぼ100%hyperbolicだろうし、具体例なら実際確認はできるのだが)。
68. On constraints for knots to admit chirally cosmetic surgeries and their calculations,
Pacific J. Math. 321 (2022), no. 1, 167--191. Journal Page (arXiv:2112.04156)
自分としては経緯がグダグダで迷走した論文。出発点は、Detcherryの『quantum SO(3)-不変量を使って(purely)cosmetic surgeryのさらなる障害を得る』という話を見て(Ni-WuやHanselmanの強力な障害が使えないという点を除けば量子不変量の議論自体は)chirally cosmeticでも同じことはできるので気分転換に書いたノートが発端。 前の共同研究の流れで市原さんや斎藤さんに送って、少し議論していると、応用としてZHS chirally cosmeticがないことが言える、まで分かった。 しかしそこでふと我に返ったのだが、それはすでにHeegaard Floerの結果から(明示的に書かれていないとはいえ)すぐにわかる話だ!!。 というわけで、このまま終わらせるにはもったいないので貧乏性の私はHeegaard Floerも使ってもう少しいろいろと障害を作って、 斎藤さんにいろいろ計算してもらったりして結果を増やして論文にしたもの。前の三人共著の論文と違って割とさっくりアクセプトが来た。 個人的には(やればできるだろうけどやりたくないし自分ではできない)Appendixの計算を丸投げできたのが一番嬉しい。 なお、初めての献呈論文である。茂手木先生の60歳記念に献呈した(のに、茂手木先生の60歳の集会では別の話をした)。
69. Weakly Successively almost positive links,
Preprint, submitted. (arXiv:2208.10728 )
Stoimenow氏の洞察とすさまじい計算能力でちょっとした考察だったはずの前の論文がすさまじく発展したもの。 一時期は100ページを超えたがいろいろとあってもう少し短くなった。 それでも自分のこれまで書いた論文の最長ページ数を大幅更新した。 結果もだいぶ良くなり、Positive knotのような古典的な場合でも多くの新しい強力な帰結が得られた。 これからこんな長い論文を書く機会はあるのだろうか。
70. A note on knot ferility II,
Acta Math. Hungar.169(2023), no.2, 553-561. (arXiv:2210.11067)
Knot fertilityの話はどこかでしゃべってなかったので、今更感もあるけれど拡大KOOKで(学生のネタとしても使えそうだから紹介しよう、と) 話しておくか、と思ってどんな議論をやったか思い出そうと(自分の論文を見ずに) スライドを書いていたらなぜかずっと強い結果を証明していた。 当時ちゃんと考えたつもりだったが、当時はその先のQuantitative Birman-Menascoの方に注意が行ってしまって、 その前段階の議論での大きな見落としに気づいていなかったのだ。 ちなみに、初めてのpart II論文である。いいタイトルが思いつかなかっただけともいう。
71. Special alternating knots with sufficiently many twist regions have no chirally cosmetic surgeries,
Submitted, (arXiv:2301.09855)
前作On constraints...でちらっと書いたが、そこで得たchirally cosmetic surgeryを持つための制約はdetが高々4次の有限型不変量で抑えられる、 といった条件なので、growthを考えれば(alternating knotのときは) crossing numberが増えればほとんどの場合で制約条件に引っかかることが想定される。 そのこと自体は前作の論文でも書いたものの、手を動かすこともなく放置していたが、市原さんのメールに触発されて真面目に議論した。 special alternating でtwist number が十分大きければ実際に制約条件に引っかかってchirally cosmetic がないことがわかった。 Stoimenowがやっていたdeterminantの評価をcrossing number込みで少し改良・精密化するとかが理論面での新しい点か。
72. On a group whose generalized torsion elements are torsion elements,
Comm. Alg. 52 (2024) 1271--1276. [Journal Page] (arXiv:2303.05726)
arxivにgeneralized torsionの論文が載っていたので見てみたらアブストラクトに書かれていた定理はもっと一般に、簡単に証明できることにすぐに気づいた。generalized torsionを考えるときはtorsion-freeを当然仮定していたけれども、 torsionありの場合を考えるのも大事であり、面白いのだと気づかせてくれた。
73. Dehn filling trivialization on a knot group: separation and realization(j/w Kimihiko Motegi and Masakazu Teragaito),
Preprint, (arXiv:2303.15738)
茂手木先生・寺垣内先生との共著の続き。Dehn fillingで消える元・消えない元について組織的に議論を行い、 realization theorem(与えられたslopeたちのDehn fillingで消え、他のslopeのDehn fillingでは消えない元が存在すること) を証明することができた。以前のnon-trivial...(その論文でも当初の目標が達成できた好きな結果なのだが)での結果をさらに改善している。 当初はここまでは無理だろうなと思っていたが、議論を続けていくといつのまにか証明ができていた。
74. Generalized torsion orders and Alexander polynomials, Canad. Math. Bull. Journal page (arXiv:2310.02577)
72.の話をやり、そして(最近(と言いつつだいぶ)離れてしまった)orderable groupの会議に呼んでもらえたので、ネタを作るために generalized torsionについてもう少し考えてみたもの。おおよそ頭の中にあったことをまとめただけのものなのに、 定式化や細部を詰めるのに時間がかかりもたもたしてしまった。これまではアレキサンダー多項式はそのゼロ点にしか着目しなかったのでQ上で議論していたが、 今回はさすがにZ上で議論しなくてはいけない。そのため基本的な代数学を忘れていた自分は手間取ってしまったのだ(PIDじゃない環は難しすぎる!)。 Generalized torsion orderの評価でMahler measureが出てきたのはちょっと驚き。最初は『Generalized torsion orders of generalized torsion elements』というタイトルで、sclによる評価の改良・一般化としてG-不変ノルムの評価の話も書いていたが、refereeのコメント(「それは(書いておく意味があることは認めるけれど)既知の話のマイナーチェンジだ」というごもっともな指摘)に従いその部分はAppendixとしたため、タイトルが少し変更となった。
75. A non-torus positive 2-bridge knot does not admit chirally cosmetic surgeries,
J.Math. Soc. Japan. accepted. Journal page (arXiv:2311.02829)
M. Kegel氏から『positive 2-bridge knotにchirally cosmeticがないことはどのくらいまで言えるか?』 といったメールを受けて、「ほぼない」ということを答えたりしたのがきっかけ。雑な議論でも適当なパラメータが一定数以上なら持たないことがすぐわかり、もう少し精密にもできるけど面倒だからやりたくないと放置していたのだが、こうして答えてしまったからにはある程度ちゃんと考えてみないといけないと手を動かした。最初の計画としては、自分の方で理論面の考察であるとしたら「これこれの場合」と有限のパターンに絞って、残りをKegelさんに計算機で処理してもらおうと思っていたのだが、やっていくと(面倒だったけれど)手計算で全部処理できてしまって、結局単著となった。カギとなるのはpositive 2-bridge knotのsignatureは『ほぼ』genus以上(=十分に大きい)、という観察。実際にgenusより大きいとは限らないのが微妙にめんどくさい。盛大に計算間違えと公式間違えをしていてレフェリーの方に大変にお世話になってしまった。計算の時には評価のために簡略化した式を用いていたのだが、気づけば不等式のはずのそれを等式にしてしまっていた…。自分がちゃんと値を気にしないといけない計算をするのはやはり避けたほうが良いのだろう。
76. A note on orientation-reversing distance one surgeries on non-null-homologous knots,
Proc. Amer. Math. Soc. 152 (2024), 4515--4519. Journal page arXiv
私の修士の学生がセミナーで市原-鄭のcosmetic bandingの論文を読んで発表しているのを聞いて、そういえばT(2,9)のchirally cosmetic bandingの(非)存在は未解決だったな、と思い出した。落ち着いて考えれば9=3^2なので以前のcosmetic crossingの時のCasson-Walker不変量の議論で非存在がわかりそうだと思って計算したら示せたので、雑談代わりに市原さんに証明を書いて送った。 調べてみると、T(2,9)のchirally cosmetic bandingの非存在はHeegaard Floerですでに解決されていたのだが、 こちらはHeegaard Floerの議論がかなり大変みたい(で私は追い切れていない)ので、この証明も意味はあると思い多少一般的な議論にして論文にした。
【追記】・・・と思っていたが。後日、出版された後に大ポカを指摘されてしまった。Casson-Walker不変量とCasson 不変量の正規化の1/2の違いを一か所忘れて混同していたため、計算が間違っていたのだ・・・。Errataを投稿中です。この問題は思ったよりもさらに難しい模様。
77. Satellite fully positive braid links are braided satellites of fully positive braid links,
J. Topol Anal. accepted. jorunal page arXiv
私はLorenz knotの研究はしていないが、Lorenz knotの研究で私の結果を使っているという縁があり2023年12月にLorenz knotを研究している大学院生のde Paiva氏が私のところを訪れた。 彼にいろいろ話を聞くと、彼はpositive braid knotがbraided satelliteなら、companionはpositive braid knotだという議論をしていたが、 それは多分正しいが非自明な問題だと注意した。年末、少し考えたら自分の知っている知識や(自分の以前の)結果を整理していくと確かに正しいことがわかった。ちょうどその前後、Krishna氏がcableがpositive braid knotになるという性質でunknotを特徴づけられる、という話を書いていて、 それはもっと簡単に直接示せる(彼女はtaut foliationの存在についての結果の系として示している)、といったことを送っていたので、その関係のこともAppendixとして書いておいた。 arXivに論文が出た翌日にLewark氏がAppendixに書いた内容と重なる論文が出ていて驚いた。Version 1では必要なtwistの数を誤ってしまっていた…。
78. Group theoretic perspective on Dehn fillings: Property P conjecture and beyond, (j/w Kimihiko Motegi, Maakazu Teragaito)to appear in Proceedings of the MSJ–KMS Joint Meeting
2023年の秋の数学会の一日前に韓国数学会との KMS-MSL Joint meetingでのProceeding。これまでProceedingに論文を書くときは自分が参加していない会議がほとんどだったが、これは珍しく私も参加した(といっても、講演されたのは茂手木先生で私は聞いていただけ)。前半部はProperty Pの観点からの今回の仕事の背景などを(講演に従い)丁寧に議論し、後半部ではhyperbolicでない場合のrealization propertyなど、前の論文で書き残していたところを書いている(ので、別論文の抜粋とか焼き直しではなくてちゃんと独立している論文)。
79. Dehn filling and the knot group I: Realization Property (j/w Kimihiko Motegi, Maakazu Teragaito) International Mathematics Research Notices, Volume 2025, Issue 13, July 2025, rnaf203 [[journal page] ] arXiv
73.の論文がさらに結果や考察が膨らんでいくつかのパートに分かれることになった。このIではhyperbolic knotの場合に絞り、さらに結果を一部精密にしたりしている。よい話だと思うのになかなかアクセプトにたどり着けず…。往々にして、思い入れがある結果ほど出版までに時間がかかるものだ。
80. Dehn filling and the knot group III: cyclic persistent subgroups (j/w Kimihiko Motegi, Maakazu Teragaito) Bol. Soc. Mat. Mex. 30, 99 (2024) [Journal page]
諸般の事情でIIよりもIIIの方が先に完成し、さらに先に出版された。デーン手術で生き残る「元」ではなく、「(無限)巡回(部分)群」へと精密化したもの。扱っているのは無限巡回群なので、torsion元に落ちてしまうようなケースを除外するだけだが、思っていたよりも大変だった。
81. Genus non-increasing totally positive unknotting number, Tohoku Math J. accepted. arXiv
Unknotting numberの評価は数あれど、ほとんどの評価は最善でも2g(K)までしかできない。特に、種数1の結び目でunknotting numberが大きいものはたくさんある(とみんな思っている)はずだが、u(K)=3がわかる例すら乏しく、u(K)=4となる例になると知られてすらいない。自分の修士の学生が私のcosmetic crossingの論文を読んだ、と聞いたときに、その時のGordian distance oneの障害が『種数が狭義単調減少になるような結び目解消数』について適用できることに気づいた。特に、『種数が狭義単調減少になるような正の結び目解消数』がいくらでも大きくなる種数1の結び目が存在することを示した。制約付きのバージョンとはいえ結び目解消数が種数の縛りを超えていくらでも大きくなる、というのは意味のある観察だと思う。
82. Knots whose braided satellite have the same HOMFLY polynomial up to given z-degrees,submitted. arXiv
(Braid型の)サテライトのHOMFLY多項式の係数多項式が一致するような無限個の結び目の構成を与えた。最初からこういうことをしようとしたわけではない。Chirally cosmeticの研究で出てきた2次と3次の有限型不変量は独立だが、3-braidの時は関係があるので、それを一般化できないかとふと思ったのが出発点。もとの証明は『Hecke環からの3-braid表現がBurau表現のみ』という強いことを用いていたが、考えてみるとMorton-Franks-Williams不等式の帰結として3-braidの場合HOMFLY(の係数多項式)は高々二次の(ローラン)多項式であること、有限型不変量はほぼ多項式の微分係数であることからbraid indexの制約下で有限型不変量に関係が現れるのは当たり前だ。この簡単な観察を少し一般にすると、HOMFLY多項式の各係数多項式は、おおよそbraid index個くらいの有限型不変量たちで決まることがわかり、係数多項式が(サテライトを取った後でも)一致するような結び目は簡単にできてしまうことに気づいた。
83. Ma-Qiu index, presentation distance, and local moves in knot theory, Arch. Math (Basel). 125, 481–489 (2025) [Journal Page] . arXiv:2501.15821
↑を金沢大で話して門上晃久氏(以下、門上さん)に会ったときに、門上さんが研究されていたMa-Qiu indexの話を思い出した。81.での、2g(K)よりもunknotting numberが大きい結び目を作るという問題について、Ma-Qiu indexが使えるかもと思って、元論文を読んでみたら、論文の議論はvirtual/welded knotにもそのまま拡張できるとわかった。門上さんにそのことを送ってみると、周辺について教えていただき励ましていただいて、やる気が出たのでまじめに考えると、Ma-Qiu indexが群の表示の関係式の入れ替え操作の変化を評価している、ということで結び目のたくさんあ(りすぎ)る局所変形に関してのGordian距離の評価をまとめて議論できる、ということが分かった。これはMa-Qiu indexはunknotting numberの評価としてはあまりいいものではないことを意味している(ので当初の問題には使えなさそうということだ)が、一方で、たくさんあるNakanishi indexによる(局所変形に関しての)unknotting numberの評価を全部まとめて一つの簡単な議論で、virtualの場合も含めて統一的に示せるという利点がある。まだ計算されていなかったいくつかの結び目のNakanishi indexを決定できたりと、新しい応用もちゃんとあるので(自分の仕事なので例によって)簡単だけれど意味のある考察だと思う。
84. A slice Cromwell inequality of homogeneous links, arXiv:2504.13491 submitted.
何気なく、学生の指導のネタ(や方向性)を探しに大槻先生編集のquantum invariant関係の問題集を見ていたら、その中の一つの問題:『Alternating linkのHOMFLY多項式のvの最小次数≦符号数』が成り立つか?という問題が解けそうだと気付いた。Cromwellのhomogeneous linkの論文の議論を精密化すればできるだろう、と思って論文を読み直したら、Cromwellの証明では実際もっと強いことが証明されていた。実際に示されている主張を整理し、現在の知識(slice-torus invariant)で再検討すると、Cromwellの結果は3-genusでなくてslice genusで成立することがわかる。slice versionへの拡張がこうも簡単にできるというのは驚きだ。調べてみたがこれまで気づかれていないようなのも驚き(かく言う自分もその瞬間までslice genus verが成り立つとは思っていなかったのだが)。いつもの私の仕事の通り、簡単な観察だが、論文として書く意味はあると思ったので書いた。温故知新、論文の証明って(自分も含めて)結構みんな読んでいない…?