京都大学大学院 宇宙物理学教室
恒星活動現象
可視光・近赤外線観測グループ
京都大学大学院 宇宙物理学教室
恒星活動現象
可視光・近赤外線観測グループ
私たちは様々な恒星の様々な活動現象を可視光・近赤外線を主体とした多波長観測で研究しています。
Image credit: NAOJ, 京都大学
2025/03/21 修士の学位を取って民間企業に就職する村岡克紀さんの送別会と、4月からM1としてグループに参加する梅澤和真さん、仲宗根宏心さん、保家大将さんの歓迎会を合わせて行ないました。
2024/12/22 中国からの客員研究員・趙展浩さん(D1)がグループに参加しました。2026年3月まで滞在予定です。
2024/10/01 インドネシアからの留学生・Muhamad Zamzam Nurzamanさん(D1)がグループに参加しました。
2024/06/01 李尚姫さんが研究員として着任しました。
2024/05/13 MBSテレビ「よんチャン」で太陽フレアについて解説しました。
2024/03/12 研究グループOGの木邑真理子さん(金沢大学・助教)が日本天文学会研究奨励賞を、同じくOBの行方宏介さん(国立天文台・学振特別研究員PD)が筆頭著者として日本天文学会欧文研究報告論文賞を受賞しました。
2023/04/04 このページの作成開始
激変星の想像図(credit: NAOJ)
宇宙の様々な活動現象を引き起こすエンジンとして降着円盤が挙げられます。そのスケールは原始惑星系円盤や激変星,X線連星から銀河中心の超巨大ブラックホールまで多岐に渡ります。
私たちの研究グループでは主に激変星,中でも矮新星と呼ばれる,白色矮星周囲の降着円盤が見せる活動現象に着目した研究を進めています。これらの天体では,円盤不安定と呼ばれるメカニズムによって,時に明るさが1000倍以上にもなる爆発的な増光現象(アウトバースト)を示します。後述のせいめい望遠鏡や世界的な観測ネットワークを駆使した観測を実施し,主に観測的な観点から,降着円盤物理を研究しています。
また,ブラックホールを中心に持つX線連星の降着円盤の活動現象や矮新星で起きる新星爆発など,降着円盤にまつわる幅広い天体現象の解明を目指しています。
「太陽・恒星フレアは、生命誕生環境にどのような形で影響するだろうか?」「それらは人類文明に今後どれくらい影響するだろうか?」 私たちは、これらの人類にとって究極の「問い」に対し、近年流行の「時間軸天文学」を活用した恒星の可視光・紫外線・X線観測で取り組んでいます。
「太陽・恒星フレア」とは、表面で発生する突発的な爆発現象です。これらは、プラズマ噴出やX線・紫外線によって地球惑星環境に大きな影響を与えます。2000年代以降、太陽以外の恒星周りをまわる「系外惑星」が数千個以上も発見され、それらの星の一部では「スーパーフレア」と呼ばれる太陽観測史を超える巨大フレアが起きていることがわかってきました。これらは地球外生命の誕生・維持環境に多様な形で影響を与えている可能性があり、注目を集めています(図参照)。
私たちはこれまで、Kepler衛星のビッグデータを解析し、太陽によく似た「太陽型星」でのスーパーフレアを初めて発見する成果を挙げてきました。これは、私たちの太陽でもスーパーフレアが発生する可能性を提示し、『ネイチャー』誌に論文が掲載されました(2012年)。また、せいめい望遠鏡を用い、惑星に多大な影響を及ぼす「巨大プロミネンス噴出」を初めて発見し(図参照)、『ネイチャー・アストロノミー』誌に掲載されました(2022年)。これらは学生主導で行われた研究です。近年最盛を迎える系外惑星探査に対し、私たちは、恒星の活動性という独自の立場で挑み、世界的に分野をリードしています。
スーパーフレアに伴う巨大な質量噴出を起こす若い太陽型星の想像図 (from Namekata et al. 2022, Nature Astronomy, credit: NAOJ)
京都大学岡山天文台せいめい望遠鏡(credit: 京都大学)
京都大学が保有する「せいめい望遠鏡」は、口径3.8mの鏡を持つ国内最大の光学望遠鏡です。1年のうち半分は京都大学が自由に使うことが出来るので、突発的な活動現象の即応観測(アラートを受け取ってすぐに行う観測)や、豊富な観測時間を活かした長期モニター観測を行っています。
せいめい望遠鏡は分割鏡・軽量架台という特徴を持つため世界トップレベルの駆動速度を誇り、1分以内に天体に向けることが可能です。また、分光・撮像の様々な観測装置が搭載されており、それらの装置を瞬時に切り替えることが出来ます。せいめい望遠鏡を使うことで、私たちは発生予測が難しい活動現象を「すぐに」「最適な装置で」「国内最大の鏡で光を集めて」観測することに成功しています。
京都大学岡山天文台せいめい望遠鏡:https://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/general/facilities/okayama/
大学院の屋上には口径40cmの望遠鏡があります。研究室からすぐにアクセスでき、いつでも自由に動かすことが出来ます。自分たちの望遠鏡なので、その時思い立った天体を好きなだけ観測できます。また、操作はリモート化されているため、学外からも観測可能です。この望遠鏡の自由度とアクセス性の高さを活かし、突発現象の発生直後~終了までの機動的かつ長期的な観測を行っています。
せいめい望遠鏡の隣には岡山50cmMITSuME望遠鏡があります。名前の通り3つのカメラを備え、緑・赤・近赤外線の3色同時に画像を撮ることが出来ます。事前登録した天体や突発現象のアラート情報から、プログラムが重要な観測ターゲットを自動で選ぶロボット望遠鏡なので、夜ふかしをしなくてもデータを撮ることが出来ます。岡山にあるので晴天率が高く、また、隣にあるせいめい望遠鏡との同時観測にも活用されています。
4号館屋上40cmリモート望遠鏡
(credit: 京都大学)
過去10年間でVSNETに協力頂いた観測地
(credit: VSNET)
私たちの研究対象は、数秒~数時間の時間スケールで明るさが変化し、それが数日~数百日と続きます。そのような活動現象の全貌を明らかにするには、自分たちの望遠鏡だけでは足りません。
私たちが1993年に設立したVSNET(Variable Star Network)は、世界中のアマチュア天文家とプロの天文台を有機的に結び、情報を素早く共有する観測ネットワークです。VSNETを通じて活動現象の情報は世界各地へ迅速に伝達され、世界中の望遠鏡をつなぐことにより、欠測のない、より詳細な連続観測が可能になりました。VSNETは突発現象追跡の世界的拠点として最前線で活躍し、激変星、新星、X線連星などの観測・発見で大きな成果を収めています。
更に、私たちは国立天文台と国内の9大学による観測ネットワーク、OISTER(光赤外線天文学大学間連携)にも参加しています。各大学が保有する可視・赤外線望遠鏡を連動させ、様々な波長域で測光・分光・偏光観測が可能です。世界的にも珍しい大学間連携により、ユニークな観測を実現しています。
VSNET:http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/
OISTER:https://oister.kwasan.kyoto-u.ac.jp/