日本大学文理学部情報科学科
北原研究室 飯野太尊
概要
マーチングバンドにおけるドリルの設計図であるドリルシート(コンテ)は, 静的な点情報の集合であり, 初心者にとって実際の動きや音楽との同期タイミングを紙面から直感的に把握することは困難である. また既存のドリル作成支援ソフトウェアは高価であり, 全演奏者の座標を手動で入力する必要があるなど, ユーザにかかる時間的・費用的コストが課題となっている. そこで本研究では, 静的なドリル情報と楽曲データを入力とし, 音楽と連動したドリルアニメーションを生成・可視化するシステムを提案する.
本システムは, マーチングバンド特有の動作規則(直線移動における歩幅の均等化, 隊形保持のためのインターバル管理, 左右対称性など)に着目し, 入力データの記述コストを最小化するデータ構造を用いる. 具体的には, 隊形の基準となる少数のキープレイヤーの座標のみをJSON形式で定義し, 中間の演奏者座標を線形補間やベジェ曲線, 対称反転アルゴリズムを用いて自動算出する手法を提案する. これにより, ユーザは数百人規模のドリルであっても, 最小限の記述で効率的にアニメーションを生成することができる. また頻出するブロック隊形やカンパニーフロント等のフォーメーションパターンをパラメータ化し, 数値を変更するだけで多様なフォーメーションの試行錯誤を可能にする機能を実現する.
評価実験および実装の結果, 提案手法を用いることで, 全座標を手動入力する従来手法と比較して大幅に少ない情報量で複雑なドリルを再現できることを確認した. 本システムにより, 初心者が動きのイメージを容易に掴める環境を提供するとともに, ドリル設計における試行錯誤の効率化に貢献する. 今後は, より直感的な再生制御機能の実装や, 3次元的な身体動作の表現が課題である.