主要な研究テーマ
パーキンソン病は、大脳基底核の黒質神経細胞が変性し、ドパミン産生不全となることで引き起こされる運動機能障害である。振戦や筋固縮、動作緩慢、姿勢保持障害が中核症状として現れ、病理学的には、黒質神経細胞の脱落部位にレビー小体が見られるのが特徴である。
現在、L-Dopaや脳深部刺激療法などの対症療法が行われているが、根治可能な原因療法は未だ確立されていない。
通常の光に特殊な光学素子を介すことで軌道角運動量を持つ螺旋波「光渦」を生成でき、強度分布がドーナツ形状となることで対象にトルクを与える。
生命科学への応用は少ないものの、細胞内物質に影響を与える可能性があり、本研究では、光渦を用いた新しいパーキンソン病療法の開発に取り組んでいる。
脊髄内部やその周囲に発生し、腫瘍により神経障害が起こると、患者の日常生活に重大な影響を及ぼす。現在、標準治療として摘出手術が行われており、加えて化学療法や放射線療法が実施されている。しかし、摘出時の神経損傷リスクや、生存期間中央値が約13か月と非常に短いという課題がある。肺がんや脳腫瘍、食道がんなどに適応されている効果的な治療法であるPDTの悪性脊髄腫瘍への適応に向けて治験が進められている。この治療プロセスは、腫瘍組織の外科的切除後、光感受性物質 (レザフィリン) が集積した残存腫瘍組織に表面からレーザー照射することで、腫瘍組織を選択的に破壊することである。しかし、現状のPDTは腫瘍本体の半分以上の摘出を前提としており、摘出が困難な部位には適応できない。PDTの課題でもある腫瘍摘出を行わず、光照射プローブを直接穿刺する、脊髄損傷リスクの低い治療である組織内光線力学療法 (iPDT) を提案している。
ワクチンは新興感染症の脅威に対抗するための効果的な医療手段として広く普及している。ワクチンの投与だけでは十分な免疫誘導効果を得られない場合もあり、アジュバント(免疫賦活剤)が併用されるが、副作用(局所反応、全身毒性)の存在、自己免疫疾患の誘導など課題が存在する。
我々は、ワクチン接種前に近赤外光レーザーを照射することで、樹状細胞の活性化を促しワクチン効果を増強するレーザーアジュバンとの実現を目指している。
レーザー照射により樹状細胞(DC)の活性化や抗体産生とT細胞応答が誘導される。その後のワクチン接種により以下の効果が期待できる。
外傷などによる出血性ショックに対して一時的に止血するために大動脈遮断バルーンによる血管内遮断 (Resuscitative Endovascular Balloon Occlusion of the Aorta: REBOA) が行われています。REBOAでは、大動脈内でバルーンを拡張させることで一時的な止血を行うため、虚血再灌流障害や血管損傷などの合併症のリスクが存在します。合併症のリスクを抑えるためには血流遮断状態を把握する必要がありますが現状では容易に行える手段が存在しません。そこで、バルーンを介した光強度計測による、REBOA中における簡便な血流遮断率推定を目指しています。