慶應 × ライフサイエンス
第1回慶應ライフサイエンスシンポジウム
2017年8月28日(月)日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
2017年8月28日(月)日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
水は全ての生物にとって生命活動を行う上で必須であるが、個体サイズが一定以下の微小生物に おいては、周囲の環境が乾燥する速度に比して移動速度が小さいため、その場に留まって耐える形での適応が観察される。そして、急速な乾燥を伴う過酷な環境においては、完全な脱水に耐えるために一時的な生命活動の停止までもが進化的に獲得されている。陸生のクマムシの多くはこの「乾眠」と呼ばれる機構を持ち、一部の種では数十分という極めて迅速な乾眠移行及び復帰が可能 なことが特徴であるが、これは水の存在を前提とする現代の細胞生理学の根底を問い直す。そこで、我々は、同じヤマクマムシ科(Hypsibiidae)に属しながらも乾眠能力が強い種(ヨコヅナク マムシ)と弱い種(ドゥジャルダンヤマクマムシ)を用いてゲノム・トランスクリプトーム・プロ テオーム・メタボロームなどのマルチオミクス解析を行い、さらに超微量解析系によって野外サンプルの解析を行うことで、乾眠の分子機構やその進化を明らかにすることを試みている。本講演で は、これまでに明らかとなってきたクマムシ乾眠機構について紹介する。