慶應 × ライフサイエンス
第1回慶應ライフサイエンスシンポジウム
2017年8月28日(月)日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
2017年8月28日(月)日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
近年,人間の心に関する研究は多様化しており,神経科学的なアプローチから心の機能について探る「認知神経科学」の発展に伴い,さまざまな精神活動の背後にあるメカニズムが明らかにされつつある.こうした研究が発展するにつれて見えてきた点は,感情・記憶・思考・意思決定などの精神機能については,その背後にある脳活動をターゲットにしていただけでは不十分であり,自律 神経系の身体活動の影響を十分に考慮することが必要であるという点である.特に,自身の身体内 部状態の感覚である内受容感覚は,未来について考える心の機能や,不安や抑うつなどの精神症状にも深い関係があることが明らかにされており,その背後にある「脳―心―身体」のメカニズムに関する統合的理解が重要な意味を持っている.本講演では,感情と記憶という精神活動に共通する 要素である「未来性思考」に焦点を当て,それらの背後にある「脳―心―身体」のダイナミクスを 探る研究について紹介する.具体的には,1) MRI や脳波 (EEG) を用いた認知神経科学研究,2) 脳損傷に伴う精神活動の変化に焦点を当てる神経心理学研究,3) 精神症状に伴う自律神経活動の変化に着目する心身医学と自律神経学の統合的研究などについて取り上げる.