慶應 × ライフサイエンス
第1回慶應ライフサイエンスシンポジウム
2017年8月28日(月)日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
2017年8月28日(月)日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
精神疾患は罹患率が高く罹病期間も長いため、人々の生活の質 (QOL) を低下せしめるものとして重要な疾患群である。世界保健機関が行う世界疾病負担調査によると、うつ病、不安症、統合失 調症、躁うつ病、薬物依存などを含む精神疾患は、障害生存年数において他の医学領域を押さえ第 一位、22.9% を占める。
精神科領域が抱える問題に精神症状の定量化が困難であるという点がある。血液や画像等のバイオマーカーを多く利用する他の診療領域に比べて、病勢を反映する指標に乏しいことは、治療開始 基準が曖昧になる、治療反応がわかりにくいなど、多くの問題につながっている。日本医療研究開発機構(AMED)の委託研究として慶應義塾大学医学部精神・神経科や理工学部が取り組んでいる のは機械学習を用いて精神症状を定量化しようという試みである。例えば、精神運動抑制はうつ病患者にしばしば認められる、思考が遅くなる、動作が緩慢となるような症状を指す。本プロジェクトではカメラやマイクで患者の様子を捉え、重症度評価として一般に用いられる評価尺度で標識し た教師あり学習を行うことで、精神運動抑制を数値化し、診療支援を行うデバイスの開発を目指している。発表では開発コンセプト、障壁、さらにこのような研究開発がもたらし得る ELSI(倫理 的法的社会的課題)などについて論じる。