慶應 × ライフサイエンス
第1回慶應ライフサイエンスシンポジウム
2017年8月28日(月)日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
2017年8月28日(月)日吉キャンパス 協生館 藤原洋記念ホール
オルガノイド培養法は幹細胞を含む組織構造体を in vitro で 3 次元培養を行う画期的な技術であ る。腫瘍組織から樹立されたオルガノイドは、患者体内の腫瘍と同様な性質を示すため、従来の血 清を含む培地で 2 次元培養を行う細胞株に比べ、より生体に近い環境での創薬研究を可能にした。
我々はこれまでに、マウスの腸管腫瘍や難治性がんの代表である胆道・膵臓がん組織から、オル ガノイド培養技術によりがん幹細胞を永続的に培養・維持することに成功した。樹立したオルガノ イドを 1 年以上にわたり長期培養し、その過程における遺伝子発現変化やエピゲノム変化などについて解析を行った。また、腫瘍オルガノイドに DNA メチル化阻害薬を投与した後の増殖能や遺伝 子発現変化などについて解析を行った。
樹立したがんオルガノイドは、がんの発生・進展の分子メカニズムの理解に役立つだけでなく、 個々の患者のがんを体外で再現することにより、薬剤感受性スクリーニングなどを行う上でも非 常に強力な研究ツールとなる。将来的には、個々の難治性がん患者より樹立したオルガノイドを用 いて、最適な治療薬を選択することで、より効果的で副作用の少ない個別化治療の開発を目指して いく。