たとえば。の本棚

本好きの店主が毎月ゆるっと、
本棚を紹介します。

今月は、「小川洋子さん
同郷、岡山県の作家さんです。
失うこと、生まれることを
紡ぐ言葉が本当に美しい。
作品によって変化する温度、
そこも引き込まれる魅力の一つです。
今回は三冊ご紹介します。
是非、手に取ってみてください。

1.最果てアーケード
2.密やかな結晶
3.妊娠カレンダー

最果てアーケード

古びたレースの切れはし。
使用済みの、異国の絵はがき。
ほとんどの人たちにとって、
必要のないもの。
けれど誰かにとっては、
何かの理由で大切なものたち。
そんなひっそりとした宝物を揃える
アーケードの日々。
穏やかに、ひたひたと
喪失をたたえながら進む物語。
人の心の最果てには、
光があると思える一冊です。


密やかな結晶
記憶狩りによって、
日々何かが消滅していく島が舞台。
それは花だったり、
写真だったり、
カレンダーだったり。
理不尽に奪われ続ける生活は、
たんに「物語」の中だけの
ものではありません。
「当たり前」を「普通」に
営んでいくことの
難しさを感じる今
だからこそ、1ページ1ページ、
大切に読み進めたい一冊です

タイトルもかなりお気に入りです。


妊娠カレンダー

妊娠カレンダー
ジミトリイ
夕暮れの給食室と雨のプール
からなる三編の短編集。
妊娠し、変化していく姉。
淡々とその様子を描写する妹。
目に見えない存在が育っていく恐れ、
新しい生命へのよそよそしさ。
人が生まれるメカニズムの
不思議さや不気味さを
まざまざと見せつけられる一冊です。