SIG-Computational Scale Science
(人工知能学会 計算創律科学研究会)
(人工知能学会 計算創律科学研究会)
NEWS
人工知能学会 合同研究会2025にて第一回計算創律科学研究会を開催します.
これまでのテクノロジーは新たな技術が生み出されることで前進してきた.しかし,結果論としての基盤モデルにおけるスケーリング則の発見により,システムの 規模をスケールさせることで性能を大きく向上できる可能性があることを我々は学んだ.無論,スケールすることで質が大きく変化する現象は我々生命体や自然現象界におけるではよく見られることであり,特に生命システムにおいては,細胞がスケールすることで複雑かつ細胞レベルにはない機能を有する臓器といった有機組織が創発されるように,スケール化による新たな質の創発は生命システムになくてはならない現象(機能)である.
昨今のSNSの発展がもたらした様々な社会現象の発生においても個人がスケールすることでの世論の形成や,皆が繋がる社会とは逆の分断という現象を創発させているのもスケール化が根底にある.このことは,今後登場するであろうAGI(汎用AI)がスケール化することで何が創発されるのかといった話題にも深く関わる.また,実際に起きていることは多様なレベルでのスケール化が同時に起こるマルチスケール化である.そして,我々はスケール化するダイナミクスを理解,制御,構築する工学的な方法論をまだ手にしていない.そこで,人工知能や計算社会科学,進化計算,経済など,広範な分野にCompactional Scale Scienceという横串を通す学際的な学問分野を開拓し,その知見を多様な分野に波及することを目的とする研究会を設立したい.
なお,日本語名称であるが,スケールという単語は日本語においては計測の意味合いが強いことから,今回新たな単語として「創律」という表現を使うことにし計算創律科学研究会と呼称したい.
人工知能や計算社会科学,進化計算,経済など,マルチスケールな現象の理解や解明,そして制御や構築に関わる研究領域を対象とする.特に,分野を超えた研究も対象としており,上記で挙げた経済だけではなく,農業や交通,人流,さらには防災などの分野を対象にした研究も研究領域とする.さらに,ヒューマンコンピューターインタラクションやネットワーク分析などの研究分野における課題についても,本研究分野の対象となると考えられ,多くの研究発表が期待される.
最近では,言語モデルをスケールアップした大規模言語モデルの登場によって,自然言語処理という分野が大きく変わってきている.それまで,例えば,翻訳であれば翻訳専用のモデル,質問応答であれば質問応答専用のモデルと,それぞれに対応したモデルを構築する研究が主流であった.ところが,大規模言語モデルの登場によって,プロンプトチューニングするだけで簡単にそれらの問題を解けるようになってしまった.もちろん,未だに専用モデルの方が大規模言語モデルに比べて性能が高い場合があるが,しかしながら,専用モデルを構築する労力を考えると,手軽に使えて高い性能を発揮する大規模言語モデルを活用しようとする流れは止められない.つまり,ある問題を解くために,そのためのツールや要素として専用モデルを構築していたのが,そもそも問題を解決する方に目が向くようになった.すなわち,言語モデルが大規模言語モデルにスケーリングすることで,研究対象のレベルが一つ上がったことになり,こちらに目を向けた研究を受け入れる研究が必要である.本研究はその受け皿として大いに活用して頂きたいと考えている.そのため,VLMをはじめとする画像や,音声などのマルチモーダルなモデルも領域対象にしている.