ご挨拶

生体分子科学討論会は、これまで49回にわたる開催の伝統の中で、生体内で繰り広げられる生命現象や生理的な機能発現について、生体分子の立体構造、電子構造、相互作用、反応挙動などの観点から深く考察し、化学と物理の言葉で議論する貴重な場を提供してきました。特に、タンパク質・酵素、核酸、脂質、糖、補因子といった生体を構成する化合物について、それらの構造と動的挙動を原子・分子レベルで議論する分野が本討論会の主要な対象となっています。

今回で50回となる節目の生体分子科学討論会を開催するにあたって、生体分子に関する研究で顕著な業績をあげておられる名の研究者による特別講演、口頭発表・ポスター発表のほか、新たな研究視点を提供する意味を込めて、「生命金属科学シンポジウム」との連続開催として企画いたしました

生命金属科学シンポジウムは、生体内での金属・半金属元素(生命金属)の役割・機能について議論する分野横断的な研究交流の場として、2022年より始まりました。生命金属は、酵素活性や電子伝達の中心、シグナル伝達、生体分子の構造形成など、生命現象を実現・維持するために必須の機能を担っており、その微妙なバランスの乱れが疾病を引き起こすことも知られています。よって、討論会・シンポジウムの両方に参加してきた研究者も多く、お互いに親和性の高い集まりであると感じていますが、今回の連続開催、特に、ポスター発表懇親会を生命金属科学シンポジウムとの共同で開催することによって、より一層の研究交流を促進したいと考えております。

今回の連続開催が双方の研究コミュニティにとって有益な交流の場となり、それぞれの分野に基づく新たな研究分野を構築するきっかけになれば幸いです。

第50回生体分子科学討論会・第3回生命金属科学シンポジウム実行委員会

世話人代表 古川 良明(慶應義塾大学理工学部 教授)