今年は三十六首の歌ができました。
その中から部員に選ばれた五首をご覧ください。
1位
果たし状たった一つの甲子園見つめる瞳後悔はない
野球部一同
部員コメント
・甲子園ならではの、熱くキラキラとした雰囲気を感じ取れる。恋愛とはまた別の青春を感じられる短歌になっていて、臨場感も味わえる。
・甲子園で悔いのない結果を見られるという情景が想像でき、今回出たたくさんの短歌の中で一番気分よく読むことができる。
・「甲子園」と「後悔はない」が並んでいるところから、一生懸命練習した日々があったから、勝っても負けても「後悔はない」と言えるのだろうと感じられた。
2位
夏休みキラキラ光る先輩と並んで歩く夕焼けの海
京本
部員コメント
・「先輩と並んで歩く」というワードから甘酸っぱさや青春が感じられる素敵な短歌。
・全体を通して青春を感じられる。人から景色にフォーカスしていることで、情景がより鮮明に浮かんでくる。
・先輩と、静かに波音を聞きながら夕焼けの海を歩いているような情景が浮かんで、すてきだと思った。
3位
期待して自転車をこぐこの野郎練習しよう他力本願
すうぃ
部員コメント
・練習場所に期待しながら自転車をこいでいる、勢いがありながら綺麗にまとめられている良い歌。
・「この野郎」で少々けんか腰なのが面白みを感じられる。自分では自転車をこいだことがないのではという謎の意見もあり、さらに面白さが感じられた。
・自転車に乗る練習をしている情景が浮かんでくる。
特別賞
うたた寝に信号待ちの夢の中事故る瞬間よくわからんわ
C先生
部員コメント
・自分に焦点を当てて広がる独特な世界観が読む人を引き込む短歌。Very nice!
・うたた寝をしていたけれど、夢の中で事故ったのか、現実で事故ったのかわからない不思議な世界観の短歌でおもしろかった。
・「うたた寝」と「よくわからんわ」を並べることで事故の全貌がわかる面白い短歌。
特別賞
猫たちが被害妄想先輩と話しかければ世界が終わる
W先生
部員コメント
・擬人法を活用した、ストーリー性のある短歌。「世界が終わる」が短歌の世界観を壮大にしていて読み手にインパクトを与えている。人によってさまざまな解釈ができる味のある短歌。
・「先輩」か「猫」か、どちらに話しかければ世界が終わるのか解釈の違いが生まれる不思議な世界観の歌。どちらにしろ、世界が終わることは変わらないところが面白い。
・「猫たちが被害妄想」という言葉を見た時は驚いた。どんな妄想か気になる。「世界が終わる」は、猫たちを刺激した結果なのか、そもそも猫たちが権力を持ち始めたのかなど、想像が膨らむ。
今年は四十七首の作品ができました。
その中から選ばれた素晴らしい歌をご覧ください。
秋の午後並んで歩く先輩とたったひとつの流星群
匿名
秋の午後には夏の暑さも和らぎ、さわやかな風が吹く。並んで歩いている先輩は、三年生だろうか。観音寺総合高校の生徒にとって、秋は進路が決まり始める時期である。卒業までに残された日々は意外と短い。二度と戻らない青春の日々を、流れ星のように駆け抜けてほしいものである。
流れ星天体観測蝶が舞う流星群がひかり始める
AI
暗い夜空にすっと流れる小さな星を見つけて、天体観測を始める。すると、夜だというのに一匹の蝶が目の前を横切った。その美しい光景に見とれていると、夜空で星が一斉に流れはじめる。流星群が始まる僅かな時間を幻想的な雰囲気で詠んだ一首。
猫たちが世界の果てへ雨の中夕焼けの海ミネラルウォーター
キラ
雨の中、裏路地を連れ立って歩く猫たちは、どこに向かっているのだろうか。もしかすると、野良猫だけが知っている世界の果ての楽園があるのかもしれない。そこでは、オレンジの夕焼けが猫たちをあたためているのだろう。そんなことを思って水を飲んでいると、半分飲んだミネラルウォーターのペットボトルも夕日に照らされた小さな海のような気がする。
うたた寝にひなたのにおいワンルーム話しかければ見つめる瞳
U・A
日当たりのいいワンルーム、心地よさについうたた寝をしている。ふと夢から覚めて話しかけると、「なあに?」と優しい声が返って来る。こちらを見つめる瞳は優しい。恋人と過ごす穏やかな日曜日を連想させる一首。
雨の中期待して待つ図書館で後悔はない終電間近
トモサマン-3V
「片想いの相手を待っている歌です」とトモサマンは語っていた、ような気がする……。図書館で待っているということは、相手は読書好きな人なのだろう。こちらから「遊びに行こうよ」と誘う勇気はないから、偶然を装って待っているのだ。しかし、終電間近になっても待ち人は来ない。だが、相手を待っているドキドキは甘酸っぱく、後悔はしていない。会いたくて相手を思う時間が恋を育てるのかもしれない。