2024年11月23日(土)~24日(日)

日本福祉教育・ボランティア学習学会

第30回とうきょう大会



於:日本社会事業大学 清瀬キャンパス

究める 拡がる 福祉教育・ボランティア学習

~気づきの連鎖が織りなす排除なき共生社会へ~ 

 主催 日本福祉教育・ボランティア学習学会 第30回とうきょう大会実行委員会

後援 清瀬市 清瀬市社会福祉協議会 東京都社会福祉協議会 全国社会福祉協議会

    東京都教育委員会 東京都共同募金会

大会実行委員長 挨拶

日本社会事業大学

田村 真広

 第20回とうきょう大会のテーマは「福祉教育・ボランティア学習の新機軸:孤立をのりこえて希望のある社会へ」でした。この10年間で新機軸に基づく実践と研究は多彩に展開されました。地域における分野・領域を超えた交流と学びあい、当事者性を基盤とする福祉教育、制度の隙間を埋める協働的なサービス開発、いのちの学びを核心とするESD及びSDGs、学術研究の社会的意義を高めるサービス・ラーニング等は、希望への道を指し示してきました。

 多彩に展開される実践と研究は、地域・学校・家庭における危機の様相を映し出しています。世界秩序を崩壊させかねない侵攻と殺戮、新型コロナ・地震・豪雨といった自然災害に端を発する人為災害の常態化、新自由主義経済のもとでの過酷なグローバル競争は、人びとを翻弄し、立ちすくませ、社会不安と分断を深刻化させています。とりわけ子どもの自殺者数の増加、ひきこもりや社会的孤立の問題、将来への不安を拭えない若者のゆくえ、世代間連鎖による子どもの貧困等は、未来に暗雲を漂わせています。

 教育機会確保法の制定、民法、児童福祉法、社会福祉法、障害者差別解消法の改正、こども家庭庁の発足等は、実践と研究の新たなフィールドを開きました。しかしながら、複合及び交差差別の広がりは、危機打開への声を上げて助けを求める層と助けを求めることさえできない層との間に亀裂と格差をもたらしています。そうした亀裂の狭間にありながら自らの思いを声や行動にできない層の増大に対して、深い関心と問いを向けずにはいられません。諸施策からこぼれ落ちる人びとや、あえて呼びかけに応じない人びとに向けて、果たしてどのような手を差し出すことができるのでしょうか。福祉教育・ボランティア学習に対して、確かな答えを得ようと大きな期待が寄せられてはいますが、このような時にこそ自らを省みて実践と研究のありようを鋭く問う姿勢が求められます。

 共生社会とは、絶えず更新しつつ実現していく社会です。地域・学校・家庭での暮らしと学びを壊す力学には毅然と対峙するとともに、私たちの実践と研究の過程で生じる意識の差異が、ともすれば排除や分断へと転化する一つの契機となりうることに留意しなければなりません。いかなる過程においても、誰もが参画し、感じ取り、つぶやき、ゆらぎ、交わり、当事者性を変化させ、探究を励まし、実践を拡げることができるはずです。気づきとは、弱くとも絶やされることのない働き・ちからのことです。こうした気づきの連鎖から紡ぎ出される学びあいこそが、差異を多様性へと変換し、排除なき共生社会を織りなしていくのではないでしょうか。

 気づきの連鎖によって共生社会を織りなす福祉教育・ボランティア学習について、根源的かつ多角的に議論し交流する大会になることを願っています。解決困難な問題が集約され、課題提示と実践にもとづく学習の変革が先鋭化してあらわれる首都圏において、新たに挑戦する10年の内実を深めたいと考えます。