詩
詩
願掛け
他人のてるてる坊主に願を掛けます
雨から逃れて走っても
雨に向かっているような傘の先
身をかわして過ぎ去るものは
街に付きまとう
舗道に落下する声も意図
遠慮がちなラッパ吹きが夜を飛ばす
しゃべるように歌う人
いつかはまた大きく歌う
隣は冬
喉の奥にヴェールをかけ
押入れのなかの地層を掘る
いざ
エスカレーターに乗っている時は顔をみられずにすむので
間合いをとっては
折り合いを付けた折り目のやまを指でなぞる
街ではとちの実を隠すたびに
いざというときのいざに丸をつけた
わたしは今やかんに雨をためているところ
太ったすずめを眺めるサラリーマンが
暑いだけの味噌汁に合図
壁にはりついたエプロンも季節を追って
床になる
植物に急がされて夏
行き先のない顔
インターホンは眩しく
響くスクールゾーン
毎年咲く水辺のともだち
階段の踊り場に溢れた砂
夜になれば月のまわりに浮かぶ
交代する傘も
いつか君のいる街へ
椅子に手をかけるカーテン
外に呼ばれても今日は家の一部になって
仰ぐ木も
他人事
箱のなかに響く会話
靡くたびに色を変え
石を割った得意の反論も
夢の中では忘れて
寝顔は変わらず陽が横切る
跡にならない模様が過ぎるのを待って
まな板の上の出来事になってようやく
煮え切るような身も蓋もなさが
魚の目に似て