出展作品解説

能郷の能狂言|堀江 洋生

能郷で約400年前から現在まで行われてきた能狂言の紹介映像と二人の演者へのインタビュー、そして練習風景の映像を展示。この伝統神事の魅力とその継承の困難さを伝える。

1)市原信治さんのスライド作品集【根尾谷編】より「能郷の能狂言」

2)2022年の能狂言関係者インタビュー(テキスト・写真)

3)2017年の能狂言の練習風景映像(撮影:金山智子)

逃・避・行|坂本 あゆみ

ぬいぐるみたち3人が根尾の森の中で過ごした一日。大河原の原生林と越波集落近くの川をフィールドワークした様子が一冊の本になった。普段の住処を離れて「逃避行」を楽しむ彼らは根尾で何を見て、何を感じるのか。

倒れることは命の終わりではない|林 晨

木が倒れたり、切り倒されたりしても、それは命の終わりではない。倒れた木の上には、もっと多くの生命が生まれている。その様子をARで見せていく。

生命の循環|林 晨

自然界の生命は常に循環しており、その循環は永遠に(少なくとも人類が滅亡するまでは)続くのだ。ある場所の一本いっぽんの木は、長いサイクルを経た今、私が写真を撮った瞬間に切り取られた。その写真を分解し、組み立てることで、常に変化し循環し再生する生命の樹を表現した。

乳イチョウ|楊 慶新

「母乳が出るように」という祈願は、かつて日本各地で行われていた。木に対する信仰は地球上に普遍的に見られるが、中国や韓国には子孫繁栄の象徴とされることはあっても乳信仰はなく、日本独自のもののようだ。祈願の場所や対象は社寺に限らず、多くの乳イチョウ、乳地蔵、乳神さまなどが各地に点在していたようである。しかし、それら多くの乳信仰の伝承は、近年急速に失われつつあるという。根尾越波村の時代と共に徐々に忘れ去れている、乳イチョウの信仰に基づく映像劇。

アマゴの木|河合 将也

根尾地域の植林は広葉樹を伐採し、スギ等の建材となる針葉樹に植え替えることで行われてきた。しかし大きな葉や実を持つ広葉樹は生命の根源である。落ち葉は虫達をはぐくむ、そして虫達は小型の魚に捕食され、さらにアマゴ等の肉食の魚類に捕食される。これら連関する様子を作品に表現した。

根尾踊り|王 芯藍

根尾踊りは1400年以上前に継体天皇との別れを惜しみ村人が踊ったのが始まりとする説と、先祖の精霊をなぐさめる行事として始められた説と2つあるが、いずれにしても根尾の人たちにとって大切な文化である。踊りを伝承するために根尾踊り保存会が発足し、保存会メンバーは定期的に練習しながら、いろいろな機会に踊りを披露している。今回は、根尾踊りの練習や拝殿踊りの映像と、根尾踊りで使われる浴衣や下駄、そして唄本を展示する。

根尾はくぶつかん|松村 明莉

根尾越波地区の、とある空き家に、謎の白い部品が大量に落ちていた。何も知らない人々はこれを見てどんな用途であると想像するだろうか?化石を初めて見つけた時のように、様々な解釈が生まれ、そこから模型を制作した。復元模型の解釈が間違っていても、展示することで、間違いも人々の歴史として残せるのかもしれない。

解体すること、循環していくこと。|小林 玲衣奈・小林 孝浩

一軒の古民家が業者によって解体されているところに出会い、調査を行った。初めは家がだんだんと小さく分けられていくことや、その重機の使い方に興味を持っていたが、調査を深めていくうちに、高齢化といった時代の流れ、根尾の木が家になり肥料になるまでの流れ、根尾の林業の移り変わりなど、さまざまな流れが見えてきた。

辺境不動産とほほ日記|中原 淳

日本の中山間地や限界集落に宅建業者(不動産屋)があることは、極めて稀である。根尾地域でも、2015年に初めて不動産屋が営業を開始した。その営業の様子を、架空の日記として展示する。都市の不動産屋とは全く違う人間関係や価値観、倫理がぶつかり合う様子を紹介する。

越卒のところさん|小林 孝浩

根尾地区にその名を轟かせる「越卒(おっそ)のところさん」。調子の悪い農機具を、たちどころに直してしまう魔法使い。その生態を調査し紹介する。「ところさんの一日」はこちら。

根尾の水のいとなみ|吉田 茂樹

根尾では公共水道が敷設される以前から山の湧き水や小川の水を使った水システムが独自に敷設されて日常的に使われている。根尾の水や水システムの様子を紹介する。

集落の祭り|金山 智子・王 芯藍

今も各集落で行われている伝統神事を映像で紹介する。
①『根尾踊り』10分
②『大河原集落のお祭り』16分
③『樽見の十一日祭り』4分
④『越波集落のお祭り』11分

根尾の神社|山口 伊生人・金山 智子・杉山 新次郎

根尾地区には40ほどの神社があるが、今も集落が共同体として存在していく上で大切な役割を果たしている。展示では杉山新次郎氏(根尾公民館)の神社のスケッチを用いて、根尾に張り巡らされた信仰のシンボルを空間にマッピングする。

松葉五郎さんの語り|金山 智子

7年前に越波(オッパ)集落の松葉五郎さん(92才)と出会って以来、様々なお話を伺ってきた。しいたけ、アマゴ、山葵、キハダ・・・。オッパで様々なビジネスを行なう起業家であり、オッパの山を守る林業家でもある。五郎さんのお話から、私たちは何を大切にしていけばよいのか、いつも指針と希望をもらえる。今回、長い時間の中で変わりゆく山についての五郎さんの語りを紹介する。

鳥除け|高橋 保直

根尾では家の軒先に下げられた空き缶をよく見かける。飾りのようだが実は鳥除け。川原集落の高橋さんはこの鳥除け作りの名人だ。綺麗に創るための治具も製作するほど。車庫や庭でキラキラと回る鳥除けのある根尾の風景を感じてもらいたい。

陶芸作品|金子 典栄

根尾長嶺集落に在住する陶芸家。二つの自作の窯をもち、日常に使える陶器を制作している。作品セレクションおよび作家紹介は路雨嘉による。
https://www.instagram.com/kanekotenei/)

アート作品|林 隆一

岐阜在住のアーティスト。根尾上大須集落にある妻の実家をアトリエや滞在型アトリエに改造中。ボールペンを用いた絵画や、様々なモノを使った造形などの作品を制作。作品セレクションおよび作家紹介は路雨嘉による。
(
https://www.instagram.com/ryu_hayashi/)

アート作品|山本 芳廣

根尾大井集落に住む山本さんは、ステンレス加工の仕事の傍ら、ブリキやステンレスで人形を製作している。3メートルの巨大な人形や小便小僧、オズの魔法使いのような人形など、ユニークな人形たちは思わず笑顔にさせてくれる。幼稚園などにも無料で貸し出ししている。

工芸作品|洞口 豊美

根尾の木材を使った工芸作品。10年以上も前、妻のために三面鏡の椅子を作ったことがきっかけ。除伐や倒れた丸太がもったいなくて、これらを活用するという動機からも農業の傍らに制作を続ける。道の駅(うすずみ桜の里・ねお)にて販売。

ちょぼ(サイコロゲーム)

かつていくつかの集落で行われていた博戯(ちょぼ)をもとに、老若男女誰でも楽しめるゲームにアレンジ。ゲーム盤にダイスやお札(ねおこ円)を収納し、持ち運びできる。

長老の記憶と記録|若山 義光・所 和徳

根尾の長老たちは、地域の記憶を後世に伝えようと自分たちで記録し続けている。上大須集落の若山義光さんは、記録されてこなかった上大須集落の家系図、生活や慣習、方言などを自分の記憶をもとに書き残している。根尾長嶺集落住民で元村長の所和徳さんは、村史にも載っていない春日神社の裏歴史を様々な文献をもとに紐解く。今回、貴重な二人の記録の一部を展示する。

越波の今昔物語|松葉 五郎・後藤 秀若

根尾最北の集落の一つ、越波(オッパ)。1400年以上前から存在する集落に、現在、居住者はいない。しかし、週末になると、閑散とした集落は元居住者たちで賑わう。展示では、江戸時代に越波で行われた宗門改帳からかつての集落を垣間見ると同時に、過疎化に抗う集落の様々な取り組みを紹介する。

ねおの風景|坂本 あゆみ・林 晨

根尾の森林や清流を撮影した。

【制作】

情報科学芸術大学院大学 [IAMAS]

Community Resilience Research プロジェクトメンバー

金山 智子・小林 孝浩・吉田 茂樹・王 芯藍・小林 玲衣奈・路 雨嘉・松村 明莉・堀江 洋生・坂本 あゆみ・林 晨・河合 将也・楊 慶新・山口 伊生人(OB)


一般社団法人 よだか総合研究所

中原 淳


根尾関係者

松葉 五郎・後藤 秀若・上杉 勝司 (越波集落)/浅野 貞夫(大河原集落)/若山 義光・林 隆一(上大須集落)/羽田 新作・葉名尻 紀子・羽田 農之・葉名尻 義一(能郷集落)/所 和徳・金子 典栄(長嶺集落)/所 孝一(越卒集落)/山本 芳廣・吉田 喜作(大井集落)/洞口 豊美(門脇集落)/吉田 雄樹(神所集落)/高橋 保直(川原集落)/市原 信治/根尾盆踊り保存会/根尾公民館(杉山 新次郎)