ねお展


アジール*であり続ける
地域のこれまで
そして これから
*自由領域

『根尾はアジールだった』

本巣市最北の能郷白山・屏風山・左門岳一帯を源流域とする根尾川に沿った中山間部が根尾地区。雄大な自然に囲まれた根尾には31の集落があり、今も1231人が暮らしています。


明治の濃尾地震、昭和の伊勢湾台風と大災害が続いたあと、多くの人たちが山を降りました。平成には、林業衰退や市町村合併で人々は町へと移り住み、少子高齢化で地域の限界集落化が一層すすんでいます。


私たちが根尾に通い始めたのは2015年。それは、こういった地域の問題を解決しようと考えたからではありませんでした。そうではなく、1500年以上も脈々と続いている根尾という地域に、何か不思議な魅力を感じたからでした。


福井との県境に位置する根尾は、かつて日本海側の鯖や薬の行商人たちが行き交う道でした。能郷白山を拝む白山信仰の山伏たちにとっては聖地でした。福井から流れてきた人たちが山間に住みつき、集落を作りました。清流や森の豊かな恵みの恩恵を受けながら、木地師や炭焼き職人として多くの人たちが生計をたてていました。また、その時々の政に破れ追われた人にとって山は隠れ里となりました。僻地ゆえ、事あるごとに賭場が開かれていた集落もありました。


集落の発展は精神的な場も創造していきました。集落が大きくなると、各家の神様を持ち寄って集落の神社とし、季節ごとに豊穣祈願の祭りを行っています。能郷地区の氏子による能狂言は白山神社の祭礼として400年以上も受け継がれ、毎年4月13日に能郷白山神社に奉納されます。

旧暦正月には、その年の豊作を占う樽見の十一日祭りも行われています。神社の拝殿で掛け歌に合わせて踊る独特な根尾盆おどりも健在です。限界集落となり神事の継続は難しくなっていますが、今も続けられていることはすごいことかもしれません。


山奥の清流から水を引き、各家に分配する水の仕組みは各集落で作っており、水道が通った今でもそれを使い続けています。新しいビジネスを模索し続ける90代のおじいさんや、嫁入り道具の工業用ミシンで自分の服を縫う80代のおばあさん。必要なものは自分で考え自分で作る。根尾の人たちにとって、これは当たり前なのです。


住民がいなくなった集落でも、春・夏・秋と元住民たちが集まり、集落の神様に祈りを捧げ、共に食事を楽しみます。自然の中で生き抜く精神を祖先から受け継ぎ、自分たちなりにここでの暮らしを守り、変え、創り、そして、楽しんでいます。


今では、自然の中で創造的な生活を求める若い人たちが移り住むようになり、干渉の少ない土地で生きることを求める家族も新天地を求めてやってきます。一度集落を離れた人々にとっても、人生の何かの転機に再起できるやさしい故郷でもあります。


アジールとは、聖域、避難所、無縁所、あるいは、自由な領域といわれています。私たちが感じた根尾の不思議な魅力は、アジールとしての根尾だったのかもしれません。アジールだからこそ、大きな変化に耐え、小さな革新を繰り返しながら、どの時代においても自分たちの領域として存在し続けてきたのではないでしょうか。


(IAMAS Community Resilience Research)

能郷の能狂言堀江 洋生

逃・避・行|坂本 あゆみ

倒れることは命の終わりではない|林 晨

生命の循環|林 晨

乳イチョウ|楊 慶新

アマゴの木|河合 将也

根尾踊り|王 芯藍

根尾はくぶつかん|松村 明莉

解体すること、循環していくこと。|小林 玲衣奈・小林 孝浩

辺境不動産とほほ日記|中原 淳

越卒のところさん|小林 孝浩

根尾の水のいとなみ|吉田 茂樹

集落の祭り|金山 智子・王 芯藍

根尾の神社|山口 伊生人・金山 智子・杉山 新次郎

松葉五郎さんの語り|金山 智子

鳥除け|高橋 保直

陶芸作品|金子 典栄

アート作品|林 隆一

アート作品|山本 芳廣

工芸作品|洞口 豊美

ちょぼ(サイコロゲーム)

長老の記憶と記録|若山 義光・所 和徳

越波の今昔物語|松葉 五郎・後藤 秀若

ねおの風景|坂本 あゆみ・林 晨

2022年10月1日(土)〜30日(日)
9:30〜16:30 (入館は16:00まで)
マイミュージアムギャラリーのみの入場は無料です


休館日 毎週月曜日
    10月10日(月・祝)は開館
    10月11日(火)は閉館


主催  情報科学芸術大学院大学[IAMAS]
    Community Resilience Research

    一般社団法人よだか総合研究所