池田町有線放送電話研究会とは
池田町有線放送電話研究会とは
有線放送電話は農業協同組合や市町村などが事業主体となり、一般加入電話が普及していない農山村などに敷設した地域内限定の固定電話兼放送設備です。戦後の経済成長と電気通信技術が発展する中、電話線の普及が遅れている地域では自ら電話線を敷設し、地域コミュニケーションを実現しました。これは電話ネットワークによる「地域情報システム」であり、ローカルな声を共有する「地域メディア」でした。1960年から1970年代にかけて全国2600以上の有線電話施設がうまれ、300万世帯が加入していましたが、一般電話の普及、CATVや携帯電話等の急速なICT発展に伴い、撤退が相次ぎ、現在はピーク時の1~2%程度となりました。このように、有線放送電話は既に歴史的役割を終えたと言われる一方で、有線放送電話は日本のメディア技術史においては放送・通信融合の原型とも考えられ、戦後70年の電気通信産業遺産とも言えるのです。戦後の経済成長期に、地域が自力で技術や文化を創造したことにより築かれた貴重な地域文化資産や放送文化は大きな財産といえます。ICTによって古いシステムが次々と置き換えられていく中、地域コミュニティで長期にわたり機能し続けた有線放送電話の文化資産的な意味を捉えなおすことの意義は大きいのです。残念ながら、これまで研究蓄積が殆ど進まなかったことにより、有線放送電話を文化資産としていかに地域で活用するかについて、ほとんど議論も生まれてこなかったのです。
本プロジェクトは、1965年から2017年まで52年間にわたり放送されていた岐阜県揖斐郡池田町有線放送電話の放送データや資料など残された貴重な記録を地域に還元し、未来へ活かすことを目的として2019年にスタートしました。残された放送データや資料は、池田町有線放送電話農業協同組合からの全面的な協力を得て、提供していただきました。これらのデータを元に、(1)全データのデジタル化、 (2)アーカイブ化、(3)アーカイブを活用した表現の活動を行なっています。
2018年から2年をかけて、オープンリールやカセットテープ、MDなどこれまでに450以上の音声データのデジタル化と1000枚以上の放送資料や原稿などのスキャンニングを行い、52年に及ぶデータのデジタル化と整理・分類を行ない、ほぼデータ化を完了しました。
2022年からは、池田町の住民を中心とした池田町有線放送アーカイブ活用推進委員会が設立され、住民のみなさんとともにアーカイブ化した音声データや資料を活用した表現の活動を行ないながら、こういった文化財を地域に循環させながら未来につなげていくことを模索しています。
研究会メンバー:金山智子(代表)、瀬川晃、前林明次、山田晃嗣
協力者:土川商店, 池田町有線放送アーカイブ活用推進委員会,池田町役場,(旧)池田町有線放送電話農業協同組合,池田町教育委員会, 立命館大学坂田研究室