新俳句人連盟は、1946(昭和21)年5月12日、戦後いちはやく、民主主義日本文化の確立発展をめざし、平和と表現の自由を求め、現代俳句に責任を持つ組織として創立された。創立大会に出席したほとんどは、戦時中、新興俳句運動やプロレタリア俳句運動を実践した俳人たち。日本文学報国会の俳人たちとは対照的な俳人の結集体として、注目を集めた。
○東京小石川涵徳亭の創立大会出席者
東京三・古屋榧夫・島田洋一・坂本三鐸・芝子丁種・山畑一水路・藤田初巳・湊楊一郎・中台春嶺・小西兼尾・栗林一石路・橋本夢道・横山林二・富沢赤黄男・三谷昭・阿部筲人。幹事長に栗林一石路を選出。
1.われわれの運動は、俳句のかかる意義の新しき確立をめざし、永きに亙って低下していたその詩的位置を現代詩の水準に高めることにある。
1.俳句は、常に時代や社会の進展とともに進展しなければならぬ。それには、今も尚俳句の進歩と革新を妨害することによって、究極に於て民主主義日本確立の障壁となっている俳閥とたたかう。
1.本連盟は、内容、形式に渉る一切の歪曲された俳句及び俳句観念を是正し、俳句本質の究明、現代俳句の確立、封建的結社制度と意識の排除、進歩的俳句作家の提携、親和、文化諸団体との交流、新人の育成、その他才能と個性との何たるかを昏迷せる俳壇に明らかにする。
連盟の機関誌『俳句人』の創刊号は、1946年11月付けで発刊(編集兼発行人・栗林農夫、発行所・民報社、活版48頁、定価4円)された。
1.新時代の俳人・俳句について積極的に発言・掲載した。「型について」栗林農夫、「定型と自由」阿部筲人、「俳句に おける封建制」栗林一石路、「リアリズム俳句の道」橋本夢道、三鬼と一石路の対談など。
2.戦争中、作品の発表を控えざるを得なかった連盟以外の作家(日野草城、西東三鬼、石田波郷、橋本多佳子、横山白 虹、平畑静塔)たちの作品を掲載した。
3.戦時中の俳句弾圧事件を明らかにし、獄中作品を発表するとともに俳壇戦犯問題について掲載した。
安保改定反対闘争は、1959年から60年にかけて共闘組織の発展にともない歴史的大闘争を展開した。俳壇では「社会性俳句」につづいて、前衛俳句・「造型論」が台頭した。「造型論」への賛否両論の渦巻くなかで、保守的な層が現代俳句協会を抜け、俳人協会を1961年12月20日に設立した。
連盟は、前衛俳句・「造型論」をめぐって、俳句におけるリアリズムの問題として第17回~第25回総会(1962~70年)のシンポジウム報告にとりあげた。
『俳句人』掲載のものを含む論文集『俳句におけるリアリズム(第一集)』(執筆者=石塚真樹・金子兜太・鈴木六林男・堀葦男・山口聖二・佐藤鬼房・八村廣・赤城さかえ)を1965年7月に発刊した。
1971年の第26回総会において、70年代を展望し、運動方針「回顧と展望1970年代に賭けるもの―」を採択した。
1.評価の基準など。
1.俳壇と『俳句人』―前衛俳句の分析によって、方法論的に影響しあう基盤があることを確認する。
1.月刊『俳句人』の増頁と、新俳句人連盟賞・雑草賞の創設。
1.長崎・広島・京都・東京に於ける原爆忌俳句大会へ積極的に参加。
※1973年『俳句研究』年鑑に、「新俳句人連盟の文学的立場に基づく真摯な評論、座談会、作品評がとにかく毎号息をつぐ暇がないほどに目白押しに並んでいる。書き手また誌内外から多彩―」と評価される。
連盟は、反核・平和の重要課題と、表現・言論・出版・結社の自由を守る課題を念頭においた幅広い活動を展開した。また、俳句の主題と方法に関する重要なテーマについて総会および全国幹事会でのシンポジウムで討論した。
・1979年― 俳句における社会性と芸術性
・1980年― 口語・自由律俳句の展望
・1981年― 民主主義俳句とその形象化
・1982年― 俳句における現実と形象
・1983年― 俳句におけるリズムと形式
・1984年― 現代の労働と俳句
・1985年― 反核俳句の現状と展望
『俳句人』では、「俳句と平和」「戦争俳句の遺産と現在」「核廃絶と俳句」「反戦・反核の俳句伝統」「トマホーク来るな!」「核状況下の俳句」「反核俳句の現状と展望」などを掲載した。
1980年代後半から次々と支部が結成された。(現在は35支部)
・1987年 多摩支部、静岡支部、兵庫支部 ・1988年 広島支部 ・1989年 北海道支部
・1990年 香川支部、茨城支部(再建)、千葉支部 ・1991年 群馬支部、長野支部 ・1992年 岡山支部、愛媛支部
・1996年 東京(23区)支部 ・1997年 山形県支部 ・1999年 京都支部、滋賀支部 熊本支部 ・2003年 富山支部
・2004年 福島県支部 ・2005年 沖縄支部、秋田支部、石川県支部、岩手支部 ・2006年 栃木支部、新潟県支部
・2008年 鳥取支部 ・2009年 宮崎県支部、青森県支部 ・2010年 和歌山県支部
2002年10月の第50回総会では、「2006年の連盟創立60周年までに、創造力豊かな1000人の連盟にしよう」
という方針が決まった。
2008年10月の第53回総会で念願の千人以上の連盟を達成した。
連盟の対外活動は、文化団体連絡会議(文団連)と、その構成団体である文学四団体(日本民主主義文学会・詩人会議・新日本歌人協会・新俳句人連盟)の交流が中心になっている。
・報復戦争に反対する文学の集い
・第三種郵便物廃止に反対する緊急学習、報告集会
・イラク攻撃と有事法制に反対する文学の集い
・文学のつどい「いま何をどう書くか」
・全国革新懇 ・非核の政府をつくる会 ・第五福竜丸平和協会 ・俳人「九条の会」 ・小選挙区制の廃止を求める国民運動
・消費税廃止各界連絡会 ・原発をなくす全国連絡会 ・戦争をする国づくりストップ!憲法を守り、いかす協同センター
連盟は、内外の多くの人々と共同して、自然環境を守り、平和と民主主義を発展させる立場にたって、俳句の創作・批評・研究にとりくんできた。21世紀の俳句は、その時代の社会と生活の真実を確かな目で見て、創作していくことが豊かな作品を生み出すことになるであろう。