当院で治療の対象とする代表的な「こころの健康問題」には、以下のような病気があります。

さまざまなストレスの増加や24時間化した社会の影響で不眠を訴える人が増えています。不眠のタイプは寝付けない(入眠困難)、途中で何度も目がさめる(中途覚醒)、朝早く目がさめる(早朝覚醒)などがあります。医学的には週3日以上これらの症状が3ヶ月以上続いていると不眠症と診断されます。

不眠はさまざまな身体疾患やうつ病などの精神疾患の原因としても起こりますし、その逆に不眠がこれらの疾患を発症させることも知られています。

精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、さまざまな理由から脳の機能障害が起きている状態です。脳がうまく働かないため、頑張りたくても頑張ることができず、ものの見方が否定的になり「自分には価値がない」と感じてしまいます。

また、集中力の低下やミスの増加など、仕事や学業にも支障をきたすようになり、ますます自分を責めてしまい、悪循環で病気が重篤化することも少なくありません。頭痛やめまいなどの身体症状を伴うことがよくあります。

 調子が高く活動的な「躁状態」と、気分が沈みやる気がでない「うつ状態」の両方が見ら   れることが特徴です。

 躁状態になると、よくしゃべる、睡眠時間が減少する、次々にアイデアが浮かぶ、自分が  偉大な人間だと感じられる、大きな買い物やギャンブルなどで散財する、怒りっぽくなるといった変化が見られます。

 躁状態は本人にとって調子がよいと感じられるため、周囲の迷惑や心配とは裏腹に、本人には病気の自覚がありません。職場で寝ないで働ける、誰にも思いつかないようなアイデアが浮かんでくる、といった職場における出来事が、のちのちになって軽い躁状態だったと判断されることもあります。 

不安障害とは、その人の状況から考えて、不釣り合いなほど激しい不安が慢性的かつ変動的に見られる状態です。

不安は本来、脅威や精神的ストレスに対する正常な反応ですが、この不安が不適切なときに生じたり、頻繁に生じる場合、あるいは日常生活に支障を来すほど不安が強く長く続く場合には、専門的な治療の対象といえます。

急性・突発性の不安症状が特徴的な「パニック障害」と、慢性の不安症状が長く続く「全般性不安障害」などに分類されます。(後述の「強迫性障害」も不安障害に分類されることもあります)

手を石けんでよく洗ったにも関わらず、まだ自分の手が不潔だと感じてしまい、過剰に手洗いを繰り返してしまうなど、自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れず、何度も同じ確認をくりかえしてしまう強迫症状が特徴的です。

戸締まりをしたが気になり、2,3回鍵をかけたかどうか確認をする慎重な人もいますが、何度確認してもドアから離れられないような状態をさします。

不安やこだわりが度を超していて、日常生活に影響が出てしまう状態であれば、専門的な治療の対象といえます。

脳内の神経伝達物質の異常により、こころや考えがまとまりづらくなってしまう病気です。健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状(幻覚[主に幻聴]や妄想など)と、健康なときにあったものが失われる陰性症状(意欲の低下や感情表現が少なくなるなど)があります。その症状のために気分や行動、人間関係などに影響が出てきます。

独り言を言っている、実際はないのに悪口を言われたなどの被害を訴える、話がまとまらず支離滅裂になる、人と関わらず一人でいることが多いなどのサインとして表れます。

適応障害とは、ある生活の変化や出来事がその人にとって重大で、普段の生活が送れないほど抑うつ気分、不安や心配が強く、それが明らかに正常の範囲を逸脱し、社会的な機能(仕事や学業、家事など)が著しく影響が出ている状態です。

適応障害の特徴は、ストレス因となる出来事が生じてから1ヵ月以内の早期に症状が出現し、出来事が集結してから6カ月以上症状が持続することはないという一過性の反応という点です。そのため当初は適応障害と診断されても、その後うつ病などの診断名に変更されることも少なくありません。

自律神経とは、自分の意思ではコントロールすることができないけれども、必要な場合に、人間としての生理的な機能を保つために、自動的に働く神経のことを指します。

緊張したり集中したりする特に働く「交感神経」と、休憩中やリラックス時に働く「副交感神経」がありますが、ストレスの高い状態が継続すると、この交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまいます。

その結果、めまい、動悸、発汗、微熱、各種の痛み(頭痛、腹痛など)などの症状が生じます。これらの症状は、様々なこころの健康問題を抱えた際に出現する症状で、自律神経失調症は特定の傷病名と言うよりは「検査をしても異常がないけれども、何となく身体の調子が優れない」症状と考える方が適切です。