量子場の理論[1]やリーマン面のモジュライの研究[2,3,4]に登場するファットグラフ*のデータ解析への新たな応用の方向を探るためのきっかけとして小規模な勉強会を企画しました.ファットグラフのトポロジカルな特徴づけ[5]は,リーマン面のモジュライ空間の幾何の研究の発展に役立てられてきましたが,一方でRNAやタンパク質などの高分子の構造を特徴づけるための応用研究[6,7]などにも用いられています.この勉強会では,ファットグラフを用いた解析法の基礎についてのGoogle Colab.を使ったハンズオン型の実践演習を行います.
実践演習に加えて,位相的データ解析(TDA)の分野におけるパターン分析の手法に関するミニレクチャーと磁性材料,ガラス,鳥の群れ[8]の分析に関する研究紹介も行います.この勉強会ではTDAの研究手法を知り,ファットグラフによる分析手法の応用の可能性を探ることを目的としています.
参考文献:
[1] E. Brezin, C. Itzykson, G. Parisi and J. B. Zuber, Planar Diagrams , Commun. Math. Phys. 59 (1978) 35-51.
[2] J. Harer and D.Zagier, The Euler characteristic of the moduli space of curves, Invent. Math. Vol. 85 (1986) 45-485.
[3] R. C. Penner, Perturbative series and the moduli space of Riemann surfaces, J. Diff. Geom. 27 (1988) 35-53.
[4] M. Kontsevich, Intersection theory on the moduli space of curves and the matrix Airy function , Comm. Math. Phys. 147 (1992) 1-23.
[5] M. Mulase and M. Penkava, Ribbon Graphs, Quadratic Differentials on Riemann Surfaces, and Algebraic Curves Defined over Q, Asian J. Math. Vol. 2, No. 4 (1998) 875-920, [arXiv:math-ph/9811024].
[6] R. C. Penner, M. Knudsen, C. Wiuf, and J. E. Andersen, Fatgraph Models of Proteins, Comm. Pure Appl. Math. Vol. 63, Issue 10 (2010) 1249-1297 , arXiv:0902.1025 [q-bio.BM].
[7] J. E. Andersen, R. C. Penner, C. M. Reidys, and M. S. Waterman, Topological classification and enumeration of RNA structures by genus, J. Math. Biol. (2013) 1261-1278.
[8] M. Ballerini, et. al., Interaction ruling animal collective behavior depends on topological rather than metric distance: Evidence from a field study, PNAS, 105, 1232-1237 (2008).
*ファットグラフはリボングラフとも呼ばれます.
小柳 勇気 (Beumer group)
3/8(土)
13:30〜14:00 藤 博之「ファットグラフについて」(30分) 導入講義
14:15〜15:15 綿引芳之「ファットグラフと2次元量子重力理論」(60分) 導入講義
15:30〜17:00 小柳勇気「ファットグラフの種数と境界数の数値計算」(90分) 実践演習
18:00〜 懇親会1(Welcome dinner,ピザハウスF)
3/9(日)
13:30〜14:30 本武 陽一「TDAの導入とTDAによるパターンダイナミクスの解析研究について」(60分) 招待講演
14:45〜15:15 石田新一「鳥の群れ + TDA研究の紹介」(30分)招待講演
終了後:写真撮影
15:30〜17:00 小柳勇気「タンパク質のPBDデータからファットグラフの構築」(90分) 実践演習
18:00〜 懇親会2(こちらが懇親会です.魚喰)
3/10(月)
11:00〜12:30 小柳勇気「タンパク質のメタ構造とファットグラフ」(90分)実践演習
13:30〜14:15 本武 陽一「TDAによるパターンダイナミクスの解析について(2)+磁性材料 + TDA研究の紹介」(45分)招待講演
14:30〜15:00 森田秀利「ガラス + TDA研究の紹介」(30分)招待講演
※スケジュールは多少変更となる可能性がありますが,開始時刻は13:30からの予定です.
日程:2025年3月8日(土)〜10日(月)
3日間とも13:30開始.
会場:神戸大学六甲台第2キャンパス
理学部 B棟(3階)B314・316教室(ガラス張りの教室です)
アクセス:https://www.kobe-u.ac.jp/ja/site/access/
キャンパスマップ:https://www.kobe-u.ac.jp/ja/campus-life/general/access/rokko/rokkodai2/
理学部B棟は[83]の建物です.
土日にB棟に入るには,一旦Z棟([82]の建物)のエレベータで3階に上がってからB棟に入ってください.
教室は12:30に鍵を開ける予定です.
Google Map: 理学部Z棟
備考:
・六甲台第2キャンパスの食堂は土日の営業はありません.
・セブンイレブンとスターバックスはありますが,本勉強会期間(春休み期間)中は営業時間が変わる可能性があります.
・wifiはeduroamが使用可能です.
・実践演習を試されたい方は,Google Colab.が利用可能なPCをご持参ください.
・土日はB棟のZ棟側3階の入り口以外は施錠されています.Z棟([82]の建物)はロータリー側から(坂を登って)入る場合には扉はありません.(キャンパスマップに記載した(A)または(B)のルートでお越しください.)
・場所がわからない場合には,e-mailにてご連絡ください.
参加人数把握のため,参加申し込みGoogle Formsへの事前入力のご協力をお願い致します.
講演や実践演習の資料は,参加登録された方にメールで共有URLをお知らせ致します.(当日参加された方に,参加登録にあったメールアドレス宛にお知らせします.)
(大学・研究機関に所属されていない方には,念のためにこちらから確認の連絡を入れたのちに共有させて頂くこともあります.)
本勉強会は以下の経費の支援の下で開催します.
科研費:基盤研究(C)20K03931「幾何的漸化式に基づく量子トポロジーと弦の場の量子構造の数理の究明」
基盤研究(B)23K22388「量子モジュラー形式の深化と展開」
神戸大学ミッション実現加速化経費:ミッション実現戦略分 11「神⼾⼤学数理・データサイエンス・AI 教育プログラム」
藤 博之(神戸大学数理・データサイエンスセンター,大学院理学研究科数学専攻)
真鍋 征秀 (大阪公立大学数学研究所,大阪大学大学院数学専攻,神戸大学数理・データサイエンスセンター)
問い合わせ:fatgraphs_at_gsuite.kobe-u.ac.jp (_at_は@に変えてください.)