RESEARCH / どんな研究をしているの?

「きのこ」を中心とした菌類の研究で植物バイオマスを有効利用!

   自然界において植物を分解する主要な生物はきのこ類などの菌類です。一般に、きのこというと食品のイメージがありますが、実はきのこは【植物を完全に分解する能力を持つ地球上で唯一の生物】であり、生態系における分解者としてとても重要な役割を果たしている微生物なのです。私たちの研究室では、きのこ類を中心とした菌類の植物分解メカニズムを明らかにすることで、以下の面から人類に貢献できると考えています。

1)菌類の植物分解力を利用して植物から様々な有用物質を生産する技術を開発する

     (バイオ燃料生産や新規のバイオマス由来の材料開発など)

2)菌類の攻撃から植物材料を守る技術を開発する(建築物の腐朽被害の防止技術や腐朽診断技術)

3)土壌生態系物質循環における炭素分解プロセスの理解を通じて脱炭素社会実現に貢献する技術を開発する


特に、きのこを対象にして、遺伝子(ゲノム)、タンパク質、細胞レベルで研究しています。本研究で取り組んでいるどのような研究においても、私達の基本となる考え方は、【微生物に学ぶ】ということです。

【最近の研究トピックス】

共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)本格型で脱炭素社会に向けた炭素耕作材料開発に取り組んでいます!

【研究の紹介】(ほかにも色々な研究をしています

菌類の植物分解酵素の機能解明と利用

きのこ類やカビ類などの菌類は複雑な構造で成り立つ植物バイオマスを分解するために、多種多様な分解酵素(セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、溶解性多糖モノオキシゲナーゼなどと呼ばれる色々な酵素)を生産します。私たちは、三次元構造解析や遺伝子発現解析、生化学的解析などを駆使して、菌類が生産する様々なバイオマス分解酵素の機能解析を実施しています。これは、植物バイオマスを有用物質に変換するための新しい技術を開発するため、また、その際の重要な過程である糖化プロセスを効率化する技術の開発などに大いに役立ちます。

褐色腐朽菌の木材分解メカニズムの解明

褐色腐朽菌は、極めて強力な植物バイオマス分解能力を有するきのこ類です。本菌類は、他の生物種では類を見ない特殊な植物分解メカニズムを持つことが知られていますが、その詳細については不明な点が極めて多いのが現状です。私たちは、褐色腐朽菌の植物分解メカニズムを完全解明し、さらにその分解メカニズムを利用して新しいバイオマス変換技術を開発するための研究に挑戦しています。ポストゲノム解析、酵素の三次元構造解析や生化学的解析、電気化学的なアプローチ、電子顕微鏡を用いた解析など様々な解析手法を利用して多角的な研究を実施しています。

菌類の匂いを研究して利用する

微生物は代謝産物として多様な揮発性の有機化合物(匂い成分: MVOCと呼ばれます)を発散します。我々は、木材を腐らせる菌類も他の微生物と同様に匂い成分を発散することに注目し、それらの菌類が木材を分解するときにのみ発散する匂い成分を特定したり、特定の菌類のみが発散する匂い成分を特定したりすることで、これをマーカーにした腐朽診断技術が開発できるのではないかと考えています。これが実現すれば、非破壊かつ高感度の腐朽診断が可能になることが期待されます。また、これらの菌類が発散する匂い成分が他の生物にどのように影響を与えるかといった生物学的な研究にも取り組んでいます。

菌類の硫黄代謝系を理解する

木材を腐らせる菌類の研究の多くは炭素や窒素などの豊富な栄養源の獲得に着目したものがほとんどですが、その一方で、 ミネラル類も菌類にとって非常に重要な栄養源なのにも関わらず研究例が少ないためあまりよくわかっていません。そこで私たちは、生物の必須元素でありミネラル類の中でも豊富に存在する硫黄に焦点を当て、その代謝経路について研究を実施しています。その結果、菌類における全く新規な硫黄獲得経路の存在が見出されてきました。