非線形光学過程はそこにかかわる光の位相関係に強く依存し、この過程が進行する"速度と方向"は位相関係の"値と符号"によって決定されます。この位相関係を媒質中の望ましい相互作用長で任意に制御することで、非線形光学過程を自在に操作することが可能となります。当研究室ではこの手法が実際に有効に働くことを実証してきました。
この手法はあらゆる非線形光学過程に適用可能ですが、パラ水素を用いた高次のラマン共鳴4波混合過程に適用することで、中赤外から真空紫外の任意の波長で単一周波数レーザー光を得ることが可能となります。特に、真空紫外領域は単一周波数・波長可変レーザーが存在しないことから、これが実現されれば、多様な応用研究の発展が期待されます。
反水素原子は水素原子の反物質であり、人類が生成可能な唯一の"反原子"として、現在の素粒子物理学の標準理論の検証の場として利用されています。反水素原子と水素原子が重力に対して対称なふるまいをするかどうかは、まだ調べられておらず、レーザー冷却という手法を使って、水素・反水素原子を地球に対して静止させて、自由落下させることでこれを検証できます。
水素・反水素原子はレーザー冷却に理想的な準位構造をしていますが、使用するレーザー光(波長 121 nm)を得ることが難しく、長らく実現されていませんでした。近年、反水素原子のレーザー冷却が実現されましたが、十分に静止させられるほど、冷却されていないのが現状です。本研究室では十分な出力を持つ真空紫外・単一周波数・波長可変レーザーを発生し、ほぼ完全に水素・反水素原子を静止させ、水素・反水素原子の対称性を精密に検証することを目指しています。
任意の周期的な信号を発生させるファンクションジェネレータは様々な分野で欠かせないツールとして利用されています。当研究室では、このファンクションジェネレータを光の周波数領域(繰り返し周波数100 THz以上、周期10 fs以下、パルス列・のこぎり波など)で実現することに成功しました。
この技術で得られる超高速の光波形(繰り返し周波数100 THz以上)を利用することで、将来的には、100 THz以上の周波数で動作する超高速な光コンピュータなどの実現が期待されます。その第一歩として、現在、ここで発生した光電場波形を用いて、物質間に流れるトンネル電流を超高速に制御することを試みています。