高校生のための研究紹介

岐阜薬科大学の研究の一部を紹介します!内容は随時追加・更新します。

簡単な検査でがんを発見し、早期治療で命を救う

薬品分析化学研究室

 日本人の死因第1位はがんです。約3人に1人ががんで亡くなります。しかし、負担の大きな内視鏡検査やCT検査などによる“がん検診”の受診率は依然低く、治癒が望みにくい進行がんで見つかることも多いのです。早期発見、早期治療は生存率を大幅にあげるため、簡単で精度の高い検査方法を作り、がん検診の受診率を上げることは多くの人の命を救うことになります。

 それでは、がんとはいったいどういう病気でしょう?健康な細胞は、分裂して増えていきますが、がん細胞はDNAの情報を担う塩基(A,C,G,T)に異常が起きていて、不死の状態になっています。そして、際限なく増え続けるので、健康な身体をむしばんでいきます。そこで、少しの血液から、このがん化の原因になるDNA中の異常な塩基を見つけることができたらいいですね!……しかし、生きているDNA中では正常な塩基に対して異常な塩基は1億分の1くらいしかないのです。 

 そこで、薬品分析化学研究室では、このDNAの異常な塩基を検出できるよう超高感度な分析法の開発を行っています。例えば、ごく僅かな性質の違いで物質を細かく分けるキャピラリー電気泳動や高速クロマトグラフィーなどをさらに高性能化し、DNAの異常な部分を分離します。そして、質量分析法を高感度化し、見逃さないで検出する方法の開発を行っています。

 本研究室は、科学を研究するうえで分析化学(=モノサシ)の立場を大切にしています。いいモノサシ、正確で細かく測れるモノサシを作ったり、上手に使おうとします。一方で、分子の性質を注意深く観察します。生命の営みにも大きな関心を持ちます。そして、生命科学、臨床化学、創薬化学研究へと展開しています。 “いいモノサシ”を当てて、好奇心をもって、この世界の事象を発見、理解し、また新しく作り出したいと考えています。

江坂幸宏 教授 

工学部時代は有機化学系研究室の丁稚であったが、大学院から分析化学研究に取り組みはじめた。岐阜薬科大学着任後、発展期のキャピラリー電気泳動法に出会い、様々な分離モードを開発してきた。一方で、質量分析のパワーに魅入られ、分離分析と質量分析を駆使して、DNA損傷などの重要生体分子分析を行ってきた。

専門はキャピラリー電気泳動法(CE)、LC/MS及びCE/MSの高性能化、生体関連重要分子の高感度測定法の開発・応用など。

1989年3月名古屋大学工学部卒業、1991年3月同大学工学研究科応用化学及び合成化学専攻修了。博士(農学・京都大学)。同年、岐阜薬科大学・薬品分析化学研究室に奉職、助手、講師、助教授(准教授)を経て、2020年4月同研究室教授。また、2008年からは岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科准教授、2020年5月から教授を兼担してきた。日本分析化学会奨励賞(2000年)、寺部茂賞(2019年)などを受賞。

研究室ホームページ 

革新的な新薬の創製により、健康長寿社会を築く!

薬理学研究室

「平均寿命」と「健康寿命」という言葉を知っていますか?「平均寿命」は文字通り私たちの寿命であり、「健康寿命」は健康に生活できる期間(寝たきりや要介護になったりせずに日常生活を送ることのできる期間)のことです。2018年の日本人の「平均寿命」は女性が87.32歳、男性が81.25歳であり、日本は世界屈指の長寿国です。明治時代の日本人の「平均寿命」は40歳前半とされており、約100年で約2倍という飛躍的な延びとなっています。

 一方、「健康寿命」は女性が74.79歳、男性が72.14歳です(2016年)。東海3県は男女ともに健康寿命ランキングの上位に位置しており、特に愛知県の女性は全国1位です。理由は不明ですが、堅実で実利的な県民性が関わっているのでしょうか??さて、「平均寿命」と「健康寿命」の差を比較してみると、女性では12歳以上、男性では9歳以上の開きがあります。長寿社会の深まりとともに、その差(=不健康な期間の長さ)が大きな社会問題となっています。

 「平均寿命」と「健康寿命」の差を広げている要因には様々なものがありますが、健康長寿を妨げる3大要因として、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)あるいは認知症が挙げられます。 私たちの研究室では、国内外の研究者と連携し、健康長寿を妨げる代表疾患がどのようにして発症するのかを明らかしようと研究を行っています。そして、革新的な新薬の開発を通じて、生活の質の向上とともに健康寿命を引き上げて、健康長寿社会の実現に貢献をしていきたいと思っています。

檜井栄一教授

細胞、遺伝子改変マウス、病理検体、ゼブラフィッシュ、iPS細胞など、様々な実験材料を駆使して、薬理学的あるいは遺伝学的手法を用いて、老化関連疾患の病態解明と革新的な新薬の開発を目指している。

2003年3月に金沢大学大学院自然科学研究科博士課程修了し、博士(薬学)を取得。2019年7月に岐阜薬科大学薬理学研究室教授に着任し、同年10月から岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科教授を兼任。その間、金沢大学、チェコ国立科学アカデミー、米国マサチュウセッツ総合病院、米国ベイラー医科大学、米国コロンビア大学にて研究教育活動を実施。2012年に第27回日本薬理学会学術奨励賞と平成24年度日本薬学会奨励賞を受賞。

プラズマ医療 −期待される新しいがん治療− 

臨床薬剤学研究室

 活性酸素という言葉を聞いたことがありますか。活性酸素は、酸素分子が電子により還元され分子で、通常の酸素分子より強い活性を持っています。活性酸素は老化、皮膚のシミなどと関連することから悪いイメージがありますが、活性酸素は細菌やウイルスなどから体を守る感染防御においても重要な分子です。

 細胞内で産生された活性酸素は、タンパク質などの様々な生体分子と反応しその機能を変化させることで、細胞の分化・増殖や細胞死といった多彩な生命機能を調節しています。私たちは、活性酸素によるこのような細胞機能の制御がどのようなメカニズムで行われているかを研究しています。 

 最近、私たちはプラズマに注目しています。プラズマとはラジカル、イオン、電子などを含んだガス状物質であり、稲妻やオーロラもプラズマです。研究室で作ることができる低温プラズマは、近年、がんの新しい治療法として期待されています。

 培養しているがん細胞を低温プラズマで処理すると、培地中に大量の活性酸素が生成し、がん細胞が死滅しますが、そのメカニズムは十分に分かっていません。安全で安心な医療を患者さんに提供するためには、用いる治療法がなぜ有効なのかを科学的に明らかにする必要があります。そのため、私たちは、低温プラズマががん細胞を死滅させるメカニズムの解明を目指して、日々研究に取り組んでいます。

足立哲夫 教授

大学院の学生時代から活性酸素と病気との関係、活性酸素から体を守る酵素の研究を続けてきた。スウェーデン最北のウメオ大学に留学し新しく発見された活性酸素消去酵素の研究に携わり、帰国後もその臨床検査法開発と病気との関係の研究を継続している。最近は、プラズマの医療への応用についての研究を新しく立ち上げ精力的に進めている。

1978年3月に岐阜薬科大学を卒業し、1980年3月には岐阜薬科大学大学院薬学研究科修士課程を修了。薬学博士。1980年4月に岐阜薬科大学に奉職し、助手、講師、助教授(准教授)を経て、2003年から岐阜薬科大学臨床薬剤学研究室教授に就任し現在に至る。その間、岐阜薬科大学附属薬局長、図書館長、薬学科長を歴任し、現在は副学長。

基礎研究から切り拓く、新たな治療法の創出にチャレンジ!

生化学研究室

どんなに大きな生物も、一つ一つの細胞がつなぎ合わさって個体ができています。隣り合う細胞は密着結合(タイトジャンクション)と呼ばれる構造を形成し、分子が細胞間を通過するのを防いでいます。例えば、皮膚のバリアが破壊されると水分が、血管のバリアが破壊されると血液が漏れ出てしまいます。しかし、完全に分子の通過を遮断すると、逆に病気になってしまいます。この一見不完全なバリアが、生物が生きていく上で重要な役割を果たしています。

タイトジャンクションはクローディンと呼ばれるタンパク質によって形成されます。クローディンには構造が似ているものとして、27種類のタンパク質が存在します。その内の一つでも発現量が増えたり減ったりすることによってバリア機能が異常になり、癌、糖尿病、炎症性疾患などの原因になることが指摘されています。

私たちは肺癌組織でクローディン-2というタンパク質が増加することを発見しました。クローディン-2は癌細胞の増殖や浸潤を促進するだけでなく、抗癌剤の効果を減弱させることを突き止めました。つまり、癌細胞で異常発現したクローディンの発現量を正常化することにより、既存抗癌剤の治療効果が向上し、抗癌剤耐性の克服にもつながることが期待されます。

五十里 彰 教授

学部生の頃から、ナトリウムや塩素などのイオンや化合物の輸送機構に興味をもち、生化学的手法だけでなく、生理学、薬理学、遺伝子工学的手法を組み合わせて、各種病態の機序解明と治療薬の開発研究に取り組んでいます。

1994年3月に富山医科薬科大学薬学部卒業後、1999年3月に富山医科薬科大学薬学研究科博士後期課程を修了。博士(薬学)。1999年4月に静岡県立大学薬学部に奉職し、助手、講師、准教授を経て、2013年に岐阜薬科大学生化学研究室教授に着任し、現在に至る。2004年にとやま賞(学術部門)、2009年に日本薬学会奨励賞を受賞。

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十分な治療薬がない疾患で苦しんでおられる患者の方々のQOL(Quality of life) 向上に貢献する薬剤の開発につながる研究を行う。 

薬効解析学研究室

皆さんは新薬が開発される確率を知っていますか?身の回りの新薬はなんと約2万5千個に1個という非常に低い確率で十数年かけて生み出されたものなのです。そうして生まれた新薬によって、我々人類の寿命は劇的に改善しました。しかし、未だに十分な治療薬のない疾患が存在しています。また、単なる寿命改善だけではなく、健康に生きることのできる寿命 (健康寿命) の改善が求められています。

  なぜ新薬開発の確率がそんなにも低いのでしょうか??その原因の一つには、動物モデルの不完全さが挙げられます。ある候補化合物が動物モデルによる基礎研究にて有用性が示されたにも関わらず、ヒトの試験 (臨床試験)では有用性が示されず、開発が中断するといったことは多々起こります。

 我々の研究室では、ヒトの疾患により近い動物モデルの作製や一つの疾患に対して複数の動物モデルの作製に取り組んでいます。そして、それらの動物モデルを用いて、病態メカニズム解明及び薬剤の評価 (薬効評価) を行うことで患者の方々のQOL(Quality of life:生活の質) 向上につながる薬剤を見出す研究を行っています。また、国内外の研究機関と共同研究を行い、様々な角度から知見を取り入れ、多面的な研究につなげています。私たちの研究が新薬の開発への橋渡しとなり、患者さんの健康寿命の改善につながることを目標とし、日々研究に取り組んでいます。 

原 英彰 教授

1983年に岐阜薬科大学を卒業し、鐘紡株式会社薬品研究所、東北大学医学部脳疾患研究施設神経内科、ハーバード大学医学部 ニューロサイエンスセンター、参天製薬株式会社眼科研究所にて基礎研究に従事し、本邦で初めての片頭痛薬として保険適応となった塩酸ロメリジンなどの開発に携わった。

2004年から現薬効解析学研究室の前身となる生体機能分子講座教授に着任し、2007年から現職 (薬効解析学教授) に至るまで脳卒中治療薬、抗緑内障薬の開発に関する研究を行ってきた。

企業での研究経験から新薬開発における問題点を念頭に置き、様々な研究機関との共同研究を展開し、基礎研究を臨床応用に橋渡しすることを重視してきた。また、感謝とチャレンジ精神をモットーに医療に貢献できる人材育成にも携わり、これまでに多くの卒業生を輩出してきた。 

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感染症で苦しむ人を無くすため

感染制御学研究室

現在、新型コロナウイルスCOVID-19のパンデミックにより世界中の人がこれまでとは違う生活を余儀なくされています。COVID-19以外にも、感染症を引き起こすウイルスや細菌等の微生物(病原体)がたくさんいます。たとえば、エイズウイルス、結核菌、マラリア、下痢(ロタ)ウイルスなどの感染により、年間数十から数百万人が世界中で命を落としています。

私たちの研究室では、胎児に病気を起すサイトメガロウイルス(あまり聞いたことがないウイルスですよね。次の段落に特徴などの説明がありますので参考にしてください。)を中心に、インフルエンザウイルス、脳で増えて中枢神経の病気を起すウイルスなどを対象として、下記①-③のテーマを軸に研究を行っています。

サイトメガロウイルスとその感染症について

水ぼうそうの原因ウイルスの仲間で、6~7割の人は、子供の時に既に感染しています。感染したことがない女性が妊娠中に感染すると、先天性感染といって赤ちゃんの発達に悪影響を及ぼし、難聴や発達障害の原因になることがあります。私たちの研究で、出生児300人に1人が先天性感染していることが明らかになっており、新しい治療薬やワクチンの開発が望まれる感染症の一つです。

創薬の原点 〜植物に新薬候補化合物を求めて〜 

生薬学研究室 

「薬」という字は「療(い)やす草」を表しており,「くすり」という仮名は「奇(くす)し」〔神秘的な〕の転訛と云われています。実際に「伝承薬物」から「不思議な力」を純粋な化学物質として取り出し,その構造や機能について探究する学問を「天然物化学」と言います。私達の研究室では,幾つもの医薬品(クスリ)を創出してきたこの分野に注力しています。

植物について研究する上で,私達には岐阜市を中心とした美濃地方の豊富な資源を活用できるという大きな利点があります。ここに国内遠方や海外原産の植物を加えた貴重なストックから,現在マメ科・タデ科・パナマソウ科を始めとする約15科20種の植物を厳選して成分研究しています。

 既存の漢方生薬や西洋ハーブは,概ね世界各国の研究者によって調べ尽くされています。全く新しい素材や学術的知見に乏しい素材から,新しい化合物を探し出す。これこそが成分研究の醍醐味です。幾千の化学物質を含む植物エキスから苦労して分離した純物質は,学内外の共同研究パートナーに抗腫瘍・抗炎症・抗生活習慣病等の生物活性スクリーニングをして貰います。そして将来病気の治療や健康の維持に役立つような薬効を示すクスリのタネを発見します。

大山 雅義 教授

有機化学と漢方が好きで生薬学研究室に入室。良き指導者・先輩に出会い,植物成分の分離と構造解析の楽しさを知る。以来,新奇な天然物の発見を続ける。単離成分の生理活性試験を担う学内外の諸先生方に感謝。

1995年に岐阜薬科大学大学院博士後期課程を修了。一宮女子短期大学(非常勤講師),国立がんセンター研究所(昆虫・食草の抗腫瘍成分の探索),国立公衆衛生院(タバコ煙中ダイオキシンの定量),米国ノースカロライナ大学(熱帯・亜熱帯植物の抗腫瘍成分の探索),グラクソ・ウェルカム社米国RTP・英国本社研究所(微生物代謝産物の解析),米国プランタシューティカ社(抗HIV薬の合成),岐阜セラツク製造所(健食素材の試作・製造)を経て,2004年に本学に奉職。2013年より教授。博士(薬学),国際中医師。 

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治療薬のない神経難病疾患の発症機序の解明と根本的治療薬の開発 

薬物治療学研究室

 研究は神経変性疾患を対象に、有効な薬物治療薬の開発を目指している。主たる対象疾患は、特発性基底核石灰化症(IBGC)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)などの認知症、パーキンソン病(PD)である。

 現在、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)、厚労省の支援を受け、IBGCのゲノム解析、iPS 細胞の作製と活用、タウPETの活用、患者の語りに基づく質的分析を柱として、東京大学医学部、京都大学iPS細胞研究所、放射線医学研究所などと共同研究を行っている。同時に、特殊ペプチドを用いた治療薬開発を東京大学理学部と共同で取り組んでいる(図参照)。

 また、日本学術振興会の新学術領域「生命金属科学」の班研究代表メンバーとして、神経変性疾患における生命金属の役割について東京大学、京都大学、慶応大学と連携して研究を進めている。 

保住 功  教授

1981年 新潟大学医学部 卒業 1987年 新潟大学脳研究所大学院 卒業 1988年 米国アルバートアインシュタイン大学(神経科学)留学 1992年 新潟大学医学部 神経内科 助手 1999年 岐阜大学医学部 高齢医学(神経内科) 助手 岐阜大学医学部 高齢医学(神経内科) 講師 2000年 岐阜大学医学部 高齢医学(神経内科) 准教授 2006年 岐阜大学医学部 神経内科・老年学 臨床教授 2011年 岐阜薬科大学薬物治療学 教授 岐阜大学脳神経内科 客員教授 現在に至る

2018年 日本神経治療学会優秀演題賞受賞 2019年 日本毒性学会生体金属部会賞受賞  研究室ホームページ(更新予定)

医薬品・有機EL・光ファイバーなどの機能を革新的に向上させる重水素化学 

薬品化学研究室 

薬品化学研究室では、新しい有機反応・触媒・反応装置(デバイス)等の開発研究を広く進めています。水や有機溶媒から水素を取り出したり、地球温暖化物質である二酸化炭素と水からメタン燃料を合成するといった、地球環境や次世代エネルギーに貢献するテーマも展開しています。論文発表にとどまらず、70を超える特許を取得している点も特徴です。

その内の一つ、重水素 (D)の利用について説明します。Dとは何でしょう?皆さんが飲む水の中にも150 ppm程度含まれていますが、水素(H)と同じ元素番号なのに質量が約2倍ある安定同位体です。有機化合物は炭素(C)とHを主成分としていますが、そのC-HをC-Dに置き換えると結合が強力になり、たとえば医薬品の効き目が強くなったり、長い時間効いたりするようになります。また、C-D結合は可視光を吸収しないので透明度の高い光ファイバーを作れます。薬品化学研究室ではC-HをC-Dに簡単に置き換える化学反応技術を開発・実用化し、製薬・農薬・化学・環境など様々な分野で利用されています。

詳しくは中日新聞プラスに連続3回のオンライン解説を公表しています。

佐治木 弘尚  教授

1983年岐阜薬科大学卒業。1985年大学院修士課程修了。1986年博士課程中退、1989年まで寿製薬株式会社総合研究所、1989年薬学博士。1990年ニューヨーク州立大学博士研究員、1991年マサチューセッツ工科大学博士研究員、1992米国製薬企業Metasyn (後のEpix Pharmaceuticals)社グループリーダー (MRI造影剤VasovistTMを発明・開発)。1995年岐阜薬科大学助手、講師、助教授を経て2006年より教授、2014年より岐阜県環境審議会会長、2017年より日本プロセス化学会会長。2013年日本薬学会学術貢献賞と有機合成化学協会日産化学・有機合成新反応・手法賞、2015年エスペック環境研究奨励賞、2020年岐阜県環境保全推進功労者表彰などを受賞  研究室ホームページ

臨床薬剤師が行う患者さんのための研究~薬が適切かつ安全に使用されるために~ 

病院薬学研究室 

薬剤師は、くすりのプロフェッショナルとして、患者さんに合った薬やその量を医師に提案したり、薬について患者さんに説明したり、様々な活動を通じて、薬が適切かつ安全に使われるよう日々業務を行っています。

病院薬学研究室では、所属する教員が病院や薬局に配属されており、臨床現場で薬が適切かつ安全に使用されるために、薬物治療を受ける患者さんの生活の質(QOL)・副作用に関する研究や医薬品教育に関する研究を行っています。

医療現場において患者さんにアンケート調査を行ったり、患者さんの臨床データを調査したりして、薬物治療を受けることにより、患者さんのQOLがどのように変化するか、どのような副作用がどの程度起こるかを評価しています。

医療ビッグデータについて薬剤疫学的手法を用いて解析し、未知の副作用についての関連シグナルの探索などを行っています。

 また、一般の方が正しく薬を使うことができるよう、児童生徒・保護者・地域住民を対象にした医薬品教育プログラムの構築、薬剤師・薬学生のための医療コミュニケーション教育に関する研究を行っています。 

寺町 ひとみ 教授

大学を卒業してから病院薬剤師として、患者のための最適な薬物治療を実践してきた。現在は、教育者として、臨床で活躍できる薬剤師のための教育カリキュラムを構築するとともに、上記の研究を行っている。

1980年3月に金沢大学薬学部を卒業し、岐阜県内の病院に25年間従事した。その間、2003年3月に金沢大学大学院自然科学研究科博士後期課程修了し、博士(薬学)を取得。2015年4月に岐阜薬科大学講師に着任し、助教授(准教授)を経て、2013年10月に教授、2014年4月から岐阜薬科大学附属薬局長を兼任、現在に至る。また、2017年3月中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科修了し、経営管理学(修士 MBA)を取得。2006年に日本化学療法学会学術奨励賞を受賞。

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より良い医薬品・医療機器を適切に全ての患者さんに届けたい 

グローバルレギュラトリーサイエンス(GRS) 研究室

皆さんも、新型コロナ感染症治療薬として緊急的に承認された薬、レムデシビルに関するニュースを一度は目にしたことがあるのでは?

緊急的な承認は良いけれど、その薬は皆さんにとって本当に「有効」で「安全」なのでしょうか?

病院や薬局で処方される医薬品、使われる医療機器は、関連する法律に基づき厚生労働大臣の承認許可を経て流通しています。そのためには、どんなに素晴らしい創薬の種も最新機器も、原則的に臨床試験においてそのベネフィット(主に有効性)とリスク(主に安全性)を検証し、規制に従って承認申請され、ベネフィットがリスクを上回る判断されなければなりません。レムデシビルもそのような判断がなされました。

でも、本当にそれで良かったのか、正しいのか、もっと有効にかつ安全にその薬を使うことはできないのか?

そのような疑問や改善のために、GRSでは様々な公的公表データを用いて、薬事規制の在り方、ベネフィットとリスクをどのように比較し、承認可否の判断を行っているのかなどを研究しています。 

塚本 桂 教授

地元の岐阜市長良出身。薬学を志したわけではなかったのに、素晴らしい恩師、仲間に巡り合い、いつの間にか薬学で身を立てることに。人生って本当に分かりません。プライベートでは家族、友人、サイエンス、イタリアン・ヒストリックカーをこよなく愛する自由人。

1989年岐阜薬科大学を卒業後、25年間製薬企業において基礎研究などに従事。その間、国内1年間、ベルギー留学2年間を経て研究者としての研鑽を積む。2013年末GRSの前身であるGRS寄附講座発足に伴ってアカデミアに転身し、現在に至る。 

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より良い医薬品情報を医療現場に届けます! 

医薬品情報学研究室 

世の中には良い薬がたくさんあります。どの薬も、患者さんが楽しい生活をおくる助けとなります。多くの場合、寿命を延ばすこともできます。そのような素晴らしい薬が、たまたま、正しく使われていないばかりに本来の力を発揮できないとしたらもったいないですよね。

医薬品情報学研究室では、お薬を正しく使うための“知識”を見つけ・創りだし、全ての医療従事者・患者・ご家族に届けて、患者の健康と公衆衛生に貢献しています。

 例えば、何十年間もかけて世界中の医師、薬剤師、製薬企業、患者から集められた副作用のビッグデータが日本にもアメリカにもあります。数百万件から数千万件の貴重な患者データですが、人の目で全ての病気のパターンや、隠れた副作用を調べることは難しいのです。薬を正しく使うための知識は、その時々の最新の科学的知識に照らして常にアップデートされ続けなければいけません。ですから、医薬品情報学研究室ではコンピュータの力や、AIのテクニックを駆使して、世界中の人が正しく薬を使うための知識を、科学的な手法、統計学的な判断に基づいて評価しています。医薬品情報学研究室は、このような仕事を通じて社会に役立ちたいと考えています。 

中村 光浩 教授

1984年3月に岐阜薬科大学を卒業し、1986年3月に岐阜薬科大学大学院薬学研究科修士課程を修了。医学博士 (岐阜大学)。1986年4月より(株)大塚製薬工場 新薬研究所・開発部。1993年1月-2006年3月 岐阜大学病院 薬剤部 製剤室・薬品試験室。2006年4月より岐阜薬科大学 勤務。 

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くすりの生体内挙動や効果との関係を知り、くすりの適正使用を目指す 

薬物動態学研究室

くすりが私たちの体内に入ってから、どのように吸収されて効果を発揮して体外に排泄されるか知っていますか?

投与されたくすりは、物質の輸送を行うトランスポーター、代謝酵素、一緒に摂取した食品・成分などの影響を受けながら体外に排出されていきます。様々な要因によって、くすりの血中濃度が適正範囲を下回ったり超えたりすることで、十分な効果が得られなかったり副作用が発現したりします。

このように、くすりの体内動態(吸収・分布・代謝・排泄)を知ることは、より有効かつ安全なくすりの開発や適正使用に役立てることができます。

薬物動態学研究室では、①血液中や組織中のくすりの濃度を測定して経時的変化や、くすりの濃度と遺伝子多型や臨床効果(有効性と副作用)との関係についての解析、②健康食品素材がくすりの生体内挙動に影響しうるかどうかの評価などを行っています。また、③危険ドラッグの不正使用の摘発や使用抑止への貢献を目指し、危険ドラッグとその代謝物の測定・同定法の確立を行っています。これらの研究は、大学病院や県内外の医療機関、県内外の研究施設・行政機関、製薬・食品関連企業、健康食品素材メーカー等と連携して実施し、個別化医療のためのエビデンスを提供すること、医薬品の適正使用や安全な健康食品の創出に貢献することを目指しています。 

北市 清幸 教授

学部生の頃より薬理・ニューロサイエンス・薬物依存の研究とそれらに付随した薬物動態学的研究を行ってきた。本学着任後は前職の病院での経験を活かし、薬剤師による薬物治療への能動的な取り組みを促進するための各種薬物測定系の確立、それを活用した基礎/臨床統合研究の推進にも注力している。また、「危険ドラッグ蔓延防止のための岐阜モデル」を確立した岐阜危険ドラッグ解析技術連携協議会(2015年発足)の主要メンバーとして、県行政・研究機関との連携研究・地域貢献にも取り組んでいる。

 1991年岐阜薬科大学博士前期課程修了、1995年博士号(医学、名古屋大学)取得。マギル大学(カナダ)に留学。名古屋大学医学部(助手)、長崎国際大学(准教授)、岐阜大学医学部附属病院薬剤部(副薬剤部長・治験管理センター副センター長)での勤務を経て、2013年10月より岐阜薬科大学薬物動態学研究室教授に着任、現在に至る。日本食品安全協会副理事長。日本神経精神薬理学会理事。研究室ホームページ