研究室で取り組んでいるテーマ
研究室で取り組んでいるテーマ
植物を取り巻く生物間相互作用
植物を取り巻く生物(主に昆虫)との相互作用について、生態学を基盤として研究しています。
最近は、横浜市内の緑地や緑道をフィールドの中心に研究を行っています。
種生物学学会編 『植物たちの護身術』文一総合出版
これまで取り組んできた研究
外来植物は瞬く間に分布域を広げ在来植物を駆逐する場合がある一方で、定着してから気づいたら姿を消していたという場合があります。こうした外来植物の在来生態系でのふるまいの違いを理解・予測する上で、在来生物との相互作用のメカニズムの理解が欠かせません。これまで、侵入の歴史が分かっている北米原産の外来植物(セイタカアワダチソウ)の外来植食者(アワダチソウグンバイ)への抵抗性に注目し、日米での複数地点での野外調査・相互移植実験・集団遺伝解析から、気温や植食者といった生物・非生物的な要因の組み合わせが引き金となって、10年という比較的短い時間スケールで抵抗性に進化が起こることを明らかにしてきました。
また、外来植物が植食者を介して同所的に生育する在来植物に与える間接的な影響が(植物間の見かけの競争や送粉者を介した影響)、植物の進化史や気候、生活史によって異なることも分かってきました。
関連する主な論文
Sakata Y, Craig T. (2021) An exotic herbivore reinforces competition between exotic and native plants. Journal of Ecology 109:2740-2753. プレスリリース
坂田ゆず (2022)「植食性昆虫を介した外来植物と在来植物の相互作用」 日本生態学会誌 72:41-48.
タケササ類の多くは、広い範囲で同調して開花する植物であり、その開花周期は100年以上に及ぶとも言われています。そのようなタケササ類の花を食べる昆虫の生態の解明に取り組んでいます。主要な花食者であるササノミモグリバエ類が、タケササの非開花年にタケノコを食べていることを発見しました。一方で他のイネ科の中でもハマニンニクの花を食草とすることが分かっています。
全国20地点のスズタケとハチクの開花地において複数年にわたって結実率や食害率を調べることで、開花規模や開花年との関係を解析し、一斉開花が昆虫による食害を逃れる上で有利であることを明らかにしました。さらに、大規模な開花地では小規模な開花地と比べて種子食性昆虫に寄生する寄生蜂も増加することが分かり、寄生者によって種子食害が低く抑えられている可能性が示され、一斉開花の新たな意義を提示しました。
今後も複数のタケササ類が開花を迎えることが予測されており、これを機会にさらなる一斉開花の知られざる進化生態を解明したいと考えています。
関連する主な論文
Sakata Y, Hirota SK, Matsuo A, Kobayashi K, Nakahama N, Suyama Y. (2024) Contrasting patterns of genetic structure and population demography in two Dicraeus species feeding on bamboo flowers in Japan Biological Journal of the Linnean Society, blad171. プレスリリース
坂田ゆず・保坂 哲朗・平山貴美子・平山大輔・柿嶋聡・小島孔昭. 総論:マスティング植物と その花や種子を利用する昆虫,(2月号特集・マスティング植物と昆虫)昆虫と自然 61:2-4. 北隆館・ニューサイエンス社
坂田ゆず. タケ・ササ類と花食性昆虫との関係,(2月号特集・マスティング植物と昆虫)昆虫と自然 61:22-26 北隆館・ニューサイエンス社
近年各地で報告されているシカの過採食が、生物間の相互作用を介して他の生物に与える波及効果に注目し、シカの採食により秋にマルハナバチの重要な採餌源となっている草本植物が減少したことが、春や夏に開花しマルハナバチに送粉を依存する植物の繁殖に負の影響をもたらしている可能性があることを示しました。逆に、カラスシキミのように柔軟な送粉生態を持つことが不嗜好性種の個体数の増加に寄与している可能性もあります。
多雪地固有のトガクシショウマは、主に渓流沿いで春先に雪解けとともに花を咲かせます。雄蕊に触れると雌蕊へひっつく振動傾性を介して、ハナバチ類に効率よく送粉されていることが明らかになりました。また、早春の不安定な天候に左右されやすい送粉にハネカクシ類が補完的に寄与している可能性を示しました。
関連する主な論文
シカの分布が急速に拡大している北東北において、植物種に対する嗜好性とシカの侵入年数との関係を明らかにしました。さらに、パッチ内の不嗜好性種の存在によって、近くの嗜好性種が食害されにくくなったり、逆に食べられやすくなったりする現象に着目し、実験的に植物種を混植しシカの採食行動、食害パターン、植物の栄養分析の関係について明らかにしました。
関連する主な論文
Sakata Y, Shirahama N, Uechi A, Okano K. (2021) Variability in deer diet and plant vulnerability to browsing among forests with different establishment years of sika deer. PeerJ 9:e12165 プレスリリース
Sasaki K, Ito R. K, Sakata Y. (2026) Mechanisms of Associational effects of sika deer browsing: relationship between plant nutrients and foraging behavior. Ecological Research 41: e70134 横国プレスリリース 秋田県大プレスリリース
坂田ゆず.(2017) 秋田県八峰町におけるニホンジカのロードキル個体の胃内容物. Akita Nature Study.72:1-2.
坂田ゆず(2018)白神山地周辺におけるニホンジカの胃内容物—顕微鏡分析よDNAバーコーディングの異なる2つの手法を用いて.秋田県立大学ウェブジャーナルB 5:158-164.
坂田ゆず(2019)2種のハマキガ(ミニホソハマキ・アカスジキイロハマキ)の採集および食草の記録. Akita Nature Study.76:15-16.
坂田ゆず・久松定智 (2024) エチゴチビケシキスイの食草の記録〜カキドオシの花から幼虫を採集〜 Akita Nature Study 81:5-6