結成の目的
高知市教育研究会の結成にあたって,高知市内各学校教職員あての文書(昭和47年9月9日付)に次のように書かれています。ここでは,当時の原文をそのまま掲載させていただきます。
情報化社会とか変革・激動の時代とかいわれている今日の日本は,科学・技術などがめざましいスピードで進歩していながらも, 一方では高度経済成長政策による人間疎外・公害・交通問題など,さまざまなひずみを起こしております。このように複雑多様な激動する時代の流れの中で 「日本の教育はどうあるべきか」を考えることは容易なことではありませんが,その原点が憲法と教育基本法にあることはだれもが認めるところであります。
教育の憲法といわれている教育基本法は,その前文の中で「日本国憲法の理想を実現するためには,教育の力にまたねばならぬ」として,「個人の尊厳を重んじ,真理と平和を希求する人間の育成と,普遍的にして個性ゆたかな文化の創造をめざす教育の徹底」をかかげております。
わたしたち教育のしごとにたずさわるものは,この基本法の精神のもとに結集し,衆知を集めなければならないと考えます。そして,ひとりひとりの着実な研究実践が集団の連帯の中で確かめられ,ひろげられると同時に集団討議の中から前進への足がかりを求めることがたいせつでありましょう。
このような観点から,高知市での教育研究の現状をみるとき,なお多くの改善しなければならない問題点があるといえましょう。
戦後の高知市での教育研究のあゆみをふりかえりますと,昭和40年代のはじめまでは,市教委・市教組・研究団体等の協力のもとに,全市的な研究が進められ,多くの成果をおさめてきました。しかし,昭和43年市教委の企画した全市研修会の開催を機に,研修の自由にかかわる問題がおこり,全市研も中止されたわけであります。
現状は,各学校別の研究・各教科等の研究団体による自主的研究・市教組教研などは進められながらも,全教職員の連帯感に支えられた全市的・総合的な研究の場を持つまでには至っていないのであります。
このような過去の経過と現状の状況について深く考えたとき,わたしたちは,教育基本法にかかげられた理想の実現と,高知市教育の向上を目ざし,市民の負託にこたえるため,今こそ真剣な討議をおこすべきであるとの意見の一致をみました。そのためには,全教職員の連帯と自主的積極的な研究の推進はもとより,学問研究の自由・研修時間の確保・民主的な運営等が保証されなければなりませんし,教職員ひとりひとりの自発性に期待し,その主体性を尊重することを確認せねばなりません。
この基本線にたって,わたしたちは新しい研究組織として高知市教育研究会を結成することに合意し,会則案の成立をみたわけであります。
以上,本会結成の趣旨についてご理解ご賛同をいただき,高知市全教職員の参加による,全市を統一した強力な研究組織を誕生させるため,ぜひご参加くださるよう心からお願いいたします。
昭和47年9月9日
発起人
高知市教育長
高島田 正司
高知市教職員組合
長岡内 つとむ
高知市校長会長
川崎 源治
高知市教頭会長
正木 長生
高知市立学校事務職員会長
徳弘 千世香
高知市役務員会長
阿部 幸男
高知市調理員会長
川野 伊都子