2025年4月〜:東京大学大学院 理学系研究科地球惑星科学専攻(博士課程)
2023年4月〜2025年3月:東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻(修士課程)
2021年4月〜2023年3月:東京大学 理学部 地球惑星物理学科
[2] Someya, M. & Furumura, T. Physics-Informed Neural Networks for Offshore Tsunami Data Assimilation. Geophysical Journal International, 242(3), ggaf243 (2025). https://doi.org/10.1093/gji/ggaf243
修論をまとめたもの。2月に投稿し、一度Major Revisionになったあと、二度目でAcceptになった。
この論文、というより修士の間の研究の経緯は次のとおり:卒業研究(論文[1])が片付いたM1の夏ごろから、やりたかったPINNの研究に着手した。最初は地震波動場の再構成をやっていたが、あまりうまくいかず、M1の冬ごろに津波波動場に転向し、これがうまくいった(沿岸での反射まで解ければ万々歳だが、難しそうなので、BCを気にしなくていい沖合津波にターゲットを絞ったので、完全勝利とは言い難いが)。最初は波動場「再構成」と呼んでいたが、やっていることは「データ同化」であり、途中からそう呼ぶようにした。最終的に、「沖合津波計のデータを使ったデータ同化&波源推定」というテーマに落ち着いた。津波シミュレーションライブラリの使い方とか、海底圧力計データの取り扱いとか、PINN以外でもかなり勉強になった。
同時期に、同期がアジョイント法で似たようなことをやっていて刺激になった。PINNとアジョイント法の考え方は似ており、学会発表ではそれを説明するスライドをいつも忍ばせていたのだが、結局あまり使わなかったから、ここで簡単に書いておく;どちらの場合でも、目的は観測データと計算結果のミスフィットJを最小化するような波動場を求めることにある。アジョイント法では、初期条件が決まればその後の波動場の時間発展が決まると考えて、初期条件η₀を未知パラメータに取って、Jを最小化するη₀を求めることを目標とする。そのためには勾配∂J/∂η₀が必要であり、それは波動場の逆伝播計算(アジョイント方程式を解くこと)で求められるというのがミソである。一方PINNでは、波動場はNNで表現されるのであり、未知パラメータはNNの重みやバイアス等(ここではまとめてθと書くことにする)である。同様に勾配∂J/∂θが必要になるが、これは自動微分で簡単に求められる(いわゆるback-propagation)。アジョイント計算と自動微分によるback-propagationは数学的には同じようなものだから、違いは波動場をどう表すかくらいしかない、というわけである。PINNとアジョイント法のどっちがいいかはケースバーケースであり、PINNの方が滑らかな波動場になるとか、アジョイント法では沿岸境界条件も入るとか、言い出せばキリがないからやめておく。
最後にこの論文の意義。(1)津波+PINNの研究自体が少ないのだが、その中でも実データまで使って検証したこと(ただし残念なことに、実データを使った最初の研究ではないらしいことを最近知った)。また先行研究ではほとんどが順問題のはずで、データ同化的なことをやったのは珍しいと思う。(2)アジョイント法の欠点を克服する可能性があること。データに短周期成分が含まれるとか、途中でデータが切れているとかいった場合にアジョイント計算をやると大量の高周波成分が出るが、PINNならかなり滑らかで安定した結果になりやすい。ただし、実情以上に平滑化してしまう危険もあるのでそこは注意。(3)これは個人的には気に入っているが、明らかに本筋から逸脱しているので、泣く泣くAppendixに追放することになったネタである;海底圧力計では、海底面自体の上下変動により圧力のオフセットが乗ることがあり、それにどう対処するかが津波逆解析の問題の1つである。何も考えずにやると、永続的に残り続けるオフセット成分が外力として働き続けるので、波動場の真ん中に穴が空いた状態になってしまう。これを逆手にとり、オフセット成分から外力を推定してみたら案外うまくいった、という話である(見方を変えると、本文中では 波動場を表すNNを最適化→そこにt=0を代入したものを初期波源として取り出す という流れをとっているが、波源を外力として表現するような方法でも初期波源を推定できる、ということ)。普通は外力に関する制限がないために劣決定問題になるのだが、ここでは津波の励起が一瞬という仮定をおくことでなんとか解ける問題にしている。
[1] Someya, M., Watada, S. & Furumura, T. 2D FDM Simulation of Seismic Waves and Tsunamis Based on Improved Coupling Equations Under Gravity. Pure and Applied Geophysics. 181, 1053-1073 (2024). https://doi.org/10.1007/s00024-024-03468-2
B4後期の卒業研究の成果。今思うと長すぎて読みにくいかもしれない。M1の夏に投稿したが、査読に時間がかかり出版はM2の春。
当初のテーマは、B4前期の演習で読んだ地震波・津波同時計算法(Maeda & Furumura 2013)で使われている式(近似)の精度を調べる、というものだった。しかし、研究を始めてすぐに同時計算法のレビューが出て、別の同時計算法(Lotto & Dunham 2015)が存在することを知り、MFとLDの両方を調べることにした。
(詳細は論文を読んでいただくとして)自分の思う論文の意義を挙げておく;①近似なしの方程式を導いた(提案した)こと。すでに球座標系での表現は知られているので、ローカルな直交座標系(しかも2D)を導いた意義は小さいが…②提案式と従来式(MF, LD)を比較し、従来式の立ち位置を説明したこと(これは結構重要だと思う)。③差分計算をして、提案式が一番精度がいいことを確かめたこと。副産物として、重力のある系では密度成層構造を使わないと不安定を起こすこと、津波の固有関数がかなり深い根を持つので、計算領域の深さを十分取らないとまずいこと、などもわかった。
時間が限られていたので2Dでしか計算していないが、いずれ3D計算をやりたいと思っている。
[1] Someya, M., Yamada, T. & Okazaki, T. OkadaTorch: A Differentiable Programming of Okada Model to Calculate Displacements and Strains from Fault Parameters. arXiv preprint (2025). https://doi.org/10.48550/arXiv.2507.17126
研究の過程で作っているコードの一部分を、単体で世に出した方が色々と役に立つ(+後で引用できる)かと思い、簡単なプレプリントを書いた。
簡単に言えば、断層の作る変位を計算するOkadaの式(元々はFORTRANで実装)を、PyTorchに移植したというもの。これによりモデルに自動微分が通るようになり、パラメータに関する勾配を求めて最適化するとか、他のPyTorchで書かれたモデルと統合したモデルを作ることができるとか、色々いいことがある(と信じている)。
[6] 染矢真好、古村孝志「Neural Operatorによる津波シミュレーションの代理モデル」(日本応用数理学会2025年度年会、2025/9/2、東京理科大学神楽坂キャンパス、口頭発表)
[5] 岡崎智久、縣亮一郎、加納将行、佐藤大祐、染矢真好、福嶋陸斗「ニューラル作用素による地震サイクル計算および長周期地震動予報の検討」(日本地球惑星科学連合2025年大会、2025/5/26、幕張メッセ、ポスター発表)
[4] 染矢真好、古村孝志「Physics-Informed Neural Network (PINN) による津波のデータ同化」(日本地震学会2024年度秋季大会、2024/10/23、朱鷺メッセ、口頭発表) [学生優秀発表賞]
[3] 染矢真好、古村孝志「Physics-Informed Neural Network (PINN) による津波のデータ同化」(日本地球惑星科学連合2024年大会、2024/5/31、幕張メッセ、ポスター発表)
[2] 染矢真好、古村孝志「Physics-Informed Neural Network による地震波伝播の評価:2次元音波・弾性波での数値実験」(日本地震学会2023年度秋季大会、2023/11/1、パシフィコ横浜、ポスター発表)
[1] 染矢真好、綿田辰吾、古村孝志「Euler的変化とLagrange的変化を区別した地震波と津波の同時シミュレーション」(日本地球惑星科学連合2023年大会、2023/5/21、幕張メッセ、口頭発表)
[5] 染矢真好、三反畑修、綿田辰吾、古村孝志 「2025年カムチャッカ半島地震(Mw8.8)に伴う遠地津波の伝播特性」(第1050回地震研究所談話会、2025/9/12、東大地震研、口頭発表)
[4] Someya, M. & Furumura, T. "Surrogate Modeling of Tsunami Simulation using Neural Operators: Toward Rapid Tsunami Source Inversion" (Joint Workshop of the ERI-DPRI Tsunami Research Group 2025, 2025/8/27, ERI, Oral)
[3] Someya, M. & Furumura, T. "Physics-Informed Neural Networks (PINNs) for Tsunami Data Assimilation" (ERI-IPGP Workshop 2024, 2024/11/12, IPGP, Poster)
[2] Someya, M. & Furumura, T. "Physics-Informed Neural Network (PINN) for Tsunami Data Assimilation" (Joint Workshop of the ERI-DPRI Tsunami Research Group 2024, 2024/10/8, Uji Campus of Kyoto University, Oral)
[1] 染矢真好、古村孝志「Physics-Informed Neural Network (PINN)による地震波伝播の評価:2次元弾性波動場での数値実験」(2023年度 東京大学地震研究所共同利用研究集会「地震波形解剖学 3.0」 - 高密度観測・高周波数地震動で視る地殻・マントル不均質構造 -、2023/12/19、東大地震研、口頭発表)
[1] 2024年度 日本地震学会 学生優秀発表賞
[2025/8/1] 地震研のホームページに、カムチャツカ半島沖地震(Mw8.8)の津波シミュレーション結果を掲載していただきました:カムチャツカ半島沖地震:津波シミュレーションとDART観測データの比較
2025年6月〜 地震研究所 一般RA
2025年6月〜 JAMSTEC 臨時研究補助員・研究生
2025年4月〜 日本学術振興会 特別研究員(DC1)
2023年10月〜 宇宙地球フロンティア国際卓越大学院プログラム(IGPEES)
メール(🌀を@に変えてください):someya🌀eri.u-tokyo.ac.jp
GitHub:https://github.com/msomeya1