沿岸域で優占する動物プランクトン
ニューストンネットを用いたマイクロプラスチックの採集
動物プランクトンの種多様性・生物地理
動物プランクトン種は海洋漂泳区で優占し、既知種だけで7000種を超える多様なグループです。群集構造を迅速かつ網羅的に解明可能なメタバーコーディング法により、地球規模の動物プランクトンの種多様性・生物地理の把握を目指しています。また、メタバーコーディングに必須な遺伝子配列のデータベース整備のため、動物プランクトンの遺伝子データの充実を進め、分類体系の整理も行っています。
動物プランクトンに感染するウイルスの多様性と生態学的意義
動物プランクトンとウイルスは海洋生態系における重要なグループですが、これらの相互作用は理解が進んでいません。この未知なる多様性や生態学的意義を秘める動物プランクトンのウイルスの研究を進めています。動物プランクトンの個体群動態にウイルスが与える影響や、ウイルス感染に対する動物プランクトンの生理応答を分子生物学的手法により調べています。
沿岸性動物プランクトンの環境適応機構
海洋の沿岸域では生物を取り巻く環境は季節的、あるいはより短い時間スケールで大きく変動します。このような変化に富む環境に対して動物プランクトンはどのように適応しているのでしょうか。動物プランクトンの生活史形質のうち、特に休眠に注目し、その季節性や誘導要因の種内地理的変異を明らかにすることで、変動環境への適応機構やその進化的背景を理解することを目指しています。
海洋におけるマイクロプラスチックの動態
プラスチックによる海洋汚染は地球規模での環境問題となっています。海洋に流入したプラスチックは紫外線や物理的な破砕によって微細化し、やがて沈降することで海洋表層から除去されると考えられていますが、その過程についての理解は進んでいません。海洋表層から海底堆積物に至るマイクロプラスチックの分布を世界の様々な海域において調べることにより、海洋におけるマイクロプラスチックの動態を明らかにする研究に取り組んでいます。
珪藻細胞(赤色)と活発に増殖する海洋細菌(緑色)の蛍光顕微鏡画像
南極観測船「しらせ」
単離培養した海洋細菌のコロニー
海表面マイクロ層とエアロゾルの微生物動態
海表面マイクロ層(sea surface microlayer: SML)は海の極表層1mm以下の厚さに相当する層を指し,大気と海洋の境界面にあたる領域です.海洋の生物活動による気候システムへのフィードバックを制御する鍵として,海表面マイクロ層とそこから生成するエアロゾルにおける微生物動態に注目し,独自のサンプリング装置と最新の環境DNA/RNA解析技術を駆使して,微生物群集の組成と機能を解析しています。
北極海・南極海における微生物生態に関する研究
極域は地球温暖化の影響を最も受けやすい海域であり、近年、その影響で海氷融解が進んでいます。特に北極海では海氷減少が顕著で、今世紀半ばには夏季の海氷域が消滅すると予測されています。海氷のような巨大な構造物が海からなくなると、当然そこにすむ生物にも大きな影響があります。このような環境変化に真っ先に影響があるのは食物連鎖のピラミッドの底辺に位置する植物プランクトンや細菌、古細菌です。我々の研究室では極域に生息するこれら微生物の機能や生態学的特徴と環境変化への応答について、現場観測ベースの研究で明らかにすることを目指しています。
海洋微生物の持つ新規光受容体に関する統合的研究
地球生命圏は太陽光に由来するエネルギーを基盤に成り立っています。近年、大規模な遺伝子解析から、クロロフィルとは異なる光受容体(微生物型ロドプシン)を持つ微生物が海洋表層に普遍的に存在することが分かってきました。我々の研究室では、最新の遺伝子解析技術や分子生物学的手法を駆使することで未だ謎の多いロドプシン保有微生物の生態や進化を解き明かす研究を行っています。
未知海洋微生物の分離培養と新種記載
海洋には膨大な数の未知微生物が存在しています。我々の研究室では、未知微生物の分離培養やゲノム解析を通して、新しい微生物種の提案や新規生物機能の探索を行っています。
研究船による深海ベントスの採集
熱水や海溝域を含む深海におけるベントスの進化と生態
深海底の熱水噴出域や海溝の最深部には、それぞれの環境に適応した固有動物群が生息しており、深海生物の進化を理解する上で絶好の研究対象です。私たちは、DNA塩基配列と形態の比較に基づき、貝類を中心とした様々な深海性動物の起源と進化、分布、集団構造などを検討しています。またその分散機構を理解するために、プランクトン幼生の飼育を含む初期生態研究を実施しています。
日本海の海洋生命史
日本海は、狭く浅い海峡によって周囲の海域から隔てられた半閉鎖的な縁海です。最終氷期の最盛期には、海水準の低下と大陸からの多量の淡水流入により環境が悪化し、多くの海洋生物が絶滅したとされています。私たちは、底魚類や巻貝類の遺伝的解析により、こうした日本海の環境変動や近年の人間活動に起因する気候変動が生物の進化や集団構造にどのような影響を与えてきたかを検討しています。
海岸動物の系統地理学
南北に細長い日本列島や琉球列島の海岸に住む動物のうち、浮遊幼生期の短い種や直達発生を行う種は、その分散能力の低さから、地域集団が他の集団から遺伝的に分化する傾向がみられます。そうした遺伝的分化のパターンを調べることで、現在の地形や海流、また過去の海洋環境変動との関係を把握し、将来の環境変動の影響を評価するための研究を進めています。
両側回遊性貝類の自然史
川にすむ巻貝のなかには、幼生期に海へ出て分散する両側回遊型の生活環をもつものがあります。インド・西太平洋の低緯度域島嶼では、このような両側回遊種が卓越し、また高い種多様性を示します。私たちは、熱帯島嶼における河川動物相の成立と維持機構の解明にむけ、これら巻貝の分布、遺伝的・形態的多様性、種分類、系統進化、行動・生態、初期発生と分散について 多角的な研究を進めています。