物性セミナーはじまります。
駒場の物性グループでのほぼ定期的セミナーの案内ページ
駒場の物性グループでは定期的にセミナー開いています.このセミナーは,駒場の物性理論グループのスタッフとその大学院生が主な聴衆です.東大の駒場キャンパスの物性理論グループには固体物性論から統計力学まで幅広い分野のスタッフが在籍しており,研究室の垣根にこだわらず,緩やかに結合したグループ体系でこのセミナーを運営しています.あえて言えば,純粋に学問的な興味だけで集い,そして駒場らしいセミナーを目指しています.このセミナーはオープンですので,どなたでもご自由に参加して,議論に加わってください.
日時 2026年 11月13日(金) 午後4時50分-6時15分程度
場所 Zoomによるオンライン配信
近年、結晶中のカイラルフォノンと円偏光の角運動量交換やカイラリティ誘起スピン選択性(CISS)など、物質のカイラリティと角運動量が結びつく現象が注目されている。しかし両者は対称性の異なる量であり、角運動量は軸性ベクトルで時間反転で符号を変え、カイラリティは擬スカラーで空間反転で符号を変える。光に関しては、スピンと軌道の角運動量について物質との相互作用も含め様々な観点から研究されてきたが、光カイラリティ、とりわけ軌道の光カイラリティについては理論・実験ともに未開拓である。本講演では、軌道角運動量を持つカイラルな光渦とカイラルナノ構造との相互作用の実験・理論解析に基づき、軌道に基づく光カイラリティという物理量はそもそも存在するのか?それは物質系のカイラリティと相互作用しうるのか?といった根本的な問いについて議論する。あわせて、光の描像を通して、角運動量とカイラリティの違いを、分野を超えて考える機会にしたい。
[1] Y.Y.Tanaka and K.Sasaki, arXiv:2609.25629
[2] S.Hashiyada, A.Wu, Y.Y.Tanaka, Optica 13, 353 (2026).
[3] S.Hashiyada and Y.Y.Tanaka, Phys. Rev. Research 7, L022052 (2025).
日時 2026年 10月23日(金) 午後4時50分-6時15分程度
場所 16号館827室における対面およびZoomによるオンライン配信
スピンHall (SH)効果はスピン軌道相互作用を通じて電場と垂直にスピン流が誘起される,いわば異常Hall効果のスピン版として理解されている.ところがスピン軌道相互作用がある場合,スピン流は一意的に決まらないため,SH伝導度はSH効果のよい指標たりえない.SH効果では試料の端でスピン流がスピンへと緩和することで副次的にスピン蓄積が生じると考えられているが,逆にスピン蓄積がSH効果の本質であるという考え方を提唱する.
電場勾配に対するスピンの応答係数をスピン蓄積係数と呼ぶことにすると,端におけるスピン蓄積を特徴づける量でありながら,バルクで計算することができ,特に緩和時間近似ではBloch波動関数を用いて書き下すことができる [1].こうして得られた公式は最局在Wannier関数を併用して第一原理的に計算することができる [2].また,温度勾配によって駆動されるスピンNernst効果への拡張も容易である [3].最後に,異常Hall効果に関連して,SH効果が従うスケーリング関係式について述べる [4].
[1] Shitade and Tatara, Phys. Rev. B 105, L201202 (2022).
[2] Shitade and Minamitani, npj Spintron. 3, 29 (2025).
[3] Shitade, Phys. Rev. B 106, 045203 (2022).
[4] Shitade and Nagaosa, arXiv: 2607.00343.
日時 2026年 11月13日(金) 午後4時50分-6時15分程度
場所 Zoomによるオンライン配信
近年、結晶中のカイラルフォノンと円偏光の角運動量交換やカイラリティ誘起スピン選択性(CISS)など、物質のカイラリティと角運動量が結びつく現象が注目されている。しかし両者は対称性の異なる量であり、角運動量は軸性ベクトルで時間反転で符号を変え、カイラリティは擬スカラーで空間反転で符号を変える。光に関しては、スピンと軌道の角運動量について物質との相互作用も含め様々な観点から研究されてきたが、光カイラリティ、とりわけ軌道の光カイラリティについては理論・実験ともに未開拓である。本講演では、軌道角運動量を持つカイラルな光渦とカイラルナノ構造との相互作用の実験・理論解析に基づき、軌道に基づく光カイラリティという物理量はそもそも存在するのか?それは物質系のカイラリティと相互作用しうるのか?といった根本的な問いについて議論する。あわせて、光の描像を通して、角運動量とカイラリティの違いを、分野を超えて考える機会にしたい。
[1] Y.Y.Tanaka and K.Sasaki, arXiv:2609.25629
[2] S.Hashiyada, A.Wu, Y.Y.Tanaka, Optica 13, 353 (2026).
[3] S.Hashiyada and Y.Y.Tanaka, Phys. Rev. Research 7, L022052 (2025).
日時 2026年 12月18日(金) 午後4時50分-6時15分程度
場所 16号館827室における対面およびZoomによるオンライン配信
スキルミオンおよび反スキルミオンは、ナノスケールの渦状のスピン構造体であり、非自明なトポロジーに由来する物性やスピントロニクス素子への応用の観点から注目を集めている。本セミナーでは、特徴的な結晶対称性を有する磁性体に着目し、室温以上で安定なトポロジカルスピン構造について紹介する。まず、β-Mn型のキラルな結晶構造を持つCo-Zn-Mn合金における室温スキルミオンとその堅牢な準安定性について概説する[1]。次に、S4対称性を有する(Fe,Ni,Pd)3Pにおいて、異方的なジャロシンスキー・守谷相互作用によって安定化される室温反スキルミオンと、磁場・温度・試料厚みによって変化する複雑な磁気構造について議論する[2]。最後に、歪んだカゴメ格子を有するMnRhPにおいて最近発見された室温スキルミオンおよびノーダルラインに由来する大きな異常ホール効果について紹介する[3]。これらを通じて、結晶対称性および磁気相互作用がトポロジカルスピン構造に果たす役割について議論する。
[1] K. Karube et al., Nat. Mater. 15, 1237 (2016).
[2] K. Karube et al., Nat. Mater. 20, 335 (2021).
[3] K. Karube et al., Adv. Sci. 13, e21734 (2026).
加藤雄介、神田朋希、塩見雄毅、福島孝治、光元亨汰