2024年6月8日-9日  
東京大学 本郷キャンパス

国際シンポジウム

越境する教育コミュニティの構築:教育実践者と研究者の互恵的パートナーシップの実現

現在、世界中で多様な教育課題が浮上しています。例えば、増加する移民や難民により、教室内の多様性が顕著に増しているのはその一例です。これらの社会課題に効果的に対応し、解決策を模索するためには、研究者と実践家が対等かつ互恵的な関係を築きながら共に取り組むことが求められます。日本においては、教師が授業を公開し、研究者と共に議論を深める「授業研究」の文化が根付いており、そのため他国と比較しても研究者と実践家の連携は進んでいると言えます。しかし、社会課題に対する共創のアプローチ(Co-Creating, Castelijns & Vermeulen, 2017)はまだ十分ではありません。本シンポジウムでは、ドイツや台湾から国際的な研究者を迎え、これらの課題に対する具体的な戦略や解決策について議論を深めます。また、実践家と研究者が共にポスター発表やラウンドテーブルを行い、教育的社会課題に対処するための国際コミュニティを構築することを目指します。


本シンポジウムは、東京大学大学院教学研究科とポツダム大学人間科学部の学術協定を中核として開催されます。

 プログラム

 

 講演者

植阪  友理  准教授(東京大学, 日本)

実践家と研究者の理想的な協働を実現するためのフレームワークの提案

 現代の教育課題に対処するには、対等かつ相互互恵的な関係を組織的に築くことが急務です。この発表では、そのような関係性を形成するための枠組みを提案します。この提案の中心は、研究と実践が結びつくコミュニティを創出することにあります。具体的には、日本での「教育研究交流会(EdBridge Forum)」の実践を紹介し、これを国際的に展開するための戦略「(超地域的)オンライン授業研究」についても議論します。

デュモント ハンナ 教授(ポツダム大学, ドイツ)

研究と実践の対等で互恵的な関係構築の必要性 ードイツからの洞察ー

 教育研究は、学生がどのように学ぶか、また教師がより深い学びを促進するために何ができるかについて広範な知識基盤を蓄積してきました。同時に、教師も学生の学習プロセスを開始し支援する重要な専門知識を持っています。ところが残念ながら、研究と実践から得られるこれらの洞察はしばしば互いに接続されていません。学生の経験を向上させるためには、研究と実践が相互に補完し合い、互いから学ぶことが重要です。この講演では、研究と実践の間に平等で相互に有益な関係を構築する必要性について説明し、この目標を達成するために向けたいくつかのドイツのプロジェクトについて紹介します。

荘  雪華  教授(国立中山大学, 台湾)

研究者と実践家の協力による3年間の実践的試み

 このプロジェクトは、国際的なオンライン教育の共同実践を通じて、台湾における教師の専門的なスキルの向上と生徒の英語学習の深化を目指しています。また、この取り組みには、大学の研究者と学校の実践者が協力している点にも特徴があります。紹介する国際交流は、外国の教師や生徒とのオンラインでのやり取りを基にし、地域文化と国際文化を結びつけるために特別に設計された詳細な文化カリキュラムに焦点を当てています。地域社会と大学の資源を組み合わせることで、本格的な国際交流の環境を作ろうとしています。また、参加者は英語で行われるオンライン交流に向けて、準備をします。こうしたプログラムはオンラインで提供され、台湾と外国の教師が協力して授業を行っています。大学の研究者は教師と連携しながら、専門家として成長を促す分野を特定し、生徒の成果や課題を評価しています。

マナロ  エマニュエル  教授(京都大学, 日本)

ワークショップ: 実践家と研究者の協働で起こりうる 問題を予測し、実行可能な解決策を共に考える

 教育研究者と現場の実践家(特に学校教員)の多くが、協力関係を築くことの重要性に同意しています。しかし、さまざまな理由から、この種の共同研究に抵抗を感じたり、困難だと感じる研究者や実践家も少なくありません。この問題を解決するため、本ワークショップではまず、共同研究において一般的に直面する課題を概説し、それらをより扱いやすくするアドバイスを提供します。また、成功に導く基本的なステップも提案します。参加者は、自らの意見や経験を共有する機会を持ち、持続的な問題や新たに発見された問題に対する実行可能な解決策を共に探求します。このワークショップの目的は、協力関係が効果的に機能する方法と、参加者が希望する場合に実際にどのようにその関係を築いていくかを理解を深めることです。

会場

東京大学 大学院教育学研究科

〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1

アクセス情報(東京大学HP)

【本イベントに関する問い合わせ先】

   植阪友理   yuri-uesaka*g.ecc.u-tokyo.ac.jp (* を @ に置き換えて下さい)