文学研究科
仏文学専攻
仏文学専攻
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文学研究科 仏文学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:美術史学博士(パリ第1大学)
【専門分野】
西洋美術史
【研究キーワード】
新古典主義美術、フランス近代美術、ドミニク・アングル、フランス美術史学史
【研究内容】
フランスを中心とする新古典主義美術、およびアンリ・フォシヨンを中心に美術史学の歴史について研究しています。
内容は以下のウェブサイトに詳しく記載されていますので、ご覧ください。
■Researchmap 個人ページ
https://researchmap.jp/ABE_Shigeki/
■中央大学文学部美術史美術館コース スタッフ紹介
https://arthistory.r.chuo-u.ac.jp/course/faculty
【主な論文・著書】
● 「かたち・装飾・生命」『ユリイカ』5月号(特集=アンリ・マティス)、青土社、2021年
● 「美術アカデミー:美術を教えることは可能か」美学会編『美学の事典』、丸善出版、2020年
● 『アンリ・フォシヨンと未完の美術史 かたち・生命・歴史』、岩波書店、2019年
● アルバート・ボイム『アカデミーとフランス近代絵画』(共訳)、三元社、2005年
● アンリ・フォシヨン『かたちの生命』ちくま学芸文庫、2004年
【メッセージ】
自由で柔軟な知としての美術史学には、広い展望があると思います。研究職に限らず社会一般で専門的な知見と視点、思考力を生かす道も念頭に、指導したいと考えています。美術館見学も交えながら、テーマ設定、文献読解、そしてなにより作品の見かたについての学問的な手際を身につけ、各自に合った未来を開いていきましょう。
【担当科目】
インターンシップ(美術館実務研修)、フランス近代美術史演習A、フランス近代美術史演習B、フランス近代美術史特殊研究 A、フランス近代美術史特殊研究B
【問い合わせ先】
abes●tamacc.chuo-u.ac.jp
文学研究科 仏文学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:博士(学術)東京大学
【専門分野】
美術史、芸術学
【研究キーワード】
文化遺産、美術館、美術史学史、美術批評、建築の表象、中世美術の再評価
【研究内容】
芸術作品に二つの生があるとしたら、第一の生は芸術家が生み出す作品そのものであり、第二の生は社会が生み出す作品の価値と言えるでしょう。これまで関心を注いできたのは、第二の生をめぐる研究です。芸術作品が社会のなかでどのように受容されたのか、忘れ去られた作品あるいは価値のないものとされていた作品がどのように再発見・再評価されたのか、美術館や文化財保護の制度のもとでどのように守られ受け継がれてきたのか、こうした問題意識のもとに考察を重ねてきました。研究対象は19世紀から20世紀初頭のフランスですが、このテーマは私たちにとっても今の文化遺産を次の世代にどのように継承してゆくのかという問題につながってきます。
2019年火災に見舞われたパリのノートル=ダム大聖堂を例に考えてみましょう。中世の時代に建造されたこのゴシック建築は、ルネサンス以降 “野蛮な”様式とみなされていました。しかし19世紀にゴシック・リヴァイヴァルという中世建築を積極的に再評価する動きがヨーロッパで広がり、ロマン主義やナショナリズムの思潮と結びついて、国民精神を体現する建造物として称えられるようになります。フランスでこうした機運を高めたのが、ヴィクトル・ユゴーの歴史小説『ノートル=ダム・ド・パリ』でした。この小説が刊行された1830年代に文化財保護のための制度が立ち上がり、本格的な保護活動が開始されます。革命期の破壊行為により荒廃の状態にあった歴史的建造物の大規模な修復が行われ、ノートル=ダム大聖堂を手掛けたのがヴィオレ=ル=デュックです。政府による修復・保存活動が進められるなかで、過去から受け継いだ作品を保護し後世に継承するという考え方も近代社会のなかで形成されてゆくことになります。博士論文では、「文化遺産」の思想がどのような歴史的背景のもとで生まれ、発展したのかについて考察しました。
ある作品がいかなる理由で価値があると見なされ、保存の対象となるのか、そこには眼差しがあります。これまでの研究を通して学んだことは、この眼差しが複雑な歴史的文脈から生まれるということです。その文脈を解きほぐす作業のなかで、政治、経済、宗教、思想など、芸術領域を超えた問題との関わりが見えてきます。「文化遺産」の文化史を考えるには、多様な領域へと視野を広げなければならないのです。
最近の関心は、19世紀ヨーロッパの旅の文化のなかでの建築への眼差しです。当時の大型出版物のイメージとテクストを分析対象に、大聖堂の表象から当時のどのような保護意識が読み取れるのかについて考察しています。自分自身も旅に出て、建築への眼差しを鍛えたいと思っています。
【主な論文・著書】
●論文(雑誌)「美術史における《ソレムの聖人たち》:19世紀フランスの修道院と遺産の継承」、『中央大学文学部紀要(言語・文学・文化)』第134号、2024年3月、71-111頁
●論文(雑誌) « Le regard de Proust sur le patrimoine : à propos de quelques églises dans la Recherche », Proust, la littérature et les arts, Honoré Champion, 2023, pp. 175-189.
●論文(雑誌)「『古きフランスのピトレスクでロマンティックな旅』を楽しむために」、『#映える風景を探して―古代ローマから世紀末パリまで』展図録、町田市立国際版画美術館、2021年、14-19頁
●論文(雑誌) 「ランス大聖堂《微笑みの天使》という神話の誕生:第一次世界大戦と文化遺産の危機」、『國學院大學紀要』第57号、2019年3月、29-50頁
●『文化遺産としての中世:近代フランスの知・制度・感性に見る過去の保存』三元社、2013年8月
【メッセージ】
ある対象を別の角度から見る、別の文脈に位置付けることで、今まで気が付かなかった部分が浮かび上がってきます。価値を見出す楽しさ、スリリングな発見を、美術研究を通してともに体験しましょう。
【担当科目】
フランス近代美術史演習A、フランス近代美術史演習B、フランス近代美術史特殊研究A、フランス近代美術史特殊研究B
【問い合わせ先】
izumim.197●g.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
ゼミ紹介ブログ
文学研究科 仏文学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:東北大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学
【専門分野】
19世紀フランス文学
【研究キーワード】
スタンダール、シャトーブリアン、旅行記、自伝、トドロフ
【研究内容】
19 世紀前半の文学、なかでも『赤と黒』『パルムの僧院』の二冊の小説で有名なスタンダールを主な研究対象としています。しかしスタンダールは小説だけを書いた作家ではなく、多くの評論、旅行記、伝記、自伝なども残しています。そしてそのいずれの書き物においても、非常に独創的な足跡を残した作家です。彼が残した小説作品のみでなく、その他のジャンルに属する彼の作品についても、それらを資料として読むのではなく、作品として読むことを心がけています。作品として読むとは、それらがどのような形で読者に働きかけるための戦略を取っているかを解明していこうとするということです。
またスタンダールから若干年上の世代に属する、言い換えればナポレオンと同世代の作家であるシャトーブリアン、バンジャマン・コンスタン、スタール夫人といった作家たちの作品にも関心を持ち続けています。彼らの作品についても、スタンダールの作品に向かうのと同様の視点を採用するとともに、彼らが、自分たちが生きた時代であるフランス革命期やナポレオン期をどのように表象しようとしているかに関心を抱いています。
さらに翻訳者として、ブルガリア出身であり、青年期にフランスに移住し、フランス語で執筆活動を続けた歴史家、思想史家ツヴェタン・トドロフの著作の翻訳を継続的に手掛けており、現在まで単独訳、共訳を含めて九冊出版しています。トドロフは、他者の問題、文化同士の出会いの問題、善悪二元論、全体主義、民主主義といった現代文化を考えるに当たって不可欠のトピックを数多く取り上げており、彼の著作の翻訳に携わる経験が翻って十九世紀の作家たちを読む際にもおおいに参考になっています。
【主な論文・著書】
● ツヴェタン・トドロフ著『善のはかなさ―ブルガリアのユダヤ人救命』、新評論、2021
● ツヴェタン・トドロフ著『野蛮への恐怖、文明への怨念』、新評論、2020(大谷尚文と共訳)
● ツヴェタン・トドロフ著『屈服しない人々』新評論、2018
● ピエール・ブルデュー他『世界の悲惨』藤原書店、2020(共訳者のひとりとして参加)
● 《Valenod, un autre Julien》, Revue Stendhal, no 1, Presses Universitaires de Sorbonne Nouvelle,2020
【メッセージ】
本年は、シャトーブリアンの自伝・回想録『墓の彼方からの回想』に含まれるナポレオン伝の部分を読んでいきます。 シャトーブリアンが時の支配者ナポレオンとどのように対峙し、どのようなナポレオン観を抱き、そしてそれとの相関でどのような自己像を描き出しているかが検討の対象です。またシャトーブリアンのみごとな散文をフランス語の原文で堪能していただきたいというのも、担当教員としての願いです。
【担当科目】
フランス近代文学演習 A、フランス近代文学演習 B、フランス近代文学特殊研究 A、フランス近代文学特殊研究 B
【問い合わせ先】
ushio●tamacc.chuo-u.ac.jp
【リンク】
文学研究科 仏文学専攻 准教授
最終学歴・学位・取得大学:博士(フランス文学・文明)(ソルボンヌ大学)
【専門分野】
近現代フランス文学、日仏交流史、比較文学
【研究キーワード】
クローデル、マラルメ、象徴主義、フランス詩、日仏文化交流、日仏関係、外交と文学
【研究内容】
私が主な研究対象としているのは、ポール・クローデル(1868-1955)という作家です。クローデルは20世紀前半のフランスを代表する詩人・劇作家の一人であり、有名な彫刻家カミーユ・クローデルを姉にもつことでも知られています。彼の本業は外交官であり、45年間に及ぶ外交官生活のなかでアメリカや中国、ブラジルなど多様な国での滞在経験をもちますが、やはり特筆すべきなのは、大正時代に駐日フランス大使として日本に滞在したことでしょう(1921-1927)。私の主たる関心は、この時期にクローデルが日本とどのように関わったのかを総合的に明らかにすることです。短詩集『百扇帖』や詩文集『朝日の中の黒鳥』など、1920年代のクローデルの著作は日本の文化・風物を題材としたものが数多くありますが、そうした創作活動の礎となった彼の日本観がどのように形成されてきたのかを、日記や書簡だけでなく、フランス外務省のアーカイブに残された膨大な外交文書を分析して明らかにしてきました。さらに、大正時代の日本人がクローデルという人物をどのように捉えていたのかにも強い関心をもっています。彼は「詩人大使」と呼び親しまれ、『日本詩人』『詩聖』『詩洋』といった大正期の詩誌を活躍の場とする若い詩人たちは、みなクローデルに強く惹かれました。また、冨田渓仙や竹内栖鳳といった京都画壇の画家たちとの間にも強い友情が結ばれました。そうした交流の諸相を、実証的に明らかにしたいと考えています。
クローデル研究から派生して、日本とフランスの文化交流にも関心をもっています。前述した詩誌では、マラルメやランボー、レニエといった象徴主義の詩人たちの作品が数多く翻訳されました。大正期の日本においてフランス文学がどのように翻訳・紹介・受容されたのか、またフランス語やフランス文学の教育がどのように行われてきたのかについても少しずつ調べています。さらに、永井荷風をはじめとして、フランス文学からきわめて強い影響を受けて創作活動を展開した作家は数多くいます。こうした、日本文学とフランス文学の交流というテーマも、私の研究内容の一部をなしています。
【主な論文・著書】
●「クローデル、メルラン、幣原――1924年の極東」『クローデルとその時代』(大出敦編)、水声社、2023年。
●「文明か国家か――駐日フランス大使ポール・クローデルの中国観」『上海フランス租界への招待』(榎本泰子・森本頼子・藤野志織編)、勉誠出版、2023年。
●「滞日期ポール・クローデルの詩学における「空白」の概念――詩の存在論をめぐって」『Stella』第41号、2022年。
●「ポール・クローデルと詩誌『詩洋』」『仏蘭西学研究』第48号、2022年。
●「滞日期ポール・クローデルにおける批評と外交の接点―― 「日本の伝統とフランスの伝統」をめぐって」『フランス語フランス文学研究」第119号、2021年。
【メッセージ】
論文を書くということは、とても楽しく、同時にとても苦しい営みです。私が愛読する作家の一人であり、かつて本学で教鞭を執った吉田健一の言葉に、「書くということにはどこか不自然な所があり、雲を掴んで岩を積み上げている気になっていなければならない」(「春の酒」)とあります。大作ができあがることを信じて、ともに雲を掴み続けましょう。
【担当科目】
フランス現代文学演習 A、フランス現代文学演習 B
【問い合わせ先】
gakutani●gmail.com
【リンク】
文学研究科 仏文学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:博士(文学)(東京大学)
【専門分野】
フランス思想・文学
【研究キーワード】
近代フランスの思想、文学における「自然」「文明」「人間」
【研究内容】
現代世界は、予想外の危機が各地で多発する時代となっています。地震、津波、洪水、噴火、干ばつといった自然災害だけではありません。恐慌、大事故、感染症、飢饉、内戦など、文明社会に特有の大きな惨事もまた、頻発しています。何より注意しなければならないのは、いわゆる「自然災害」に見えるものの中にも、実のところ、人間の文明が生みだすさまざまな特徴や問題点が見いだされる、ということです。
私は現在、こうした「文明」の問題点について、主に、思想や文学の研究を通して、理解しようと努めています。たとえば、古典的な思想としては、「自然」と「文明」を対立物とみなす考えかたがあります。しばしばその典型として紹介されるのは、18 世紀スイスの思想家、ジャン=ジャック・ルソーの「文明批判」です。しかし、きちんとルソーの作品を読んでいくと、彼の考えも決して単純ではないことが分かります。たしかに、ルソーは、厳しく「文明」を批判しましたが、一般に信じられているように「自然に帰れ」と述べたわけではありません。
「自然」と「文明」の問題については、歴史上、実にさまざまな思想家、文学者、芸術家が、それぞれの観点から、複雑かつ繊細な思考を展開してきました。私が関心を寄せているのは、そうした思想と文学の系譜(特に 18 世紀以降のフランスにおける思想と文学の系譜)です。
上で述べたような私の関心の背景には、「私たち人間は、自分自身を超え出るものと、どのように向き合えばよいのか?」という問いがあります。たとえば、「自然」はしばしば、私たちの想定を圧倒するような出来事を引き起こします。ところが、その「自然」で起きることは、私たち人間の文明社会の影響を大きく受けてもいるのです。何より、私たち人間の文明社会には、私たち自身が思いもしないような形で、私たち自身を超え出るものを生み落としてしまう、という不思議な本性があります。しかも、厄介なことに、私たち自身を超え出るものは、ほとんどいつでも、私たち自身のコントロールが効かなくなってしまいます。
このような研究が社会の発展に寄与するのだろうか、と思う人もいるかもしれません。しかし、そもそも「社会の発展」とは何でしょうか?近代以降の世界史は、誰もが「発展」や「進歩」とみなしていたことが、いつの間にか、多くの災いを人間自身にもたらしてしまう、という歴史のくりかえしでした。もしかしたら、「進歩」「成長」「発展」といったモデルに基づいて「文明社会」を捉えようとする発想そのものが、すでに限界を迎えているのではないか?――これこそが、私の研究の出発点なのです。
【主な論文・著書】
● Situation de l’aveuglement face à la catastrophe nucléaire : réflexion de la situation post-Fukushima à partir de Günther Anders(共著)『Philosophy World Democracy』、2021 年 3 月
●「ベルナルダン・ド・サンピエールのフィクション、ディドロのメタフィクション――二つの島における〈まなざし〉の政
治」(単著)、『仏 語仏文学研究』53 巻、2021 年 2 月
●モンテスキュー『ペルシア人の手紙』(単独訳)講談社学術文庫、2020 年 4 月
●『怪物的思考 近代思想の転覆者ディドロ』(単著)講談社選書メチエ、2016 年 3 月
●『脱原発の哲学』(共著)人文書院、2016 年 2 月
【メッセージ】
現代社会の問題を掘り下げてみると、しばしば、その問題がすでに「古典」のなかで取り上げられていたことに気づかされます。「古典」とは、現代社会の足元や、私たちの生き方の条件を、照らしだす灯火なのです。「古典」ならではの深みをもった言葉に浸ることで、現代社会に生きる私たちの存在をじっくりと見つめなおしてみましょう。
【担当科目】
フランス古典啓蒙文学演習 A、フランス古典啓蒙文学演習 B、フランス古典啓蒙文学特殊研究 A、フランス古典啓蒙文学特殊研究 B
【問い合わせ先】
takuomi●tamacc.chuo-u.ac.jp
文学研究科 仏文学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:Ancien Eleve de l’Ecole Normale Supérieure, Agrégé de Lettres Modernes, Docteur es-Lettres et Arts de l’Université de la Sorbonne.
【専門分野】
フランス文学、比較文学、比較文化
【研究キーワード】
フランス現代文学、文学とアート、文学と絵画、文学と音楽、文学と映像、文学理論、フランス語圏文学(アフリカ/カリブ海/インド洋)
【研究内容】
第一に、20 世紀から 21 世紀に書かれたフランス語で書かれた文学を専門にしています。対象となるのは「エグザゴン」と呼ばれるフランス本土で活動する作家だけなく、アフリカ大陸やカリブ海、インド洋などのフランス語圏で活動する作家の作品も対象とします。第二に、文学と芸術(絵画、音楽、映像など)の関係について研究しています。第三に、小説を執筆するなど創作活動を行っ ています。
【主な論文・著書】
● "Dans l'oeil du désastre : créer avec Fukushima" (Fukushima and the Arts), Paris, éd. Thierry Marchaisse(2021)
● "Scrabble, une enfance tchadienne", Paris, Mercure de France(2019)
● "François, portrait d'un absent", Paris, Gallimard(2018)
● "Mémoires d'outre-mer", Paris, Gallimard(2015) (英語: 'Over Seas of Memory', University of Nebraska Press, 2019)
● "Fukushima, récit d'un désastre", Paris, Gallimard(2019) (日本語: 「フクシマ・ノート」、新評論、2013 年)
【担当科目】
フランス文化・社会史演習 A、フランス文化・社会史演習 B、フランス文化・社会史特殊研究 A、フランス文化・社会史特殊研究 B
【問い合わせ先】
mferrier001x●g.chuo-u.ac.jp
文学研究科 仏文学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:文学芸術学博士、リュミエール・リヨン第2大学
【専門分野】
シュルレアリスム研究、フランス詩
【研究キーワード】
アンドレ・ブルトン、シュルレアリスム、20世紀フランス文学、ポエム=オブジェ、新しい神話、オートマティスム
【研究内容】
20世紀最大の芸術運動であるシュルレアリスム、およびその中心人物のアンドレ・ブルトン(1896-1966)について研究しています。シュルレアリスムは、ことばで作られた文学作品と物質で作られた造形作品の境界を曖昧にして、特殊な芸術空間を出現させます。そして、その芸術空間は、私たちが普段当たり前に思っている日常的な世界の見方を一変させる力を持っています。ただし、その芸術空間にアクセスするのには、少しだけコツがいります。私の研究は、そのコツを明らかにして、シュルレアリスムから生まれた文学作品、芸術作品のもつ奥深い魅力を、なるべく分かりやすく伝えることを目標にしています。
アンドレ・ブルトンにフォーカスしてお話をすれば、私は彼の詩作品の分析を重点的に行っています。ブルトンは多くの詩を残しているのですが、正面からその詩を読もうという研究者は多くはありません。その理由はおそらく、『シュルレアリスム宣言』(1924)で「自動記述」の実践が宣言されたことにあります。その結果、ブルトンの詩は作者の創意工夫とは無縁の適当な走り書きであり、ただ偶然にできただけの意味不明な単語の羅列を読むことに意味などない、という「誤解」が広く浸透したのです。そして、その「誤解」は現在にまで続いています。しかし、ブルトンが理論的(に見える)文章の中で主張していることと、彼が実際に制作している詩作品との間には「ずれ」があります。作品を実際に分析してみなければ分からないことはたくさんあり、ブルトンの詩法は時代によって変化するので、まだまだ当分は彼の詩の研究に飽きることはなさそうです。
もうひとつ、ブルトンに関していえば、彼独自の「神話」観、特に「透明な巨人」の神話に関しても興味が付きません。詳しく話しだすとキリがなくなりますので、ここでは第二次世界大戦末に考案された「透明な巨人」の神話が、21世紀の現代社会においてもまだ色あせていない、ということだけご紹介しておきます。
【主な論文・著書】
● 「シラサギが飛び立つまで : アンドレ・ブルトンにおける " aigrette "」、『鳥たちのフランス文学』、幻戯書房、2024年3月。
● 「来るべきメリュジーヌ : アンドレ・ブルトンの『秘法十七』」、『幻想的存在の東西』、中央大学出版部、2024年2月。
● "« L’Océan glacial » : poème-objet ou affiche surréaliste ?"、 『人文研紀要』、第103号、2022年9月
● 「アイスランドスパーの詩学 : アンドレ・ブルトンの連作ポエム=オブジェ」、 『人文研紀要』、第99号、2021年9月
● "La poétique du mapping vidéo verbal : le cas d’Arcane 17 d’André Breton"、『仏語仏文学研究』、第54号、2020年12月
【メッセージ】
読書には、情報収集型と体験熟成型の、二種類の読書があります。情報収集型の読書は「瞬間的に役に立つ」読書で、体験熟成型の読書は「人生を豊かにする」読書です。読む側が人生経験や読書経験を重ねてから再読すると、同じ作品、同じ文章であっても、以前とは全く異なる印象を与えるようになります。こうして、文学作品は、再読されるたびにますます複雑な表情を見せるようになり、深みを増してゆきます。わたしたちは、再読を通して、本=作品を「育てている」のです。ぜひあなただけの「本の育て方」を見つけてください。
【担当科目】
フランス詩演習A、フランス詩演習B
【問い合わせ先】
maenosono●tamacc.chuo-u.ac.jp