商学研究科
経済学系
経済学系
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商学研究科 商学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:博士(数理科学)(東京大学)
【専門分野】
数理ファイナンス、応用解析
【研究キーワード】
数理ファイナンス、リスク計量、応用解析
【研究内容】
数理ファイナンスの研究に応用解析の手法で取り組んでいます。数理ファイナンスは,金融市場に現れる様々な現象を,数理モデルを用いて解析や計算を行う分野です。数理ファイナンスの基礎は,ランダムな事象を記述する確率理論にあります。
この分野を研究するようになったのは,1996年に一橋大学経済学部(現在は経済学研究科)に勤めるようになってからです。それまでは,自然現象を記述する様々な非線形偏微分方程式の研究を行っていました。一橋大学に移った頃は,いわゆるリベラルアーツ部門が解体され,すべての教員が専門教育を担当する形になろうとしていました。それまでの体制が続いているのならば,数学を数学として研究していればよかったと思います。何かの縁で学部専門教育を行うことになったので,経済学部で役立つ数学を学ぼうと考え,その当時に日本で人気が高まっていた数理ファイナンスに取り組み始めました。研究成果も徐々に得て,2015年に中央大学に移る前には数理ファイナンスの先生という位置づけになっていました。
中央大学では教授は一般的に研究者ではなく教育者とみなされており,学部では以前にもどり数学の先生という立場です。しかし大学院では,数理ファイナンスの研究者として教育にも取り組んでいます。2020年度には,コロンビア出身の日本国国費留学生の博士論文を指導しました。その内容は,リスク計量の代表的な指標であるVaR(Value at Risk)に関する研究でした。確率では複数個の事象間に独立性を仮定することが多いのですが,その独立性が必ずしも成立しない場合について,いくつかの解析と計算を行いました。
リスク計量の研究は,数理ファイナンスの重要な研究課題の一つですが,様々な応用があります。例えば以前行った研究に,感染症の流行に関して,保険会社の流行発生に関するリスク推定モデルを開発したことがあります。流行の流行は、世界中の社会が機能する方法に劇的な影響を与える可能性があります。世界は現在COVID-19に対処しようとしていますが,過去10年ほどの間にもSARS(重度の急性呼吸器症候群),エボラ出血熱,MERS(中東呼吸器症候群)などがあり,これらの流行はすべて重大な経済の問題を引き起こしました。保険会社は少なくともその影響の一部を軽減する可能性がありますが,そのためには,感染症発生のリスクを効果的に推定する必要があります。我々の研究は,ある単純な確率モデルを導入し,さらに感染症数理モデルの成果を用いて,潜在的なリスクの確率を計算しました。
我々の活動にはリスクが伴うことが通常であり,そのリスクとどのように向き合うかは大切な心構えです。そのためにも,リスクをどのように見積もるかが必要であり,数理ファイナンスの様々な応用に関して今後も取り組みたいと考えています。
【主な論文・著書】
●Remarks on a copula-based conditional value at risk for the portfolio problem(共著), Intelligent Systems in Accounting, Finance and Management, Wiley、2023/08
●Evolution of copulas in discrete processes with application to a numerical modeling of dependence relation between exchange rates(共著), Springer Lecture Notes in Computer Science、2017/05
●「東京大学工学教程 非線形数学」(第4章担当)丸善出版、2016/01
【メッセージ】
大学院商学研究科は,必ずしも研究者になるためだけのものではありません。自身のキャリアアップのためにも利用していただければ幸いです。
【担当科目】
演習Ⅰ(経済数学)、演習Ⅱ(経済数学)、基礎セミナー(経済学)、経済数学Ⅰ、経済数学Ⅱ、特殊研究Ⅰ(数理ファイナンス)、特殊研究Ⅱ(数理ファイナンス)、特殊研究Ⅲ(数理ファイナンス)
【問い合わせ先】
Ishimura.558●g.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
商学研究科 商学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:京都大学経済学博士
【専門分野】
経済理論、経済学史、経済思想
【研究キーワード】
経済理論、経済学史、経済哲学、競争、アダム・スミス、アルフレッド・マーシャル
【研究内容】
私は、経済学という学問を、その歴史的背景や思想的背景とともに、総合的に理解することを研究テーマにしています。経済学は、科学的な手続きを重視する学問であり、そのための基礎理論や技術的知識をまず修得する必要があります。しかしこれは、経済学が技術的な学問に尽きることを意味するものではありません。
経済学は、「経済」という、それじたいは目で見ることも、手で触れることもできない対象に、理論を通じて何らかの姿かたちを与えて、これを考える対象にかえていく学問です。したがって、経済に対して人々がどのような疑問をもち、どのような理想を求めるかによって、同じ経済理論であっても、微妙な個性の差が生じます。それは、背景にどのような経済があったかという歴史的な違いによる場合もあれば、どのような理想をもって生きようとするかという思想の違いによる場合もあります。経済学という学問は、そうした側面にまで視野を広げて、人間が人間の暮らし方について、どこまで深く考えることができるかを探る、すぐれて総合的な学問だと思います。こうした観点から研究を行うために、私は経済学の理論を中心に、経済学史、経済思想、経済哲学といった諸分野との往復を繰り返しながら、研究を続けています。
一例をあげれば、経済学の中心的な概念に「競争」があります。競争は、誰もが知っている、ごく普通の言葉だと思われています。そしていまでは、「競争」での勝敗が、いちばん公正な判断基準であるかのような空気もあると思います。しかし、一口に競争といっても、それは勝つために頑張る場合もあれば、負けないように頑張る場合もあります。前者であれば最後に残るのは1人の勝者だけかもしれませんが、後者であれば、みんなが努力した結果、だれも負けずに全員残れるかもしれません。同じ競争でも、そこには様々な意味合いがあるのです。
そして、前者のような競争をエミュレーションとよび、後者のような競争をコンペティションと呼んで、実はこの2つを区別して考えていたのが、経済学の生みの親である、あのアダム・スミスだったのです。わたしたちはおそらく、今の時代を考えるために、アダム・スミスからもなお多くのことを学ぶことができると思います。このように、現代の経済学と、経済学の歴史や古典のあいだを何度も往復することで、わたしたちは、経済と経済学について、より深い理解を得ることができると思います。私はこうした問題意識をもって、毎日の研究を続けています。
【主な論文・著書】
●『読むミクロ経済学』(新世社,2016年)
●『読むマクロ経済学』(新世社,2016年)
●『「新しい働き方」の経済学』(現代書館,2017年)
●A Genealogy of Self-interest in Economics論文(論文所収,Sringer, 2021)
【担当科目】
演習Ⅰ(現代経済学)、演習Ⅱ(現代経済学)、現代経済学Ⅰ、特殊研究Ⅰ(現代経済学)、特殊研究Ⅱ(現代経済学)、特殊研究Ⅲ(現代経済学)
【問い合わせ先】
inoueys●tamacc.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
商学研究科 商学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:博士(経済学)(東京大学)
【専門分野】
労働経済学、人事と組織の経済学、政治経済学
【研究キーワード】
契約理論、インセンティブ、人事管理、賃金、雇用、労働組合、選挙制度、小選挙区、比例代表
【研究内容】
1)人事の経済学と労働経済学
働きやすい環境、生産性の高い職場はどのような環境なのか、経済学で契約理論と呼ばれる理論を用いて考察しています。例えば、労働者のやる気を出させるには、固定給よりも出来高に依存した実力や能力のある人が高く評価される賃金制度の方が望ましいです。しかし、現実には、出来高に大きく依存した仕事は少ないです。その理由は、売上のように自分の昇給に直結した仕事ばかりに労働者が注意を向けるようになり、報酬は増えないが会社にとって大切な仕事をおろそかにしてしまうからです。仕事の成果には見えやすいものと見えにくいものとがあります。成果が見えにくいが大切な仕事に労働者の注意を振り向けることが大切だとしたら、どのようにしたらいいのか、配置転換、技能習得、ジョブデザイン、雇用期間など、仕事をめぐる様々なテーマを理論モデルを用いて考えています。
同じような観点で、労働市場や労働法制についても考えています。働き方に中立的な制度とはどのようなものなのか、日本の労働市場は海外に比べてどこかが異なるのか、今後、どうなっていくのか、こうしたことも研究テーマにしています。
2)政治の経済学
当たり前のことですが、民主主義では多数の人の意見が反映される政治制度で、この点で独裁制や共産主義とは異なります。ですが、日本には一部の労働組合の支持を得た政党はこれまでにもありましたが、多くの働く人の支持を得た政党は存在しません。これは不思議なことだと思っています。その理由を考えています。
手始めに、日本の衆議院で小選挙区制が導入された前後で何が変わったのか実証研究を進めています。また、理論モデルも構築したいと考えています。
なお、すべてのテーマにあてはまることですが、「どうすべきか」よりも「どうなるか」をまずきちんと考えるべきだと思っています。
【主な論文・著書】
●"Employment Protection Legislation and Cooperation," Labour, vol.32 (2018), pp.45-73.
●"Guilty Conscience and Incentives with Performance Assessment Errors," Economic Inquiry, Vol.55 (2017) 434-450.
●"Employment protection and incentives: Severance pay vs. procedural inconvenience," Journal of the Japanese and International Economies, Vol.34 (2014), pp.272-290.
●"Job Transfer and Influence Activities," Journal of Economic Behavior and Organization, vol.56 (2005) 187-197.
【担当科目】
演習Ⅰ(応用経済学)、演習Ⅱ(応用経済学)、応用経済学Ⅰ、基礎セミナー(経済学)、研究セミナーⅠ(実証分析)、研究セミナーⅢ(実証分析)、特殊研究Ⅰ(応用経済学)、特殊研究Ⅱ(応用経済学)、特殊研究Ⅲ(応用経済学)
【問い合わせ先】
eguchi●tamacc.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
商学研究科 商学専攻 准教授
最終学歴・学位・取得大学:博士(経済学) (一橋大学)
【専門分野】
財政学、公共経済学
【研究キーワード】
最適課税論、家族の経済学
【研究内容】
私の研究内容は、効率性と公平性の観点から望ましい税制の在り方を規範的に分析する最適課税論です。所得格差の是正において累進的な税制の構築は再分配機能を充足させるが、労働意欲の減退や起業の減少のような課税に起因する歪み(=超過負担)が生じてしまいます。このような効率性と公平性のトレードオフに政府が直面する際に、どのような税制を構築することが望ましいのかを理論的かつ定量的に分析してきました。最近では家族の経済学の枠組みを取り入れた最適課税論の分析にとりわけ関心があります。これまでの最適課税論では、家族内での協力関係を前提に分析がなされてきましたが、近年の実証研究の結果から25%の夫婦は非協力的に行動していることが明らかにされました。また近年の別の実証研究の結果から、そのような夫婦の非協力関係は出生数の低下に寄与することが明らかにされました。しかし、規範的にどのような政策が出生数の改善にとって望ましいのかは明らかにされてきませんでしたので、私は夫婦の非協力関係が出生数を低下させるという実証研究と整合的な理論モデルを構築した上で、出生数を改善するための望ましい税制を明らかにしました。結果としては、出生数の改善には子供補助ではなく、所得税率の引き上げが望ましく、また子供補助ではなく、子供税が望ましいことが明らかになりました。この結果は通常の直感と異なるもので、少子化対策として積極的に子供補助を実行しているドイツや日本のような国々が出生数を測る指標であるTFRの改善につながっていない理由であると考えています。本研究はこれまで規範的に明らかにされなかった夫婦の非協力関係に起因する出生数の低下を改善するための望ましい政策を提示した点で意義があるものであり、実証研究から明らかにされた25%の非協力的な家計による出生数の低下を改善するためには、各国の政府が所得課税を強化しつつ、子供補助を低下させることが少子化対策として効果的であるという政策含意が得られました。
【主な論文・著書】
●”Endogenous Decisions on Acceptable Worker−Job Mismatch Level and the Impact on Workers’ Performance, (with Izumi Yokoyama, Arisa Shichijo Kiyomoto, Kaichi Kusada, Kazuma Edamura, and Tomohiko Inui),” Japan and the World Economy, 2024, 72, 101283-101283.
●”Optimal Taxation in an Endogenous Fertility Model with Non-Cooperative Behavior,” (with Yoshitomo Ogawa), Review of Economics of the Household, 2024, 22(1), 173-197.
●“Public Investment Criteria under Optimal Nonlinear Income Taxation without Commitment,” (with Shigeo Morita), Journal of Public Economic Theory, 2021, 23(4), 732-745.
●“λ Envy-Free Pricing for Impure Public Good,” (with Shuichi Tsugawa and Shunsuke Managi), Economic Theory Bulletin, 2021, 9(1), 11-25.
●“Public Good Provision Financed by Nonlinear Income Tax under Reduction of Envy,” (with Shuichi Tsugawa), The B.E. Journal of Economic Analysis and Policy, 2019, 19(4), 1-16.
●“Optimal Human Capital Policies under the Endogenous Choice of Educational Types,” Journal of Public Economic Theory, 2019, 21(3), 512-536.
【メッセージ】
私の研究分野は財政学で、特に最適課税論が専門になります。政府の様々な経済活動に関心があり、理論的に財政学を学んでいきたい方を歓迎します。
【担当科目】
演習Ⅰ(財政学)、演習Ⅱ(財政学)、基礎セミナー(経済学)、財政学Ⅰ、特殊研究Ⅰ(財政学)、特殊研究Ⅱ(財政学)、特殊研究Ⅲ(財政学)
【問い合わせ先】
otakuya001●g.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
商学研究科 商学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:博士(経済学)(大阪大学)
【専門分野】
労働経済学、教育経済学
【研究キーワード】
消費、教育、世代間関係
【研究内容】
私の研究成果の一つであるKubota (2016)を紹介します。Kubota (2016)は学習指導要領の変更が家計の消費行動にどのような影響を与えたのかを調べた研究です。
ゆとり教育の是非は、マスコミなどで数多く論じられてきました。しかし根拠の乏しい議論が散見され、科学的根拠を基にした議論はそれほど多くありませんでした。そこで私は2002年の学習指導要領の変化に着目して、ゆとり教育が家計の教育支出にどのような影響を与えたのかを分析しました。
政策が実施された2002年の前後で家計の教育支出額を比較するだけでは、ゆとり教育の効果を正確に評価できません。なぜならこの政策の影響と景気や子供の学年固有の影響とを区別できないためです。そこで、本研究は学習指導要領の変更の影響を受けない私立学校に通う中学生を学習指導要領の変更の影響を受ける公立学校の中学生の比較対象とすることで、ゆとり教育の因果的な影響を推定しました。その影響は、公立中学生のゆとり教育の導入前後の支出額の変化から、私立中学生のゆとり教育の導入前後の支出額の変化を差し引くことで得られます。
ゆとり教育の導入後に補助学習以外の学校外活動への支出額は23%増え、塾や家庭教師などの補助学習への支出額は17%増えました。さらにその影響を詳しく調べると、比較的所得が高い層でそれらの支出額を大きく増加させていることがわかりました。これら結果は、学習指導要領の移行期間や子供の学年、居住している都市規模などを考慮しても大きく変わりません。家計の経済状況によってゆとり教育の影響が異なる結果は、補習学習への支出額と子どもの学力との間に正の相関があると想定すると、ゆとり教育は学力格差を拡大させた可能性があります。
現在、家計の予期しない所得変化、つまり失業などによる親の所得ショックに対して子どもへの教育投資がどう変化するのかを研究しています。親の所得ショックにより子どもへの投資を減少させたり中断したりすると、教育投資の収益率が高い機会を逸失し、教育投資に非効率が生じると考えられます。この研究は家計行動のメカニズムの解明と教育投資の効率性に関する評価につながります。
【主な論文・著書】
●"Partial insurance in Japan," The Japanese Economic Review, 72(2), pp.299−3328. (2021).
●Kubota, Kohei, Takahiro Ito, and Fumio Ohtake "Long-term consequences of group work in Japanese public elementary schools," Japan and the World Economy, 52. (2019).
●" Intergenerational Wealth Elasticity in Japan," The Japanese Economic Review, 68(4), pp.470−496. (2017).
●"Effects of Japanese Compulsory Educational Reforms on Household Educational Expenditure," Journal of the Japanese and International Economies, 42, pp.47−60. (2016).
●Kubota, Kohei, and Mototsugu Fukushige. "Rational Consumers," International Economic Review, 57(1), pp.231−254. (2016).
【メッセージ】
政策の影響を定量的に評価するためには確率統計の知識が必要です。しかし、それだけでは十分ではありません。より有意義な政策含意を得るためには、政策が影響するメカニズムを理解することも必要です。そのためには、人々の行動や経済の動向を描写する経済理論の知識も必要となります。大学院生には学術論文の作成を通じて、確率統計だけでなく経済理論の知識も身につけて欲しいと思います。
【担当科目】
ミクロ計量経済学Ⅰ、演習Ⅰ(応用ミクロ計量経済学)、演習Ⅱ(応用ミクロ計量経済学)、基礎セミナー(経済学)、特殊研究Ⅰ(応用ミクロ計量経済学)、特殊研究Ⅱ(応用ミクロ計量経済学)、特殊研究Ⅲ(応用ミクロ計量経済学)
【問い合わせ先】
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研究者情報データベース
商学研究科 商学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:イェール大学 Ph.D. (経済学)、1995年
【専門分野】
マクロ経済学
【研究キーワード】
金融政策、財政政策、為替レート
【研究内容】
日本の金融政策や財政政策が景気やインフレ率に与える影響、為替レートや原油価格が国内物価に与える影響などを明らかにしたいと思っています。例えば最近は次のようなことを調べています。
(1) 日本では2022年ころから家計が予想するインフレ率が大きく上昇し始めました。こういった変化をデータをもとに予測することは可能でしょうか。特に私は、毎日更新されるデータ(日次データ)がその目的のために役立つかどうかを調べたいと思いました。その結果、消費者が日常的に目にする価格、特にスーパーマーケットで売られている商品の価格が一定の役割を果たすらしいことがわかってきました。また同じく消費者の目に触れやすいガソリン価格もある程度の影響を与えるようです。
(2) 最近のマクロ経済学の考え方では、財政政策が経済に影響を及ぼし始めるのは実際の支出が行われるときではなく、それよりずっと前、新しい政策について人々が知ったときからだとされています。それでは、政策についてのニュースが流れた時点を特定するにはどうしたらよいでしょうか。私は日経新聞の記事を分析することで、新しい指標を構築する試みに取り組んでいます。
(3) 現在、日本経済に関する新しい英文のハンドブックの編集作業が進められており、私もそのうちの1章を担当しました。この章では戦後日本が見舞われた次の5つの大きなショックを取り上げました。①オイルショック(第1次及び第2次、1970年代半ば~1980年代初頭)、②プラザ合意(1985年)と日米経済構造協議(1990年まで)、③リーマンショック(2008~2009年)、④東日本大震災(2011年)、⑤新型コロナウィルスの蔓延(2020年以降)。それぞれのショックが日本経済にどのような影響を与えたか、それに対して政府や日本銀行はどのような政策対応をしたか、といったことを概観しました。また、これらのエピソードを第2次大戦前の主要な出来事、第1次大戦後の不況、関東大震災、スペイン風邪と比較しました。
【主な論文・著書】
●『原油価格と国内ガソリン価格 -日次データによる検証-』 三菱経済研究所 2021年3月
●『やさしいマクロ経済学』 (日経文庫) 日本経済新聞社 2019年2月
●『ベーシック経済学 -次につながる基礎固め 新版』 (有斐閣アルマBasic) 古沢 泰治との共著 有斐閣 2018年12月
【メッセージ】
大学院レベルのマクロ経済学は数学を多用します。数学を恐れないようにしましょう。
【担当科目】
マクロ経済学Ⅰ、演習Ⅰ(マクロ経済学)、演習Ⅱ(マクロ経済学)、基礎セミナー(経済学)、特殊研究Ⅰ(マクロ経済学)、特殊研究Ⅱ(マクロ経済学)、特殊研究Ⅲ(マクロ経済学)
【問い合わせ先】
eshioji816●g.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
商学研究科 商学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:博士(数理科学)(東京大学)
【専門分野】
確率論、数理ファイナンス
【研究キーワード】
確率過程、マルチンゲール、確率積分
【研究内容】
確率論と数理ファイナンスについて研究しています。
高校数学で扱う確率は、起こり得る場合の数が有限という設定で、場合の数を間違えずに効率よく数え上げることが主眼になると思いますが、大学になると起こり得る場合の数が無限の設定もよく扱います。さらには、確率的な様相が経時変化する対象も扱います。これを「確率過程」といいます。離散時間の対称ランダムウォークや連続時間のブラウン運動が、確率過程の基本的な例です。
確率過程のなかでも、私は特に「マルチンゲール」と呼ばれるクラスの確率過程に興味を持ち研究しています。上記の対称ランダムウォークやブラウン運動もこのクラスに属しています。賭け事では「公正なゲーム」というイメージに対応していますし、また、賭け事に直接関連しない分野も含めて、数学の確率過程論で頻繁に現れるクラスです。
マルチンゲールが時刻無限大も込めてマルチンゲールになるかどうかは、賭け事の話では、いわゆる倍賭け戦略が可能かどうかという話に対応しています。時刻無限大も込めてマルチンゲールになるための必要十分条件として、一様可積分性という条件が知られているのですが、一様化積分性は個々の例でチェックしにくいことが多いので、使いやすい必要十分条件が何かについて20代後半から40歳頃はよく研究しておりました。
また、例えば株価過程(複数銘柄も可)を確率過程でモデル化したときに、その銘柄に投資した時の累計損益に相当する数学概念が「確率積分」です。これも、投資に直接関連しない分野も含め、数学の確率過程論で頻繁に現れます。数学の確率積分の理論を、数理ファイナンスへの応用に使いやすくするように整えることが、現在の研究テーマの1つです。
この他にも、保険数理の話題や、数理ファイナンスにおける基準材の変更の話題について、興味を持ち研究しています。
【主な論文・著書】
● "A Note on the Condition of No Unbounded Profit with Bounded Risk" (M. Schweizer との共著), Finance and Stochastics 18巻2号393-405頁、2014年4月
● "On the Ruin Probability of a Generalized Cramér–Lundberg Model Driven by Mixed Poisson Processes" (M. Tomita, M. Ishizaka との共著), Journal of Applied Probability 59巻3号849-859頁、2022年9月
【担当科目】
基礎セミナー(経済学)、数理ファイナンスⅠ、数理ファイナンスⅡ、演習Ⅰ(数理ファイナンス)、演習Ⅱ(数理ファイナンス)、特殊研究Ⅰ(数理ファイナンス)、特殊研究Ⅱ(数理ファイナンス)、特殊研究Ⅲ(数理ファイナンス)
【問い合わせ先】
takaoka●tamacc.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
商学研究科 商学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程人間環境科学(理学博士)
【専門分野】
環境学
【研究キーワード】
水環境、生態系サービス、海洋プラスチック汚染、環境ラベル、環境微生物
【研究内容】
環境に関わる諸問題について取り扱います。様々な分野が融合している分野ですので、さまざまな基礎知識が必要になります。その上で、環境配慮行動を促す消費者意識や政策をどう誘導するかなどを検討しています。私の研究対象は以下の通りです。
1)水環境汚染とその対応策
・プラスチック汚染:海洋プラスチック汚染は気候変動と並ぶ全地球的環境問題の一つですが、この汚染の発生源は7−8割が陸域におけるプラスチックゴミです。プラスチックの用途は広く、日常生活のあらゆるものに利用されているため、その削減のために多くのステークホルダーとの情報共有と細かな対策が必要となります。私の研究室では、その方法論や市民に協力してもらうための施策について検討しています。
・薬剤耐性リスクの軽減:日本でも薬剤耐性菌による感染症で年間8,000人以上の方々が亡くなっています。感染症の薬として服用される抗菌剤は、ヒトや産業動物(家畜など)に利用され、その後河川や土壌などの環境中に漏出しています。このような状況は薬剤耐性菌の出現リスクを高めるため、日本の環境水の現状に合わせた対策を研究テーマにしています。
2)消費における環境配慮行動の誘導について
・環境ラベルについて:自然資本を守るためには、環境に配慮して生産された商品が消費者に選択されることが理想的であり、その手がかりとなるのが環境ラベルです。現在様々な環境ラベルが利用されていますが、様々な問題点も指摘されています。私の研究室では、最適な環境ラベルのあり方について検討していきます。
・減プラスチックの政策:Covid-19のパンデミックにより、プラスチックゴミが増大しました。外部環境では、日本の廃プラスチックの輸出先がなくなり、国内でのプラスチックゴミが増大している状況です。減プラ生活を実現するために、どのような情報発信や情報の共有が必要でしょうか。環境配慮行動の誘導について検討しています。
【主な論文・著書】
●What samples are suitable for monitoring antimicrobial-resistant genes? Using NGS technology, a comparison between eDNA and mrDNA analysis from environmental water, Front. Microbiol. 14:954783 (2023)
●マイクロプラスチック汚染研究の現状と課題 Journal of Japan Society on Water Environment, 44, 35-42 (2021)
●東京都内の表層水に含まれる薬剤耐性菌に関する調査 環境情報科学学術論文集 32, 313-316 (2018)
●環境中に拡散する薬剤耐性菌 中央大学論集 39, 17-27 (2018)
●消費者が期待するエコラベル表示とは何か 中央大学社会科学研究所年報 22, 51-67 (2017)
●Mep72, a Metzincin Protease that is preferentially secreted by Biofilms of Pseudomonas aeruginosa, J. Bacteriol. 197, 762-73 (2015).
【メッセージ】
環境問題は、人類の発達の歴史と共にあります。共に、改善策を考えていきましょう。
【担当科目】
演習Ⅰ(生物多様性の経済的価値)、演習Ⅱ(気候変動と環境変容)、基礎セミナー(経済学)、生物多様性と経済活動Ⅰ、生物多様性と経済活動Ⅱ、特殊研究Ⅰ(環境と社会)、特殊研究Ⅱ(環境と社会)、特殊研究Ⅲ(環境と社会)
【問い合わせ先】
こちらのフォームよりお問い合わせください。
【リンク】
研究者情報データベース
商学研究科 商学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:京都大学大学院博士後期課程満期退学
【専門分野】
経済学
【研究キーワード】
アメリカ経済、マクロ経済、グローバリゼーション
【研究内容】
研究テーマは「現代アメリカ経済のマクロ構造」です。アメリカ経済は1980年代から新自由主義政策の下でグローバリゼーション、金融化、イノベーション促進を進めてきましたが、その結果、経済成長率の低下、2008-09年金融危機、格差拡大といった問題を抱えるようになりました。これらの特徴と問題がどのようなひとつのまとまった構造の諸側面であるかを研究しています。
【主な論文・著書】
●「戦後アメリカの経済成長率の長期低落傾向と産業構造の再編」経済理論学会『季刊 経済理論』58巻1号、2021年4月
●「アメリカ経済の産業循環とグローバル蓄積体制」『経済』No.299(21-33頁)、2020年8月号
●「現代アメリカのグローバル蓄積体制と中国」経済理論学会『季刊 経済理論』56巻4号、2020年1月
●「産業循環から見た2008年恐慌と長期停滞」経済理論学会『季刊 経済理論』55巻4号、2019年1月
【担当科目】
基礎セミナー(経済学)、アメリカ経済論Ⅰ、演習Ⅰ(アメリカ経済論)、演習Ⅱ(アメリカ経済論)、特殊研究Ⅰ(アメリカ経済論)、特殊研究Ⅱ(アメリカ経済論)、特殊研究Ⅲ(アメリカ経済論)
【問い合わせ先】
k-hirano●tamacc.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
福田 公正/FUKUDA Kosei (統計科学)
商学研究科 商学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:博士(学術)(総合研究大学院大学)
【専門分野】
統計科学
【研究キーワード】
情報量規準、時系列分析、世代分析
【研究内容】
経済企画庁(現内閣府)での企業行動アンケート調査や国民生活選好度調査などの統計実務経験をもとに実証研究に取り組んできました。たとえば、個人や企業に関する誕生年がわかると、現在の年齢もわかります。そして、個人の消費や企業の利益の変動が年齢によるものなのか、時代によるものなのか、さらには誕生年によるものなのかを一定の条件のもとに明らかにすることができます。こうした諸条件について統計学の視点から研究してきました。現在、幸福度について各国で研究が急速に進んでいますが、たとえば団塊世代(日本では1947-49年生まれ)が他の世代に比べて幸福度が低いことなどが明らかになってきており、私の研究成果も引用されることがあります。
【主な論文・著書】
● A happiness study using age-period-cohort framework. Journal of Happiness Studies 14 (2013), 135-153.
● Principal-component-based generalized-least-squares approach for panel data. Journal of Statistical Computation and Simulation 86 (2016), 874-890.
● A Model Selection Approach for Multiple Indicators Multiple Causes Model. Applied Economics 51 (2019), 2084-2090.
● Selecting between Student and normal mixture distributions. Applied Economics Letters 27 (2020), 549-554.
● Selecting from among 12 alternative distributions of financial data. Communications in Statistics: Simulation and Computation, forthcoming.
【メッセージ】
データ分析の難しさや楽しさに出会いましょう。
【担当科目】
演習Ⅰ(計量分析)、演習Ⅱ(計量分析)、基礎セミナー(経済学)、統計学Ⅰ、特殊研究Ⅰ(応用統計論)、特殊研究Ⅱ(応用統計論)、特殊研究Ⅲ(応用統計論)
【問い合わせ先】
kfukuda●tamacc.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
商学研究科 商学専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:博士(経済学)関東学院大学
【専門分野】
経済理論、日本経済・産業論
【研究キーワード】
マルクス経済学、再生産表式論、産業連関表、日本産業分析
【研究内容】
私は、現代日本産業・経済の性格と変容に関する研究を続けています。現実の産業動向の検討とともに、産業・経済活動を広範・詳細に集計した産業連関表などの資料を用い、マルクス『資本論』とりわけ同書第2巻3篇の再生産表式の視角に立脚して生産力の展開と需要・販路構成との関連を中心に日本経済の性格の考察することを軸に研究しています。
私がこうした研究を志向した動機および問題認識は、1990年代から2000年代、職業高校(商業高校、工業高校など)の教諭としての勤務経験の中で培われました。職業高校は、大学に進学できる余裕のない生徒たちに、地道な努力を通じて安定した職業生活への移行を保障する役割を果たしてきました。しかし雇用リストラや非正規雇用が拡大する中で、職業高校で学ぶ職種に関する高卒求人が激減し、上記の職業高校の役割が果たせなくなっていると実感しました。このように多くの人々が安定した生活が保障されなくなっている背景に、日本産業・経済に根本的な変容が生じているのではないか、そしてその変容の要因を明らかにしたいという動機から、上記のような研究に取り組むことになりました。
こうした当初の問題意識に関する自分なりの結論は、2013年に上梓した拙著『現代日本再生産構造分析』で概要、以下のように論じました。日本は高度成長終焉後、輸出産業での雇用・賃金抑制などコストダウンを梃子とした輸出拡大によって「経済大国」化を達成しましたが、その競争力自体に国内市場抑制要因が包含されていたため、輸出依存的産業構造が定着しました。90年代以降、同様に輸出依存的成長を遂げたアジア諸国との競争が激化し、従来型の成長志向は非正規雇用の拡大などさらなるコストダウン追求に帰結し、経済成長が多くの人々の雇用と生活の安定に結び付かない事態に至ったと理解されました。
一方、経済活動と雇用の重心は製造業から医療、福祉などを含むサービス分野へ移行しつつあります。日本産業・経済と人々の生活との関連を明らかにするためには、サービス分野など非生産的領域の労働について、またこれら領域の発展が資本蓄積に及ぼす影響に関する理論的検討が不可欠です。こうした問題に関して2019年の拙著『再生産表式の展開と現代資本主義』では、古典派経済学からマルクスに至る経済学説の考察も踏まえながら考察しました。非生産的領域である流通・消費過程における不生産的労働は社会的に有用な活動であり、生産の拡大や資本蓄積に間接的に寄与する面もありますが、『資本論』を含めた経済学における理論的命題が直接あてはまらないと考えられます。従って、サービス分野での経済活動については、農業や製造業を前提に構築された従来の経済理論とは異なる視角からの考察が不可欠であり、政策的にも製造業を対象とする生産性向上策や競争力強化策とは異なる対応が必要であることを論じました。
2010年代の日本では貿易赤字となる年が一般化し、一人あたりGDPや平均賃金などの指標からも日本経済の国際的地位の低下も明らかになってきています。このような状況の下、日本の輸出産業の国際競争力低下の実態と背景についての研究も続けています。とりわけ注目しているのが「脱炭素」と再生可能エネルギーの導入の動きが世界と日本の産業に及ぼす影響です。こうした産業競争力、再エネ拡大の現状と展望を踏まえると、輸出産業に依存した従来の日本経済の成長のあり方が限界を迎えているものと考えられます。目下の私の研究課題は、環境変化や技術進歩を踏まえ、輸出産業に依存した成長の志向に代わり、人々の生活の安定・安寧につながる産業・経済のあり方について考察することです。これからの日本産業・経済のあり方を展望できることをめざして、理論・実証研究の深化とともに、学内外の研究者と理論的討議を重ね、様々な分野の実務家のお話を伺い、産業・経済の現場の動きを見聞・調査しながら、研究を進めています。
【主な論文・著書】
●『現代日本再生産構造分析』 日本経済評論社、2013/4
●『再生産表式の展開と現代資本主義―再生産過程と生産的労働・不生産的労働―』 唯学書房、2019/10
●『資本主義を改革する経済政策』(第1章2部,第2章2部担当) かもがわ出版、2021/1
●『衰退日本の経済構造分析―外需依存と新自由主義の帰結―』 唯学書房、2024/1
【メッセージ】
私が大学院に通学した5年間は、昼間は仕事をしながらの勤労学生としての院生生活でした。もちろん仕事と研究の両立に苦労しましたが、職業生活の中で実感した問題認識に基づいて大学院で理論的に考察できる、知的興奮と達成感に溢れた得難い体験ができました。あなたも、大学院で知的興奮・達成感を味わってみませんか。
【担当科目】
演習Ⅰ(日本経済論)、演習Ⅱ(日本経済論)、基礎セミナー(経済学)、特殊研究Ⅰ(日本経済論)、特殊研究Ⅱ(日本経済論)、特殊研究Ⅲ(日本経済論)、日本経済論Ⅰ
【問い合わせ先】
murakami●tamacc.chuo-u.ac.jp
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