法学研究科
刑事法専攻
刑事法専攻
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法学研究科 刑事法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:博士(法学)(東北大学)
【専門分野】
中国法制史
【研究キーワード】
清朝、裁判、朝審・秋審
【研究内容】
中国では、古来、天の運行と人の営みとは密接に連関するとの思想を背景に、刑罰の執行は、万物の生育する春夏を避け、秋冬に行うべきであるとされてきました。その一方で、威嚇効果の観点から、重大な犯罪であれば速やかに刑罰を執行しなければならないとも考えられていました。これをうけて、唐律は、死刑を、判決後季節を選ばずただちに執行するものと、判決が出ても秋後まで待って執行するものとに分けています。さらに、唐律を引き継いだ明朝は、後者に関して、実際に執行する前に執行の可否を改めて問う再審理手続を導入しました。清朝は、周知のように満州族による異民族王朝ですが、死刑についてのこの区別及び後者に対する再審理手続(清朝では「朝審」「秋審」と称されます)を含め、明朝の司法システムを受け継ぎます。
私は、この朝審・秋審を中心に研究してきました。朝審・秋審では、裁判を行った皇帝や官僚たち(前近代中国では職業裁判官は存在しません)が、裁判を通じて彼ら自身が死刑と定めた罪囚について、裁判でも用いたその罪囚の罪状を検討材料にして死刑執行の可否を判断し、ときには減刑執行と決定します。さらには、清朝中期以降になると、朝審・秋審の判断基準として「秋審条款」が作られます。そうすると、裁判と朝審・秋審との関係、清朝の刑法規範である律・条例と秋審条款との関係をどのように説明することができるのでしょうか。あるいは、朝審・秋審の機能、ひいては裁判の機能とはいったいいかなるものだったのでしょうか。
また、最近では、清朝前期の裁判制度の整備過程にも関心を抱いています。これまでの朝審・秋審の研究を通じて、私は、清朝前期に朝審・秋審の手続が大きく変容したことを明らかにしました。清朝が明朝から受け継いだ裁判に関わる他の手続に目を転じても、同じような時期に、大きな改変を加えられています。清朝の司法システムが作り上げられていく時期の話ですので、したがって、この時期の裁判手続の整備過程を分析することで、清朝の司法システムの特徴を明らかにすることができるのではないかと考えています。
【主な論文・著書】
●「清代における秋審判断の構造――犯罪評価体系の再構成」『法制史研究』第63号、2014年
● 「清朝前期における熱審について」『帝京法学』第30巻第1号、2016年
● 「清朝順治期における滞獄解消問題」――「蘇理沈獄」・「京詳之経制一復」の分析を通じて」『帝京法学』第31巻第1・2合併号、2018年
● 「清朝時代の裁判と刑罰――「五年審録」、「熱審」、「朝審」・「秋審」から」『刑罰をめぐる法文化』(高塩博編)国際書院、2018年
【メッセージ】
法史学では、史料を丹念に読み解いていくことで、当時の社会秩序のあり方や人々の法的なものの見方などを明らかにします。我々が常日頃イメージするものとは違うそれらを目の当たりにすることは、新鮮な驚きをもたらすとともに、我々の法の世界を捉え直すきっかけになるのではないでしょうか。
【担当科目】
特殊研究1(法史学)、特殊研究2(法史学)、特殊研究3(法史学)、特殊研究4(法史学)
【問い合わせ先】
amieko002●g.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
法学研究科 刑事法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:法学博士(東京大学)
【専門分野】
法哲学
【研究キーワード】
現代正義論、多文化主義、平等
【研究内容】
私は、法哲学の学問領域のなかでも特に現代の正義論を研究しています。正義論は、法の目的あるいは法の目指すべき理念・理想を追究するもので、法哲学の基本問題として最も古くから論じられてきました。現代の正義論にはさまざまな潮流があり、それらは相互に大きく対立していますが、その多くは、(個々の法律や判決などではなく)法制度が全体として何を目指すべきかについて論ずるもので、いずれも、自由や平等といった基本的な価値を根底に据えているものと考えられます。
そうした現代の正義論のなかでも、私は特に多文化主義に関心を向けてきました。多文化主義は、現代の正義論のなかで理論としての歴史は浅いものですが、人間から切り離すことのできない文化という存在が、あるべき法制度を考察するにあたって無視できない理論的位置を有していることを指摘し、従来の正義論が文化を視野の外に置いていた(より正確には、特定の文化を暗黙の前提にしていた)ことを批判している点に、理論としての重要性を見出すことができます。文化の多様性をたんにスローガンとして唱えるのではなく、理論として、多様な文化の存在が、地球規模でも各社会内でも、なぜ、またどこまで望ましいことなのかを示すのは、たやすいことではありませんが、一つの解答を見出すべく、努力しています。この問題は、人・物・情報の移動が飛躍的に高まっている現代にあって、きわめてアクチュアルなテーマでもあります。
また、多文化主義とも接点のある問題として、平等の理念にも関心を持っています。多文化主義を推進しようとする動きは、差別に対する抵抗や異議申し立てとしての性格を併せ持つことがあるからです。
【主な論文・著書】
●『問いかける法哲学』(共著、瀧川裕英編)法律文化社、2016年
●『国境を越える正義――その原理と制度 法哲学年報2012』(共著、日本法哲学会編)有斐閣、2013年
●「多文化主義理論の法哲学的意義に関する一考察―――ウィル・キムリッカを中心として(一)~(六・完)」『国家学誌』 113巻1・2号、7・8号、11・12号、114巻3・4号、9・10号、115巻9・10号 、2000年-2002年
【担当科目】
研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、特殊研究1(法哲学)、特殊研究2(法哲学)、特殊研究3(法哲学)、特殊研究4(法哲学)、法哲学1(A)、法哲学2(A)
【問い合わせ先】
ishiyama●tamacc.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
法学研究科 刑事法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学::博士(総合政策)(中央大学)
【専門分野】
刑事政策、犯罪学、社会安全政策論
【研究キーワード】
サイバー犯罪、少年非行、企業犯罪、犯罪予防、再犯防止、複雑系システム論
【研究内容】
刑事政策・犯罪学は、犯罪に関わる「価値」と「真理」が交差する知的フィールドです。人類が求めてきた法的価値に照らして、現実のどこに問題があるか検討し、その問題を解決あるいは現状を改善するために、人と社会は何をすべきかを考える学問です。
ここで取り扱う「価値」は、正か悪かという単一基準による比較だけではなく、自由と安全、費用対効果など複数の価値基準のもとでのバランスを考慮しなければなりません。他方、人と社会に関する「真理」は、人類に共通する普遍的な真理だけでなく、その人その社会に特有な個性にも存在し、それら個性的な人や社会が相互に関係しあっています。このような複雑な価値、複雑な真理の中で犯罪に関わる現代社会の問題を解決しなければならないのです。
例えば、近年大きな問題となっているサイバー犯罪について考えてみましょう。パソコンやスマートフォン、インターネット空間は、昔からあったものではありません。しかし、今日では、パソコンやスマートフォンは個人の生活にとって不可欠なものであり、プライバシーに係る情報がたくさん保管されています。企業にとっても、今日では業務用のサーバや電子商取引のためのシステムは、日々の業務に欠かせないもので、個人情報や営業秘密などの大切な情報が保管されています。これらの電子機器やサイバー空間の登場と時を同じくして、不正アクセスやウイルスといった不正行為や不正プログラムも登場しました。個人のプライバシーは、サイバー空間が登場する前から法的に保護すべき重要な価値であり、これを守るには不正アクセスやウイルスを新たに規制しなければなりませんでした。営業秘密は、昔から価値のあるものではありましたが、従来は法的な保護はなされていませんでしたので、不正アクセスやウイルスの横行によって営業秘密が不正に取得される危険が高まり、法的に保護する必要が生じました。さらに、サイバー空間は急速に変化するために新たな脆弱性も次々に生まれ、不正アクセスやウイルスの手口も次々に生まれます。しかし他方では、インターネット上の自由や知る権利も守らなければなりませんし、情報セキュリティのためにいくらでも費用をかけていいわけではありません。また、犯罪の取り締まりや処罰だけでなく予防も考えると、刑事司法だけでなく、行政機関や民間企業等の活動も重要です。
このような複雑な社会において、犯罪制御を多角的に検討しようとしたのが、社会安全政策論という新しい学問分野です。社会安全政策論は、刑事政策・犯罪学の指針ともなるべきものといえます。四方は、実務家出身教員として現実を直視する姿勢を維持しつつ、複雑系システム論という、自然科学の方法とは異なる複雑な社会を分析するのに適した比較的新しい科学哲学に基づいて、社会安全政策論や刑事政策・犯罪学の研究を行っています。
【主な論文・著書】
●『サイバー犯罪対策』成文堂、2021年、共著
●『日常のなかの〈自由と安全〉 : 生活安全をめぐる法・政策・実務』弘文堂、2020年、共著
●『社会安全政策論』立花書房 2018年、共著
●『社会安全政策のシステム論的展開』成文堂、2007年、単著
【メッセージ】
四方は実務家出身教員なので、理論だけでなく実社会の現実を直視することを重視しています。犯罪に関する現実に関心のある学生諸君の受講を歓迎します。社会人学生には、受講しやすいように休日・夜間の時間帯の授業を用意しますので、社会人としての経験を理論的に整理する機会として大学院での研究に挑戦してみてください。
【担当科目】
刑事政策演習2(A)、刑事政策特講1(A)、刑事政策特講2(A)、研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、専門導入A(刑事法〔刑事政策〕の基礎と諸課題)、専門導入B(留学生のための日本法入門)、特殊研究1(犯罪学・刑事政策)、特殊研究2(犯罪学・刑事政策)、特殊研究3(犯罪学・刑事政策)、特殊研究4(犯罪学・刑事政策)
【問い合わせ先】
koshikata●tamacc.chuo-u.ac.jp
【リンク】
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法学研究科 刑事法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:法学博士(中央大学)
【専門分野】
罪数論・競合論、故意論・錯誤論、生命倫理と法、矯正と法、経済刑法
【研究キーワード】
罪数、競合論、故意、錯誤、生命倫理と法、矯正、経済刑法
【研究内容】
研究内容の詳細については、こちらをご覧ください。
【主な論文・著書】
●「ドイツにおける自殺援助規制の現状」只木誠・佐伯仁志・北川佳世子編『甲斐克則先生古稀祝賀論文集[下巻]』(成文堂、2024年)
●佐伯仁志・高橋則夫・只木誠・松宮孝明編『刑事法の理論と実務 ⑥』(成文堂、2024年)
●「『二重評価』について」佐伯仁志・大澤裕・髙山佳奈子・橋爪隆編『山口厚先生古稀祝賀論文集』(有斐閣、2023年)
●"Der Umgang mit Sterbehilfeorganisationen in Japan" in: Gunnar Duttge/Makoto Tadaki(Hrsg.), Menschenwürde und Selbstbestimmung in der medizinischen Versorgung am Lebensende(Mohr Siebeck、2022年)
●「臨死介助(自殺援助)団体とわが国の対応―自殺ツーリズムをめぐって―」 只木誠・Gunnar Duttge編『終末期医療、安楽死・尊厳死に関する総合的研究』(中央大学出版部、2021年)
【メッセージ】
大学院では、学部において得た法的知識をさらに深め、法解釈学の論理を探究し、ひいてはこれをさまざまな社会の問題・課題の解決に結びつけるべく研究に取り組んでいきます。学究の志高く、熱い心の皆さんをお待ちしています。
【担当科目】
リサーチ・リテラシー、刑事法特殊研究1(A)(刑法理論研究)、刑事法特殊研究2(A)(刑法理論研究)、刑法演習1(B)、刑法演習2(B)、刑法特講1(B)、刑法特講2(B)、研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、研究倫理・研究方法論(法学)、専門導入B(留学生のための日本法入門)、特殊研究1(刑法)、特殊研究2(刑法)、特殊研究3(刑法)、特殊研究4(刑法)
【問い合わせ先】
mtadaki.265●g.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
個人ウェブサイト
法学研究科 刑事法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:中央大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学 博士(法学)(中央大学)
【専門分野】
刑法
【研究キーワード】
共犯、共同正犯、教唆、幇助、中立的行為、予防刑法、厳格責任
【研究内容】
私は、犯罪と刑罰にかかわる諸問題を扱う刑法学を研究しています。
中でも、第一に、「複数人が犯罪にかかわる犯罪事象をめぐる諸問題」に関心を持っています。これは、専門的には「共犯論」という研究領域です。刑法学において、この共犯論は、ドイツでの議論も参照されながら、かなり複雑に発展してきました。それでも、まだまだ議論は尽きていません。共犯論においては、さらに細かな研究対象がひしめいています。そうした状況のなか、私は、「そもそも共犯という犯罪事象の本質をいかに理解すべきか」について、より徹底した議論が必要だと考えています。共犯は個人を超えた集合体による犯行形態であり、したがって、単独犯と異なる特性を有する犯行形態として捉える必要がある。そう考えています。こうした捉え方は、共犯に特有の危険性に着目することにもなるので、そこから、そうした危険を有効に制御する方途について、より豊かな考察ができることになります。
第二に、「予防刑法のあり方」も私の研究テーマです。刑法の目的の一つは法益の保護です。したがって、刑法は、法益に危害をもたらす行為を予防する役割を担います。そこで出てくるのが、犯罪をより効果的に予防できる刑法理論とはどのようなものかという問いです。もちろん、人々の自由を不当に萎縮させるような刑法の用い方は許されません。この点を大前提として、刑事的な被害をより実効的に防ぎうる新たな考え方を探究しています。研究の進捗しだいではありますが、犯罪の基本形態に関する日本の共通理解に対して、一定の変更を迫ることが、その一つの答えとして導かれることになろうと予想しています。
【主な論文・著書】
●『刑法演習サブノート210問』(第2版、共著、2024年)
●『共犯の本質と可罰性』(単著、2019年)
●「詐欺罪における「挙動による欺罔」に関する管見」研修911号( 2024年)
●「アルコール影響型・危険運転致死傷罪の主観要件」高橋則夫先生古稀祝賀論文集(2022年)
●「共犯関係の解消について—私見の展開—」法学新報127巻9・10号(2021年)
【メッセージ】
刑法学の世界は奥深く、難解です。どの考えが正しいのかもオープンです。したがって、基本を正確に押さえつつ、自由で柔軟な発想を持ち、果敢に、真摯に、社会的な諸問題に取り組み、解決策を提示していこうとする心構えが大切です。
こうした心構えを持ち、刑法上の何らかの問題に関心を寄せている方にお会いできることを楽しみにしています(あなたの関心が、上述した私の研究内容と全く異なっていてもいっこうに構いません)。
【担当科目】
刑法演習1(A)、刑法演習2(A)、刑法特講1(A)、刑法特講2(A)、研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、研究倫理・研究方法論(法学)、特殊研究1(刑法)、特殊研究2(刑法)、特殊研究3(刑法)、特殊研究4(刑法)
【問い合わせ先】
magata●tamacc.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
法学研究科 刑事法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:博士(法学)(中央大学)
【専門分野】
刑事訴訟法
【研究キーワード】
自己負罪拒否特権
【研究内容】
憲法38条1項は、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」と定めています。これを自己負罪拒否特権といいます。この規定はアメリカ合衆国憲法に由来するものです。その内容は、自分で自分の有罪を証明することになる証拠を提出するように強要されない、というものです。要するに、自分の有罪を証明することになる証拠を提出する義務はないということです。
書類や帳簿の中には、企業の不正行為の証拠となる情報が記されていることがあります。アメリカ合衆国では、そのような書類・帳簿を取得する方法として、提出命令というものがあります。有罪を基礎づける情報が含まれているわけですから、そのような書類・帳簿を提出するように義務づけることは、自己負罪拒否特権に違反しそうです。しかし、会社などの組織の文書の場合、その提出を義務づけても自己負罪拒否特権侵害はないと考えられています。それは何故なのか。これについて考察を進めるのが私の研究です。このように、アメリカ合衆国における法運用や法解釈を調査し、我が国の刑事法運用に示唆を与えるものはないかを探究しています。
【主な論文・著書】
●「合衆国憲法第五修正の自己負罪拒否特権の誕生」法学新報127巻9・10号(2021年)83頁以下
●「強制処分と妨害排除効」858号(2019年)3頁以下
●「捜索差押えの対象の特定」法学教室460号(2019年)18頁以下
●「文書の保護と自己負罪拒否特権」刑法雑誌57巻2号(2018年)180頁以下
●「コンスピラシーとテロ等準備罪」刑事法ジャーナル55号(2018年)33頁以下
【メッセージ】
研究生活は、これまで積み重ねられてきた先人の研究業績の理解に努め、少しでも前に進もうと努力する過程をいいます。前に進むことができるかは分かりません。今日の努力がすぐに結果に結実するわけでもありません。しかし、自分なりの考えをまとめることができたときは、ささやかなものですが、達成感を味わうことができます。地味な毎日ですが、研究に勝る楽しみを、私は知りません。
【担当科目】
刑事訴訟法演習1(C)、刑事訴訟法演習2(C)、刑事訴訟法特講1(C)、刑事訴訟法特講2(C)、研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、特殊研究1(刑事訴訟法)、特殊研究2(刑事訴訟法)、特殊研究3(刑事訴訟法)、特殊研究4(刑事訴訟法)
【問い合わせ先】
t-yasui●tamacc.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
法学研究科 刑事法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:法学修士(中央大学)
【専門分野】
刑事訴訟法、刑事法
【研究キーワード】
捜査の規律、刑事手続の原理
【研究内容】
犯罪捜査に関しては、憲法、刑事訴訟法により規律が加えられていますが、ある一定の捜査手法を用いることが適法か否かが大きな問題となる場合として、主に、法律の規定が十分でない場合と、法律が想定していなかった新たな捜査手法が用いられる場合があります。私が研究を行ってきたものでは、「強制採尿のための留め置きの適法性」が前者に、「位置情報の取得」が後者に当たります。
「強制採尿のための留め置きの適法性」というのは、覚せい剤使用の疑いがある被疑者を警察官が街頭で発見した場合に、被疑者の尿の中に覚せい剤が含まれていないか検査するための令状(強制採尿令状)を得て、被疑者を病院等に連行するなどの方法がとられますが、令状の発付を得るには数時間を要するため、その間、被疑者をその場に留め置かなければなりません。しかし、被疑者が立ち去ろうとした場合に、その場に強制的に留めることができるとする法律の規定はありません。そこで、そうした留め置きをいかなる限度で行うことができるのか、被疑者が立ち去りたいと言えば、それを認めなければならないのか、それとも、時には腕に手をかけたりするなど、一定の実力を行使して、留まるよう求めることができるのか、法律の規定がなければ許されない場合とはどのような場合なのか、といったことが問題となります。
「位置情報の取得」とは、GPSや携帯電話の基地局情報等を利用して被疑者の行動を監視する捜査手法の問題です。こうした機器や科学技術の発達により、以前は、警察官が張り込みや尾行をして、人手や労力をかけなければわからなかった被疑者の位置情報を、費用も労力もさほどかけずに長期間にわたり把握することができるようになりました。これは、捜査の効率を飛躍的に向上させるものでありますが、監視対象となる個人のプライヴァシーを大きく侵害するおそれのあるものでもあります。このような従来なかった捜査手法は、現在の法律の規定で適切に規制することができるのかできないのか、あるいは逆に、新たに法律を定めなければ一切許されないとすべきなのかということが問題となります。
このような問題について、外国の法制度とりわけアメリカ法についての研究により得られた知見を活かしながら、こうした捜査手法が現在ある法律でどこまで許されるのか、立法により解決しなければならない場合とはどのような場合かといったことを研究してきました。
【主な論文・著書】
●共著『米国刑事判例の研究 Ⅶ』(中央大学出版部、2018年)
●共編著『刑事訴訟法基本判例解説 第2版』(信山社、2018年)
●単著「強制採尿のための留め置きに関する立法論」刑事法ジャーナル62号76頁(2019年)
●単著「位置情報とプライヴァシー」法学新報125巻11・12号605頁(2019年)
●単著「位置情報の取得」刑事法ジャーナル59号37頁(2019年)
【担当科目】
外国語文献講読(法学・英語)、刑事訴訟法演習1(A)、刑事訴訟法演習2(A)、刑事訴訟法特講1(A)、刑事訴訟法特講2(A)、研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、司法過程論、専門導入B(留学生のための日本法入門)、特殊演習(法学系)、特殊研究1(刑事訴訟法)、特殊研究2(刑事訴訟法)、特殊研究3(刑事訴訟法)、特殊研究4(刑事訴訟法)
【問い合わせ先】
yanagawa●tamacc.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース