法学研究科
公法専攻
公法専攻
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法学研究科 公法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:東京大学法学部卒業
【専門分野】
公法、経済法
【研究キーワード】
エネルギーと法、原子力安全規制、武力行使の法、立憲主義の精神史的基礎
【研究内容】
準備中。
【主な論文・著書】
●「司法の立ち位置ということ(1)」中央ロー・ジャーナル15巻3号(2018年)
●「司法試験の年複数実施の可能性を探る」法律時報2018年8月号
●「土地所有権は永遠か」日本不動産学会誌122号(2017年)
●「平和という困難――古代キリスト教の平和主義・再訪」中央ロー・ジャーナル14巻3号(2017年)(2017)
●「高速増殖炉「もんじゅ」の来歴⑴、⑵」中央ロー・ジャーナル13巻3号(2016年)、13巻4号(2017年)(2016 ~ 2017年)
●「集団的自衛権は放棄されたのか――憲法九条を素直に読む」松井茂記編著『スターバックスでラテを飲みながら憲法を考える』(有斐閣、2016年)
【メッセージ】
最近は、エネルギー、特に、電力・ガスシステム改革や原子力安全規制の法的側面に注力しています。また、武力行使に関する国際法と国内法(特に憲法)との交錯についても、研究を始めました。1930年代の日本政治史にも関心があります。もちろん他のテーマについてのご用命にも応じます。
【担当科目】
研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、特殊研究1(憲法)、特殊研究2(憲法)、特殊研究3(憲法)、特殊研究4(憲法)
【問い合わせ先】
こちらのフォームよりお問い合わせください。
【リンク】
研究者情報データベース
法学研究科 公法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:アメリカ・ウィスコンシン大学ロースクール(LL. M.)修了 中央大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学
【専門分野】
行政法、地方自治法、環境法政策
【研究キーワード】
行政手続、行政訴訟、地方自治、環境法政策、規制研究、法の支配、比較法、トランスナショナル法
【研究内容】
私は、学部ゼミ(演習)において、憲法が定める手続的デュー・プロセスの柔軟さと人権保障に果たしている役割に魅せられて大学院に進学し、これまで「行政活動の手続的規制」に関心を持ってきました。「自由の歴史の大部分は、手続的保障遵守の歴史である」(合衆国最高裁フランクファーター裁判官)からです。行政手続・訴訟は、正義を実現する法の支配の一側面ですから、それを考える際には、立法、行政、司法の役割が厳しく問われ、判例・学説のダイナミックスを見ることができます。それには、国境を越えた普遍性及び各国法の固有性並びに相互影響があります。そして、その実態解明には、未知を知り既知を改める楽しみと明晰な論理にふれる感動があります。判決における裁判官の個別意見が未だ現れていない法的論点を指摘し、それが後の事例で顕在化した場合や新たな社会事象について伝統的な学説のイノベーションを見る場合などは、その逞しい想像力と創造力に魅せられ、感激し、ささやかながらその営みに与したいという意欲が湧いてきます。
アメリカ留学では、「法と社会(Law and Society)」研究の重要性を知りました。書物に書かれた法と社会における(生きた)法の違いを考える視点、社会実態を見て法の理論を考える必要性、法を社会改革のために利用する発想を学びました。「法の生命は、論理ではなく、経験である」(合衆国最高裁ホームズ裁判官)ことにふれたわけです。公的扶助の停止前聴聞(行政手続)を観察するため、審理官の車に同乗し、遠く地方の会場まで足を運びました。
その後、行政手続を通して「環境法政策」に関心を持つようになりました。環境法政策においては、世界で最先端の公的規制・政策に関する議論が行われるからです。その場合にも、社会における法の機能や人々の規範意識、手続法上・実体法上の各規制の相互関係が問題となります。廃棄物処理施設設置に関わる住民説明会(条例に基づく)の観察などを行いました。そして、その関心は、経済・社会のしくみ・変化と関わる土壌汚染対策や持続可能な発展のためのメカニズムである環境影響評価手続に拡がりました。気候変動は、グローバル社会および日本社会において、市民生活を含む社会全体を大きく変革する契機となっていますので、研究中の気候変動訴訟では、立法、行政、司法の役割が厳しく問われています(手続的デュー・プロセス訴訟と同様)。
さらに、現在は、海外での法学教育担当の経験により、日本の制度・研究のグローバル社会への貢献(Law and Development)、EUに見られるような多層的法構造、グローバル社会で見られる法規範の副次的効果・事実上の規制、国境を越えた法規範の相互影響の実態解明などについて強い関心を持っています。
研究は、小宇宙であり、その深みと拡がりに限界はありません。今後は、これまで構築した各国研究者とのネットワークを利用して、次世代を担う中堅・若手研究者とともに国際共同研究を展開させ、グローバル社会で共有される価値の実現に努めたいと考えています。
【主な論文・著書】
●「行政の配慮義務について」法学新報130巻7・8号、2024年。
●『アメリカ気候変動法と政策』(共編著)勁草書房、2021年。
●「国境を越える環境規制の諸相」『法化社会のグローバル化と理論的実務的対応』中央大学出版部、2017年所収。
●『日米欧金融規制監督の発展と調和』(編著)中央大学出版部、2016年。
● “Administrative Law and Judicialized Governance in Japan,” in Tom Ginsburg & Albert H. Y. Chen, eds., Administrative Law and Governance in Asia: Comparative Perspectives, Routledge, 2008.
【メッセージ】
大学院の魅力は、様々な領域の専門家と何事にもとらわれずに議論できることです。みなさんが、このようなサンクチュアリの性質を最大限生かして、今後の人生と社会貢献について、かけがえのない羅針盤と専門性を身につけることができるよう期待しています。研究の目的は、「見えないものを見る」ことです。混沌としたグローバル社会において、私たちの学び・研究とは何か、ともに悩み、考え、議論したいと考えています。
【担当科目】
研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、行政法演習1(A)、行政法演習2(A)、行政法特講1(A)、行政法特講2(A)、専門導入A(公法の現代的課題)、専門導入B(留学生のための日本法入門)、特殊研究1(行政法)、特殊研究2(行政法)、特殊研究3(行政法)、特殊研究4(行政法)、特殊講義(Administrative Law and Regulatory Policy)
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法学研究科 公法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:アメリカ・ウィスコンシン大学ロースクール(LL. M.)修了 中央大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学
【専門分野】
行政法、地方自治法、環境法政策
【研究キーワード】
行政手続、行政訴訟、地方自治、環境法政策、規制研究、法の支配、比較法、トランスナショナル法
【研究内容】
私は、学部ゼミ(演習)において、憲法が定める手続的デュー・プロセスの柔軟さと人権保障に果たしている役割に魅せられて大学院に進学し、これまで「行政活動の手続的規制」に関心を持ってきました。「自由の歴史の大部分は、手続的保障遵守の歴史である」(合衆国最高裁フランクファーター裁判官)からです。行政手続・訴訟は、正義を実現する法の支配の一側面ですから、それを考える際には、立法、行政、司法の役割が厳しく問われ、判例・学説のダイナミックスを見ることができます。それには、国境を越えた普遍性及び各国法の固有性並びに相互影響があります。そして、その実態解明には、未知を知り既知を改める楽しみと明晰な論理にふれる感動があります。判決における裁判官の個別意見が未だ現れていない法的論点を指摘し、それが後の事例で顕在化した場合や新たな社会事象について伝統的な学説のイノベーションを見る場合などは、その逞しい想像力と創造力に魅せられ、感激し、ささやかながらその営みに与したいという意欲が湧いてきます。
アメリカ留学では、「法と社会(Law and Society)」研究の重要性を知りました。書物に書かれた法と社会における(生きた)法の違いを考える視点、社会実態を見て法の理論を考える必要性、法を社会改革のために利用する発想を学びました。「法の生命は、論理ではなく、経験である」(合衆国最高裁ホームズ裁判官)ことにふれたわけです。公的扶助の停止前聴聞(行政手続)を観察するため、審理官の車に同乗し、遠く地方の会場まで足を運びました。
その後、行政手続を通して「環境法政策」に関心を持つようになりました。環境法政策においては、世界で最先端の公的規制・政策に関する議論が行われるからです。その場合にも、社会における法の機能や人々の規範意識、手続法上・実体法上の各規制の相互関係が問題となります。廃棄物処理施設設置に関わる住民説明会(条例に基づく)の観察などを行いました。そして、その関心は、経済・社会のしくみ・変化と関わる土壌汚染対策や持続可能な発展のためのメカニズムである環境影響評価手続に拡がりました。気候変動は、グローバル社会および日本社会において、市民生活を含む社会全体を大きく変革する契機となっていますので、研究中の気候変動訴訟では、立法、行政、司法の役割が厳しく問われています(手続的デュー・プロセス訴訟と同様)。
さらに、現在は、海外での法学教育担当の経験により、日本の制度・研究のグローバル社会への貢献(Law and Development)、EUに見られるような多層的法構造、グローバル社会で見られる法規範の副次的効果・事実上の規制、国境を越えた法規範の相互影響の実態解明などについて強い関心を持っています。
研究は、小宇宙であり、その深みと拡がりに限界はありません。今後は、これまで構築した各国研究者とのネットワークを利用して、次世代を担う中堅・若手研究者とともに国際共同研究を展開させ、グローバル社会で共有される価値の実現に努めたいと考えています。
【主な論文・著書】
●「行政の配慮義務について」法学新報130巻7・8号、2024年。
●『アメリカ気候変動法と政策』(共編著)勁草書房、2021年。
●「国境を越える環境規制の諸相」『法化社会のグローバル化と理論的実務的対応』中央大学出版部、2017年所収。
●『日米欧金融規制監督の発展と調和』(編著)中央大学出版部、2016年。
● “Administrative Law and Judicialized Governance in Japan,” in Tom Ginsburg & Albert H. Y. Chen, eds., Administrative Law and Governance in Asia: Comparative Perspectives, Routledge, 2008.
【メッセージ】
大学院の魅力は、様々な領域の専門家と何事にもとらわれずに議論できることです。みなさんが、このようなサンクチュアリの性質を最大限生かして、今後の人生と社会貢献について、かけがえのない羅針盤と専門性を身につけることができるよう期待しています。研究の目的は、「見えないものを見る」ことです。混沌としたグローバル社会において、私たちの学び・研究とは何か、ともに悩み、考え、議論したいと考えています。
【担当科目】
研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、行政法演習1(A)、行政法演習2(A)、行政法特講1(A)、行政法特講2(A)、専門導入A(公法の現代的課題)、専門導入B(留学生のための日本法入門)、特殊研究1(行政法)、特殊研究2(行政法)、特殊研究3(行政法)、特殊研究4(行政法)、特殊講義(Administrative Law and Regulatory Policy)
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法学研究科 公法専攻 特任教授(法学部)
最終学歴・学位・取得大学:教養学士(東京大学)M.Phil. in International Relations(オクスフォード大)
【専門分野】
国際法
【研究キーワード】
国際人権法、国際刑事法
【研究内容】
私が中央大学大学院で教えている「国際法」は、国際社会の法であり、国家と国家の関係を律する法です。国際法は、17世紀に成立したと言われていますが、国際社会の変化に対応して発展を続けています。最近では、地域紛争や国内紛争の激化、ロシアのウクライナ侵攻やガザの紛争に見られるような様々な形態の武力の行使、グローバリゼーションの急速な進展、ポスト冷戦時代の国際社会共通の価値の醸成とポスト・ポスト冷戦時代の分断が、国際法に大きな変革をもたらしています。
このような変化の一つが、国家の枠組みを超えて、個人の権利と義務を直接規定する法規範の増加です。私は、その中でも、すべての人の人権を国際的に保障することを目的とする国際人権法、および、国際社会全体の利益を害する行為を行った個人の刑事処罰を対象とする国際刑事法を専門分野としています。国際人権法は、自由権、社会権などの基本的人権、差別の禁止、女性や児童、外国人の人権や難民問題などに関する国際法上の規範、国際刑事法は、ジェノサイドや人道に対する罪、武力紛争中の文民等の保護を定めた国際人道法上の犯罪、拷問や強制失踪などの人権法違反の犯罪、テロ犯罪、国際的な組織犯罪、サイバー犯罪などの処罰に関する国際法上の規範です。両方に関連する規範としては、被疑者・被告人の権利とともに、犯罪被害者の権利などに関する国際法規範も挙げることができます。これらは国際法の中でも比較的新しい分野であり、憲法や刑法などの国内法とも密接な関係があります。国際人権法は日本の裁判所でも徐々に適用されるようになっていますし、国際刑事法に関連した日本の刑事法の改正も行われるようになりました。民主主義や法の支配、正義といった価値と関連するため、どこまでが確立した法なのかを見きわめにくく、政治問題と法的問題を切り離して論じることが困難であるなどの問題もありますが、様々な可能性を秘めた、国際法の最先端分野であり、日本だけではなく、世界中の若い法律学徒が熱心に取り組んでいる研究分野です。
私は、1979年に外務省に入省して以来、これまでの職業生活の大半を、外務省、法務省、国際機関において、実務家として過ごしてきました。特に、国連薬物・犯罪事務局の条約局長としては組織犯罪や汚職、テロ犯罪を担当し、また、2010年から9年間、国際刑事裁判所の裁判官として国際刑事法の実務に携わりました。中央大学で教えるようになったのは2021年の4月からです。教員としてはまだまだ新米ですが、実務経験も生かしながら、皆さんと一緒に学び、考え、成長していきたいと考えています。
【主な論文・著書】
●尾﨑久仁子・洪恵子(共編)『国際刑事裁判所(第三版)』東信堂2024年11月
●'The Role of the UN Security Council in International Criminal Law Revisited’ in Furuya, Takemura & Ozaki (eds.) “Global Impact of the Ukraine Conflict” Springer, 2023
●「分断の中の人権外交」植木安弘・安野正士(編)『専制国家の脅威と日本』勁草書房2023年11月
●「国際刑事法における刑罰権の根拠」法学新報128巻10号(2021)
●『国際人権・刑事法概論(第2版)』信山社2021年10月
【担当科目】
研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、国際公法演習1(D)、国際公法演習2(D)、国際公法特講1(D)、国際公法特講2(D)、特殊研究1(国際公法)、特殊研究2(国際公法)、特殊研究3(国際公法)、特殊研究4(国際公法)、特殊講義(International Law From Japanese Perspectives)
【問い合わせ先】
okuniko002●g.chuo-u.ac.jp
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法学研究科 公法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:法学博士(J.S.D.)(イェール大学)
【専門分野】
国際法
【研究キーワード】
海洋法、海洋環境の保護、海洋と人権、海上安全保障
【研究内容】
私の研究分野は国際海洋法です。より正しく表現するならば、国際法の一分野としての国際海洋法を研究しているというよりも、海洋をめぐる今日的課題に対処することのできる国際法理論を追究しているといった方がよいでしょう。具体的には、海洋環境の保護、海洋における人権保障、海上安全保障などのテーマを通じて、国際海洋法自体がどのような発展可能性を持っているのか、また他の国際法分野の条約とどのような適用関係にあるのかについて関心を持って研究しています。
最近の研究の一例を挙げてみましょう。海の憲法といわれる「海洋法に関する国際連合条約」(国連海洋法条約)は、1982年に採択されました。採択当時、気候変動によりもたらされる海面上昇や海洋酸性化等の問題は想定されていませんでした。海洋環境の保護・保全に関する同条約第12部にある海洋汚染の防止・軽減・規制のための規定は、油などの物質的な海洋汚染を想定したものでした。しかしながら、地球温暖化ガスの排出によりもたらされる海面の酸性化や海水温度の上昇は、海洋生態系にも大きな影響を与えており、国家は海洋生態系保護のための積極的な措置をとる必要性に迫られています。地球温暖化ガスの排出それ自体は「気候変動に関する国際連合枠組条約」(気候変動枠組条約)とその履行協定であるパリ協定によって規律されていますが、これらの条約には気候変動による悪影響から海洋環境を保護することについての規定は含まれていません。気候変動は一例に過ぎませんが、時の経過とともに変化する海洋環境を保護する必要性から国連海洋法条約を発展可能性のある枠組条約として捉える立場が広がり、同条約第12部を他の普遍的な環境条約に照らして発展的に解釈する国際判例も出てきています。
今後、減少し続ける海洋資源の獲得をめぐる国家間の争いや海洋経済(blue economy)の発展がますます注目されることでしょう。国際海洋法は、海洋環境の保護・保全を基本原則とした海洋利用のための法的枠組みであるとともに、海洋における紛争の平和的解決のための礎として、重要な研究分野であり続けることを確信しています。
【主な論文・著書】
●“Marine Scientific Research and Informal Lawmaking”, in: Unconventional Lawmaking in the Law of the Sea (Natalie Klein ed., Oxford University Press, 2022), pp. 233-249.
● 「IUU漁業に対する沿岸国の法執行措置についての一考察」『法学新報』128巻10号、2022年
● 「海洋再生可能エネルギーをめぐる国連海洋法条約上の課題」『国際法研究』第9号、2021年
● "The Duty to Cooperate in the Protection and Preservation of the Marine Environment", in: Cooperation and Engagement in the South China Sea and Asia Pacific Region (Myron H. Nordquist, John Norton Moore, and Ronán Long eds., Brill, 2019), pp. 125-138.
● "Climate Change and the Protection of the Marine Environment: Food Security, Evolutionary Interpretation, and the Novel Application of Dispute Settlement Mechanisms under the United Nations Convention on the Law of the Sea", in: Global Environmental Change and Innovation in International Law (Neil Craik, Cameron Jefferies, Sara Seck, Tim Stephens eds., Cambridge University Press, 2018), pp. 138-157.
【担当科目】
研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、国際公法演習1(C)、国際公法演習2(C)、国際公法特講1(C)、国際公法特講2(C)、特殊研究1(国際公法)、特殊研究2(国際公法)、特殊研究3(国際公法)、特殊研究4(国際公法)、特殊講義(Contemporary Challenges in the Law of the Sea)、特殊講義(International Law From Japanese Perspectives)
【問い合わせ先】
ckojima.253●g.chuo-u.ac.jp
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法学研究科 公法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:東京大学法学部卒
【専門分野】
租税法
【研究キーワード】
資産課税、相続税、財産評価、地方税
【研究内容】
今日の社会においては、租税は重要な役割を果たしています。日本の財政は、租税負担率27%、国民負担率45%という数字が示すように、国民経済の中で大きな割合を占めていますが、これは主に租税によって賄われています。国や地方自治体がどのような政策分野に税金を投入するか、そのために必要な税負担を、国民・住民がどのように分担するか、これらは政治・政策の中心的問題です。
また、企業でも個々の家庭でも、今日では税負担を考慮した上で経済活動をすることが当たり前になっています。皆さんのご家庭でも、消費税等の税率引き上げの前に保存のきく物を買いだめする、貯蓄・投資の際に減税措置を利用できるかどうか調べる、ふるさと納税制度を利用して地方自治体に寄附をするといったことがあったのではないでしょうか。また、職業に関していえば、税務を直接行う者でなくても、例えばビジネスマンであれば自分が関わる事業に関する税制について、公務員であれば自分が担当する政策分野に関わる税制について、一定の知識を持つことが必要になっています。
このような重要性を持つ租税は、経済学、政治学、社会学など様々な観点から研究対象とすることができますが、その中でも法学の観点から租税を研究するのが租税法学です。
租税法には、次のような特徴があります。第1に、租税法の研究においては、関連する法分野についても調査・研究をすることが重要になっています。租税は、企業の取引など様々な経済活動に対して課されますが、それらに対しては租税法以外の多くの法令によって私法上のルールや行政上の規制が定められています。これらのルールについて十分に調査・研究をしなければ、経済活動に対する課税について考えることができません。逆に、租税法以外の法分野を研究する際にも、税制との関係が深い分野においては、租税法について一定の知識を持つことが求められています。
第2に、上記の通り租税は様々な観点から研究対象とすることができますが、これらの隣接する学問分野との関連性も重要なものです。特に、今日では、租税法学の研究においても、税制の経済分析は欠かせないものとなっています。
第3に、租税法は、様々な法分野の中でも、実務の重要性が高い分野です。日本には国税・地方税を合わせて多くの租税が存在しており、その執行のために、国税庁に約5万6千人、税関に約1万人の職員がおられます。それ以外にも、各地方自治体にそれそれ、地方税の課税を担当する職員がおられます。さらに、税務の専門家である税理士は、全国に約8万人いらっしゃいます。税務の分野ではこれだけの人数の専門的実務家が必要とされているわけです。
【主な論文・著書】
●「租税法における後発的事由」増井良啓ほか編『中里実先生古稀祝賀論文集 市場・国家と法』(有斐閣)、2024年8月
●「無償取得資産の取得費」渋谷雅弘ほか編『水野忠恒先生古稀記念論文集 公法・会計の制度と理論』(中央経済社)、2022年3月
●「相続税・贈与税の国際的問題」中里実ほか編『デジタルエコノミーと課税のフロンティア』(有斐閣)、2020年12月
●『ケースブック租税法〔第6版〕』(共著)弘文堂、2023年9月
●『租税法演習ノート〔第4版〕』(共著)弘文堂、2021年3月
【メッセージ】
租税法を専攻分野とする学生のほか、税制に関連する分野を専攻する方々、税務に関する専門的職業人をめざす方々のご参加を期待しております。
【担当科目】
研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、租税法演習1(A)、租税法演習2(A)、租税法特講1(A)、租税法特講2(A)、特殊研究1(租税法)、特殊研究2(租税法)、特殊研究3(租税法)、特殊研究4(租税法)
【問い合わせ先】
smasahiro001a●g.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
法学研究科 公法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:中央大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学 修士(法学)中央大学
【専門分野】
公法学
【研究キーワード】
憲法、基本権の客観法的内容、価値秩序としての憲法、基本権保護義務、日曜日祝日保護、ドイツ連邦憲法裁判所制度
【研究内容】
これまでドイツ法を比較の対象として、憲法上の権利(基本権)の客観法的内容を中心に研究してきました。憲法は国家の基本権であり、その規範は国家を拘束するものですから、国家が個人の基本権を侵害した場合には、個人は権利救済を求めることができます。基本権には、このような主観的権利としての性格だけでなく、客観法的な性質が認められると考えられます。ここでいう基本権の客観法的内容は、単に国家は基本権を侵害してはならないという客観的な義務を超えた作用が導かれると考えられます。例えば、対国家的権利たる基本権が、私人相互間を規律する私法の解釈・適用に影響するという「私法への照射効」や、国家とは異なる第三者(例えば、企業や個人)が、国民の憲法上の権利侵害を行った場合に、その国民の基本権を保護する義務を国家が負うという「基本権保護義務」などが挙げられます。
基本権保護義務は、ドイツの連邦憲法裁判所が判例で認めてきたもので、ドイツでは学説でも—様々な議論がありながらも—受け入れられています。例えば、空港の周辺住民の健康という基本権を保護するために、国家が、飛行機の離発着を差止め足り、時間制限を設けたりする義務を負うかといった議論ができます。これは、原子力発電所を設置する電力会社や、在日米軍も含めた軍事基地などにも当てはまります。他にも、ハイジャックされた飛行機を国民の生命を保護するために軍隊が撃墜する権限や、コロナ禍対策についても、保護義務に基づいた考察できる場面があるでしょう。
基本権の核心である自由権の発想では、国家は個人の自由に対する「侵害者」になりうる存在です。これに対して、基本権保護義務では、国家は、第三者からの「保護者」として把握されます。しかし、保護が行き過ぎれば、過剰な侵害となるおそれもあります。それは自分たちのことは自分たちで決めるという私的自治の原則を侵すおそれもあります。基本権の客観法的内容から基本権保護義務を導いたからといって、常に一方の当事者が保護される結論ばかりが導かれるのではなく、その限界はどこにあるのかを探っていかなければなりません。さらに、保護義務を求める個人の主観的保護請求権を認めうるかについても考察する価値があると考えています。
ドイツ法を比較の対象とする場合、法律や国家の行為の違憲審査のみを行う連邦憲法裁判所の制度理解は欠かせません。大学院で研究を始めたときから、比較法研究所の連邦憲法裁判所制度の研究グループに所属してきました(その成果として、工藤達朗・畑尻剛編『ドイツの憲法裁判〔第2版〕』(中央大学出版部、2013))。
【主な論文・著書】
● 工藤達朗・小山剛・武市周作編『憲法裁判の制度と実践』(信山社、2023年7月)
●「基本法上の日曜日及び祝日の保護と主観的権利性」東洋法学63巻2号(2020年3月)183-205頁
● 「価値秩序論と基本法における憲法上の価値」ドイツ憲法判例研究会編『講座 憲法の規範力第3巻 憲法の規範力と市民法』(信山社、2020)
● 「行政に対する基本権上の保護請求権」ドイツ憲法判例研究会編『講座 憲法の規範力第4巻 憲法の規範力と行政』(信山社、2017年)
● 『ドイツ憲法の道程』(慶應義塾大学出版会、2022年)(共訳)
【メッセージ】
今日公法学が取り組むべき課題は数多くあり、研究の必要性は高まるばかりです。また、研究を進めるにあたっては、グローバルな視点を欠かすこともできません。法学研究科で、諸外国との比較を通じて、共に専門的に研究していきましょう。
【担当科目】
憲法演習1(A)、憲法演習2(A)、憲法特講1(A)、憲法特講2(A)、研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、専門導入A(公法の現代的課題)、専門導入B(留学生のための日本法入門)、特殊研究1(憲法)、特殊研究2(憲法)、特殊研究3(憲法)、特殊研究4(憲法)
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研究者情報データベース
法学研究科 公法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程退学 法学修士(東京都立大学)
【専門分野】
現代中国法 現代中国法史
【研究キーワード】
憲法監督、「党憲」体制、監察、党による立法の指導
【研究内容】
私はこれまで中華人民共和国(以下「中国」)の人民司法(法院・検察院・人民参審制等)を中心に研究を進めてきましたが、中国における司法の独立の問題を最後に、1982年現行中国憲法の原点をはじめ、現代中国憲法史にその重点を移して研究を行ってきました。その後、2018年改正中国憲法の登場を受けて、現在の研究テーマと問題関心はいわゆる「党憲」体制(“Party-Constitution” System)、すなわち中国共産党(以下「党」)の党規約を頂点とする党内法規の体系と憲法を頂点とする法律・法規・規則等の国法の体系の接続体制の構造的な特色などにあります。
他方で最近では、「中国行政監察史論(1986~2010)」を書き上げました。そこではまず「中国における党の規律検査と行政監察」の密接な関係を前提として、行政機関などを含む国家機関の「党組」(党委)の設置については、党政分離を掲げた1987年の13回党大会における「党規約」の改正で党組を置く「中央および地方の国家機関」が「各級人民代表大会」に限定され、行政・司法機関がそこから除外されました。その後、1989年の第2次天安門事件後の「逆コース」(計画経済よりも市場経済、民主よりも独裁)へむかう過渡的な1992年の14回党大会における「党規約」の改正で、さきの2つの除外がはずされ、もとに戻されました。
これを受ける形で、「党政分離」期における「中国行政監察の自立化の試み」として、中央規律検査委・監察部の1988年の「通知」で「中央の政治システム改革の精神にもとづき、各級政府部門の党組および規律検査組は、一歩一歩取り消されるであろうし、中央および省・自治区・直轄市の政府業務部門には、監察業務の必要により、行政監察機構が設置されるであろう」とされましたが、その後第二次天安門事件を受けて、「中国行政監察の自立化の中断」では、1989年12月の「李鵬同志の講話」を転機に、中共中央規律委の1991年の「規定(試行)」で「党政分離」から「党政分業」への後退という「逆コース」を促す形でさきにいったん廃止された「党組」や「党組の規律検査組(規律委)」などの復活が図られました。最終的には、「党政分業」に後退したうえで、さらに1993年1月から、中央規律検査委と監察部の「合署辦公」(1つの機構・2つの看板)化という「中国行政監察の自立化」はあえなく挫折しました。
ちなみに、私は中国「行政規律監察」の概念などを重視しております。つまり狭義の行政監察である「行政規律監察」を中核とする広義の中国行政監察法制の「整備」(1997年「行政監察法」の制定)と「展開」(2004年の同「実施条例」の制定)の具体的な内容を確認したうえで、「行政監察職能の強化について」まとめ、さらに、2010年の改正法の内容にふれました。
いずれにせよ、2018年の監察法の問題を含め、中国社会の発展において同年の改正中国憲法における「党政合一」ではなく、1980年代後半の「党政分離」の正しい方向にたちもどるべきであると考えています。
【主な論文・著書】
●「中国『党憲』体制とその構造」(『比較法雑誌』第52巻第3号、2018年12月)
●「中国行政監察史論(1986年-1993年)」(同上第53巻第3号、2019年12月)
●「中国行政監察史論(1993年-1997年)」(同上第54巻第1号、2020年6月)
●「中国行政監察史論(1997年-2010年)」(『法学新報』第127巻第12号、2021年4月)
●「続中国『党憲』体制とその構造」(『比較法雑誌』第55巻第3号、2021年12月)
●「中国『党憲』体制とその構造(3)」(同上第56巻第2号、2022年9月)
●「中国『党憲』体制とその『憲政』」(同上第57巻第1号、2023年6月)
【メッセージ】
これまでは、現代中国法の特に中国憲法や中国刑法等の公法を中心に講義などを行っております。2021年度は前期課程で、中国の憲法実施の監督、党による立法にたいする指導、中国の改正全国人大組織法・立法法・監督法・監察法・監察官法・監察法実施条例等を順次取り上げていきました。2022年12月4日で1982年中国現行憲法が40周年を迎えました。勉強してみませんか。熱烈歓迎です!なお、今回から春学期は日本語の教科書を使用します。秋は「現代中国監察制度論」をやります。
【担当科目】
外国法研究1(D)、外国法研究2(D)、研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、特殊研究1(外国法)、特殊研究2(外国法)、特殊研究3(外国法)、特殊研究4(外国法)
【問い合わせ先】
tooriyam●tamacc.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
法学研究科 公法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:東京大学大学院法学政治学研究科博士後期課程単位取得退学・修士(法学)(東京大学)
【専門分野】
行政法
【研究キーワード】
学術法、情報法、ドイツ行政法
【研究内容】
国や地方公共団体などの行政の担い手(行政主体)は、法律に則って、行政目的を達成するために様々な行為形式を用いて市民に働きかけます。時にはその働きかけが違法ではないかと疑問が呈され、市民がそうした活動に不満を覚えて訴訟が提起されることもあります。行政主体と市民との間で生ずる紛争を解決する役割を担うのが裁判所です。裁判所は、行政活動をめぐって生ずる紛争を解決するための理論を形成していき、当該理論は学者の批評にさらされます。これらの営みが行政法学の中身を充填していくのです。行政活動一般に通用する理論は、行政法総論という領域をなしています。もっとも、個々の紛争は、実は個別の行政領域で生じており、その領域には様々な法令が存在しています。行政活動の個別の領域を指して、個別行政法ということがあります。すなわち、個別行政法で生じた理論が行政法総論を形成していくというわけです。個別行政法は多岐にわたります。租税法、経済法、教育法、社会保障法及び環境法等は、行政法総論を形成する理論の供給源ですが、それ自体固有の法領域を形成するほどに個性的です。これら個別行政法は、行政法総論を超えて独自の理論を生み出しており、すでに独立した学問領域になっています。行政法学者は、得意とする個別行政法領域についても詳しい方が少なくありません。行政法総論と個別行政法は、相互に影響を与えて発展していくに違いありません。私は行政法学者として行政法総論の発展・形成に関心を寄せていますが、しばしば行政法学者がそうであるように、個別行政法の領域にも関心があります。私は、現在、学術研究に関する法について研究をしていますが、この領域は十分に研究が進められていない領域です。判例・学説の展開が少ないため、主にドイツ法を参照しながら研究を進めています。個別行政法の研究は、日本の行政法総論を形成していきますが、日本の行政法学は外国法研究を通して発展してきた歴史もあり、外国法研究もまた行政法総論の内容を形成してく重要な理論的供給源なのです。もちろん、今日では日本法独自の発展がみられますが、これからも外国法研究から重要な示唆をえながら、日本の行政法学は発展していくと考えらえます。 私は日独比較研究に取り組みたいと思っています。
【主な論文・著書】
●「ドイツの学術審議会」大貫裕之・神橋一彦・松戸浩・米田雅宏(編)『稲葉馨先生・亘理格先生古希記念 行政法理論の基層と先端』(信山社・2022年)pp.585-603頁所収
●「研究不正に関する裁判例から学ぶべきこと」中央評論73巻1号(2021年)pp.171-179頁
●Hirotaka Tokumoto, Reform des juristischen Ausbildungssystems in Japan, ZDRW Heft 1/2020, pp.21-31
●「比較行政法学に関する一考察」共編著『現代行政訴訟の到達点と展望』(日本評論社・2014年)pp.77-94所収
●『学問・試験と行政法学』(弘文堂・2011年)
【メッセージ】
行政法は上述のように様々な行政領域にかかわっていますので、行政作用法及び行政救済法の一般法理に関わるテーマだけでなく、個別法領域に関心がある学生も歓迎します。
【担当科目】
研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、研究倫理・研究方法論(法学)、行政法演習1(B)、行政法演習2(B)、行政法特講1(B)、行政法特講2(B)、専門導入A(公法の現代的課題)、特殊研究1(行政法)、特殊研究2(行政法)、特殊研究3(行政法)、特殊研究4(行政法)
【問い合わせ先】
tokumoto.674●g.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
法学研究科 公法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:中央大学大学院法学研究科公法専攻博士後期課程退学/高等研究修了(Diplôme d’études supérieures d’université)エクス・マルセイユ第3大学(フランス)
【専門分野】
国際法学
【研究キーワード】
国家平等、開発、文化、言語権と国際法
【研究内容】
私は言語と国際法という研究テーマに関心があります。地球社会には、多様な文化が存在しています。文化とその表現を保護し、文化間の相互交流を促進することは、人類の存続のためにも平和の実現のためにも必要なことです 。文化を「特定の社会または社会集団に特有の精神的、物質的、知的、感情的特徴を合わせたものであり、芸術・文学のみならず生活様式、共生方法、価値観、伝統、信仰も含むもの 」と捉えた場合、言語はそのような文化を構成する重要な要素です。それは、コミュニケーション手段であるにとどまらず、歴史的に形成された生活・思考様式を伝え、個人および集団のアイデンティティを表現する第一の媒体です。言語なしに文化を継承・発展させることは、ほぼ不可能であるといえるでしょう。
国連総会は、2019年を国際先住民族言語年と定める決議を採択しました。同決議は、言語がコミュニケーション、教育、社会の統合・発展の手段であると共に人々のアイデンティティ・歴史・伝統・記憶の宝庫でもあると述べ、先住民族の言語が消滅の危機に瀕しておりその言語を保全・活性化するため国内・国際レベルで緊急に措置をとる必要があると警鐘を鳴らし、その言語を保護・発展させることはそれらの言語を話す人々に利益をもたらすだけでなくこの世界の豊かな文化多様性にそれらの言語が貢献していることを他者が知る機会にもなる、と説いています。
少数者言語にたいして国際法がどのように向き合っているか、そこにどのような課題がみてとれるか。これを解明するために、私は現在次の3つの課題にとりくんでいます。①世界のさまざまな少数者言語(日本の琉球語、アイヌ語を含みます)が歴史的にどのように扱われ現在に至っているか? ②UNESCO諸条約、地域言語・少数者言語のための欧州憲章、民族的少数者保護のための欧州枠組条約などは、少数者言語を保護するためにどのような法制度を設けているか。そこにどのような問題点がみいだされるか? ③言語権というものが歴史的にどのように形成・発展してきたか? その延長上に位置づけられる言語的正義とは何か?
法学は「正義を実現する学問」であると捉えることができます。この場合の正義とは多義的であり歴史的にさまざまな正義概念が唱えられてきました。私は、そこに「言語的正義」という概念を包摂することができるのではないかと考えています。歴史的に見て特定の国、地域、階層の人々が政治的・経済的に支配的地位を占める場合、それらの人々が用いる言語が支配的言語になり、そこに属さない人々の用いる言語は蔑まれ、周辺化し、差別の対象になります。「言語的正義」とはそのような言語の現状に異議を申し立て、言語の平等を通じて人々の平等をめざす考え方です。国家の意思の合致にもとづいて形成される国際法にそのような言語的正義の発想がそのまま取り入れられることはあり得ません。しかしながら国家の意思にはそれを構成する人々の意思が何ほどかは反映するはずです。言語権や言語的正義という主張、理念がどこまで現代国際法にとりいれられているか、そこにどのような限界・課題がみいだされるか。このような問題について考えを深めたいと思っています。
【主な論文・著書】
●「少数者言語と国際法―琉球語・アイヌ語を素材にして―」(『法学新報』127巻5・6号、 2021年、369頁-397頁)
●「国際法は言語をどのように保護しているか? ―Jacqueline Mowbrayの所論に依拠して―」(『法学新報』127巻11号、2021年、47頁-75頁)
●『文化多様性と国際法』(北村泰三との共編著、中央大学出版部、2016年)
●『現代国際法論集 開発・文化・人道』(中央大学出版部、2016年)
【メッセージ】
自分が無意識のうちに当然視している考え方をみずから問い直す視点をぜひ養ってください。それを通じて自分の考えを深めていくことが大切です。そのためには、さまざまな書物を読み、いろいろな人と議論をすることが必要になります。これは循環的営為であり、現在の私も、もちろんそのなかにいます。
【担当科目】
外国語文献講読(法学・フランス語)、研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、国際公法演習1(B)、国際公法演習2(B)、国際公法特講1(B)、国際公法特講2(B)、特殊研究1(国際公法)、特殊研究2(国際公法)、特殊研究3(国際公法)、特殊研究4(国際公法)、特殊講義(International Law From Japanese Perspectives)、特殊講義(International Law issues from Japanese and Korean Perspectives)、特殊講義(International Law)
【問い合わせ先】
nishiumi_maki●yahoo.co.jp
【リンク】
研究者情報データベース
法学研究科 公法専攻 准教授
最終学歴・学位・取得大学:博士(法学)(早稲田大学)
【専門分野】
法思想史・法哲学
【研究キーワード】
法実証主義、新カント主義、一般法学
【研究内容】
法思想史といわれる学問分野の中でも、19世紀以降のドイツ法学史を中心に研究を行ってきました。現在の観点から振り返ってみると、私の研究の中心において存在するのは、「法実証主義」という概念であるように思われます。従来、近現代のドイツ法学を取り扱う法思想史・法史学の研究者の多くは、「法実証主義」という用語がこの時代のドイツ法学を理解するためのキーワードだと考えてきました。しかし、いくらか敷衍して見るならば、各論者の用いる「法実証主義」という用語には統一的な意味はありません。むしろ、自身の関心に応じて、「法をもっぱら事実として把握する立場」を指すものとしてこの言葉を用いる論者もいれば、「裁判官が実定法に拘束されるべきことを主張する立場」を指すものとしてこの言葉を用いる論者もおり、さらに「各国・各時代を問わず法というものが持つ法の構造を明らかにしようとする立場」を指すものとしてこの立場を用いる論者もいます。これらはそれぞれ異なった立場であり、しばしば、相互に対立することもありますが、このことは従来の研究においては十分に意識されてきませんでした。これらの点を踏まえて、19世紀ドイツ法学の実像により適切に接近することが近年の私の研究課題です。
【主な論文・著書】
●「ラートブルフ・テーゼ」、成文堂、2022年
●「法思想史入門」、成文堂、2020年
●「近代ドイツの法と国制」、成文堂、2017年
【メッセージ】
担当教員が院生諸氏に伝えられるのは、専門分野に関する諸々の知識そのものというよりも、テクストの読み方であると考えています。テクストを読む際は、その著者がそのテクストを、どのような問題意識を持って、どのような社会的背景を前提として、どのような議論を批判することを念頭に置いて、どのような読者に向けて執筆したかを理解することが肝要です。これらを意識することは、法思想史のみならず、どのような分野においても、研究を進めるにあたり有用でしょう。
【担当科目】
法思想史研究1(A)、法思想史研究2(A)
【問い合わせ先】
knishimura18●gmail.com
【リンク】
研究者情報データベース
法学研究科 公法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:中央大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得 博士(法学)(中央大学)
【専門分野】
公法学
【研究キーワード】
憲法、表現の自由、結社の自由、地方自治、違憲審査制度、アメリカ憲法、参加民主主義
【研究内容】
中学に入る前に、男子生徒は丸刈りにされた時代がありました。私の通った学校もそうでした。いまだに丸刈りにしなければならない理由はわかりません。このもやもやした気持ちを持ちながら中学校時代を過ごしたせいか、慢性中二病が治りません。高校に進学し、たまたま立ち寄った書店で鵜飼信成『憲法と裁判官』(岩波新書)とめぐり合いました。自由を守るために生涯をささげた合衆国最高裁の裁判官たちの姿が活き活きと描かれた本書が、自分の進む方向を決めました。
大学に入り、尊敬できる先生と出会いました。自分の考えを押し付けず、学生を伸ばすためには何をアドバイスすればよいのか、いつも考えているような先生たちでした。恩師と呼べるこの先生たちによって、研究者の道を選びました。恩師を超えるのは困難ですが、「先生からもらった学恩は学生に返すものだ」と心して教壇に立っています。
修士論文は、「営利広告の自由」を扱いました。幸運にもこの論文が私を世に出してくれました。26歳のことでした。それ以来、表現の自由は私のライフワークの一つになっています(これらの論文については、『表現の自由 理論と解釈』(中央大学出版部)にまとめています)。
この論文によって地方公立大学に職を得ることができた私は、自治体の職員の方たちから、現実に起きている問題へのアドバイスを求められることが多くなりました。条例づくりをお手伝いしたり、審議会の委員を断ることなく務めました。これが私を鍛えてくれました。地方自治に関するテーマはこのような縁をきっかけに手がけたものです。
一方で、「人が望まないことを強制されるのはどうしてか」という積年のテーマが頭を離れないでいたことも確かです。自治体の仕事を手伝う傍らで、「強制加入団体と個人の自由」についても考え続けていました。群馬司法書士事件を手伝ってくれないかとの話が来たのはそのようなときでした。この縁で、『近代憲法における団体と個人』(不磨書房)を博士論文として提出しました。同時に、広島市で暴走族を追放する条例が制定され、ある青年が逮捕起訴されたのだけれど、この事件に関わってくれないだろうかとの話を受けたのもこの時期です。後に、担当された弁護士の先生と「裁判には負けたけれど、最高裁判例を作りましたね」と話したことがあります。
ともすれば頭でっかちになりがちな私に、現実の問題ときちんと向き合うことを教えてくれたのは、いつも「縁」でした。ニュートンやアインシュタインではないので、私の名前はいずれ時間とともに消え去っていきます。けれども仕事は残ると信じて、また仕事に向き合わなければと意を新たにしています。
【主な論文・著書】
●『日本国憲法を学ぶ 第2版』(2019年・中央経済社)
●「解散権制約の法理」法学新報127巻1号(2020年)
●「会社の言論」法学新報127巻11号(2021年)
●「都市公園利用権と集会規制」都市問題107号(2016年)
●「市議会議員政治倫理条例の合憲性」ジュリスト平成26年度重要判例解説
【メッセージ】
憲法は条文数が少ないため、理屈で埋め合わせなければならない分野です。であるから、自由度が高く、自分のスタイルで研究を進める余地は広いと思います。中大の憲法学は、このような自由さが特徴です。志ある方は、ぜひ門をたたいてみてください。
【担当科目】
憲法演習1(B)、憲法演習2(B)、憲法特講1(B)、憲法特講2(B)、研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、専門導入A(公法の現代的課題)、特殊演習(法学系)、特殊研究1(憲法)、特殊研究2(憲法)、特殊研究3(憲法)、特殊研究4(憲法)
【問い合わせ先】
mhashimoto001s●g.chuo-u.ac.jp
hasshy●tamcc.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
法学研究科 公法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学 修士(政治学)(早稲田大学)
【専門分野】
都市法、環境法、行政法
【研究キーワード】
当事者自治と法、エリアマネジメントと法、地域ルール、脱炭素と法
【研究内容】
行政法、特に都市法・環境法について、イギリスの行政法や都市法・環境法との比較法研究を通じて研究をしています。最近は、土地利用や空間利用における当事者参画や当事者自治に関して、その法的規律のあり方についての研究を進めています。と、分かりにくく言ってしましたが、実際にはこんな感じです。
都市分野において、地域の管理に関する「地域ルール」や「エリアマネジメント」、その場としての地域の「協議会」といったものが近年制度化されてきています。これらは地域の事業者や住民を当事者として、地域のみんなに関わる事(地域的な公共性のある事柄)について、当事者の自治や参画の下で決定し、実施してゆくことを認めるものです。これ自体は望ましいことかもしれませんが、行政法の観点からすると課題があります。というのは、公共的な決定が利害関係をもつ当事者によって決定され、実行されているため、特定の当事者に有利な、または不利な決定がなされて実行される危険性があるためです。そうしたことが起きないように、つまり公共的決定が適切になされるように、法的に規律をする必要があります。具体的には、透明性の確保、説明責任、当事者と行政との距離の確保といった観点から規律が求められるでしょう。公共的決定において当事者の自治や参画がより一層認める制度が増えてゆくなかで、このように当事者に委ねるがゆえに、行政法の観点から求められる法的規律について研究をしています。
こうした都市法の研究とともに、都市法の観点からの環境法の研究もしており、脱炭素に対する都市計画法制の寄与と限界、陸上・洋上風力発電所の立地調整や環境影響評価、海洋空間計画など、環境法におけるテーマについて都市計画や空間計画といった観点からアプローチをしています。
いずれの研究も、現代的な社会課題を念頭に、どのような法的規律が要請されるか、また、政策目的に対して法がどのように寄与しうるかという関心に基づくものです。それゆえ、国や自治体などでの具体的な制度設計において寄与できるかも頭の片隅におきながら、研究をしています。
【主な論文・著書】
●「協議会に関する法的考察―公私協働、行政計画の視点から(1)、(2・完)」『南山法学』41巻2号、3・4号(2018年)
●「地域ルールと行政法―まちづくり条例におけるまちづくり計画を中心に」『行政法研究』37号(2021年)
●「エリアマネジメントと法:都市再生特別措置法における都市再生推進法人、占用許可特例を中心に」『南山法学』45巻3・4号(2022年)
●「カーボンニュートラルに対する都市計画・土地利用計画の寄与」『環境法政策学会誌』26号(2023年)
●「都市開発における公共貢献に係る法的考察:イギリスにおける計画協定・計画義務、地域インフラ負担金を参照して」法学新報130巻7・8号(2024年)
【メッセージ】
研究が面白い、楽しいと感じられていますか?僕は今でも、自分の研究や議論をしているとき、他分野の本を読んでいるときに、「面白いな~」と目からうろこが落ちる瞬間があります。
研究が中心の大学院生活では研究がつまらなくなることもあるでしょう。そんな時には、大学院進学のきっかけとなった勉強が面白いと思った時を思い出したり、友人と議論をしたり、さらには教員も利用して、研究の面白さを思い出せるといいですね。
【担当科目】
研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、行政法演習1(D)、行政法演習2(D)、行政法特講1(D)、行政法特講2(D)、専門導入A(公法の現代的課題)、専門導入B(留学生のための日本法入門)、特殊研究1(行政法)、特殊研究2(行政法)、特殊研究3(行政法)、特殊研究4(行政法)
【問い合わせ先】
hhorasawa668●g.chuo-u.ac.jp
【リンク】
研究者情報データベース
法学研究科 公法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:法学博士(Dr. iur. Christian-Albrechts-Universität zu Kiel)
【専門分野】
憲法解釈学全般、法哲学(主に方法論)、国家及び憲法理論
【研究キーワード】
解釈、方法、理論
【研究内容】
外国法(主にドイツ法)を参照し、本邦における解釈論上の諸問題の検討を行っている(詳細については、researchmap を参照)。比較法研究の重要性については言うまでもないが、社会的な背景の相違を考慮しない模倣や、いわゆる「示唆」活用は望ましくない、異なる社会的背景のもと、相互に解決すべき<共通問題>を抱えており、従ってまた、解決の方向性も各々異なりうる、現在では、そのような<問題志向的>なものとして、比較法研究の意義を捉えている(井田良先生のご論考を参照されたい。同「刑法学と比較法研究―極私的方法論的遍歴」比較法ニューズレター63号(2022)1頁)。
【主な論文・著書】
●Grundrechtliche Drittwirkung und Daseinsvorsorge, in: Sieckmann/Borowski/Bäcker (Hrsg.) Grundlagen der demokratischen Verfassung, Mohr Siebeck Tübingen 2025 (im Erscheinen/forthcoming)
●「国家による市民的コミュニケーションー政党の指導的観念—」井上典之他編・棟居快行先生古稀祝賀記念論集(2025・信山社)(forthcoming)
●「憲法概念としての政治的中立性」法学新報・亘理格教授退職記念論文集130巻7=8号(2024)149-177頁
●Staat und Verfassung - Ein Vergleich Japan/Deutschland -, in: JöR 2023, Mohr Siebeck Tübingen, S. 187-207.
●「感染症パンデミックにおける公法上の重要問題(一)〜(三・完)―ロックダウン規制について」自治研究99巻3-5号(2023)79/104/77頁以下
●「ドグマーティクとしての国家」法学新報・畑尻剛教授古稀記念論文集127巻7=8号(2021) 447-488頁
●Kollisionslösung durch Gesetz - Verfassung, Gesetze, Dogmatik, in: Jestaedt/Suzuki (Hrsg.), Verfassungsentwicklung III Deutsch-Japanisches Verfassungsgespräch 2019, Mohr Sibeck Tübingen 2021, S. 69-88
●Repräsentation der idealen Dimension, in: Pauslon/Borowski/Sieckmann(Hrsg.), Rechtsphilosophie und Grundrechtstheorie - Robert Alexys System, Mohr Sibeck Tübingen 2017, S. 547-562.
●「法学理論としての国民代表の観念についてー理念としての代表ー 」工藤達朗他編・戸波江二先生古稀記念 憲法学の創造的展開(2017・信山社) 283-305頁
●Lebenspartnerschaft: Schutz durch die Verfassung, in: Jestaedt/Suzuki (Hrsg.) Verfassungsentwicklung I, Deutsch-Japanisches Verfassungsgespräch 2015, Mohr Sibeck Tübingen 2017, S. 239-247.
【メッセージ】
大学院における演習に参加し、研究指導を希望する者には、予め①外国語運用能力(ドイツ語及び英語)及び②公法の基礎知識が求められる。当然の事項に属するが、事前に留意されたい。
【担当科目】
憲法演習1(C)、憲法演習2(C)、憲法特講1(C)、憲法特講2(C)、研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、専門導入A(公法の現代的課題)、特殊研究1(憲法)、特殊研究2(憲法)、特殊研究3(憲法)、特殊研究4(憲法)
【問い合わせ先】
こちらのフォームよりお問い合わせください。
【リンク】
研究者情報データベース
法学研究科 公法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:法学修士(中央大学) 中央大学大学院法学研究科博士後期課程中退
【専門分野】
国際法(国際紛争解決における法的要素の機能、国際秩序の思想的基盤/国際倫理/グローバル・ジャスティス論)
【研究キーワード】
紛争処理・解決、国際法執行過程、国際正義/国際倫理、国際法思想
【研究内容】
準備中。
【主な論文・著書】
●「国際法学と紛争処理の体系」『紛争の解決(日本と国際法の100年、第9巻)』(国際法学会(編)、三省堂)所収。
●「国際紛争処理制度の多様化と紛争処理概念の変容」『国際法外交雑誌』97巻2号。
●The Place of the International Court of Justice in the Entire Process of Dispute“Resolution”: A Critical Evaluation of Function of Adjudication in International Relations『(日本比較法研究所50周年記念)Toward Comparative Law in the 21st Century』。
●「国際紛争の解決と国際司法裁判所の機能に関する一試論」『法学新報』95巻9・10号。
●「国際法学の思考様式としての『法の調停モデル』─紛争解決と国際法・国際法学の結節点─」『法学新報』95巻1・2号。
●「『グローバル行政法』論の登場─その背景と意義」横田・宮野(編)『グローバルガバナンスと国連の将来』(中央大学出 版部) 所収
●(監訳)チェイズ&チェイズ『国際法遵守の管理モデル─新しい主権のあり方』(中央大学出版部)
●学会・学外等の活動:国際法学会、世界法学会、国際経済法学会、国際政治学会、International
【メッセージ】
国際紛争の「処理」にはどのような工夫の集積があり、それらは紛争の「解決」にど のように結びつくのか。また、紛争の処理をも含めた国際法の基礎を支えるものとして、国境 を越えた共通の正義はどこまで可能か。このような問題意識を中核にしつつ、現代国際法のか かえる最先端の諸課題につき、隣接諸分野まで含めた諸文献を広く渉猟し、その基礎の上で、 大いに自由な談論風発の場をもちたいと思います。
【担当科目】
研究指導論、研究特論1(国際企業関係法)(E)、研究特論2(国際企業関係法)(E)、研究報告論1、研究報告論2、国際関係法1(A)、国際関係法2(A)、特殊研究1(国際関係法)、特殊研究2(国際関係法)、特殊研究3(国際関係法)、特殊研究4(国際関係法)、特殊講義(International Law From Japanese Perspectives)
【問い合わせ先】
こちらのフォームよりお問い合わせください。
【リンク】
研究者情報データベース
法学研究科 公法専攻 教授
最終学歴・学位・取得大学:九州大学大学院法学府博士後期課程単位取得退学
【専門分野】
日本法制史、近代日本法史
【研究キーワード】
司法制度、裁判制度、近代法概念、法典翻訳
【研究内容】
日本近代法を考究する上では、いわゆる「西洋法の継受(摂取)」の諸問題を避けて通ることはできません。西洋近代法制の学習と受容を行うにあたっては、国家権力がどのような制度の下で、いかなる活動を、いかなる手続を経て行えば「近代法をもつ近代的国家である」ということができるのかということ自体を学んだ上で、これを実際の法や制度に導入していくという作業が不可欠でした。もちろんこのことは、日本における近代法制の整備に際して西洋法が無前提に取り入れられたということを意味するものではありません。実体法や手続法のみならず、これらの運用の前提となる「伝統的」な社会通念や既存の法制の利用をめぐる議論を注意深く検討することが重要です。
私はこうした視角から、最近では近世~近代移行期の日本にもたらされた西洋法情報(法典のみならず、「法」や「権利」に相当する用語や概念を含むテキストや辞書を含みます)の翻訳を通じて、当時の国内における法や制度に関する諸概念を前提しながら、近代法上の諸概念をどのように認識し得たについて特に関心を持ち、箕作麟祥をはじめとする翻訳者や翻訳テキストの研究を進めています。特に日本においては、江戸期を通じた西洋との交流チャンネルとして、オランダを通じた蘭学やその延長上にある洋学の蓄積があることに注目しています。明治の初年においては『ナポレオン諸法典』の翻訳を通じたフランス法の受容がよく取り上げられますが、オランダは18世紀末から19世紀初頭にかけてフランスの統治を受けており、多くの法典をフランス法を基にして編纂したほか、フランス法学の柱をなす自然法学も同国に影響を与えていたという事実があります。こうした関係で、幕末期から明治期にかけての知識人は、蘭語学の蓄積を一定の前提としつつ近代法概念との接触を果たしていくということがわかってきており、最近ではこうした蘭学・洋学の系譜から、19世紀日本における法概念の学習・受容の端緒が得られるのではないかと考え、当時のテキストを基に分析を進めているところです。
【主な論文・著書】
●「明治太政官復古と刑法事務課・事務局、刑法官、刑部省の形成」『北九州市立大学 法政論集』42巻2・3・4号合併号・2015年
●「天保・弘化期のオランダ法典翻訳におけるburger関連語の訳出」額定其労ほか編『法制史学会70周年記念若手論文集 身分と経済』慈学社・2019年
●「明治初年における伺のなかの西洋法」松園潤一朗編『法の手引書/マニュアルの法文化』国際書院・2022年
●「第11章 刑事法の近代的展開」出口雄一ほか編『概説日本法制史〈第2版〉』弘文堂・2023年
【メッセージ】
日本法制史学には、法学内在的な問題関心のもとに概念史的な構成を重んじる「法科派」と、歴史記述の実証性を重んじる「文科派」という大きく2つの研究潮流があります 。最近ではこうした分類で個々の研究者が自己規定を行うことは稀ではありますが、近代「法学」という学問の枠組みを基礎として西洋との比較を行いながら日本史上の「法」の展開を探るという法学的なアプローチと、その一方における法の文化的・社会的な背景を歴史的にたどるという一般歴史学的なアプローチは、現在に至るまで法制史研究の車輪の両輪として相互に影響を及ぼし合っているということができるように思います。法史に関心を寄せるきっかけは人それぞれであると思いますが、この分野に興味を持たれた方は、是非これらのアプローチ双方に意識を向けていただければと思います。
【担当科目】
法史学1(A)、法史学2(A)、研究指導論、研究報告論1、研究報告論2、特殊研究1(法史学)、特殊研究2(法史学)、特殊研究3(法史学)、特殊研究4(法史学)
【問い合わせ先】
ryamaguchi●tamacc.chuo-u.ac.jp
【リンク】
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