ハイスピードカメラによる動画撮影は,スポーツ中継などの身近な例だけでなく,工場内の生産ラインにおける検品など,様々な場面で利用されています。高速に動く撮影対象の時間的な変化を正確に捉えるためには,より高速な撮影速度(フレームレート)が要求されます。本研究グループでは,ハイスピードカメラ自身の性能を超えたフレームレートで高速に動画撮影が可能な技術(時間超解像動画撮影法)を,光の波動性を利用した技術(ホログラフィ)によって実現しています。レーザ光源を用いるホログラフィだけでなく,LED光源を用いるインコヒーレントホログラフィも利用することで,幅広い分野への応用を考えています。
研究紹介用の動画
(共同研究者の下馬場朋禄先生とともに,所属する電気電子工学コースの紹介用に作成)
研究紹介用の動画
(NEDO「官民による若手研究者発掘支援事業 」研究シーズ )
光渦と呼ばれる特殊な光は,光の円偏光(自転)に対応するスピン角運動量と,渦(公転)に対応する軌道角運動量の両方を併せ持っています。一般的な光渦は,動径方向の光強度分布(光渦のリング径)が軌道角運動量に依存しているため,軌道角運動量の異なる複数の光渦を同一のリング径で重ね合わせることが困難でした。研究グループでは,下図に示す完全光渦(perfect optical vortex)と呼ばれる光渦に着目し,完全光渦を光の波動性を利用した技術(ホログラフィ)によって生成する手法の研究に取り組んでいます。将来的には,生成した完全光渦によって高次光子や電子スピンを制御することを目指しています。
ホログラフィック完全光渦生成のシミュレーション結果
(http://dx.doi.org/10.1364/OL.40.000597を基に計算)
光速はこの世でもっとも高速であり,秒速約30万kmです。1ナノ秒の間に30cmも進みます。このように光速は超高速なので,光が伝播する様子を動画撮影することは,ハイスピードカメラをもってしても極めて困難です。研究グループでは,光の波動性を利用した技術(ホログラフィ)とフェムト(=1000兆分の1)秒領域の超短光パルスレーザとを組み合わせた,光が伝播する様子のスローモーション動画像撮影法に関する研究に取り組んでいます。光の伝播だけでなく様々な超高速現象も可視化できる光速イメージング法の実現に向けた技術革新に挑戦しています。
光伝播のスローモーション動画から抜き出した6コマの画像の例
(a) 実験結果,(b) シミュレーション結果
(https://doi.org/10.1364/JOSAA.441585より引用)