⻘⾊ LED の材料として知られている 窒化ガリウム(GaN) は、半導体の中でも「硬い」材料で、 デバイスプロセスの1つであるエッチング加⼯には、物理的なイオン衝突を利⽤するなど⾼いエネルギーが必要です。そのため、エッチング後の表⾯に加⼯損傷が残りやすく、デバイス性能を劣化させる要因の1つとなっています。
当研究室では、この問題を解決するため、 光電気化学(PEC)反応を利⽤した新しいウェットエッチング法を開発しました。化学薬品に紫外光を照射して薬品の反応⼒を⾼め、材料表⾯からゆっくりと溶かします。物理的な損傷を与えないエッチング⼿法で、GaN に対しても有効です。PEC反応の基礎的理解を深めながら、GaN 系電⼦デバイス構造に最適な加⼯条件の探索や、エッチング装置の開発を進めています。
GaNは高い絶縁破壊電界や、大きな飽和電子速度等の優れた電気的特性から、移動体通信⽤基地局の信号増幅器に必要不可⽋な「⾼出⼒・ ⾼周波トランジスタ」の基盤材料として有望です。
当研究室では、光電気化学(PEC)エッチングを使った精密加⼯により、GaN トランジスタのしきい値電圧を精密に制御し、オフ時の電流損失を抑制することに成功しました。これは、5G/6G 通信システムの低消費電⼒化につながる技術です。
※光電気化学エッチングは、GaNのみならずAlGaN、AlGaInNといった混晶材料にも適用可能です。
優れた電気物性をもつGaNは、次世代パワーデバイス用半導体としても期待されていますが、デバイスプロセスが成熟しておらず、新規プロセスがGaN表面及びデバイス特性に与える影響は未知数です。それらを正しく評価し制御することが、デバイスの信頼性および性能の向上に必要不可欠となっています。
当研究室では、溶液に浸した半導体表面の電気化学的性質を利用した「電気的評価法」の開発に取り組んでいます。この手法は測定用電極の形成が不要であり、プロセス後の表面状態を変えることなく測定できます。さらに,光電気化学(PEC)エッチングと組み合わせることにより、表面状態の深さ分解評価が可能です。