Research
Quantum phenomena in low-dimensional materials
Quantum phenomena in low-dimensional materials
私たちは、電子の運動が1次元または2次元に強く制限された低次元物質に注目しています。無機物・有機物を含むさまざまな低次元物質を作製し、そこで現れる新しい量子現象を研究しています。
電気抵抗がゼロになり、磁束が量子化されるなど、巨視的なスケールで量子力学的な性質が現れる現象です。超伝導体に侵入した磁束は量子化された「磁束量子(ボルテックス)」として存在し、互いに相互作用しながら、固体・液体・液晶など、さまざまな集団状態を形成します。
電子の電荷やスピンが周期的に変化する集団状態です。低次元物質では、このような秩序が外部電場などによって一体となって移動するスライディングが起こります。さらに、リングやメビウス構造などのトポロジカル結晶では、低次元性と周期境界条件が組み合わさることで、通常の結晶とは異なる量子秩序やトポロジカルな状態が現れることが期待されます。
1次元では電子の運動が強く制限されるため、電子間の相互作用が非常に重要になります。その結果、3次元の金属のような独立した電子の描像ではなく、電子が集団として振る舞う特有の量子状態が現れます。これが朝永–ラッティンジャー液体です。1次元では、電子間の相互作用によって量子揺らぎが強く、通常の意味での長距離秩序が形成されにくいことも特徴です。
2次元電子系に強い磁場を加えると、電気伝導が量子化される量子ホール効果が現れます。これは、電子の運動が2次元に制限されることと、電子状態のトポロジーが深く関係した代表的な量子現象です。
物質の実空間や運動量空間(k空間)のトポロジーを制御することで、通常の物質とは異なる新しい量子状態や輸送現象が現れます。特に低次元物質では、次元性・相互作用・トポロジーが組み合わさることで、トポロジカル欠陥や分数量子状態など、さらに新しい量子現象が期待されます。
このような低次元物質に現れる多様な量子現象を、私たちは実験的に探索しています。
Ca₂RuO₄ナノ薄膜におけるボースグラスの発見
ルテニウム酸化物Ca₂RuO₄ナノ薄膜において、電子対(クーパー対)が約220 Kという高温まで局在した状態で存在することを示すボースグラス状態を発見しました。これまでボースグラス状態は主に極低温で研究されてきましたが、強い電子相関を有する酸化物で高温まで存在するかは明らかになっていませんでした。
スメクチック磁束液晶における異常Hall輸送
超伝導体に磁場を加えると、磁束は量子化され、超伝導体の中に入り込みます。 私たちは、規則的なラメラ層状構造を形成する「スメクチック磁束液晶」に注目し、その集団運動を調べました。
その結果、スメクチック磁束液晶の運動によって、通常とは異なる大きなHall応答が現れることを発見しました。これは、磁束の集団状態とそのダイナミクスが、電気輸送に直接反映されることを示しています。
圧力で生まれる新しい結晶構造と超伝導
有機分子結晶に圧力を加えることで、結晶構造と電子状態がどのように変化するかを研究しています。
(DMET-TTF)₂AuBr₂では、約0.9 GPaの圧力によって、もともとの準1次元的な構造から、より正方形に近い長方形の結晶構造へと変化することを明らかにしました。この構造変化によって反強磁性状態が現れ、さらに圧力を高めると、約6 GPaで超伝導が発現します
この研究では、結晶構造の変化が磁性や超伝導などの量子状態を生み出す仕組みに注目しています。外部圧力によって物質の構造を変化させることで、新しい量子状態を実現することを目指しています。
Pressure-induced nearly perfect rectangular lattice and superconductivity in the organic molecular crystal (DMET-TTF)2AuBr2
© 2026 北海道大学 理学部物理 低次元電子物性研究室