研究紹介
希ガス同位体
希ガス(He,Ne,Ar,Kr,Xe)は岩石における存在量が極めて少なく,起源の違う物質中にそれぞれ異なる同位体組成をもっています.そして,化学的に安定なことから他の元素との相互作用が少なく,惑星科学においてはトレーサーとして重要な役割を果たしてきています.
また,放射壊変等の二次的な付加によって,放射壊変起源希ガスや宇宙線照射起源希ガスを用いた年代測定も行われています.
研究の動機
学生時代から一貫して希ガス同位体を用いた研究を続けてきました.それに伴い,様々な装置の開発にも携わることができました.これらの技術を使い,新しい研究分野を開拓すべく,試行錯誤を続けています.
希ガス局所分析
二次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)は元素・同位体の局所分析(マイクロメートルからサブマイクロメートルの空間分解能)を精密に行うことができます.この技術を用いると,多様な物質の起源や年代を明らかにすることができます.
詳細な希ガス同位体分析を行うために,我々の研究グループは同位体ナノスコープ(LIMAS:Laser Ionization MAss nanoScope)と呼ばれる二次中性粒子質量分析(Secondary Neutral Mass Spectrometry:SNMS)装置を開発しました.LIMASによって,天然試料の局所希ガス同位体分析に成功しました.
同位体ナノスコープ
微小試料の取り扱い
同位体ナノスコープで測定する試料は,探査機はやぶさが持ち帰ったイトカワ粒子のように微小であることがあります.このような試料の取り扱いのために電動マニュピュレーターなど試料調整用の装置も保有しています.