研  究


主な研究分野は、ミクロ経済学理論(特に情報と不確実性の経済学)と金融経済学です。理論と実証研究の双方を行っています。

 

金融システムは、家計や企業に対して、リスクの移転やシェアや異時点間の資源配分を実現する手段を与えることで、貧困の削減や経済発展につながる投資を誘発し得ます。しかし、機能的な金融システムにより、社会的に望ましい資源配分が実現できるか、自明ではありません。例えば、災害保険は、低い確率であるが深刻な被害に対する金銭的な補償を家計や企業に対して与えるためのものですが、実際には加入率が低い水準にとどまっているという証拠は数多あります。また、過去の幾度もの金融危機に見られますように、金融システムは、不安定になりがちで、実体経済に悪影響を及ぼし得ます。

 

このような問題を生じさせるメカニズムを解明するべく、期待やbeliefの役割に焦点を当てて研究しています。例えば、災害保険の低い加入率は、保険の供給側と需要側との間での被害確率についての不一致によるものかもしれないですし、金融システムの不安定性が(いわゆる「投機」も絡んだ)多様な期待により助長されているのかもしれません。

 

また、多様な期待の存在自体が、事前の評価と事後の評価との間の齟齬を不可避なものにし、厚生の測定を困難かつ深刻な課題にします。というのは、意思決定は事前の評価に従って下されますが、決定のもたらす結果は事後評価の対象ですので、当事者間で異なった意見がある場合に特定の評価に合意を得ることは難しいからです。

 

このような問題意識から、現在、下記の2つのテーマに取り組んでいます:

1.多様な期待の下での金融・保険の機能・役割。金融システムの不安定性を助長させるメカニズムや、不安定性を抑制させる政策も含みます。

2.多様な期待の下での厚生の測定。

 

 

主要研究業績(全リストは、英文履歴書をご参照ください)