我々の研究室では、ゲノム解析を通じて病気の原因を明らかとし、健康長寿社会の実現を目指しています。
その為に、当研究室では様々なアプローチで研究を行っています。
これまでに、疾患発症に関わる宿主因子が数多く報告されています。現在、それらがそのように疾患の発症に寄与するかを明らかとする必要性が高まっています。
我々の研究室では約27万人のサンプルからなるバイオバンクジャパン(BBJ)の管理運営にも携わっています。BBJでは、約60の医療機関や臨床研究グループ、国立病院機構の協力により、血液や組織などのサンプルおよび付随する臨床情報の収集が行われています。これまでに、血液から精製したDNAを用いて病気になった方と健康な方のDNA配列の違い(一塩基多型:SNP)を比較し、ヒトの全遺伝子領域を網羅する数十万箇所のSNPについて数千人から数万人規模で解析することにより、病気のなりやすさに関わる遺伝的素因が明らかとされてきました。さらに、収集された血清のプロテオーム解析やメタボローム解析によって、ゲノム情報と疾患の関連付けが進められています。
我々は現在、血清を利用した独自のPhenome解析や、一塩基多型のゲノム編集技術の活用など、複数のアプローチにより疾患発症の機序を明らかとすることを目指しています。得られる成果は、疾患発症のリスク予測や予防、早期発見に利用できると期待されます。
2. p53を介したがん化抑制メカニズムの解明
遺伝子の異常が蓄積することでがんが生じますが、中でもp53は約半数のがんで異常がみられる最も重要ながん抑制遺伝子と考えられています。我々は多くの新規p53下流遺伝子を単離し、これまで知られていなかったp53の機能を次々と明らかにしてきました。現在次世代シークエンサーやプロテオーム・メタボローム解析などの網羅的探索によって、新たなp53を介した発がん制御メカニズムの解明を進めています。さらにこの様な解析によってがん細胞が普遍的に持つ特徴を明らかとし、新たな治療戦略の探索も進めています。