ホーム > 【コラム】ここから始める!DX > 小規模校におけるICTの可能性
「小規模校だからこそできるICT活用」と聞いて、どんなイメージを持つでしょうか?
もしかしたら、「人数が少ないから、ICTで効率化するといっても限界があるのでは…」と感じる先生もいるかもしれません。
確かに、大勢の意見をまとめるような作業では、その効果は限定的かもしれませんね。
しかし、小規模校だからこそICTが真価を発揮する場面がいくつもあります。特に、少人数という環境で生じやすい「意見の偏り」や「多様な視点の不足」を補い、子どもたちの未来を力強くサポートするために、ICTは欠かせないツールとなりつつあります。
同じメンバーで日々の授業を進める小規模校では、いつも同じ子の意見で議論が完結してしまったり、特定の考え方に偏ってしまったりすることがあります。
また、地域によっては専門分野の教員が不足し、子どもたちが多様な学びの機会に触れにくいという課題も抱えているかもしれません。
ここでICTが果たす役割は、まさに「つながる学び」を創出することです。
例えば、体育の授業でバッティングや器械体操のフォームを教える際、先生だけでは全ての子どもたちの動きを細かくチェックし、適切なフィードバックを与えるのは限界があります。しかし、ICTを活用すればどうでしょう?
動画撮影と分析
タブレットやPC・学校のカメラなどで子どもたちの動きを撮影し、すぐに再生して見せることで、客観的に自分の動きを認識できます。スローモーション再生や比較機能を使えば、改善点が一目瞭然です。
専門家からのフィードバック
撮影した動画を外部の専門家(例えば、地域のスポーツ指導者や他校の体育教師)に共有し、オンラインでアドバイスをもらうことも可能です。
「第三者の目」が入ることで、より具体的で専門的な指導が可能になり、子どもたちの技術向上に大きく貢献します。
オンライン交流
遠方の学校とオンラインで繋がり、お互いの体育の授業を見せ合い、良い点や改善点を伝え合うこともできます。
他校の様子を見ることで、新たな気づきや刺激が生まれるでしょう。
これは体育に限らず、美術の作品講評や理科の観察記録、プレゼンテーションの練習など、あらゆる教科に応用できます。ICTを活用することで、少人数では得られにくい多様な視点や専門的なアドバイスを、いつでも、どこからでも取り入れることができるのです。
小規模校だからこそ特に意識したいのが、子どもたちの「ICTスキル」の育成です。GIGAスクール構想で一人一台端末が整備され、全国の学校でICTを活用した学習が進んでいます。その中で、「小規模校だから」「地域の特性だから」という理由で、子どもたちのICTスキルが他の地域の子どもたちより劣ってしまうことは避けたいものです。
高校や大学に進学した際、あるいは社会に出た際に、「なぜ自分だけこんなにICTが使えないのだろう」と子どもたちが感じるような事態は避けなければなりません。これは、「地域のせい」「学校のせい」にされてはいけない、重要な課題です。
小規模校では、一人ひとりの子どもに目が届きやすいという利点があります。この利点を活かして、子どもたちが自然にICTを活用できるよう、「日常的なICT活用」を意識して取り組んでみましょう。
調べ学習での活用
興味のあることをインターネットで調べたり、論文や資料を検索したりする練習。
表現活動での活用
プレゼンテーション資料の作成、動画編集、プログラミング学習など。
情報モラル教育
適切で安全な情報発信・受信の方法を学ぶこと。
これらの活動を積み重ねることで、子どもたちはICTを「道具」として使いこなす力を自然と身につけていきます。それは、将来どのような進路を選んだとしても、彼らの大きな強みとなるはずです。
小規模校のICT活用は、大規模校とは異なるアプローチが求められます。しかし、少人数だからこそ、一人ひとりの子どもに寄り添ったきめ細やかな指導が可能であり、ICTはその効果を最大限に引き出すための強力なツールとなります。
外部とつながることで多様な視点を取り入れ、未来を生きる子どもたちがICTを当たり前に使いこなせるように支援する。小規模校の先生方、ICT支援員の皆さん、そして大規模校の先生方も、ぜひこの「つながる学び」の可能性を一緒に考えてみませんか。