インターネットが一般に使われるようになったのは、90年代〜2000年代の前半です。当時は、テキストを読んだり、メールをやり取りしたりする「一方通行のインターネット」時代。Webサイトは「ホームページ」と呼ばれていて、情報発信するのもごく一部の人たちだけ。
インターネットは「常につながっている状態」になり、その速度も高速化、高画質な写真や動画も楽しめるようになりました。スマートフォンが爆発的に普及。ブログやFacebook、Twitter、Instagram、YouTubeなどを通じて誰もが情報発信できるようになりました。これが現在のWeb2.0時代です。
インターネットが生活に欠かせないものになった「Web2.0」時代には、大きな課題があります。それは、Google(Alphabet)、Apple、Facebook(Meta)、Amazonなどに世界中の個人情報が集中することで起こる、プライバシーの問題。そして、個人情報が特定企業のサーバーで集中管理されることにより、サイバー攻撃を受けやすいというセキュリティの問題です。
この課題を解決するためのWeb分散化技術が研究されています。個人が自ら情報を管理、不正ができず、突然システムがダウンすることもありません。
WebID (w3c) , Blockchain
Web上での個人データの完全な所有と制御(「分散Webの再構築」)
Solid Protocol(Solid Projectによる標準)
POD(Personal Online Datastore):個人データの保存庫
アプリケーションはこのPODにアクセスして利用
現在の分散型WebのFediverse、Solidにはそれぞれ強みがありますが、分断されているという課題があります。
Fediverse、Solidを統合することで、真の「分散型ウェブ」= 人とデータの自律的連携 が実現されます。→ UPOD
人と人の関係を中心とするソーシャルネットワークサービスの登場により、オンライン上で構築した人間関係の中で容易に情報共有をすることができる一方、ユーザが様々なサイトにプロファイルを残し、個人情報は分散、分断される。さらにスマートホーム、スマートシステムなどのスマートシステムにもの利用者プロファイルの収集、保存、共有に関しても安全性、プライバシーなどの課題が存在する。
我々はUPOD(Ubiquitous Personal Online Data Store )という理想な個人空間を提唱し、個人のプロファイル、SNS投稿、さらにIoT関連体温などの個人情報をそこに集め、スマートな情報の共有、推薦できる環境を構築する。さらにActivePubという非中央集権型の分散 SNS のオープン標準で他のソーシャル プラットフォームと相互接続され、Fediverseネットワークを通して多様な機能を実現する研究も進めている。
当研究室が提案する人間中心の個人クラウドデータモデル(UPOD: Ubiquitous Personal Online Data Store)は、ユーザーが自らのデータの所有者となり、特定の個人や機関に対してデータの共有権限を随時付与または取り消すことができる、脱中心型の個人デジタル環境です。
特定の企業やサービスがユーザー情報やコンテンツを自社のプラットフォーム内に閉じ込め、外部へのアクセスや共有を制限する状況は「ウォールドガーデン」(Walled gardens)と呼ばれます。当研究室は、個人がデータの主導権を取り戻し、個人UPODに集約するための研究を行っています。全面的に保存された個人データは、個人のデジタルツインモデルの作成や、人間中心の知能システム構築に有利です。
そのUPODのアプリケーションは、知識労働に関連する情報を支援する個人書斎ポータル(UbiStudy)や、高齢者の健康管理システム(Ubi-Care)、食事栄養管理システム(Ubi-Diet)、スマートホームシステム(Ubi-Home)、キャンパス情報システム(Ubi-Campus)などがあります。これらは、すべて脱中心型スマートシティのフレームワーク(Ubi-City)にシームレスに接続できます。
さらに、分散型通信プロトコルActivityPubの応用、および高齢者の生活支援のためのさまざまなIoTセンサー、スマートホームデバイス間の相互データ通信を実現するゲートウェイ、そしてスマートロボットや自動運転シミュレーターDonkeyCarについても研究しています。