Food Shaping the Future
大阪ガスエネルギー技術研究所と京都工芸繊維大学 KYOTO Design Labは、未来の社会環境における食生活に着目し、「ありうる未来の食」に関するデザインの調査研究を実施しました。本ウェブサイトは研究成果をまとめたアーカイブとなります、ご自由にご覧ください。
Sponsored by Osaka Gas Co., Ltd., Kyoto Institute of Technology KYOTO Design Lab conducted design research on the possible food of the future.
We hope you enjoy our archived collections of the artefact.
INFORMATION
会期:2021年6月23日(水)─9月26日(日) | 会場:KYOTO Design Lab 東京ギャラリー(3331 アーツ千代田) | 開場:12:00─19:00 | 休廊:月曜日、火曜日、8月12日─8月17日 | 入場料:無料 | 主催:京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab | コラボレーター:大阪ガス株式会社[エネルギー技術研究所]
Period: Wednesday 23 June - Sunday 26 September 2021 | Venue: KYOTO Design Lab Tokyo Gallery (3331 Arts Chiyoda) | Open: 12:00-19:00 | Closed: Monday, Tuesday, 12-17 August | Admission: Admission Free | Organized by KYOTO Design Lab, Kyoto Institute of Technology | Collaborator: Osaka Gas Co., Ltd.
INTRODUCTION
ありうる未来の食に関するデザインリサーチ
フード3Dプリンタやバイオセンシング技術を前提とした未来の食体験をご紹介します。
大阪ガスエネルギー技術研究所と京都工芸繊維大学 KYOTO Design Labは、未来の社会環境における食生活に着目し、「ありうる未来の食」に関するデザインの調査研究を実施しました。
大阪ガスエネルギー技術研究所がもつ技術シーズやフード3Dプリンタ技術を前提に、本研究はプロダクト、サービス、ビジネスモデル、そして人々の価値観や行動の変容などの文化まで、食のデザインを非常に包括的なデザイン領域として捉え実施しました。その結果、私たちは近い未来に日常的に自分の健康状態をセンシングし、日々の体調と嗜好に即した食品をフード3Dプリンタで出力するのではないかという考えに至りました。
人口増加や情報技術の進展、環境問題の深刻化など様々な課題を抱える未来の社会における維持可能性を前提とした新たな「ありうる未来の食」とは何かを、ご来場の皆様と考えたいと思います。
Design-led explorations on the possible future food
Envisioning the future food experiences through the use of Food 3D printers and biosensing technology.
Sponsored by Osaka Gas Co., Ltd., Kyoto Institute of Technology KYOTO Design Lab conducted design research on the possible food of the future.
Combining research undertaken at Osaka Gas Co., Ltd. and presently available food 3D printing technology, we conducted design research to speculate possible products, services, business models as well as cultural values that govern user behaviors. As a result, we came up with a design proposal that consists of daily bio-sensing for mass customization-based food design to be printed from the 3D printer.
RESEARCH
本章では、まずスキャニングマテリアルという手法を用いて、食の未来に関する「兆し」となる情報を収集し、次にそれらを要素の類似性から3つの時系列にまとめました。さらにSWOT分析などを活用して、強制発想法的に5つの未来シナリオのコアアイデアを作成。最終的にSFプロトタイピングを応用して、未来シナリオをマンガとして描きました。
In this chapter, we first gathered Scanning Materials to collect the possible "signals" of the future of food and organized them into chronological orders. Furthermore, using SWOT analysis, core ideas for five future scenarios were developed using the forced idea generation method. Finally, we applied SF prototyping and drew future scenarios as manga.
Scanning Material
未来洞察に有効な手段として、不確実で非連続な未来の兆しを広く浅く観察する「スキャニング」という手法があります。今回は食の未来の兆しになりうる記事を、あらゆるメディアを通して200個を収集。その記事を要約してタイトルをつけたものをスキャニングマテリアルと呼び、KJ法を活用してクラスター化していきました。
Scanning is an effective way to broadly observe the uncertain and discontinuous suggestions for future insights.
We collected 200 articles that could indicate the future of food through various media and organized them using KJ Method.
SF Prototyping
SFプロトタイピングとは、現実の科学技術をもとにした小説や映画、コミックのことです。本研究においては、先に収集したスキャニングマテリアルをもとにして未来のシナリオを構想。その中で人々がある問題に直面した時の対応や経験、そこから得られる学びを、様々なシーンとして垣間見せることで、未来を想像させることを目的としています。
Science fiction prototyping refers to novels, movies, and comics based on real science and technology. In this section, future scenarios were envisioned based on the previously collected scanning materials. The purpose is to give a glimpse into the various scenes of the response and experience when people face a certain problem, and the learning gained from it, in order to make them imagine the future.
Participatory Design
参加型デザインは、デザインリサーチの一つの手法です。調査者がユーザーと共に問題の根幹にある欲求や理想を探り出すために、様々なツールを使いながら、リサーチを行います。本研究では、既存のカードゲームを援用してユーザー調査を行いました。
Participatory design is a method of design research. Researchers use a variety of tools to work with users to explore the underlying needs and ideals. In this study, we conducted user research with card games that are made from an existing one.
FUTURE SCENARIO
本章では、私たちの構想した20XX年の2つの未来シナリオを映像作品としてご覧いただきます。みなさん自身も「ありうる未来の食」を想像してみてください。
In this chapter, we will look at the two future scenarios of 20XX that we envisioned as video works. You can also imagine the “potential future food”.
Product / UI Design
未来シナリオ映像の中に登場するプロダクトやインターフェースは、サービスデザインにおいてユーザーとの具体的なタッチポイントを検討するためのツールとして重要な役割を持っています。
Product and User Interface which is shown in the future scenario movies have an important role that works as a tool in order to discuss concrete touchpoints with users.
Food 3D Printer
フィラメントに食材を使用した3Dプリンター。味や食感、原材料を自由に制御することで、食のマスカスタマイゼーションへの需要に応える技術となる可能性を持っています。データによって食事が作られることで、新しい調理のあり方が見えてきます。
3D printer using ingredients for filament. It can control the taste, texture, and ingredient, and has the potential to become a technology that meets the demand for mass customization of food. Creating meals based on data can make a change in how to cook.
PARAMETRIC DESIGN
フード3Dプリンタの登場により、あるパラメータに基づく食物の形状は無数に作成可能となりました。ここでは同じ形状に基づく充填密度や構造の違いから生まれる様々なデザインを紹介します。これらのパラメトリックデザインを通して、個人の健康状態や嗜好に合わせた形状・素材・味をフード3Dプリンタで出力できる未来の食を想像してみてください。
In this section, we speculated the variants of future food using a parametric design. With 3D food printers, food shapes can be designed indefinitely in accordance with parameters such as calorie calculation, structural density, and so on. This section introduces some of the possible ideas for computer-generated food design.
AUTO/TEAM ETHNOGRAPHY
オートエスノグラフィーはデザインリサーチの手法の一つで、調査者自らが特定の場面設定において主に顧客として、サービスを体験しながら課題抽出や気づきを得るために行われます。本研究では一人の学生がフード3Dプリンターを使って2ヶ月間過ごし、合計183の料理を作りました。客観性を保つために調査中の記録や分析をチームで行いました。
Autoethnography is one of the design research methods. Researchers explore problems or insights through experiencing services in a particular situational context mostly as a customer. In this study, a student spent two months with Food 3D Printer and cooked 183 meals. We recorded and analysed this investigation objectively as a group.
FAQ
ご来場者の皆様からいただいた質問
──
Q. 3Dフードプリンタは現在アマゾンなどでも購入可能?
A. 会場で展示している3DFP、研究で使用している3DFPのどちらもスペインを拠点にしているNatural Machines社のFoodiniという機材です。公式HPから購入可能です。その他の3DFPに関しての情報はこちらのサイトをご参照ください。国外のAmazonなどからは購入可能となっています。
Q. フードプリンタで作成する食品についてのコストは?(一回の食品を作る場合)
A. 食費については、使用する材料次第かと思います。一般的に論文などでは、増粘剤(キサンタンガムなど)を加えると安定して印刷できると言われてます。嚥下食などに用いる添加剤で、特別高価ではないですが、普段の食事にプラスして必要な経費になるかもしれません。また、現状ではカプセルを作ることが手間なので、その意味では人件費がかかってる?とも言えますね笑
Q. (展示している)フード3Dプリンタで作る食品は、栄養成分が自動的に計測されているのですか?
A. 栄養成分が個人に最適化された食品が食べられることを想定しています。介護施設で暮らすシナリオの映像の中では、“呼気センサー”などから収集した健康情報をもとに適切な栄養成分の食品が提供され、食事が健康のために貢献できる部分が担保された世界観、施設の様子を描いています。ただし、出されたものを受動的に食べるだけでなく、健康状態を可視化して友人と競い合うことで楽しく健康を目指すということが映像で描かれている内容です。実用的な機能としての食、つまり完全食を食べ続けるだけ、といった食生活ではなく、きっと彼らは健康のためにこっそり運動も頑張っているはずです。
しかし現段階においては、自動的に栄養成分を調整した食品を3Dプリントするということはできていません。2ヶ月間のフードプリント生活では、栄養士の方に1週間分の栄養価計算をもとにした食べるべき/控えるべき食材をリストアップしていただき、翌週に学生自らで栄養成分の調整を行っていました。この煩雑かつ属人的な作業を解消、補完するようなサービスとその仕組みは如何なるものか?を検討していく必要があります。
*フード3Dプリンタによる栄養成分の個別化などに関する仕組みの構想は、こちらの論文を参照ください。
Q. フードプリンタで作る食品の味や食感はどのようなものですか?
A. 味は食材自体と味付けによるので、プリンタを使うから何か変化が生じるといったことは基本的にはありません。カートリッジに入った食材を押し出しながらデータ通りに成形することが、マシンの役割となっています。2ヶ月間のフードプリント生活では、餃子や蕎麦、ハンバーグなどを作りましたが、意図した味付けで作ることができました。一方で複数食材を立体的に組み立てることができる3Dプリンタの特徴を活かして、新たな味わいを模索している企業さんもいらっしゃいます。プリント技術の発展や出力方法の設計によって、これまでになかった味の表現も可能になると考えられています。
食感も同様に既存の食材、調理、加熱方法に準じています。しかし3Dプリント食品の内部構造や充填密度を変化させることで新たな食感を模索するという基礎的な研究や、機能性に特化した嚥下食を目でも楽しめることを目指す研究や実践において、フード3Dプリンタで作られる食感の調査を確認することができます。また、本展でも使用しているマシンのような一般的な押出成形機構ではない出力方式や食材を使うことによって、さまざまな食感を実現することも可能になるでしょう。((ただ、本展における食品は保存性のために乾燥させておりますので、硬そうな見た目になっています。。。))
Contact