電子・イオン衝突型加速器(EIC)は、宇宙の可視物質を構成するクォークとグルーオンの構造とダイナミクスを解明する次世代の国際大型研究施設です。
可視物質は究極的にはクォークとグルーオンから成り立っていますが、それらがどのようにして陽子や原子核といった複合粒子を形成し、現在の物質構造へとつながるのかは、いまだ十分には解明されていません。
EICは、高エネルギー電子と陽子・原子核を衝突させることで、その内部構造を“顕微鏡”のように観測し、クォークとグルーオンの分布と運動、そしてそれらの相互作用を精密に測定します。
これにより、強い相互作用(量子色力学:QCD)に基づく物質生成のメカニズムに迫ります。
高エネルギー電子を用いて、陽子・原子核内部のクォークとグルーオンの分布と運動を三次元で可視化することにより、グルーオンの“海”とクォーク対のダイナミクスを解き明かし、可視物質の質量起源に迫ります。
偏極電子・陽子衝突により、クォークとグルーオンおよびその運動がスピンにどう寄与するかを精密測定します。長年の謎である「スピンの起源」に決定的な理解を与えます。
クォークやグルーオンが単独で存在できない理由と、真空との相互作用を通じた再結合過程を解明します。色荷が閉じ込められる根源的メカニズムに迫ります。
高エネルギー領域で増殖するグルーオンが飽和状態(カラーガラス凝縮)に至るかを検証します。強い相互作用が生み出す極限状態と、そのダイナミクスの限界に挑みます。
原子核中でのクォーク・グルーオン分布やエネルギー損失の変化を精密に測定することで、多体量子系としての原子核と、核物質中での強い相互作用の理解を深化させ、原子核の多彩な性質の起源にせまります。
EICは、これまでの実験では到達できなかった精度で、核子・原子核内部の“動的構造”を可視化する唯一の装置です。
EICは、米国エネルギー省により建設が進められている、世界で唯一の電子・イオン衝突型加速器です。
20世紀後半の深非弾性散乱実験や欧州原子核研究機構、ブルックヘブン国立研究所における高エネルギー重イオン実験の成果を継承し、クォークとグルーオンの構造理解を次の段階へと発展させることを目的としています。
EICはブルックヘブン国立研究所を中心に建設され、ジェファーソン研究所との連携のもと、数千人規模の国際共同研究として推進されています。
偏極ビームと高輝度衝突という特長により、これまでにない精度で核子・原子核の内部構造を測定することが可能となります。
大型ハドロン衝突型加速器やスーパーKEKBと並び、21世紀の基礎科学を牽引する重要プロジェクトの一つです。