「未来につながる学びをひらく造形教育の今〜わたしをみつめる わたしをひらく 美術をみつめる 美術をひらく〜」
2022年
(第61回関東甲信越静地区造形教育研究大会新潟大会,
第34回新潟県美術教育研究大会上越大会)
1 子供たちの未来
子供たちが社会人となる未来はどんな姿でしょうか。2020年には、少子高齢化が進行 し、高齢者の割合が3割を超え、生産年齢人口は総人口の6割を下回ることが見込まれて います。また、グローバル化や情報化が進み、一つの出来事が広範囲かつ複雑に伝播し、 先を見通すことがますます困難になってきます。このような状況の中で子供たちが将来就 くことになる職業も、技術革新等の影響により大きく変化することになります。子供たち の 65%は将来、今は存在していない職業に就くとの予測や、今後10年~20年程度で、半 数近くの仕事が自動化される可能性が高いなどの予測もあります。また世界規模での人口 の増加への対応、温暖化等地球規模での環境対策にも取り組んでいかなければなりませ ん。日本では、Society5.0やSDGsといった新しい社会への対応の仕方や行動目標を打ち 立てて、未来の社会に対応すべき施策を想定しています。つまり、子供たちは、今までの 知識や経験では対応できない予測不可能な社会で生きていかなければならないことを自覚 し、これからの未来を見据えて自分の学びをつくっていかなければならない状況にあるの です。
2 学習指導要領が目指すもの
新しい学習指導要領が今年度から高等学校までのすべての学校園で全面実施となりまし た。キーワードは「生きる力 学びの、その先へ」です。この中で、子供たちが様々な変 化に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していくこと、様々な情報を見極め、 知識を概念的に理解し、新たな価値をつくっていくこと、複雑な状況変化の中で目的を再 構築していくこと等ができるようになることが求められています。
そして子供たちに必要な力について三つの柱「実際の社会や生活で生きて働く、知識及 び技能」「未知の状況にも対応できる思考力、判断力、表現力」「学んだことを人生や社 会に生かそうとする学びに向かう力、人間性」が示され、主体的・対話的で深い学びの視 点から「どのように学ぶか」を重視して「学ぶことに興味を持ち、自分の学びを調整して いく主体的な学び」「他者との学び合いを通じて自分の考え方を広げ深める対話的な学 び」「見方・考え方、知識・技能を働かせ、より豊かな表現を目指す深い学び」の3つの 学びのあり方が示されたのです。加えて、その学びは学校を超えた地域ぐるみの教育を行 うことを通して「よりよい学校教育を通じ、よりよい社会をつくるという目標を学校と社 会が共有すること」を目指し、社会に開かれた教育課程の構造化が求められているので す。
「輝け!つくる私 かかわる造形 つながる思い」について
◎「輝け!」は、自分に自信をもち、自分らしさを存分に発揮して追求できる子どもになってほしいという教師の願いを込めた言葉である。これは、次の三つにかかわっている。
・「つくる私」は、「表現を通して、自分の思いを素直に色と形で表せる子」や「表現や鑑賞を通して喜び、悲しみ、驚き、不思議さ、美しさなどに敏感な子」等であり、自らたくましく表現に立ち向かう子どもの姿である。
・「かかわる造形」は、今回の中心テーマである。知識はあっても、周りの人々やできごと、もの環境に積極的にかかわらない、かかわれない子どもたちのコミュニケーション能力をどのように高めるか。また、かかわりの場面を仕組み、見方・考え方を広げ深めさせていく。そして友だちのよさが分かったり、協働していく楽しさを味わったりして自分の世界を広げていくことを目指している。
・「つながる思い」では、ひと・もの・こと・環境に積極的にかかわることから、そのもののよさに気づき、その中で考えを広げ、協働する楽しさを味わって、思いをつなげていくことである。
あなたの園では、子どもがどんな造形活動をしていますか?
あなたの学校の子どもは、図工が好きですか?
あなたの学校の子どもは、美術の時間を楽しみにしていますか? …それはなぜですか?
子どもがあなたと共に造形活動を展開しているとき、子どもは 伸びやかな表現と鑑賞の高まりを実現していますか?
教育改革が求められ、 教育そのものの意味が根底から問われている現在、 私たちは、子どもたちが造形活動をすることの意味を多様な広がりの中で間 い直す必要に迫られている。 現代社会の問題性、学校教育の現実的な課題、 美術(芸術)の今日的な意味や可能性…それらはさらに複合的に絡まって造形教育における課題を形成している。これらを一方に置きながら、目の前で造形活動を展開する子どもたちの姿をみたとき、上に掲げたような問いが あらためて深いところで私たちの問題になってくるのである。
「つくる意欲・感性…今,子どもたちと -創造の喜びをはぐくむ造形教育-」
1988年
(第28回関東甲信越静地区造形教育研究大会上越大会,
第17回新潟県美術教育研究大会上越大会)
今、未来に生きる子供たちの成育環境は、望ましくない方向へと 加速化しているのではないだろうか。
自然との隔り、物や情報の氾濫、 偏差値重視の教育、 家庭の教育 力の低下などにより、 子供たちに実体験の不足、受け身の態度、 没 個性の傾向、情緒の不安定、遊びの減少などが目立っている。
造形教育では、自ら進んでつくり出そうとする意欲の衰えや、 も のごとの機微に無関心、 無感動の傾向がはっきりと現れてきている。 私たちは、この実態を真摯に受けとめ、これまでの研究の経緯を 踏まえ、 本大会の研究実践の方向を探った。 そして、今までの指導 のあり方を転換し、 子供たちと共に歩む姿勢を大切にして、「つくる 意欲・感性......今、子どもたちと」 一創造の喜びをはぐくむ造形教 育一を研究テーマに掲げ研究実践を進めることにした。
造形的表現能力は、 人間が目的をもって意識的に外界にかかわる際に伴う「イメージ」と直接結びついた能力であり、イメージに基づいて、さまざまな形で自己を表現していく能力であると考えることができる。
つまり、イメージは造形表現における源泉であり、また、その内容でもある。だから、図工・美術教育における実践的課題は、造形表現における生き生きとした、豊かなイメージを子供たちの中に育てることを重視したものでなければならないと考える。
また、造形的表現能力は、表現の技術と技能(材料、用具がかかわる)によってはじめて達成されていく能力でもある。対象から受けた、豊かな生き生きとしたイメージを原動力にした表現の追求の過程で、それにふさわしい技術が伴ってはじめて表現としての完成をみるのである。
このように造形的表現能力は、対象にかかわっての内面性とそれを表現として形象化し、具体化していく外面性の二面性をもっており、この二つの面は、車の両輪のような、相互に働きあう関係にあるといえる。
上美連では、この二つの面を「イメージ」と「造形性」に視点を当てて取り組んでいるのである。
昭和44年、第7回高田大会では教科性の確立を提案した。次の長岡大会で現場の本音を語り合った時点で、上美連は教科性の確立をめざし、連絡機関的性格を脱皮するために研究局を設置して継続的な研究活動を開始した。それから7年。当初から一貫している考え方は、「単なる作品つくらせの図工・美術教育から、美術教育を通して子どもの成長並びに子ども自らの変革をめざす図工・美術教育へ」の志向である。 第11回県美大会上越大会もこの基本路線上に位置している。