昨年度より「特別の教育課程」として、本格的にスタートした「北の杜学」。
昨年度は当初の目的であった、学習した内容を生徒たち自身がまとめ、最終的に「ブックレット」として発信することができました。
2年目となる今年度は、昨年度の取組の成果と課題を受け、次の2点を掲げ活動をスタートさせました。
・「継続と発展」を考えたカリキュラム編成
・「地域貢献」につながる学習活動の展開
昨年度取り組んだ内容(新入生=7年生は小学校で学習した内容)を繰り返すことではなく(ブラッシュアップしてより追究していくことは発展性はあるが)、より地域の実態(課題)を深く考え、より提案性や発展性のある学習活動とする。そして、そのためのキーワードを「地域貢献につながる(つなげる)」学習活動であるとし、今年度の取組をスタートしています。
※北中祭での発表活動及び最終的なブックレット制作は継続します。
今年度の方向性の確認とレディネスから大テーマの設定へ
より「地域への貢献」と、そこにつながる「具体的な行動」をキーワードとする今年度の取組ついて、具体的にどのような学習をしたいのかレディネスを行った結果から、以下の3つの大テーマに集約しました。また今年度は、より主体的な取組とするために、生徒一人一人が自分で学習したい内容に取り組まさせることを目的に、大テーマ内で似たような内容を整理し学年をまたいだ「縦割り活動」として実施することとしました。
※大テーマ
・眺望山を活かした山や農業に関すること
・陸奥湾の保全等海や水産業に関すること
・安藤氏の歴史や地域が抱えている課題など地域のことを直接的にその発展を考えていくこと
調査研究グループの編成とテーマ決定<6月>
「学びたい・知りたい」をともにするグループ編成と具体的な「テーマ設定」へ
実質ここからが本格的な活動の開始となります。そこで、大まかに3つに分けた大テーマのもと、さらに具体的な小グループに編成するため、再度オリエンテーションを実施(上記スライド)し、各大テーマの中で、それぞれ具体的なテーマについて話し合う活動を実施しました。(下記Googlejamboard画像参照)
各グループからの中間報告会と調査活動の開始<7月〜夏季休業〜8月>
各グループごとに具体的な方向性の検討と中間発表による共有化と相互評価、そして調査(探究)活動のスタートへ
グループ編成後は、それぞれのテーマに迫るための具体的な活動計画や内容の検討に入りました。7月の前期前半終了前には、ここまでの各班の取組状況について発表し合う「中間報告会」を下記の視点に基づき実施しました。
① 各班の活動をよく聞き、それぞれの学習内容について理解を深める。
② 自分たちの活動に関係しそうな班、コラボできそうな班を発見し、協力できるように検討する。
③ 夏休み中の活動の参考になることを見付ける。
報告会はオンラインで実施し、互いに評価(アドバイス)し合うことで、自分たちの今後の方向性の参考にさせることもねらいとしました。
報告会後は、評価結果も参考にし、夏季休業中や2学期(後期後半)スタートに実施する調査(探究)活動の具体的な計画づくりに入りました。
<中間発表会における各班の発表の様子↓↓↓>
<夏季休業中における各班の調査等活動の様子↓↓↓>※写真は加工しています。
写真は、「海」チームによる地域の海岸清掃及び海洋ゴミの収集の様子です。
回収したゴミからその量や種類などを分析し、作品づくり等につなげて行く予定です。
このポスターは、「地域」チームにおける「地域ねぶたの復活」班が制作したものです。
新型コロナウイルス感染症の影響で3年間中止されていた、地域内の「清水町会」合同ねぶた運行における全校生徒のお囃子演奏が8月20日(日)にようやく復活することとなり、その宣伝PR活動の一環としてこのポスターを小学校や地域の施設等に直接出向き掲示を依頼しました。
調査活動の継続と専門家の方からお話を聞く機会を!!<9月〜10月上旬>
各チーム、調査(探究)活動大詰め!!そして北中祭に向けて!!
夏休み中の調査活動や海岸清掃等を踏まえ、8月末の新学期からは、来る10月の北中祭における発表に向けたまとめ活動に入りました。(具体的には昨年度同様スライド制作や実物制作等)
その中で、『動物保護』と『安藤氏の歴史』チームは、より専門家から直接お話を聞きたいということで、どちらも9月7日に、
★『動物保護』チーム=青森市保健所主査:三谷綾子さん、獣医師:木村生子さん
★『安藤氏の歴史』チーム=地域の歴史研究家:村田健一さん、奥谷誠一さん
をゲストティーチャーとしてお招きし、講演会を実施しました。やはり、それぞれのチームでは、専門家の方々によるお話は、自分たちの課題研究を進める上でとても参考になるとともに、自分たちの研究のゴールの姿をイメージすることができるものとなりました。
調査活動については、上記のチーム以外でも、
★『廃棄アマモ』の再利用(肥料への)チームは、採集してきたアマモを発酵させ、校舎の片隅で培養
★『北中学区の川の魅力』チームは、実際に後潟川への実地調査
★『眺望山の魅力』チームは、今年度入山規制がかかっていたため、青森県森林管理署へ電話インタビュー
など、それぞれの課題を追究するため、率先して活動しました。
なお、『スライドの制作』に当たっては、昨年度実施した、『スライド=プレゼンテーション資料制作のコツ』を再度全体に伝え、スライドに統一性をもたせることや、フォントや字の大きさ、画面を通して伝える最小限の情報量、配色、レイアウトの工夫、画像やカット絵の工夫などについて確認しました。
いよいよ2回目の北中祭における発表へ!!今年度は屋台方式で!!<10月中旬〜下旬>
北中祭の発表に向け、各グループによるスライド製作も佳境へ!!また、今年はテーマに応じ様々な実物の製作も!!
9月から引き続き、各グループではスライドや様々な実物の制作に励むとともに、その進捗状況をGoogle Classroomを活用して評価(下画像)を受けながら北中祭での発表に向って鋭意作業に取り組みました。
※実物の例は、『海洋ゴミ』に関するチーム⇒回収した『プラスチックなどを利用したアクセサリー、フォトフレーム等』を制作。また、別のグループでは、回収した『ペットボトルを活用した北中マスコットキャラクターのなま丸くんのオブジェ=立体化』。そして、『海洋ゴミの不法投棄の防止を呼び掛ける看板』製作、さらに『りんご産業』チームは、『学校や地域に関する様々なものを無人販売するためのダンボールパネルを活用した大きな販売所』を制作するなど、昨年度以上に目に見える形で自分たちの課題の解決につなげようとする動きが見られました。
北中祭での発表本番!!10月21日(土)・22日(日)
そして、いよいよ10月21日(土)・22日(日)の北中祭での発表本番を迎えます。発表会としては、昨年度に引き続き2回目となります。昨年度は1日目にリハーサルとして、体育館で全校生徒が相互に鑑賞、2日目に各学年の教室で保護者と地域の方に向けて発表しました。
そこで今年度は、各グループ(チーム)を異学年(縦割り)で編成していることもあり、体育館にいくつか発表ブースを設置し、各グループ5分間でGoogleスライドによるプレゼンテーション、実物紹介、実演等を交替で発表し合い(屋台方式)ながら生徒同士の相互評価と保護者と地域の方にも評価していただく活動(発覚発表後に付箋紙に観点別でコメントを記入してもらうPMI方式)を一度に行う形で実施しました。(評価のあり方に関しては昨年度の反省点でした。)
1日目はリハーサルを兼ねていましたが、生徒同士による発表への相互評価は翌日本番に向けて、とても参考になる意見(スライドの見やすさや提示の仕方、声の大きさなど)が出されるなど、生徒たちにとってはすぐに修正することができました。そして、いよいよ2日目、保護者や地域の方々に向けての発表本番です。
保護者や地域の方々からは、
・昨年度よりレベルの高い発表が見られた。
・子どもたちが、真剣に地域の課題をとらえ、地域の未来を考えている姿に頼もしさを感じた。
・自分たちが説明したことを子どもたち自身が解釈し、それを分かりやすく発信してしてくれて感動しました。次の世代につながっていると感じました。(当日御招待し、発表を見にきてくださったゲストティーチャーの方より)
自分たちの発表に対し、すぐに評価を得ることができた今年度の方式は、生徒たちにとっても大きな励みとなりました。
活動の取組のまとめ=今年度版ブックレットの作成へ<11月〜12月>
昨年度以上のものを!!ブックレット『北の杜ジャーナルVol.2 2023』作成開始!!
北中祭での発表を経て、今年度もここまでの活動のまとめとして、グループごとに
・北中祭でのスライド発表をもとにプレゼンテーションを動画にまとめる。
・上記の動画を組み込んだブックレットを作成する。
活動に入りました。もちろん、これらの作業には昨年度に引き続き、『Canva』と『Bookcreator』(詳しくは令和4年度の取組を参照)を活用しました。8年生と9年生は昨年度も使用していたので、このまとめ活動にも抵抗なく取り組んでいました。(動画の編集や英訳の作業等)しかし、7年生だけで編成されたグループは初めての操作となるため、その操作方法等を丁寧に指導しながら活動を進めさせました。実際に生徒たちは(縦割りなので8・9年生の先輩たちがよくリードし)、昨年度以上のものに仕上げようと考え、ブックレットの原稿の配色やレイアウトに工夫を凝らしながら作業に取り組む様子が見られました。
自分たちの活動をさらに自分たちで形あるものに!!
今年度は、昨年度の取組の成果と課題を踏まえ、『地域へ貢献』することをテーマに、より発展的な活動をねらってきました。そのことを踏まえ、生徒たち自身から、ブックレットの作成とWeb上で発信するたけではなく、『より自分たちの取組を形あるもの=具体的な行動を起こすことで地域に貢献したい』と考え、実際に行動する取組も見られました。
具体的には、先述した看板の制作や無人販売所の制作と北中祭での販売、回収した海洋ゴミを再利用したアクセサリーの制作と北中祭での販売などが挙げられますが、その中のアクセサリー制作と販売を行ったチームは、北中祭の売上金を寄付し、地域の海=陸奥湾の環境整備と保全に役立たいと考え、活用してくれそうな団体を自分たちで探し出しました。その希望を受け、学校が仲介して、『特定非営利活動法人 青森環境パートナーシップセンター』さんに売上金総額¥1,043を全額寄付してきました。(写真)まさに『地域へ貢献』することにつながる立派な取組となりました。
活動の振り返り(評価)とブックレットの完成へ<令和6年1月〜2月>
年が明け、北の杜学(計35時間計画)もいよいよ最終段階に入りました。
振り返り活動として以下の3つ内容に取り組ませました。
①完成したブックレットの相互鑑賞→GoogleFormsで感想(勉強になった所等)を打ち込み合い相互評価(評価結果は公開し共有)
②各グループで自分たちの活動を振り返り→『リーンキャンパス』の手法による活動全体を俯瞰し取組を振り返り
※『リーンキャンバス』=スタートアップのビジネスモデルを可視化するためのツール。今回は、これを基に北の杜学でねらっている観点に沿った形に整理し各グループごとにまとめさせました。
→参考:北の杜学各グループ振り返り用リーンキャンバスワークシート(評価用紙)(PDF)
③個人としての振り返り→自己評価用紙の記入
そして、今年度版のブックレット『北の杜学ジャーナルVol.2 2023』の表紙も完成し、いよいよ最終段階に入りました。
令和5年度の取組を振り返って(生徒自己評価、学校評価等の結果より)
昨年度の課題として、適切な『評価』により活動の成果と課題を検討し修正を加えながら取組を進め、最後に振り返りをきちんと行うことで次年度につなげていくことが挙げられました。
これを受け、今年度は活動の節目に自己評価や相互評価を実施し、全体にフィードバックしながら修正を加え、最後に振り返る活動を計画的に実施することができました。PDCAサイクルに基づく活動となったことは今年度の大きな成果の一つとして挙げることがきると思います。
以下の結果は、上記のように12月〜1月に掛けて実施した今年度の活動のまとめとしての振り返り評価結果をまとめたものです。この結果に基づき今年度の成果と課題について検討していきます。
生徒評価1については、選択項目の①〜④にかけて段階的となっており(①が最上位)、結果を見るとほとんど生徒が、今年度の活動において重点として掲げていた『より地域に貢献できる活動とする』という点において、昨年度同様、しっかりと地域の現状と課題を捉え、その解決に向けた具体的な取組をすることができたと考えてている生徒が大部分であったことがうかがえます。しかし、より高次な『貢献』や『解決につながった』については、実感をもつことが難しく、はっきりとした形では捉えづらいため、『最終ゴール=何がどうなれば達成したことになるのか』という視点で、より最終地点を明確にした計画を立てていく必要があると考えられます。
また、上記以外『北の杜学での取組は自分の夢と志を考えることにつながりましたか?』のという質問も実施しました。この結果は、
4段階平均 全校 2.3 9年 2.6 8年 2.4 7年 1.8
という結果でした。この質問は、学びを『生かす、つなげていく』ことができたと考えているのか把握するものであり、学習活動(総合的な学習の時間はもちろん北の杜学などの探究学習)で最終的にねらう『自分たちの未来に関心をもち主体的に活動する生徒の育成につながっているのかという視点で振り返ると、まだまだ検討すべき課題があると考えられます。
生徒評価2は、こちらも昨年度の課題として挙げられた『より教科横断的な視点に基づく活動(各教科で求める資質・能力の育成につながる計画と実施)』に対するの生徒の意識について測るものでした。本北の杜学=地域探究学習は、いわゆるコンテンツ的(例えば音楽につながる地域の歌を作詞作曲、家庭科につながる地域の郷土料理やお菓子の創作、保体につながる地域オリジナルのダンスや体操の考案など)教科横断ではなく、コンピテンシー的(自分たちの課題に対し、各教科で培われる資質・能力を活用し、その解決策を考案する、実際に行動する)なものをねらっています。(北の杜学のグランドデザイン参照)もちろん、昨年度よりそのことを意識した活動展開を図ってきましたが、生徒の意識はどうであったのかについて、しっかりと評価をしていませんでした。そこで、今年度は各教科との『つながり』について調査したところ、結果のように、『地域探究学習』という特性から『社会』との関連は当たり前高いものが見られました。もちろん、各グループで設定したテーマによっては、関連する教科は変わってくるため、教科ごとの偏りは見られますが、土台となるべき『国語』、『英語』との関連は約半数という結果でした。これは、『分業』による作業であったことが考えられます。個として一人一人学んだことをしっかりと表現(文章等)できる活動とその評価のあり方が課題であると考えられます。
生徒評価3が、活動全体に対する自己評価です。各項目とも学年が上がるごとに数値が高くなっていますが、③の自分に返ってくることについては、やはり手応えを実感することができず、自信をもてずにいる様子が伺えます。これは、最後の学校評価の結果でも同様で、自分たちの取組の成果が他にどうつながっているのか、また、それがどう貢献した(している)のかを具体的な形で感じることができるような工夫が必要であると考えられます。今年度は、ブックレットによる電子書籍での発信はもちろん、上記のように『募金』や『看板設置』という形で体験できたグループもありました。『これらのような活動を増やしていく(※形あるものだけがゴールではなく、どのような形で終わることがつながりを体感することになるのかしっかりと考えさせることが大切)』ことや生徒体自身が取組の手応えをより感じることができる適切な『評価とフィードバックのあり方』を次年度に向けた課題として見直しを図っていきます。