2015年度卒業生(IB)

田中さん(現在オーストラリア在住)より

はじめに

2015年度に国際バカロレア(IB)・ディプロマコースを修了し卒業した、田中あゆみです。

AICJを卒業して5年以上が経つとは信じられません。

現在の在校生とはほぼ会ったことがないくらい時間が経ってしまいました。

中学生に入りたての時、英語が全く喋れなかった私は今どこで何をしているのか。

そして私の身の回りの某ウイルスの影響やワクチン事情はどうなのかを軽く共有したいなと思い、こちらに書き綴っている次第です。

簡単に私の履歴をまとめると、高校卒業直前に卒業式を欠席して、2016年2月にオーストラリア・クイーンズランド州へ渡り3年間大学生活を過ごし、1年の苦しいフリーター生活を経て、ついに去年から看護師として、そして社会人としてきちんと税金も払って自立した生活をしております。

就職した経緯から現在に至るまでとオーストラリアの看護師事情

2018年の12月に落第することなく大学を卒業したものの、看護師登録に必要な英語試験で苦労。試験勉強がてら病院で手足をマッサージするボランティアをしたり、ブリスベンの政府が運営する50以上の国地域の言語で放送しているラジオ局でキャスターを務めたり(日本語で放送)、日本語を現地の生徒に教えたりなどしていました。

2019年の11月、苦しい英語試験にやっと合格したことで、外国人看護師が入りにくいといわれているクイーンズランド保健省(行政)の新卒プログラムへ合格しました。しかし、補欠で連絡を待っていました。いつ内定が来るかなとドキドキ…

ここで!4月1日に連絡が!!

某ウイルスの影響で不足している看護師の数を補うため(この時期はちょうどロックダウンでした)、COVID-19対策チームとして慢性期の施設での新卒プログラムはどうかと声がかかりました。日にちが日にちだけに初めは冗談かと思いました(笑)

話を戻しまして…

もともとは急性期志望で、クイーンズランド州で一番大きい病院の急性期内科の補欠でした。しかし、いつそちらへ入職できるか分からない上に、先に経験を積むのも悪くないと思い、晴れて同じ行政の創傷クリニックと短期訪問看護ステーションへの就職が決定しました。その後は後天性脳障害を持つ方のリハビリ施設、そして老人ホーム行きを待つ方々のための施設で働きました。

しばらくして縁があり、クイーンズランド保健省を円満退職し、今年の3月末から現在はゴールドコーストの私立病院の脳神経外科・内科の病棟看護師として働いています。家探し・引っ越しのために1週間有休を消化して、退職時は消化しきれなかった有休分(5週間分)が換金して振り込まれていて、その額には心底驚きました。クイーンズランド保健省でも現在の職場でも極度に忙しくない限り基本的に残業は99%ありません。これはオーストラリアのほとんどの職場で、仕事と私生活のバランス「Work-Life Balance」をとても重視している結果といえます。オーストラリアでの生活費が日本と比較して高いという事を念頭においても、オーストラリアの看護師のお給料は仕事の割にあっているのかなと日本の看護師の方とSNSでお話しして思いました。多国籍の看護師に囲まれて夢だった看護師の仕事ができ、休みの日はゴールドコーストのビーチ沿いを散歩する生活は抜け出せないので、オーストラリアへ来てよかったと感じる日々を送っています。

私の身の上話はこれくらいにしまして、メインディッシュの某ウイルスの影響とワクチン事情についてお話しします。

パンデミックの影響とワクチン事情

オーストラリアは世界から見ても成功例と言われるほど管理が徹底しています。未だに国境は閉鎖されてほぼ鎖国状態です。州によって多少対策は異なりますが、一人でも陽性反応が出て、そこから小さなクラスターが発生すれば即ロックダウンです。不必要な外出は禁止、外食もテイクアウトのみ、テーマパークなどは休業などなど… 

最近もクイーンズランド州でデルタ株のクラスターが発生して、3日間のロックダウンが強いられました。ロックダウンが終了しても、政府からの更新があるまでマスク着用が義務付けられており、それに違反したものは罰金が科せられます。看護師など医療従事者は患者さんのケアや治療を行うには1.5mのソーシャルディスタンスが保てないため、私が勤めている病院でもマスクとゴーグルもしくはフェイスシールドは着用しなければいけません。

幸運なことに私はコロナウイルスに罹患した患者さんをみたり、PCR検査係は務めたことがないので、N95マスクといった完全防備を実際にする機会は今までないです。しかし、万が一のために、エプロン、ゴーグル、手袋やマスクといった個人用防護具をどのような順序で正しく着衣・脱衣するかを医療従事者としては知っておかなければなりません。そのために感染予防対策部(前職場にて)の看護師が各病棟を周り、指導・実演して、医療スタッフも個人用防護具の脱着を実際にしてチェックをもらわなければいけませんでした。このようにスタッフへの教育ももしものために徹底しています。

さて、そんなオーストラリア・クイーンズランド州では3月から最前線ではない医療従事者へのワクチン接種が始まりました。しかし!オーストラリアは2回接種した人の確率が経済協力開発機構(OECD)の38か国の中でなんと最下位です… 国家と州政府だけにとどまらず、州政府の中でもワクチンの輸入や副作用の問題、接種可能年齢に関して議論が収まらず、ワクチン接種の促進が難航している状態です。

ワクチン接種については賛否両論ありますが、私はワクチン接種を完了しました。もし!私が無症状で感染を拡大させてしまうと、病院に迷惑が掛かってしまうだけでなく、何より患者さんの命や一緒に働いている同僚の命が危ぶまれます。特に私の病棟はお年を召した方も多く、ただでさえ手術や他の治療を受けて免疫力が低下しているのにそこに某ウイルスは致命的です。医療従事者としての意識はとても高く持っているつもりです。

ちなみに院内の手洗い促進のポスター大会で、趣味のつもりで描いた私のデザインが選ばれました!→写真をご覧ください(病院名が書いてあるのでスタンプで伏せています…)。今では私の病棟の患者さんの各部屋のドアの前に掲示されています。Rub-In Rub-Outとは「部屋に入退室する際は手指をアルコール消毒してね!」というキャッチフレーズです。副賞に大人の美味しい飲み物!まだ頂いておりません(笑)

最後に

学校も社会も国際情勢もかなり変わり、みんながそれぞれストレスを抱えています。IBの生徒さんの中には海外の大学も現地で勉強したい人は多いとは思いますが、それが叶うのはもっと先になるかもしれません。そして、国内大学コースを必死に勉強している生徒さんも親御さんも無事に試験が行われるのか、合格・進学しても県外で安全に健康に子供が過ごせるのか不安になって当然です。ですがこんな状況だからこそ心の密は忘れずに、家族内でそして学校の同級生や先輩・後輩と、それ以上に先生方とも密にコミュニケーションをとるよう心掛けてください。

私の遠い親戚は病院のクラスターでコロナに罹り、治療を受けて陰性になったものの回復することなく亡くなりました。もちろん葬式には参加できませんでした。オーストラリアへ来る時から、家族が危篤状態になった際はもしくは最期には立ち会えないかもしれないことを覚悟してきています。日本には2年以上帰国していません。正直時々今までになかったホームシックで泣くことがあります。家族と一緒に過ごせるうちに怒られて一緒に泣いて笑ってください(笑)

国境が開いてまた自由に国を行き来できるようになって帰国した時には、AICJへも顔を出そうかなと思っています。その時には笑顔でみなさんとお会いできることを楽しみにしています!

これにて卒業生田中あゆみからは以上です。ご愛読ありがとうございます。

長文乱文を最後まで読んでいただきありがとうございました。

国を超えてみんなで頑張っていきましょう!!